黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ

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黒豚特別非常勤講師

スルーできない性格

「それじゃ、始めるね?!実は僕の領地では養蜂が盛んで、ハチミツが特産品だったんだけど、10年前からなぜか止めてしまったんだ。兄さんは気にするなって言うけど、僕はもう一度グリュース産のハチミツを復活させたいんだ!」

「おい、ちょっと待て!その話、本当にしていいのか?!」

やる気なく聞いていたデイビッドが、いきなり口を挟んだので、皆が驚いてデイビッドを見た。

「え?なぁに?自分に不利になりそうで焦ってんの?」

「カッコ悪いね、そういうのさ!まぁお宅の土地で養蜂はして無いみたいだし、焦るのも仕方ないか!」

「そうじゃない!グリュース産のハチミツの話は一度王家ともされたはずだ!外でしていいもんなのか俺は知らねぇぞ?」

「それって、答えられないってことでしょ?下がってなよ!フェーラー侯爵家には養蜂のノウハウが揃ってる。僕にとって最高の話相手さ!」

「そうだね!僕で良ければ力になるよ!?まずは蜂を増やさなくちゃね!?僕の領地から分蜂の時期に巣箱を移してあげるよ!グリュースハニーは王都でも有名だったんでしょ?ここで逃したらもったいないもんね!」

「…グリュース侯爵は恐らく反対するだろうな…」

「え~!?なにそれ負け惜しみ?」

「父さんが反対しても、僕達の代で復活させればいい!時間はたっぷりあるんだし!」

「……お前等本当に知らないのか…グリュース産のハチミツの悲劇…」

他に聞こえないよう小声で2人に伝えるが、2人の方は本当にわかっていないようだ。

「は?悲劇…?」

「待ってよ!僕の領地を馬鹿にするのか?!悲劇だって?ふざけるなよ?!」

「声がデケェ!あぁもう…おい誰か、シモンズ先生を呼んでくれ!あと、学園長もだ!頼む!!」

何人かの生徒が走り出し、会場はしばし騒然とした。

「なんだよ!そうまでして邪魔したいのか?!」

「グリュース侯爵領の話は今は置いとけ!シモンズ先生を待て!その方が絶対に良い!」

双方が睨み合いになりかけた時、スッと涼しげな声が間に入り、会場の視線を集めてしまった。

「揉めている時間がもったいないですわ。ねぇ、そこの貴方?シモンズ先生がいらっしゃれば話を進めてもよろしいのでしょ?ならば今は私が先にお話させて頂きますわね。」

銀色の髪にコバルトの瞳の令嬢が前に出て来ると、その美しさに会場からはため息が聞こえてきた。

「私の話は魔道具に関することですの。なので魔力のない方には用はありませんわ?!」

「そっか!デイビッドは魔力無しなんだっけ!?今度こそ出る幕ないね!悪いけどここは僕がもらったよ?!」

「まぁ、確かに魔力は皆無なんだけどな…」

「私は魔道具をもっと身近に、手軽に扱えるよう開発をしておりますの。卒業までにいくつかの特許を申請するつもりですわ。ですが、今試作中のティーカップが何度やっても割れてしまって、何か良いアイデアはございませんか?」

「魔石を組み込んで使うってこと?ティーカップってことは保温かな?」

「はい、紅茶を適温に保ったままでいられるティーカップですの!自動で加熱してくれるポットはありましたが、ティーカップ程小さい物はまだ少ないでしょう?だから自分で作ってみましたの。でも、どうしても魔力を流すと割れてしまって…」

「う~ん…魔石を小さくするのは?でも、それだと今度は威力が落ちちゃうのか…」

「あの~…」

「魔法陣も試しましたが、カップが耐えきれず、うまくいったと思っても直ぐに壊れてしまいますの…」

「あの~…ちょっと…聞いて欲しい……」

「…なんですの?魔力のない方には関係の無いお話ですわよ?!」

「いやぁ、何と言うか…その保温のカップ……来月、王都で売り出す予定なんだ………」

「は…?」

「そ、そんなの嘘だ!!そんな話聞いたこと無いぞ?!」

「どこの?一体どこの商会ですの?!」

「グロッグマン商会で、来月の目玉商品になるらしい。試作品も貰ったから間違いない。」

「試作品?!!持って来なさい!ここへ!今すぐ!!こうなったら好奇心だけでも満たしてやりますわ!!」

余計なことを言ったかとも思ったが、デイビッドは小走りで廊下を戻り、自室でティーカップを探した。
(え…?まだ寝てんのかコイツ…?あ、飯は食ってある…二度寝か…)
丸まったエリックを横目に、あれは侍従ではなく猫だったのかもしれない、などと考えながら、再び小走りで講堂へ戻る。

「やれやれ、持ってきたぞ?!」

「こ…これが」

「魔力を流してみな。」

「あっ!温かい!」

「触れてる物の温度を保持するらしい。手でも紅茶でも。これなら間違って触っても火傷の心配は無いな。」

「信じられません…魔石はどこに付いてますの?」

「砕いてティーカップに練り込んであるらしい。その上に釉薬で魔法陣を描いて焼き上げるんだそうだ。」

「ティーカップ自体が魔石そのものなのですね…その発想はありませんでしたわ…勉強になりました!」

「……気に入ったんですね、そのカップ…」

コバルトの瞳が、ものすごい目力でデイビッドを見つめている。
手はカップを差し出して入るものの、がっちりつかんで離そうとしない。

「う……」

「…よろしければ差し上げますよ…まだ試作品なので、改良品が出るかもしれませんが…」

「本当ですの?!ありがとうございます、デュロック伯爵令息様!」

冷たい目がパッと笑顔になり、嬉しそうにカップを持って壇上を降りて行く。

「…今のは点数に入るのか?!」

「ええい!無効だ!無効!!次は誰だ?!」

「最後は私です。」

流れる金髪に金の瞳。王家の色をまとった令嬢が、静かに前へ出て来る。

「アリスティア・セル・ラムダですわ。兄がお世話になっております、デイビッド様。」

「ひ…姫殿下?」

「ここは学園、身分は関係ありません。アリスティアとお呼び下さいませ。」

「それではひ…いや、アリスティア様のご相談は、なんでしょうか?」

「シルクよりも美しく、薄くて軽い布を探しておりますの。素材はなんでも構いません。魔物でも魔獣でも。とにかく美しい物をお願いします。何かございませんか?」

アリスティアに見つめられ、デイビッドは難しい顔で考え込んでいた。

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