112 / 411
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
プレゼント
しおりを挟む
(よく考えたら、カウチで寝てんの基本コイツなんだよな……)
せっかく買った大型カウチソファは、始めの数回横になっただけで、その後はほとんどエリックの寝床として機能している。
座面の広いソファでも問題無く眠れる上に、足が伸ばせればどこでも休めるデイビッドは、それに気がつくのがだいぶ遅かったようだ。
(……………今更か…………)
そしてめんどくさいので、いつも何か言う前に諦めて、気にしないようにしてしまう。
ダンプリングを蒸してかじってみると、何か一味足りない気もするが、だいたい似た物ができていた。
(何が足りない?スパイス?食材?なんだろう…)
納得はいかないものの、昨夜に開けた花茶とも相性良く、まぁ上出来の範疇だ。
もう一度、餡から作り直し少し種類を増やして、昼用に仕込むと、今日は朝から温室の特別室に向かった。
「ねぇ、聞いてよデイビッド君。僕ね自分は食べても太らない体質だと思ってたんだけど、単に食事量が少なかっただけみたいだったんだよね!」
「はぁ…」
「君がここに通うようになって、1日1食は必ず食べるようになったら体重も増えてて驚いちゃった!」
「どうでもいい…」
ベルダは蒸し立ての饅頭を美味そうに食べながら、アリーの相手をしている。
「大変じゃない?人の分まで作るの。」
「毎日何かしら作らなきゃなんで、手間は同じだな…」
「エライなぁ。僕は料理なんてした事無いよ。」
雑談をしながら、ヒュリスの記録を取っていると、アリーが皿の上の饅頭に頬ずりし出した。
温かくてふわふわの饅頭に抱き着いて幸せそうだ。
「ディー!」
「それは俺と饅頭が似てるってことか?」
今朝の記録を終え、次の実験の用意をしてから温室を出ると、朝の授業時間の予鈴が鳴る。
今日から領地経営科はテスト前でヴィオラも来ない。
畑や家畜小屋の世話をして、借りてきた本を読んでいると、もう自分の持ちコマの時間になってしまう。
今日は商業科のテスト前の最終授業。
1学期に渡された課題一覧も年内には終わりそうだ。
「そろそろもらったネタが尽きそうなんで、新しいの集めたいんだが、三学期で切り良く終わる様に質問は20で頼む!時間が余ればちょいちょい足していくが、来年度どうなるか全く予測できねぇからな。それじゃ前回の続き、飲食品の管理責任者の資格の取り方と制度についてーー」
板書を書いたり消したりしていると、いつも通り質問が飛んでくる。
「先生!昨日どこに行ったんですか?」
「下町のマカロニマーケットだよ…」
「いつもよりお洒落な服着てましたよね?!」
「あれはお洒落か?!お洒落に入るのか?!」
「先生わかってなーい!」
「ストリートスタイルですよ!」
「知らん!!」
「デートですか?」
「ただの買い物だよ!!」
しかし、それがただの買い物で終わらなかった事は、とっくに周囲にバレていた。
授業が終わり、放課後の廊下を歩いているといきなり袖を乱暴に引かれ、振り向くとシェルリアーナが息を切らせて立っていた。
「あ…あんたバカじゃないの?!」
「今度はなんだよ…?」
「ヴィオラになんて物贈ったのよ!!」
「ああ、昨日魔石を買って…まさか着けて来たのか?!」
「堂々と着けて見せびらかしてたわよ!すぐしまうように言ったけど…アレは分かってない顔だったわ…」
「ハハハハ!ヴィオラらしいな!」
ヴィオラは昨日買った魔石のペンダントを、授業にも着けてきてしまったらしい。
