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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
プレゼント
(よく考えたら、カウチで寝てんの基本コイツなんだよな……)
せっかく買った大型カウチソファは、始めの数回横になっただけで、その後はほとんどエリックの寝床として機能している。
座面の広いソファでも問題無く眠れる上に、足が伸ばせればどこでも休めるデイビッドは、それに気がつくのがだいぶ遅かったようだ。
(……………今更か…………)
そしてめんどくさいので、いつも何か言う前に諦めて、気にしないようにしてしまう。
ダンプリングを蒸してかじってみると、何か一味足りない気もするが、だいたい似た物ができていた。
(何が足りない?スパイス?食材?なんだろう…)
納得はいかないものの、昨夜に開けた花茶とも相性良く、まぁ上出来の範疇だ。
もう一度、餡から作り直し少し種類を増やして、昼用に仕込むと、今日は朝から温室の特別室に向かった。
「ねぇ、聞いてよデイビッド君。僕ね自分は食べても太らない体質だと思ってたんだけど、単に食事量が少なかっただけみたいだったんだよね!」
「はぁ…」
「君がここに通うようになって、1日1食は必ず食べるようになったら体重も増えてて驚いちゃった!」
「どうでもいい…」
ベルダは蒸し立ての饅頭を美味そうに食べながら、アリーの相手をしている。
「大変じゃない?人の分まで作るの。」
「毎日何かしら作らなきゃなんで、手間は同じだな…」
「エライなぁ。僕は料理なんてした事無いよ。」
雑談をしながら、ヒュリスの記録を取っていると、アリーが皿の上の饅頭に頬ずりし出した。
温かくてふわふわの饅頭に抱き着いて幸せそうだ。
「ディー!」
「それは俺と饅頭が似てるってことか?」
今朝の記録を終え、次の実験の用意をしてから温室を出ると、朝の授業時間の予鈴が鳴る。
今日から領地経営科はテスト前でヴィオラも来ない。
畑や家畜小屋の世話をして、借りてきた本を読んでいると、もう自分の持ちコマの時間になってしまう。
今日は商業科のテスト前の最終授業。
1学期に渡された課題一覧も年内には終わりそうだ。
「そろそろもらったネタが尽きそうなんで、新しいの集めたいんだが、三学期で切り良く終わる様に質問は20で頼む!時間が余ればちょいちょい足していくが、来年度どうなるか全く予測できねぇからな。それじゃ前回の続き、飲食品の管理責任者の資格の取り方と制度についてーー」
板書を書いたり消したりしていると、いつも通り質問が飛んでくる。
「先生!昨日どこに行ったんですか?」
「下町のマカロニマーケットだよ…」
「いつもよりお洒落な服着てましたよね?!」
「あれはお洒落か?!お洒落に入るのか?!」
「先生わかってなーい!」
「ストリートスタイルですよ!」
「知らん!!」
「デートですか?」
「ただの買い物だよ!!」
しかし、それがただの買い物で終わらなかった事は、とっくに周囲にバレていた。
授業が終わり、放課後の廊下を歩いているといきなり袖を乱暴に引かれ、振り向くとシェルリアーナが息を切らせて立っていた。
「あ…あんたバカじゃないの?!」
「今度はなんだよ…?」
「ヴィオラになんて物贈ったのよ!!」
「ああ、昨日魔石を買って…まさか着けて来たのか?!」
「堂々と着けて見せびらかしてたわよ!すぐしまうように言ったけど…アレは分かってない顔だったわ…」
「ハハハハ!ヴィオラらしいな!」
ヴィオラは昨日買った魔石のペンダントを、授業にも着けてきてしまったらしい。
違反ではないが、見方によると見せびらかして自慢している事になってしまう。
特に貴族の目がキツかったそうだ…
「笑い事じゃないわよ!バイカラーのフュージョンがあそこまでキレイにグラデーションになってる魔石なんて、そうそう無いわ!!」
「なんかの呪文みてぇ…」
「ヴィオラも貴族とは言え、学生に贈るもんじゃないわよ!?今日だけで何人に目をつけられたか分かったもんじゃないわ!」
「怖…ちょっと調子に乗りすぎたか…」
「ちょっとなもんですか!!男は避けられても女の敵を作ることになるわ!?気をつけなさいよね!!」
シェルリアーナと別れて研究室へ戻ろうとすると、今度は事務員に呼び止められる。
「デイビッド先生、馬車がお待ちです。」
「馬車??何の??」
嫌な予感がする中、馬車止めに向かうと、別の方からヴィオラがやって来るのが見えた。
「嫌な予感的中か…」
見覚えのある馬車から降りてきたのは、アプリコット・フィズ夫人。
ニッコリと微笑みを称えたまま、デイビッドの方を向いて短く一言放つ。
「乗りなさい。」
「……はい……」
ヴィオラは急な来客に緊張していたが、デイビッドを見てパッと明るい表情を見せた。
「初めましてヴィオラさん。私はアプリコット。デイビッドの義理の叔母ですわ。」
「初めまして!ヴィオラ・ローベルと申します!」
「こんなに可愛い婚約者をいつまでも隠しておくなんて、どういうつもりかしら、ねぇ?デイビッド?!」
「正にこうなるのが嫌だったので!!」
馬車が向かった先はウイニー・メイの郊外のアトリエ。
中は一面ドレスの海で、その奥に白いドレスが一着飾ってある。
「さぁ、見てちょうだい!最高のデビュタントスタイルに仕上げたつもりよ?!」
「わぁぁ!!夢みたいに素敵なドレスですね!?」
「そうよ!これは、女の子の夢と希望と未来への期待を乗せて翻る最強の戦闘服!!デビュタントだからこそ、一切の手を抜いてはいけないの!」
「王族と被らねぇか?揉め事はごめんなんだけど…」
「姫殿下の注文はもう納品したわよ。ちなみに既に製作の許可は得ているわ。当日は2人でデビュタントロードを歩く事になるのよ。」
「子爵は喜びそうだな…」
「次はこちらよ!」
別のトルソーには、滑らかな夜の海を思わせる細身のドレスが掛かっていた。
「ホルターネックのオフショルダーなら露出が少なくかつ、大人になる少女の魅力を最大限に引き出せると思ったの!マーメイドラインは絶対に外せないわ!」
「すごく大人っぽくて、足元のフリルがステキ!」
次に出されたのは、黒いレースをふんだんに使ったドレス。
薔薇の花を散らしたような赤が目立っている。
「こっちもどうかしら?ちょっと好戦的に赤を差してみたの!デコルテは出し過ぎないペアトップ。でも脚元はアンクル丈で。踊りやすさならこれが一番ね!」
「こんなドレスで踊れたら夢のようです…」
フィズ夫人はまだまだ止まらない。
隣にあったのは黒と紫を重ねたベロアドレス。
「紫色がお好きと聞いたから、アメジストをイメージしたドレスも用意したわ!フリルを全体に使って重厚感もたっぷりよ。」
「シックなのにゴージャス!!」
「次は……」
この辺りでデイビッドはそろそろ疲れて来て、何かの詠唱の様な説明をする義叔母と、うっとりしているヴィオラは少し離れて見ていた。
(いや…黒多いって!!アトリエのここだけ真夜中みたいになってて怖ぇわ!どんだけ黒着せたいんだよ!!注文は淡い色っつったろうがよ!何がご注文の品だよ!ひとつもできてねぇよ!?)
思っても口に出さない方が身の為、という悲しい教訓を母から得ているため、ただ黙って後ろにいる事しかできない拷問のような時間が過ぎていく。
「ふぅ…ごめんなさいね。一気に喋りすぎてしまったわ!ひと休みしましょう。」
アトリエの隅でお茶にすると、ヴィオラはデイビッドの隣にぴったりくっついた。
せっかく買った大型カウチソファは、始めの数回横になっただけで、その後はほとんどエリックの寝床として機能している。
座面の広いソファでも問題無く眠れる上に、足が伸ばせればどこでも休めるデイビッドは、それに気がつくのがだいぶ遅かったようだ。
(……………今更か…………)
そしてめんどくさいので、いつも何か言う前に諦めて、気にしないようにしてしまう。
ダンプリングを蒸してかじってみると、何か一味足りない気もするが、だいたい似た物ができていた。
(何が足りない?スパイス?食材?なんだろう…)
納得はいかないものの、昨夜に開けた花茶とも相性良く、まぁ上出来の範疇だ。
もう一度、餡から作り直し少し種類を増やして、昼用に仕込むと、今日は朝から温室の特別室に向かった。
「ねぇ、聞いてよデイビッド君。僕ね自分は食べても太らない体質だと思ってたんだけど、単に食事量が少なかっただけみたいだったんだよね!」
「はぁ…」
「君がここに通うようになって、1日1食は必ず食べるようになったら体重も増えてて驚いちゃった!」
「どうでもいい…」
ベルダは蒸し立ての饅頭を美味そうに食べながら、アリーの相手をしている。
「大変じゃない?人の分まで作るの。」
「毎日何かしら作らなきゃなんで、手間は同じだな…」
「エライなぁ。僕は料理なんてした事無いよ。」
雑談をしながら、ヒュリスの記録を取っていると、アリーが皿の上の饅頭に頬ずりし出した。
