97 / 512
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ファルコ
「デイビッド様!頭から血が出てます!!」
「あー木の枝に引っ掛けただけだから、心配すんな?!」
心配するヴィオラに、アルラウネの話を打ち明ける勇気がなく、いまだにひた隠しにしている後ろめたさから、デイビッドの動きは若干ぎこちない。
「どうせまた例のヒポグリフにでもつつかれたのでしょ?それより、今日の昼食!私のリクエスト、作ってくれたかしら?!」
「はいはい…」
夏の食べ過ぎを取り戻すため、シェルリアーナはダイエットを決意した。
今日はそれに巻き込まれ、全員でヘルシー料理を食べることに…
野菜スープにラタトゥイユ、サラダが3種類、メインは脂を落とした鶏肉のハム、デザートにはデトックスのハーブ水。
「ほぼ野菜ですね。」
「このくらいしないと、贅肉は落ちませんわ!」
「足りなかったらミートパイができてるぞ?!」
「「わーい!!」」
「余計な事すんじゃないわよ!!」
「残り物使い切りたくて…」
「主婦か!?」
大皿のミートパイにかぶりついて、幸せそうにしている2人を見ながら、今日こそは如何なる誘惑にも負けまいとシェルリアーナは頑張った。
午後の授業が始まる前に、物足りな気な顔をしたシェルリアーナと満足顔のヴィオラが行ってしまうと、エリックは自分の棚から大きな平たい鍋を引っ張り出した。
「錬金釜か、久々見たな。」
「そう!良く使い込まれてピカピカでしょう?これだけは手に馴染んだ物でないとね!」
「それで作るのか?」
「精霊薬は特別ですから!被検体もいることだし今日は調子が良いので早速作っていきますよ!?」
「今、被検体って言った…?」
特定の魔法陣や錬成陣を組み込んだ錬金釜。
魔法薬の調合で、親和性の低い物や、調和し難い物質を馴染ませ融合させる時に使用される。
その中に、手に入れた材料の他、浄化水、精霊の好む香草類と、いくつかの薬草を加え、世界樹の実の極々ほんの一滴にも満たない量を、針の先で加えていく。
「…そんなんで足りんのか?」
「多すぎなくらいですが?」
「針刺したところから痛んだりしない?」
「リンゴやオレンジじゃないんですってば!!」
いまいち理解してないデイビッドにイラっとしたが、感情ひとつが薬にも影響を及ぼしてしまうので、ここはぐっと堪え、錬成陣を発動させる。
魔法言語の中でも、精霊語は特に難しい。
聞き慣れない呪文を唱えるエリックを見て、デイビッドは少しだけわくわくした。
やがて全ての材料が溶け合い、瓶の中へ落ちてゆく。
一滴一滴、丁寧に確認し、瓶が満たされると、エリックは椅子にドサッと座り込んだ。
「ふーー…終わりましたぁ!!見て下さい!この濁りの無い透明な輝き!淡く光っているのは大成功の証ですよ?!」
「ほー?で、どうすんだ?」
「もちろんデイビッド様に使ってもらいます。」
「やっぱり…」
「大丈夫!大丈夫!これだけ純度の高い精霊薬、滅多に出回ってませんよ?!ほらほら上向いて!?」
エリックは、スポイトで吸い上げた一滴を、デイビッドの左目に垂らそうと構えたが、逃げ腰のデイビッドは余り乗り気ではない。
「差したら目玉が飛び出るとか無いよな…?!」
「無いですよ!!何をそんなに怖がってんですか!?」
「処方の無い薬品は怖いって言うし…」
「自分はあんなに実験繰り返しといて、よく言いますね?」
「目は流石にねぇよ!!」
「ほらじっとして…うーん…細くて入れにくいなぁ…」
ポタッと一滴、左目の中へ雫が落ち、途端デイビッドが跳ね起きた。
「イッ!タッ!目が……目が滲みる!!めちゃくちゃ痛え!!痛過ぎて目が開かねぇ!!」
