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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
作ってみよう
「貴方、人にどんだけ食べさせるつもりですの…?」
魚のムニエル、野菜のオムレツ、チーズのガレット、ハーブとチキンのサラダ、干しぶどう入りのラペ、小ぶりのデニッシュ、レモンゼリー…
毎日出される常軌を逸した品数に、一瞬だけ、コイツは人を太らせて食べる気なのではないかと疑ってしまう。
「じっとしてるのが性に合わないのは確かだな…」
「それにしたってちょっとは女の子の食事量考えなさいよ!!毎日こんなに食べてたら、ひと夏で取り返しがつかなくなりますわ!!」
「自分で量決めて取り分ければいいだろ?」
「減らすなんて嫌っ!!何このムニエル!パリパリしっとりで無限に食べてたいっ!!」
「良い魚入れてもらったんだよ。」
悔しそうにムニエルを口に運ぶシェルリアーナの隣で、ヴィオラはいつものように、にこにこしながら料理を楽しんでいる。
「美味しいです!デイビッド様の作る物はなんでも最高に美味しいです!!」
「ヴィオラは好き嫌いはないのか?嫌なものがあったら言ってくれよ?」
「そうですわね、私は芽キャベツが苦手ですわ!」
「ヴィオラに!聞いてんの!俺は!!」
その後は、遅れてやって来たエリックが、焼きたての魚が食べられなかった事にゴネたり、 シェルリアーナが戸棚にしまわれた甘味の誘惑に負けたり、午後も賑やかに過ごした。
「デイビッド様の部屋にあるパンは、全て手作りなのですか?」
洗い物をしていると、ヴィオラがオーブンの上で発酵中のパン生地を見つけ、デイビッドにたずねた。
「そういうわけじゃないんだが…いや、確かに今んとこ全部焼いてるの俺か…!?」
「昨日のバンズも、バゲットも、ぶどうの入った丸パンも?!」
「そういやそうか。酵母の実験で色んなの試してたからな。」
「私にも焼けますか?パン!」
「作ってみるか?!パン!」
「はい!!」
棚からエプロンを取り出し、ヴィオラに着せ、準備万端。
小麦粉に、ミルク、卵、バター、塩ひとつまみ…と材料を入れていき、最後に酵母を選んでゆっくりと注いだら、手で混ぜていく。
「…ベタベタですね…」
「気にすんな!このまま混ぜろ!」
「手が…手がくっついて離れない…!」
「(かわいい…)ボール押さえててやるよ。」
ひたすら混ぜてこねてしていると、徐々に粘り気がなくなり、生地がつるりとしてくる。
「そうしたら、打ち粉の上に生地を出して…思いっきり叩きつける!」
生地を折りたたみ、上から押しつぶし、また叩きつけてをくり返す。
デイビッドはドタンドタンと大きな音を立てながら、パンを台に叩きつける。
「えいっ!えいっ!!」
ヴィオラも、ぺったんぺったんと力いっぱいやってみるが、生地は軟らかいままだ。
「ハァハァ…デイビッド様みたいにできません…」
「これはこれでちゃんと膨らむから大丈夫。そしたら一時発酵。」
その間にエプロンを外して手を洗い、ヴィオラは課題に集中した。
シェルリアーナも、何かのレポートをひたすら書いている。
「そうしてると学生って感じがするなぁ。」
「は?!じゃ今までは人をなんだと思ってましたの?!」
「すげぇ頭良さそうなのに、シェルはなんで居残りになったんだ?」
「ど突き回しますわよ?!自主的に帰省してないだけよ!!」
「いいのか?実家は良家なんだろ?心配されないか?」
「帰っても変態に纏わりつかれるだけですもの。研究を完成させたいと申し出たら、お父様も許可してくれましたわ。この夏は、師匠に出された宿題を全て解いておきたいの!」