違反ではないが、見方によると見せびらかして自慢している事になってしまう。
特に貴族の目がキツかったそうだ…
「笑い事じゃないわよ!バイカラーのフュージョンがあそこまでキレイにグラデーションになってる魔石なんて、そうそう無いわ!!」
「なんかの呪文みてぇ…」
「ヴィオラも貴族とは言え、学生に贈るもんじゃないわよ!?今日だけで何人に目をつけられたか分かったもんじゃないわ!」
「怖…ちょっと調子に乗りすぎたか…」
「ちょっとなもんですか!!男は避けられても女の敵を作ることになるわ!?気をつけなさいよね!!」
シェルリアーナと別れて研究室へ戻ろうとすると、今度は事務員に呼び止められる。
「デイビッド先生、馬車がお待ちです。」
「馬車??何の??」
嫌な予感がする中、馬車止めに向かうと、別の方からヴィオラがやって来るのが見えた。
「嫌な予感的中か…」
見覚えのある馬車から降りてきたのは、アプリコット・フィズ夫人。
ニッコリと微笑みを称えたまま、デイビッドの方を向いて短く一言放つ。
「乗りなさい。」
「……はい……」
ヴィオラは急な来客に緊張していたが、デイビッドを見てパッと明るい表情を見せた。
「初めましてヴィオラさん。私はアプリコット。デイビッドの義理の叔母ですわ。」
「初めまして!ヴィオラ・ローベルと申します!」
「こんなに可愛い婚約者をいつまでも隠しておくなんて、どういうつもりかしら、ねぇ?デイビッド?!」
「正にこうなるのが嫌だったので!!」
馬車が向かった先はウイニー・メイの郊外のアトリエ。
中は一面ドレスの海で、その奥に白いドレスが一着飾ってある。
「さぁ、見てちょうだい!最高のデビュタントスタイルに仕上げたつもりよ?!」
「わぁぁ!!夢みたいに素敵なドレスですね!?」
「そうよ!これは、女の子の夢と希望と未来への期待を乗せて翻る最強の戦闘服!!デビュタントだからこそ、一切の手を抜いてはいけないの!」
「王族と被らねぇか?揉め事はごめんなんだけど…」
「姫殿下の注文はもう納品したわよ。ちなみに既に製作の許可は得ているわ。当日は2人でデビュタントロードを歩く事になるのよ。」
「子爵は喜びそうだな…」
「次はこちらよ!」
別のトルソーには、滑らかな夜の海を思わせる細身のドレスが掛かっていた。
「ホルターネックのオフショルダーなら露出が少なくかつ、大人になる少女の魅力を最大限に引き出せると思ったの!マーメイドラインは絶対に外せないわ!」
「すごく大人っぽくて、足元のフリルがステキ!」
次に出されたのは、黒いレースをふんだんに使ったドレス。
薔薇の花を散らしたような赤が目立っている。
「こっちもどうかしら?ちょっと好戦的に赤を差してみたの!デコルテは出し過ぎないペアトップ。でも脚元はアンクル丈で。踊りやすさならこれが一番ね!」
「こんなドレスで踊れたら夢のようです…」
フィズ夫人はまだまだ止まらない。
隣にあったのは黒と紫を重ねたベロアドレス。
「紫色がお好きと聞いたから、アメジストをイメージしたドレスも用意したわ!フリルを全体に使って重厚感もたっぷりよ。」
「シックなのにゴージャス!!」
「次は……」
この辺りでデイビッドはそろそろ疲れて来て、何かの詠唱の様な説明をする義叔母と、うっとりしているヴィオラは少し離れて見ていた。
(いや…黒多いって!!アトリエのここだけ真夜中みたいになってて怖ぇわ!どんだけ黒着せたいんだよ!!注文は淡い色っつったろうがよ!何がご注文の品だよ!ひとつもできてねぇよ!?)