「ええ?そんなはずは…」
2人でバタバタやっていると、そこへシェルリアーナがやって来た。
「ねぇ、さっきのスープまだ残ってたでしょ?お腹空いて集中できなくて…って何してますの?」
顔を押さえるデイビッドと、無理やり目を開かせようとしているエリックを見て、シェルリアーナは、この2人はまた碌でもないことをしているのかと呆れた顔をした。
「今度はなんですの?!」
「精霊薬の目薬を作ったんですが、目に差したら痛がって…」
「精霊薬の目薬?レシピは?ちょっと見せて?!」
シェルリアーナがエリックの使った文献をパラパラめくり、作った薬の成分をひとつひとつ確認していくと、ある事に気がついた。
「貴方…これ、回復薬よ?損傷のない部位へは使用しないようにって、冒頭のここに書いてあるわ!よく読んだ?」
「あれ…?」
「目薬の作り方は次のページね。ちょっと待って、まだ何か書いてある…万が一、欠損のない目に入った場合は、水で直ぐに良く洗い流すこと…」
「いっけなぁい!」
「「アホか!!」」
珍しくシェルリアーナとデイビッドの息が合ったが、今はそれどころではない。
慌てて水で洗い流すが、傷みは治まらず、直ぐには目が開かない。
その代わり、薬の効果なのか頭の傷は塞がっていた。
その間、今度はエリックがシェルリアーナに説教される番となった。
「貴方、従者でしょ?主人の心身の健康を守るはずが、ぶち壊してどうすんのよ!!そもそも普段から甘えすぎなのよ!!挙句の果てにこの始末!ヒモより質が悪いわ!少しは反省しなさい!!」
片目を濡らした布で冷やしながらデイビッドがソファに戻ると、反省すると見せかけて、やや嬉しそうな顔をしているエリックに気が付きかけ、見なかった事にした。
「目、真っ赤になってるわ。大丈夫?見えてる?」
「まだ視界がぼんやりしてるな…あー酷え目に遭った…」
温め直したスープを食べながら、シェルリアーナは目の前の不憫な男の顔をじっと見た。
(精霊薬なんか使って、一体何を見ようとしたのかしら…?気になるわね…)
予鈴が鳴ると、シェルリアーナも次の授業へ戻り、ようやく視界の戻ったデイビッドは、家畜小屋の世話をするため外に出た。
エリックも(少しは反省したのか)珍しく手伝いに出て来る。
「クルルルルル…」
ファルコはデイビッドが来ると、すぐに擦り寄って来て邪魔をする。
「好かれてんのか、餌くれるとだけ思ってんのか…」
「いい方に捉えましょうよ!」
「ほら、じっとしてろよ。足元掃いちまうからよ。」
「本当に良く懐きましたねぇ。」
「嫌味か!?」
ファルコは、掃除するデイビッドを追いかけ回し、隙あらば構ってもらおうとする。
「ところで、なんで名前が“ファルコ”なんですか?」
「言わなかったっけか?クチバシに削られかけのコードがあって、残ってた文字がファルコだったんだ。」
「意味はハヤブサでしょう?鷲の頭に隼とは、これ如何に…」
「古い帝国文字だったから、何かの暗号なのかもな。すっかり名前だと思い込んでたから、今まであんまり深く考えた事がなかった。」
「ハヤブサと言えば、帝国のヒポグリフ隊の記事読みました?式典で見せた高度なパフォーマンスがもう胸熱で!!」
「あー毎年やるよな、ヒポグリフの……」
「将軍の別名が戦場のハヤブサ!剣技がカッコイイのなんの!」
「ラドフォード・クロイツェル・ド・ファルコン……」
「なんて??」
「将軍の家紋はハヤブサの羽だ!なんで今まで気が付かなかったんだ?!ファルコは…帝国のヒポグリフ隊の騎獣かも知れない…」
「え…?」
もちろん、ファルコを拾ってからヒポグリフに関する施設には全て問い合わせを出している。
あれから2ヶ月。そろそろ返信が来る頃だ。
「あー木の枝に引っ掛けただけだから、心配すんな?!」
心配するヴィオラに、アルラウネの話を打ち明ける勇気がなく、いまだにひた隠しにしている後ろめたさから、デイビッドの動きは若干ぎこちない。
「どうせまた例のヒポグリフにでもつつかれたのでしょ?それより、今日の昼食!私のリクエスト、作ってくれたかしら?!」
「はいはい…」
夏の食べ過ぎを取り戻すため、シェルリアーナはダイエットを決意した。
今日はそれに巻き込まれ、全員でヘルシー料理を食べることに…
野菜スープにラタトゥイユ、サラダが3種類、メインは脂を落とした鶏肉のハム、デザートにはデトックスのハーブ水。
「ほぼ野菜ですね。」
「このくらいしないと、贅肉は落ちませんわ!」
「足りなかったらミートパイができてるぞ?!」
「「わーい!!」」
「余計な事すんじゃないわよ!!」
「残り物使い切りたくて…」
「主婦か!?」
大皿のミートパイにかぶりついて、幸せそうにしている2人を見ながら、今日こそは如何なる誘惑にも負けまいとシェルリアーナは頑張った。
午後の授業が始まる前に、物足りな気な顔をしたシェルリアーナと満足顔のヴィオラが行ってしまうと、エリックは自分の棚から大きな平たい鍋を引っ張り出した。
「錬金釜か、久々見たな。」
「そう!良く使い込まれてピカピカでしょう?これだけは手に馴染んだ物でないとね!」
「それで作るのか?」
「精霊薬は特別ですから!被検体もいることだし今日は調子が良いので早速作っていきますよ!?」
「今、被検体って言った…?」
特定の魔法陣や錬成陣を組み込んだ錬金釜。
魔法薬の調合で、親和性の低い物や、調和し難い物質を馴染ませ融合させる時に使用される。
その中に、手に入れた材料の他、浄化水、精霊の好む香草類と、いくつかの薬草を加え、世界樹の実の極々ほんの一滴にも満たない量を、針の先で加えていく。
「…そんなんで足りんのか?」
「多すぎなくらいですが?」
「針刺したところから痛んだりしない?」
「リンゴやオレンジじゃないんですってば!!」
いまいち理解してないデイビッドにイラっとしたが、感情ひとつが薬にも影響を及ぼしてしまうので、ここはぐっと堪え、錬成陣を発動させる。
魔法言語の中でも、精霊語は特に難しい。
聞き慣れない呪文を唱えるエリックを見て、デイビッドは少しだけわくわくした。
やがて全ての材料が溶け合い、瓶の中へ落ちてゆく。
一滴一滴、丁寧に確認し、瓶が満たされると、エリックは椅子にドサッと座り込んだ。
「ふーー…終わりましたぁ!!見て下さい!この濁りの無い透明な輝き!淡く光っているのは大成功の証ですよ?!」
「ほー?で、どうすんだ?」
「もちろんデイビッド様に使ってもらいます。」
「やっぱり…」
「大丈夫!大丈夫!これだけ純度の高い精霊薬、滅多に出回ってませんよ?!ほらほら上向いて!?」
エリックは、スポイトで吸い上げた一滴を、デイビッドの左目に垂らそうと構えたが、逃げ腰のデイビッドは余り乗り気ではない。
「差したら目玉が飛び出るとか無いよな…?!」
「無いですよ!!何をそんなに怖がってんですか!?」
「処方の無い薬品は怖いって言うし…」
「自分はあんなに実験繰り返しといて、よく言いますね?」
「目は流石にねぇよ!!」
「ほらじっとして…うーん…細くて入れにくいなぁ…」
ポタッと一滴、左目の中へ雫が落ち、途端デイビッドが跳ね起きた。
「イッ!タッ!目が……目が滲みる!!めちゃくちゃ痛え!!痛過ぎて目が開かねぇ!!」
「ええ?そんなはずは…」
2人でバタバタやっていると、そこへシェルリアーナがやって来た。
「ねぇ、さっきのスープまだ残ってたでしょ?お腹空いて集中できなくて…って何してますの?」
顔を押さえるデイビッドと、無理やり目を開かせようとしているエリックを見て、シェルリアーナは、この2人はまた碌でもないことをしているのかと呆れた顔をした。
「今度はなんですの?!」
「精霊薬の目薬を作ったんですが、目に差したら痛がって…」
「精霊薬の目薬?レシピは?ちょっと見せて?!」
シェルリアーナがエリックの使った文献をパラパラめくり、作った薬の成分をひとつひとつ確認していくと、ある事に気がついた。
「貴方…これ、回復薬よ?損傷のない部位へは使用しないようにって、冒頭のここに書いてあるわ!よく読んだ?」
「あれ…?」
「目薬の作り方は次のページね。ちょっと待って、まだ何か書いてある…万が一、欠損のない目に入った場合は、水で直ぐに良く洗い流すこと…」
「いっけなぁい!」
「「アホか!!」」
珍しくシェルリアーナとデイビッドの息が合ったが、今はそれどころではない。
慌てて水で洗い流すが、傷みは治まらず、直ぐには目が開かない。
その代わり、薬の効果なのか頭の傷は塞がっていた。
その間、今度はエリックがシェルリアーナに説教される番となった。
「貴方、従者でしょ?主人の心身の健康を守るはずが、ぶち壊してどうすんのよ!!そもそも普段から甘えすぎなのよ!!挙句の果てにこの始末!ヒモより質が悪いわ!少しは反省しなさい!!」
片目を濡らした布で冷やしながらデイビッドがソファに戻ると、反省すると見せかけて、やや嬉しそうな顔をしているエリックに気が付きかけ、見なかった事にした。
「目、真っ赤になってるわ。大丈夫?見えてる?」
「まだ視界がぼんやりしてるな…あー酷え目に遭った…」
温め直したスープを食べながら、シェルリアーナは目の前の不憫な男の顔をじっと見た。
(精霊薬なんか使って、一体何を見ようとしたのかしら…?気になるわね…)
予鈴が鳴ると、シェルリアーナも次の授業へ戻り、ようやく視界の戻ったデイビッドは、家畜小屋の世話をするため外に出た。
エリックも(少しは反省したのか)珍しく手伝いに出て来る。
「クルルルルル…」
ファルコはデイビッドが来ると、すぐに擦り寄って来て邪魔をする。
「好かれてんのか、餌くれるとだけ思ってんのか…」
「いい方に捉えましょうよ!」
「ほら、じっとしてろよ。足元掃いちまうからよ。」
「本当に良く懐きましたねぇ。」
「嫌味か!?」
ファルコは、掃除するデイビッドを追いかけ回し、隙あらば構ってもらおうとする。
「ところで、なんで名前が“ファルコ”なんですか?」
「言わなかったっけか?クチバシに削られかけのコードがあって、残ってた文字がファルコだったんだ。」
「意味はハヤブサでしょう?鷲の頭に隼とは、これ如何に…」
「古い帝国文字だったから、何かの暗号なのかもな。すっかり名前だと思い込んでたから、今まであんまり深く考えた事がなかった。」
「ハヤブサと言えば、帝国のヒポグリフ隊の記事読みました?式典で見せた高度なパフォーマンスがもう胸熱で!!」
「あー毎年やるよな、ヒポグリフの……」
「将軍の別名が戦場のハヤブサ!剣技がカッコイイのなんの!」
「ラドフォード・クロイツェル・ド・ファルコン……」
「なんて??」
「将軍の家紋はハヤブサの羽だ!なんで今まで気が付かなかったんだ?!ファルコは…帝国のヒポグリフ隊の騎獣かも知れない…」
「え…?」
もちろん、ファルコを拾ってからヒポグリフに関する施設には全て問い合わせを出している。
あれから2ヶ月。そろそろ返信が来る頃だ。
あなたにおすすめの小説
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。
とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。