「あー…そういやしばらく見ないな。あの前髪の生えた変態…」
「自分の罪を手駒に擦り付けて、揉み消しに奔走してますわ…アレは変態でも未来の宮廷の魔術師候補。お父様が監視していますが、二学期からは出てきますわよ…」
「大変だなぁ、お前も…」
「あんな変態でも、いずれは王宮の仕事を継がせなければなりませんもの。お父様も必死なのですわ…」
「逃げ場がなくなったら、いつでもここ来ていいぞ?」
「そんな事言ったら毎日来る事になりますわよ!?」
「んなこと言ったって、夏休み始まってから毎日来てるじゃねぇか。」
「え…?!」
確かに。
このところ毎日、ヴィオラに付き添っては、ここでのんびり過して、たらふく食べて、帰りに何かしら手土産持たされて寮に帰る生活をしていたことに、はたと気がつく。
「いけないっ!!危うく太らされるところでしたわ…!!至る所からお菓子が出て来て、ここは魔女の家か!?」
「大丈夫です!シェル先輩は少し太ったって、きっとおキレイなままです!」
「全然フォローになってませんわぁぁ!でもかわいいから許しちゃうぅぅ…」
「やっぱり女の子がいると、部屋の中が華やかで良いですねぇ!」
ヴィオラに抱き着くシェルリアーナを、エリックはひとり楽しそうに眺めていた。
そんな事をしている内に、パンの一時発酵が終わり、ガスを抜いたら少しこねてまた寝かせる。
その間に、既に発酵の終わったパンに卵を塗り、天火に入れて焼き上げていく。
「パンに切れ込みいれるのやってみたいです!」
「クープか。ほら、斜めに均等に軽く切れ込みを入れて…そうそう!上手いぞ?!」
「これで焼くのですね!」
オーブンの火が安定し、パンが膨らんでくると、ヴィオラはオーブンの前に張り付いて、今か今かと待っている。
焼き上がったパンを取り出し、焼きたての熱々をひとつ割って中を見る。
酵母の香りもきつくなく、材料の風味も損なわれていない。
甘みもあって、口溶けも良く、上出来だ。
味見するデイビッドの横で、ヴィオラが目をキラキラさせて待っている。
「まだ熱いけど…食べるか?」
「いただきます!!」
半分に割ったパンを差し出すと、ヴィオラはデイビッドの手から直接パンにかぶりついた。
「あふっ!あふぃ!すごくふわふわで!はふっ!おいしい!」
「そりゃ…良かっ…たな…」
「はぁ!こんなに美味しいパンは初めて食べました!」
「焼きたてはなんでもうまいよ。シェルもひとつどうだ?」
「うぐぅぅ~……そうやって…おいしい物で…誘惑して…駄目よ!これ以上食べたら…またスカートが…おいしいぃぃっ!!なにこれ超絶ふわふわで…空気みたいに食べられちゃう…」
「冷めたら残りのチキン挟んでサンドにするから、寮に持ってけよ。」
「デイビッド様、私卵も入れたいです!」
「茹でたのと焼いたのどっちがいい?」
楽しげに料理する2人を、後ろから見ていたシェルリアーナとエリックは、これは婚約者と言うより、親子に近いのでは?と、またひとつ疑問に思ってしまう。
「そろそろかな?」
ついにヴィオラのこねたパン生地が、天火に入れられ、すぐにいい香りが漂ってくる。
「わぁぁ!!」
ツヤツヤの丸いパンがいくつも並んで、ホカホカ湯気が立っている。
「うん!よく焼けてる。どうだったパン作りは?」
「パンを作るって大変なんですね!でも、デイビッド様のおかげでうまくできました!」
ヴィオラは自分のパンを手に取ると、ちぎってデイビッドに差し出した。
受け取ろうとする手を避けて、口元まで持ってくるので、観念して口を開けると、ヴィオラは嬉しそうに笑う。