思っても口に出さない方が身の為、という悲しい教訓を母から得ているため、ただ黙って後ろにいる事しかできない拷問のような時間が過ぎていく。
「ふぅ…ごめんなさいね。一気に喋りすぎてしまったわ!ひと休みしましょう。」
アトリエの隅でお茶にすると、ヴィオラはデイビッドの隣にぴったりくっついた。
せっかく買った大型カウチソファは、始めの数回横になっただけで、その後はほとんどエリックの寝床として機能している。
座面の広いソファでも問題無く眠れる上に、足が伸ばせればどこでも休めるデイビッドは、それに気がつくのがだいぶ遅かったようだ。
(……………今更か…………)
そしてめんどくさいので、いつも何か言う前に諦めて、気にしないようにしてしまう。
ダンプリングを蒸してかじってみると、何か一味足りない気もするが、だいたい似た物ができていた。
(何が足りない?スパイス?食材?なんだろう…)
納得はいかないものの、昨夜に開けた花茶とも相性良く、まぁ上出来の範疇だ。
もう一度、餡から作り直し少し種類を増やして、昼用に仕込むと、今日は朝から温室の特別室に向かった。
「ねぇ、聞いてよデイビッド君。僕ね自分は食べても太らない体質だと思ってたんだけど、単に食事量が少なかっただけみたいだったんだよね!」
「はぁ…」
「君がここに通うようになって、1日1食は必ず食べるようになったら体重も増えてて驚いちゃった!」
「どうでもいい…」
ベルダは蒸し立ての饅頭を美味そうに食べながら、アリーの相手をしている。
「大変じゃない?人の分まで作るの。」
「毎日何かしら作らなきゃなんで、手間は同じだな…」
「エライなぁ。僕は料理なんてした事無いよ。」
雑談をしながら、ヒュリスの記録を取っていると、アリーが皿の上の饅頭に頬ずりし出した。
温かくてふわふわの饅頭に抱き着いて幸せそうだ。
「ディー!」
「それは俺と饅頭が似てるってことか?」
今朝の記録を終え、次の実験の用意をしてから温室を出ると、朝の授業時間の予鈴が鳴る。
今日から領地経営科はテスト前でヴィオラも来ない。
畑や家畜小屋の世話をして、借りてきた本を読んでいると、もう自分の持ちコマの時間になってしまう。
今日は商業科のテスト前の最終授業。
1学期に渡された課題一覧も年内には終わりそうだ。
「そろそろもらったネタが尽きそうなんで、新しいの集めたいんだが、三学期で切り良く終わる様に質問は20で頼む!時間が余ればちょいちょい足していくが、来年度どうなるか全く予測できねぇからな。それじゃ前回の続き、飲食品の管理責任者の資格の取り方と制度についてーー」
板書を書いたり消したりしていると、いつも通り質問が飛んでくる。
「先生!昨日どこに行ったんですか?」
「下町のマカロニマーケットだよ…」
「いつもよりお洒落な服着てましたよね?!」
「あれはお洒落か?!お洒落に入るのか?!」
「先生わかってなーい!」
「ストリートスタイルですよ!」
「知らん!!」
「デートですか?」
「ただの買い物だよ!!」
しかし、それがただの買い物で終わらなかった事は、とっくに周囲にバレていた。
授業が終わり、放課後の廊下を歩いているといきなり袖を乱暴に引かれ、振り向くとシェルリアーナが息を切らせて立っていた。
「あ…あんたバカじゃないの?!」
「今度はなんだよ…?」
「ヴィオラになんて物贈ったのよ!!」
「ああ、昨日魔石を買って…まさか着けて来たのか?!」
「堂々と着けて見せびらかしてたわよ!すぐしまうように言ったけど…アレは分かってない顔だったわ…」
「ハハハハ!ヴィオラらしいな!」
ヴィオラは昨日買った魔石のペンダントを、授業にも着けてきてしまったらしい。
違反ではないが、見方によると見せびらかして自慢している事になってしまう。
特に貴族の目がキツかったそうだ…
