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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
お出かけの約束
「今なんて……?」
「すごくキレイなツーショットで…本当に恋人同士みたいに見えたんです…知らない人が見たら…きっと誤解されてしまう!!シェル先輩みたいな美しい人に、私は…なれないから…それが悔しくて…羨ましくて…」
ヴィオラが傷付いたのは、デイビッドの婚約者が誰か、他人に誤解されてしまう事だった。
恐らく写真に写った2人が、ヴィオラにはとてもお似合いに見えたのだろう。
「悲しむポイントが、ちょっとズレてるんですかね…?!」
「…こっちがキレるタイミング完全に逃した…」
デイビッドは怖くて後ろを振り向けないまま、腕の中のヴィオラをただ慰めることしかできなかった。
「私…今日はこれで失礼させて頂きますわ…ごめんなさいねヴィオラ…」
「シェル先輩!?」
「大丈夫、貴女はそこの婚約者に、思いっ切り甘やかしてもらって来なさい。じゃあね?!」
そう言うと、作り物の笑顔を貼り付けて、シェルリアーナは廊下を1人で戻って行ってしまった。
「え?怖かった!」
「あれはぶちギレてたなぁ…」
「うっ…うっ…」
泣き止まないヴィオラを何とかソファに座らせ、床に膝をついたままあれこれしている内に、涙は何とか止まったが、暗い表情を晴らすことは出来なかった。
「ヴィオラ…?」
「…」
「明日の午後で良かったら、行ってみようか…星祭り?」
「え…?」
「王都の中に入らなくても、壁の外も同じ祭りで盛り上がるんだ…一緒にどうだ?!」
「お祭り…デイビッド様と…?」
「ダメかな…?」
それを聞くと、ヴィオラは立ち上がって涙を拭いた。
「行きたいです!!お祭り!!デイビッド様と一緒に!!」
「お、少し元気になったな?!」
その隙に冷えた果実水を出すと、ヴィオラは一息で飲んでしまった。
「少しは落ち着いたか?」
「はい…」
「災難だったな…助けに行けなくて済まなかった…」
「いいんです!悪いのはあっちですから!」
この日は少し遅めの昼食に、リコッタチーズの入った分厚いふわふわパンケーキを何枚も焼き、シロップをたっぷりかけて出した。
競うように食べるエリックとヴィオラに横目に、デイビッドはデニッシュの生地を焼き上げ、フルーツやクリームで飾って飴がけにし、チョコに浸したワッフルと合わせて紙に包んで、バスケットに詰めた。
その後は菜園のプチトマトを収穫したり、温室を回ったりしている内に、ヴィオラもいつもの調子を取り戻していった
「明日は午前中にヴィオラの試験結果が出るだろ?確認したらすぐこの部屋に逃げて来るといい。あの青髪がまた何か仕出かすとも限らんからな。」
「デイビッド様は…?」
「……悔しいが、昼前の時間に騎士科の居残り組の監督になっちまってる…代わりにエリックを付けとくから、なんかあったら囮にしていいぞ?!」
「いや!守りますよ!?あくまで生徒として、ちゃんとガードしますよ?!」
「今日は寮まで送るよ。また変なのに絡まれたら嫌だものな。」
「はいっ!!」
夕方近くの、人のいない学園内はとても静かで、いつもと違って見える。
「そう言えば、初めてですね。デイビッド様と学園の中を歩くのは。」
「そうだったか…だとしたら悪かった。そんな放ったらかしにしてたら、何も守れないよな…」
「仕方ないです!デイビッド様は普段は先生なんですから。私も、あんまりベタベタしないようにしないと…」
「休みが明けたら、もっと会えなくなるぞ?」
「我慢します!その分、一緒にいられる間はたくさんくっつきます!」
「ははは!それじゃこっちも、気合い入れて甘やかさないとな…ああ、もう着いちまったか。また明日、楽しみにしてるよ。おやすみ、ヴィオラ。」
寮の前に着くと、デイビッドはヴィオラにバスケットを手渡し、直ぐに帰って行ってしまった。
「あの場合キスくらいしなさいよ!!ヘタレが!」
ヴィオラが寮に入ると、入り口の物陰にシェルリアーナがいて、こちらを見ていた。
「シェル先輩!?」
「おかえりなさい。私のヴィオラ!今日は本当に災難だったわね。でも、もう大丈夫よ?!」
シェルリアーナは、テレンスの言いなりになっている新聞部と写真部に乗り込んで、部員を脅して最近撮影した写真を全て確認してきたそうだ。
そこに件のツーショットは確かにあった。
「写真部のひとりが持っていましたわ。ばら撒くつもりで焼き増していた分も、残らず消し炭にして来たからもう安心ですわよ?」
「シェル先輩…ありがとうございます!!そうだ、これシェル先輩の分!お昼を食べずに行ってしまわれたので、デイビッド様が2人で分けるようにって、たくさん作ってくれたんです!」
「あら、アイツも気が利くわね。ありがとう頂くわ!」
「シェル先輩!私、明日デイビッド様とお祭りに行くんです!先輩もご一緒にいかがですか?」
「お祭りって、星祭りですの?!お誘いは嬉しいけれど、私は遠慮しておきますわ。やることもありますし、何より貴女は大切な人と2人きりで行ってらっしゃい?!」
「は…はい…」
真っ赤になるヴィオラがあまりにも可愛くて、シェルリアーナは思わずぎゅうぎゅう抱きしめて頬ずりしてしまう。
「明日はうんと楽しんで来るといいですわ!特別な日になるように…」
「はい!ありがとうございます!」
「それじゃ、おやすみなさいませ!」
シェルリアーナは昼間の喧騒などすっかり忘れ、焦れったい2人にようやく訪れた進展の予感に、胸を躍らせながら何気なくバスケットを開いた。
中身はツヤツヤのクリームたっぷりフルーツデニッシュと、チョコがよーく染み込んだワッフル。(一応サラダも入ってる)
(これを…食えと…寝る前に?!!)
朝食にすれば大丈夫!と自分に言い聞かせ、棚にしまったはずが、いつの間にかベッド脇にホットミルクと一緒に並んでいた。
(あの悪魔……いつか本当に丸焼きにしてやる…)
すっかり昼食を抜いてしまっていたシェルリアーナは、寮の夕食では物足らず、夜の空腹に負けて、結局ほとんど寝る前に食べてしまい、それは後悔することになった。
「すごくキレイなツーショットで…本当に恋人同士みたいに見えたんです…知らない人が見たら…きっと誤解されてしまう!!シェル先輩みたいな美しい人に、私は…なれないから…それが悔しくて…羨ましくて…」
ヴィオラが傷付いたのは、デイビッドの婚約者が誰か、他人に誤解されてしまう事だった。
恐らく写真に写った2人が、ヴィオラにはとてもお似合いに見えたのだろう。
「悲しむポイントが、ちょっとズレてるんですかね…?!」
「…こっちがキレるタイミング完全に逃した…」
デイビッドは怖くて後ろを振り向けないまま、腕の中のヴィオラをただ慰めることしかできなかった。
「私…今日はこれで失礼させて頂きますわ…ごめんなさいねヴィオラ…」
「シェル先輩!?」
「大丈夫、貴女はそこの婚約者に、思いっ切り甘やかしてもらって来なさい。じゃあね?!」
そう言うと、作り物の笑顔を貼り付けて、シェルリアーナは廊下を1人で戻って行ってしまった。
「え?怖かった!」
「あれはぶちギレてたなぁ…」
「うっ…うっ…」
泣き止まないヴィオラを何とかソファに座らせ、床に膝をついたままあれこれしている内に、涙は何とか止まったが、暗い表情を晴らすことは出来なかった。
「ヴィオラ…?」
「…」
「明日の午後で良かったら、行ってみようか…星祭り?」
「え…?」
「王都の中に入らなくても、壁の外も同じ祭りで盛り上がるんだ…一緒にどうだ?!」
「お祭り…デイビッド様と…?」
「ダメかな…?」
それを聞くと、ヴィオラは立ち上がって涙を拭いた。
「行きたいです!!お祭り!!デイビッド様と一緒に!!」
「お、少し元気になったな?!」
その隙に冷えた果実水を出すと、ヴィオラは一息で飲んでしまった。
「少しは落ち着いたか?」
「はい…」
「災難だったな…助けに行けなくて済まなかった…」
「いいんです!悪いのはあっちですから!」
この日は少し遅めの昼食に、リコッタチーズの入った分厚いふわふわパンケーキを何枚も焼き、シロップをたっぷりかけて出した。
競うように食べるエリックとヴィオラに横目に、デイビッドはデニッシュの生地を焼き上げ、フルーツやクリームで飾って飴がけにし、チョコに浸したワッフルと合わせて紙に包んで、バスケットに詰めた。
その後は菜園のプチトマトを収穫したり、温室を回ったりしている内に、ヴィオラもいつもの調子を取り戻していった
「明日は午前中にヴィオラの試験結果が出るだろ?確認したらすぐこの部屋に逃げて来るといい。あの青髪がまた何か仕出かすとも限らんからな。」
「デイビッド様は…?」
「……悔しいが、昼前の時間に騎士科の居残り組の監督になっちまってる…代わりにエリックを付けとくから、なんかあったら囮にしていいぞ?!」
「いや!守りますよ!?あくまで生徒として、ちゃんとガードしますよ?!」
「今日は寮まで送るよ。また変なのに絡まれたら嫌だものな。」
「はいっ!!」
夕方近くの、人のいない学園内はとても静かで、いつもと違って見える。
「そう言えば、初めてですね。デイビッド様と学園の中を歩くのは。」
「そうだったか…だとしたら悪かった。そんな放ったらかしにしてたら、何も守れないよな…」
「仕方ないです!デイビッド様は普段は先生なんですから。私も、あんまりベタベタしないようにしないと…」
「休みが明けたら、もっと会えなくなるぞ?」
「我慢します!その分、一緒にいられる間はたくさんくっつきます!」
「ははは!それじゃこっちも、気合い入れて甘やかさないとな…ああ、もう着いちまったか。また明日、楽しみにしてるよ。おやすみ、ヴィオラ。」
寮の前に着くと、デイビッドはヴィオラにバスケットを手渡し、直ぐに帰って行ってしまった。
「あの場合キスくらいしなさいよ!!ヘタレが!」
ヴィオラが寮に入ると、入り口の物陰にシェルリアーナがいて、こちらを見ていた。
「シェル先輩!?」
「おかえりなさい。私のヴィオラ!今日は本当に災難だったわね。でも、もう大丈夫よ?!」
シェルリアーナは、テレンスの言いなりになっている新聞部と写真部に乗り込んで、部員を脅して最近撮影した写真を全て確認してきたそうだ。
そこに件のツーショットは確かにあった。
「写真部のひとりが持っていましたわ。ばら撒くつもりで焼き増していた分も、残らず消し炭にして来たからもう安心ですわよ?」
「シェル先輩…ありがとうございます!!そうだ、これシェル先輩の分!お昼を食べずに行ってしまわれたので、デイビッド様が2人で分けるようにって、たくさん作ってくれたんです!」
「あら、アイツも気が利くわね。ありがとう頂くわ!」
「シェル先輩!私、明日デイビッド様とお祭りに行くんです!先輩もご一緒にいかがですか?」
「お祭りって、星祭りですの?!お誘いは嬉しいけれど、私は遠慮しておきますわ。やることもありますし、何より貴女は大切な人と2人きりで行ってらっしゃい?!」
「は…はい…」
真っ赤になるヴィオラがあまりにも可愛くて、シェルリアーナは思わずぎゅうぎゅう抱きしめて頬ずりしてしまう。
「明日はうんと楽しんで来るといいですわ!特別な日になるように…」
「はい!ありがとうございます!」
「それじゃ、おやすみなさいませ!」
シェルリアーナは昼間の喧騒などすっかり忘れ、焦れったい2人にようやく訪れた進展の予感に、胸を躍らせながら何気なくバスケットを開いた。
中身はツヤツヤのクリームたっぷりフルーツデニッシュと、チョコがよーく染み込んだワッフル。(一応サラダも入ってる)
(これを…食えと…寝る前に?!!)
朝食にすれば大丈夫!と自分に言い聞かせ、棚にしまったはずが、いつの間にかベッド脇にホットミルクと一緒に並んでいた。
(あの悪魔……いつか本当に丸焼きにしてやる…)
すっかり昼食を抜いてしまっていたシェルリアーナは、寮の夕食では物足らず、夜の空腹に負けて、結局ほとんど寝る前に食べてしまい、それは後悔することになった。
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