「おいしくできてますか?」
「ん…ちゃんとうまいよ…」
「よかった!!」
と言いつつ、この時食べたパンは、味など全くわからかった。
魚のムニエル、野菜のオムレツ、チーズのガレット、ハーブとチキンのサラダ、干しぶどう入りのラペ、小ぶりのデニッシュ、レモンゼリー…
毎日出される常軌を逸した品数に、一瞬だけ、コイツは人を太らせて食べる気なのではないかと疑ってしまう。
「じっとしてるのが性に合わないのは確かだな…」
「それにしたってちょっとは女の子の食事量考えなさいよ!!毎日こんなに食べてたら、ひと夏で取り返しがつかなくなりますわ!!」
「自分で量決めて取り分ければいいだろ?」
「減らすなんて嫌っ!!何このムニエル!パリパリしっとりで無限に食べてたいっ!!」
「良い魚入れてもらったんだよ。」
悔しそうにムニエルを口に運ぶシェルリアーナの隣で、ヴィオラはいつものように、にこにこしながら料理を楽しんでいる。
「美味しいです!デイビッド様の作る物はなんでも最高に美味しいです!!」
「ヴィオラは好き嫌いはないのか?嫌なものがあったら言ってくれよ?」
「そうですわね、私は芽キャベツが苦手ですわ!」
「ヴィオラに!聞いてんの!俺は!!」
その後は、遅れてやって来たエリックが、焼きたての魚が食べられなかった事にゴネたり、 シェルリアーナが戸棚にしまわれた甘味の誘惑に負けたり、午後も賑やかに過ごした。
「デイビッド様の部屋にあるパンは、全て手作りなのですか?」
洗い物をしていると、ヴィオラがオーブンの上で発酵中のパン生地を見つけ、デイビッドにたずねた。
「そういうわけじゃないんだが…いや、確かに今んとこ全部焼いてるの俺か…!?」
「昨日のバンズも、バゲットも、ぶどうの入った丸パンも?!」
「そういやそうか。酵母の実験で色んなの試してたからな。」
「私にも焼けますか?パン!」
「作ってみるか?!パン!」
「はい!!」
棚からエプロンを取り出し、ヴィオラに着せ、準備万端。
小麦粉に、ミルク、卵、バター、塩ひとつまみ…と材料を入れていき、最後に酵母を選んでゆっくりと注いだら、手で混ぜていく。
「…ベタベタですね…」
「気にすんな!このまま混ぜろ!」
「手が…手がくっついて離れない…!」
「(かわいい…)ボール押さえててやるよ。」
ひたすら混ぜてこねてしていると、徐々に粘り気がなくなり、生地がつるりとしてくる。
「そうしたら、打ち粉の上に生地を出して…思いっきり叩きつける!」
生地を折りたたみ、上から押しつぶし、また叩きつけてをくり返す。
デイビッドはドタンドタンと大きな音を立てながら、パンを台に叩きつける。
「えいっ!えいっ!!」
ヴィオラも、ぺったんぺったんと力いっぱいやってみるが、生地は軟らかいままだ。
「ハァハァ…デイビッド様みたいにできません…」
「これはこれでちゃんと膨らむから大丈夫。そしたら一時発酵。」
その間にエプロンを外して手を洗い、ヴィオラは課題に集中した。
シェルリアーナも、何かのレポートをひたすら書いている。
「そうしてると学生って感じがするなぁ。」
「は?!じゃ今までは人をなんだと思ってましたの?!」
「すげぇ頭良さそうなのに、シェルはなんで居残りになったんだ?」
「ど突き回しますわよ?!自主的に帰省してないだけよ!!」
「いいのか?実家は良家なんだろ?心配されないか?」
「帰っても変態に纏わりつかれるだけですもの。研究を完成させたいと申し出たら、お父様も許可してくれましたわ。この夏は、師匠に出された宿題を全て解いておきたいの!」
「あー…そういやしばらく見ないな。あの前髪の生えた変態…」