「笑い事じゃないわよ!バイカラーのフュージョンがあそこまでキレイにグラデーションになってる魔石なんて、そうそう無いわ!!」
「なんかの呪文みてぇ…」
「ヴィオラも貴族とは言え、学生に贈るもんじゃないわよ!?今日だけで何人に目をつけられたか分かったもんじゃないわ!」
「怖…ちょっと調子に乗りすぎたか…」
「ちょっとなもんですか!!男は避けられても女の敵を作ることになるわ!?気をつけなさいよね!!」
シェルリアーナと別れて研究室へ戻ろうとすると、今度は事務員に呼び止められる。
「デイビッド先生、馬車がお待ちです。」
「馬車??何の??」
嫌な予感がする中、馬車止めに向かうと、別の方からヴィオラがやって来るのが見えた。
「嫌な予感的中か…」
見覚えのある馬車から降りてきたのは、アプリコット・フィズ夫人。
ニッコリと微笑みを称えたまま、デイビッドの方を向いて短く一言放つ。
「乗りなさい。」
「……はい……」
ヴィオラは急な来客に緊張していたが、デイビッドを見てパッと明るい表情を見せた。
「初めましてヴィオラさん。私はアプリコット。デイビッドの義理の叔母ですわ。」
「初めまして!ヴィオラ・ローベルと申します!」
「こんなに可愛い婚約者をいつまでも隠しておくなんて、どういうつもりかしら、ねぇ?デイビッド?!」
「正にこうなるのが嫌だったので!!」
馬車が向かった先はウイニー・メイの郊外のアトリエ。
中は一面ドレスの海で、その奥に白いドレスが一着飾ってある。
「さぁ、見てちょうだい!最高のデビュタントスタイルに仕上げたつもりよ?!」
「わぁぁ!!夢みたいに素敵なドレスですね!?」
「そうよ!これは、女の子の夢と希望と未来への期待を乗せて翻る最強の戦闘服!!デビュタントだからこそ、一切の手を抜いてはいけないの!」
「王族と被らねぇか?揉め事はごめんなんだけど…」
「姫殿下の注文はもう納品したわよ。ちなみに既に製作の許可は得ているわ。当日は2人でデビュタントロードを歩く事になるのよ。」
「子爵は喜びそうだな…」
「次はこちらよ!」
別のトルソーには、滑らかな夜の海を思わせる細身のドレスが掛かっていた。
「ホルターネックのオフショルダーなら露出が少なくかつ、大人になる少女の魅力を最大限に引き出せると思ったの!マーメイドラインは絶対に外せないわ!」
「すごく大人っぽくて、足元のフリルがステキ!」
次に出されたのは、黒いレースをふんだんに使ったドレス。
薔薇の花を散らしたような赤が目立っている。
「こっちもどうかしら?ちょっと好戦的に赤を差してみたの!デコルテは出し過ぎないペアトップ。でも脚元はアンクル丈で。踊りやすさならこれが一番ね!」
「こんなドレスで踊れたら夢のようです…」
フィズ夫人はまだまだ止まらない。
隣にあったのは黒と紫を重ねたベロアドレス。
「紫色がお好きと聞いたから、アメジストをイメージしたドレスも用意したわ!フリルを全体に使って重厚感もたっぷりよ。」
「シックなのにゴージャス!!」
「次は……」
この辺りでデイビッドはそろそろ疲れて来て、何かの詠唱の様な説明をする義叔母と、うっとりしているヴィオラは少し離れて見ていた。
(いや…黒多いって!!アトリエのここだけ真夜中みたいになってて怖ぇわ!どんだけ黒着せたいんだよ!!注文は淡い色っつったろうがよ!何がご注文の品だよ!ひとつもできてねぇよ!?)
思っても口に出さない方が身の為、という悲しい教訓を母から得ているため、ただ黙って後ろにいる事しかできない拷問のような時間が過ぎていく。
「ふぅ…ごめんなさいね。一気に喋りすぎてしまったわ!ひと休みしましょう。」
アトリエの隅でお茶にすると、ヴィオラはデイビッドの隣にぴったりくっついた。
54
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる