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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
友情
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テスト期間が終わると、次の日生徒は休みとなる。
最後のテストを終えた日の午後、廊下は開放感に喜ぶ生徒達で溢れていた。
「やっと終わったー!!」
「ねぇ、安心したらお腹空いちゃった!」
「お昼食べたのに?」
「カフェに甘い物食べに行かない?」
「「賛成!!!」」
ヴィオラ含む仲良し6人は、この日がんばった自分へのご褒美にと、2階にあるカフェへと向かっていた。
学園では昔から食堂とは別に、生徒同士のお茶会や討論、交流、雑談の場として、少し雰囲気のあるカフェが開放されている。
既に人で賑わうカフェに入ろうとした時、後ろから誰かを呼び止める声がした。
「待ちなさい!なぜ貴女がここにいらっしゃるのかしら?」
「ここは教会で神の祝福を受けた者が集うスカイロードでしてよ?」
「神に仕える身の私達と同じ空間に居座ろうだなんて、厚かましいのではなくて?!」
振り向くと、1年生と2年生の生徒が数人。
全員シスター帽を被っているので教会関係者だろう。
その真ん中には、美しい金髪の少女が悲しげな表情でこちらをじっと見つめている。
「いけませんわお姉様。学園の生徒を騙して友人になったところで、何になるというのですか?虚しいだけではありませんか。どうかご自身の身をお弁え下さいませ…」
「リリア…いいえ、聖女様。私はもう貴女の姉ではありませんので、その呼び方はお止め下さい。」
「まぁ!酷い…血を分けた姉妹であることは変わらないでしょう?なぜそのようなことを仰るの…」
人の視線がどんどん増えて、あの夜会の日の悪夢が頭をよぎり、ヴィオラはもう立っているのがやっとだった。
「ヴィオラ…大丈夫?」
「ちょっと、変な言いがかり付けてこないでよ!!」
チェルシーとアニスが、ヴィオラを庇おうと前へ出たが、それを止めたのはヴィオラだった。
「可哀想に…皆様何もご存知ありませんのね…」
「まったく、そんな卑しい性格だから神にも見放されるのです!!」
「貴女方、何も知らないようだから、教えて差し上げましょう。その女は聖女を害し、神の怒りに触れたことで王都を追放された罪人なのですよ?!」
「国の情けで学園に通うことを許されだだけ!他の生徒と同様に過ごそうなどとは、思い上がりも甚だしいわ!」
「近づかないで汚らわしい!」
「早くそこをどきなさい!神の使徒である他の生徒の邪魔ですよ?!」
騒ぐシスター達のせいで、その場のほとんどの視線がヴィオラに集まった。
「ヴィオラ…?」
「黙っててごめんなさい…」
「何言ってるの?!アイツらの言う事なんか…」
「ごめんね…私、もう行くから…仲良くしてくれて、ありがとう…」
駆け出したヴィオラは、人が避けてできた隙間を縫うように、青い廊下を走り抜けて行った。
その頃、午後の飛行訓練を終えたデイビッドは、汗を流してから、これから何か作ろうかなどとぼんやり考えていた。
明日からまたヴィオラが来るかも知れない。
テスト明け用に甘味をもう少し足しておこうか。
それとも新しい料理に挑戦してみようか…
そんなことを考えていると、廊下から足音が聞こえてきた。
デイビッドが手を掛けるより早くドアが開き、飛び込んできたヴィオラに突き飛ばされて床にひっくり返る。
「わぁ!なんだ??ヴィオラ?!一体どうし…泣いてんのか……」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
胸元に縋り付き、堰を切ったように泣き出したヴィオラを、デイビッドは床に座り込んだまま、落ち着くまで背中を撫でてやる事しか出来ず、もどかしい時間が過ぎた。
「うっ…うぇっ……」
「少し落ち着いたか…?何があったか話せそうか?」
「うっ…うっ…と…友達が…できたんです…」
「友達…一緒にテスト勉強したっていう?」
「はい…楽しかったの…すごくすごく…誰かと何でもないお喋りして、一緒に笑って、ご飯食べて…幸せだった…」
「仲良くなったんだな…」
「でもっ…私、話せなかった!嫌われたくなくて…自分の事何も話さなかった…」
「何もかも話さなきゃ友人になれないなんてこと無いだろう?」
「もう一緒にいられない…リリアに…全部バラされてしまったから…みんなの前で、私が罪人だって!」
「罪人なんかじゃない!!ヴィオラがなんの罪を犯したってんだ?!誰がなんと言おうと、悪いのは教会やら聖女やら崇めてる胡散臭い王都の連中だけだ!傷つく必要なんか無い…」
またしても辛い時に側に居られなかった罪悪感と、ヴィオラを貶す教会関係者と元妹への怒りで一瞬体が熱くなるが、何より悲しむヴィオラに寄り添うため、湧き上がりかけた感情をぐっと押し込む。
「怖かっただろう?大丈夫、ヴィオラは一人じゃない…それに、そんな些細な事でいきなり友達を切るような奴が本当の友達なわけないだろ?ちゃんとヴィオラを見てくれる仲間がいるはずだ……窓の外とかにな!?」
よっこいしょっと立ち上がり、窓辺にツカツカ近づいて開けると、窓枠の下に5人の女生徒達がしゃがみ込んでいた。
「…お前ら何してんだ?」
「あ!あの、私達ヴィオラが心配で!」
「…んで?」
「キスとかしないかなーと思って覗いてました!!」
「素直で大変よろしいなぁ?!ホラ、さっさと中入って来い!!」
5人は、まだ床の上で泣いていたヴィオラに駆け寄り、その肩を抱きしめた。
「心配したよ!いきなりどっか行っちゃうから!!」
「アイツらの言う事なんか気にしちゃダメよ!?」
「そうよ!何があったってヴィオラはヴィオラなんだから!!」
「私達、ずっとヴィオラの友達でいたいのよ!」
「泣かないでヴィオラ…」
「みんな…ごめんね…ごめんね…ありがとう……」
抱き合う女の子達を前に、自分の研究室で居場所を失ったデイビッドは、隅の方でひたすら空気になっていた。
「お嬢さん方少しは落ち着いたか?とりあえず床じゃなくてこっち座れ。」
ひとしきり友情を確かめ合った少女達は、今度は各々好きなところに座り、改めて研究室の中を見渡した。
「なんか、前来た時よりオシャレになってない?」
「研究室ってもっと汚いのかと思ってたけど、片付いてるね。」
「でもいろんな物があって面白い!あれ見て、何かの骨がある!」
「キッチンだけすごい豪華!!三ツ口の大型オーブンなんてお店でしか見たことない!流しも広ーい」
「あんま騒ぐなよ…ヴィオラ、いつものところから好きなの出してやってくれるか?」
「はい!」
「今ヴィオラって呼んだ?!」
「ここにいる時は生徒と先生じゃないんだ!?」
「キャー!ヴィオラいいなぁ!!」
「もう!みんな…恥ずかしいよ。それより、さっきカフェで食べ損ねちゃったから、ここで何か食べていかない?」
ヴィオラはそう言って、お菓子が並んだトレイをテーブルの上に置いた。
パウンドケーキ3種類。選び切れない程のクッキーに、色々乗った小さなパイ。チョコがけのマドレーヌ。粉砂糖を降りかけたガレットにサクサクのフロランタン……
「今日は種類がたくさんでうれしいです!」
「ちょっと考え事してたら増えてた…エリックがだいぶ食ってたけど。」
「みんな、紅茶が入ったよ!好きなカップ使ってね!?」
目をまん丸にした女の子達は、しばらくテーブルをじっと見つめていたが、紅茶が注がれると、ティーカップで友情に乾杯し、甘い甘いひと時を過ごした。
最後のテストを終えた日の午後、廊下は開放感に喜ぶ生徒達で溢れていた。
「やっと終わったー!!」
「ねぇ、安心したらお腹空いちゃった!」
「お昼食べたのに?」
「カフェに甘い物食べに行かない?」
「「賛成!!!」」
ヴィオラ含む仲良し6人は、この日がんばった自分へのご褒美にと、2階にあるカフェへと向かっていた。
学園では昔から食堂とは別に、生徒同士のお茶会や討論、交流、雑談の場として、少し雰囲気のあるカフェが開放されている。
既に人で賑わうカフェに入ろうとした時、後ろから誰かを呼び止める声がした。
「待ちなさい!なぜ貴女がここにいらっしゃるのかしら?」
「ここは教会で神の祝福を受けた者が集うスカイロードでしてよ?」
「神に仕える身の私達と同じ空間に居座ろうだなんて、厚かましいのではなくて?!」
振り向くと、1年生と2年生の生徒が数人。
全員シスター帽を被っているので教会関係者だろう。
その真ん中には、美しい金髪の少女が悲しげな表情でこちらをじっと見つめている。
「いけませんわお姉様。学園の生徒を騙して友人になったところで、何になるというのですか?虚しいだけではありませんか。どうかご自身の身をお弁え下さいませ…」
「リリア…いいえ、聖女様。私はもう貴女の姉ではありませんので、その呼び方はお止め下さい。」
「まぁ!酷い…血を分けた姉妹であることは変わらないでしょう?なぜそのようなことを仰るの…」
人の視線がどんどん増えて、あの夜会の日の悪夢が頭をよぎり、ヴィオラはもう立っているのがやっとだった。
「ヴィオラ…大丈夫?」
「ちょっと、変な言いがかり付けてこないでよ!!」
チェルシーとアニスが、ヴィオラを庇おうと前へ出たが、それを止めたのはヴィオラだった。
「可哀想に…皆様何もご存知ありませんのね…」
「まったく、そんな卑しい性格だから神にも見放されるのです!!」
「貴女方、何も知らないようだから、教えて差し上げましょう。その女は聖女を害し、神の怒りに触れたことで王都を追放された罪人なのですよ?!」
「国の情けで学園に通うことを許されだだけ!他の生徒と同様に過ごそうなどとは、思い上がりも甚だしいわ!」
「近づかないで汚らわしい!」
「早くそこをどきなさい!神の使徒である他の生徒の邪魔ですよ?!」
騒ぐシスター達のせいで、その場のほとんどの視線がヴィオラに集まった。
「ヴィオラ…?」
「黙っててごめんなさい…」
「何言ってるの?!アイツらの言う事なんか…」
「ごめんね…私、もう行くから…仲良くしてくれて、ありがとう…」
駆け出したヴィオラは、人が避けてできた隙間を縫うように、青い廊下を走り抜けて行った。
その頃、午後の飛行訓練を終えたデイビッドは、汗を流してから、これから何か作ろうかなどとぼんやり考えていた。
明日からまたヴィオラが来るかも知れない。
テスト明け用に甘味をもう少し足しておこうか。
それとも新しい料理に挑戦してみようか…
そんなことを考えていると、廊下から足音が聞こえてきた。
デイビッドが手を掛けるより早くドアが開き、飛び込んできたヴィオラに突き飛ばされて床にひっくり返る。
「わぁ!なんだ??ヴィオラ?!一体どうし…泣いてんのか……」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
胸元に縋り付き、堰を切ったように泣き出したヴィオラを、デイビッドは床に座り込んだまま、落ち着くまで背中を撫でてやる事しか出来ず、もどかしい時間が過ぎた。
「うっ…うぇっ……」
「少し落ち着いたか…?何があったか話せそうか?」
「うっ…うっ…と…友達が…できたんです…」
「友達…一緒にテスト勉強したっていう?」
「はい…楽しかったの…すごくすごく…誰かと何でもないお喋りして、一緒に笑って、ご飯食べて…幸せだった…」
「仲良くなったんだな…」
「でもっ…私、話せなかった!嫌われたくなくて…自分の事何も話さなかった…」
「何もかも話さなきゃ友人になれないなんてこと無いだろう?」
「もう一緒にいられない…リリアに…全部バラされてしまったから…みんなの前で、私が罪人だって!」
「罪人なんかじゃない!!ヴィオラがなんの罪を犯したってんだ?!誰がなんと言おうと、悪いのは教会やら聖女やら崇めてる胡散臭い王都の連中だけだ!傷つく必要なんか無い…」
またしても辛い時に側に居られなかった罪悪感と、ヴィオラを貶す教会関係者と元妹への怒りで一瞬体が熱くなるが、何より悲しむヴィオラに寄り添うため、湧き上がりかけた感情をぐっと押し込む。
「怖かっただろう?大丈夫、ヴィオラは一人じゃない…それに、そんな些細な事でいきなり友達を切るような奴が本当の友達なわけないだろ?ちゃんとヴィオラを見てくれる仲間がいるはずだ……窓の外とかにな!?」
よっこいしょっと立ち上がり、窓辺にツカツカ近づいて開けると、窓枠の下に5人の女生徒達がしゃがみ込んでいた。
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「…んで?」
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5人は、まだ床の上で泣いていたヴィオラに駆け寄り、その肩を抱きしめた。
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「そうよ!何があったってヴィオラはヴィオラなんだから!!」
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「泣かないでヴィオラ…」
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ひとしきり友情を確かめ合った少女達は、今度は各々好きなところに座り、改めて研究室の中を見渡した。
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「はい!」
「今ヴィオラって呼んだ?!」
「ここにいる時は生徒と先生じゃないんだ!?」
「キャー!ヴィオラいいなぁ!!」
「もう!みんな…恥ずかしいよ。それより、さっきカフェで食べ損ねちゃったから、ここで何か食べていかない?」
ヴィオラはそう言って、お菓子が並んだトレイをテーブルの上に置いた。
パウンドケーキ3種類。選び切れない程のクッキーに、色々乗った小さなパイ。チョコがけのマドレーヌ。粉砂糖を降りかけたガレットにサクサクのフロランタン……
「今日は種類がたくさんでうれしいです!」
「ちょっと考え事してたら増えてた…エリックがだいぶ食ってたけど。」
「みんな、紅茶が入ったよ!好きなカップ使ってね!?」
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