「自分の罪を手駒に擦り付けて、揉み消しに奔走してますわ…アレは変態でも未来の宮廷の魔術師候補。お父様が監視していますが、二学期からは出てきますわよ…」
「大変だなぁ、お前も…」
「あんな変態でも、いずれは王宮の仕事を継がせなければなりませんもの。お父様も必死なのですわ…」
「逃げ場がなくなったら、いつでもここ来ていいぞ?」
「そんな事言ったら毎日来る事になりますわよ!?」
「んなこと言ったって、夏休み始まってから毎日来てるじゃねぇか。」
「え…?!」
確かに。
このところ毎日、ヴィオラに付き添っては、ここでのんびり過して、たらふく食べて、帰りに何かしら手土産持たされて寮に帰る生活をしていたことに、はたと気がつく。
「いけないっ!!危うく太らされるところでしたわ…!!至る所からお菓子が出て来て、ここは魔女の家か!?」
「大丈夫です!シェル先輩は少し太ったって、きっとおキレイなままです!」
「全然フォローになってませんわぁぁ!でもかわいいから許しちゃうぅぅ…」
「やっぱり女の子がいると、部屋の中が華やかで良いですねぇ!」
ヴィオラに抱き着くシェルリアーナを、エリックはひとり楽しそうに眺めていた。
そんな事をしている内に、パンの一時発酵が終わり、ガスを抜いたら少しこねてまた寝かせる。
その間に、既に発酵の終わったパンに卵を塗り、天火に入れて焼き上げていく。
「パンに切れ込みいれるのやってみたいです!」
「クープか。ほら、斜めに均等に軽く切れ込みを入れて…そうそう!上手いぞ?!」
「これで焼くのですね!」
オーブンの火が安定し、パンが膨らんでくると、ヴィオラはオーブンの前に張り付いて、今か今かと待っている。
焼き上がったパンを取り出し、焼きたての熱々をひとつ割って中を見る。
酵母の香りもきつくなく、材料の風味も損なわれていない。
甘みもあって、口溶けも良く、上出来だ。
味見するデイビッドの横で、ヴィオラが目をキラキラさせて待っている。
「まだ熱いけど…食べるか?」
「いただきます!!」
半分に割ったパンを差し出すと、ヴィオラはデイビッドの手から直接パンにかぶりついた。
「あふっ!あふぃ!すごくふわふわで!はふっ!おいしい!」
「そりゃ…良かっ…たな…」
「はぁ!こんなに美味しいパンは初めて食べました!」
「焼きたてはなんでもうまいよ。シェルもひとつどうだ?」
「うぐぅぅ~……そうやって…おいしい物で…誘惑して…駄目よ!これ以上食べたら…またスカートが…おいしいぃぃっ!!なにこれ超絶ふわふわで…空気みたいに食べられちゃう…」
「冷めたら残りのチキン挟んでサンドにするから、寮に持ってけよ。」
「デイビッド様、私卵も入れたいです!」
「茹でたのと焼いたのどっちがいい?」
楽しげに料理する2人を、後ろから見ていたシェルリアーナとエリックは、これは婚約者と言うより、親子に近いのでは?と、またひとつ疑問に思ってしまう。
「そろそろかな?」
ついにヴィオラのこねたパン生地が、天火に入れられ、すぐにいい香りが漂ってくる。
「わぁぁ!!」
ツヤツヤの丸いパンがいくつも並んで、ホカホカ湯気が立っている。
「うん!よく焼けてる。どうだったパン作りは?」
「パンを作るって大変なんですね!でも、デイビッド様のおかげでうまくできました!」
ヴィオラは自分のパンを手に取ると、ちぎってデイビッドに差し出した。
受け取ろうとする手を避けて、口元まで持ってくるので、観念して口を開けると、ヴィオラは嬉しそうに笑う。
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カクヨムで公開したものに手を入れたものです。