温かくてふわふわの饅頭に抱き着いて幸せそうだ。
「ディー!」
「それは俺と饅頭が似てるってことか?」
今朝の記録を終え、次の実験の用意をしてから温室を出ると、朝の授業時間の予鈴が鳴る。
今日から領地経営科はテスト前でヴィオラも来ない。
畑や家畜小屋の世話をして、借りてきた本を読んでいると、もう自分の持ちコマの時間になってしまう。
今日は商業科のテスト前の最終授業。
1学期に渡された課題一覧も年内には終わりそうだ。
「そろそろもらったネタが尽きそうなんで、新しいの集めたいんだが、三学期で切り良く終わる様に質問は20で頼む!時間が余ればちょいちょい足していくが、来年度どうなるか全く予測できねぇからな。それじゃ前回の続き、飲食品の管理責任者の資格の取り方と制度についてーー」
板書を書いたり消したりしていると、いつも通り質問が飛んでくる。
「先生!昨日どこに行ったんですか?」
「下町のマカロニマーケットだよ…」
「いつもよりお洒落な服着てましたよね?!」
「あれはお洒落か?!お洒落に入るのか?!」
「先生わかってなーい!」
「ストリートスタイルですよ!」
「知らん!!」
「デートですか?」
「ただの買い物だよ!!」
しかし、それがただの買い物で終わらなかった事は、とっくに周囲にバレていた。
授業が終わり、放課後の廊下を歩いているといきなり袖を乱暴に引かれ、振り向くとシェルリアーナが息を切らせて立っていた。
「あ…あんたバカじゃないの?!」
「今度はなんだよ…?」
「ヴィオラになんて物贈ったのよ!!」
「ああ、昨日魔石を買って…まさか着けて来たのか?!」
「堂々と着けて見せびらかしてたわよ!すぐしまうように言ったけど…アレは分かってない顔だったわ…」
「ハハハハ!ヴィオラらしいな!」
ヴィオラは昨日買った魔石のペンダントを、授業にも着けてきてしまったらしい。
違反ではないが、見方によると見せびらかして自慢している事になってしまう。
特に貴族の目がキツかったそうだ…
「笑い事じゃないわよ!バイカラーのフュージョンがあそこまでキレイにグラデーションになってる魔石なんて、そうそう無いわ!!」
「なんかの呪文みてぇ…」
「ヴィオラも貴族とは言え、学生に贈るもんじゃないわよ!?今日だけで何人に目をつけられたか分かったもんじゃないわ!」
「怖…ちょっと調子に乗りすぎたか…」
「ちょっとなもんですか!!男は避けられても女の敵を作ることになるわ!?気をつけなさいよね!!」
シェルリアーナと別れて研究室へ戻ろうとすると、今度は事務員に呼び止められる。
「デイビッド先生、馬車がお待ちです。」
「馬車??何の??」
嫌な予感がする中、馬車止めに向かうと、別の方からヴィオラがやって来るのが見えた。
「嫌な予感的中か…」
見覚えのある馬車から降りてきたのは、アプリコット・フィズ夫人。
ニッコリと微笑みを称えたまま、デイビッドの方を向いて短く一言放つ。
「乗りなさい。」
「……はい……」
ヴィオラは急な来客に緊張していたが、デイビッドを見てパッと明るい表情を見せた。
「初めましてヴィオラさん。私はアプリコット。デイビッドの義理の叔母ですわ。」
「初めまして!ヴィオラ・ローベルと申します!」
「こんなに可愛い婚約者をいつまでも隠しておくなんて、どういうつもりかしら、ねぇ?デイビッド?!」
「正にこうなるのが嫌だったので!!」
馬車が向かった先はウイニー・メイの郊外のアトリエ。
中は一面ドレスの海で、その奥に白いドレスが一着飾ってある。
「さぁ、見てちょうだい!最高のデビュタントスタイルに仕上げたつもりよ?!」
「わぁぁ!!夢みたいに素敵なドレスですね!?」
「そうよ!これは、女の子の夢と希望と未来への期待を乗せて翻る最強の戦闘服!!デビュタントだからこそ、一切の手を抜いてはいけないの!」
「王族と被らねぇか?揉め事はごめんなんだけど…」
「姫殿下の注文はもう納品したわよ。ちなみに既に製作の許可は得ているわ。当日は2人でデビュタントロードを歩く事になるのよ。」
「子爵は喜びそうだな…」
「次はこちらよ!」
別のトルソーには、滑らかな夜の海を思わせる細身のドレスが掛かっていた。
「ホルターネックのオフショルダーなら露出が少なくかつ、大人になる少女の魅力を最大限に引き出せると思ったの!マーメイドラインは絶対に外せないわ!」
「すごく大人っぽくて、足元のフリルがステキ!」
次に出されたのは、黒いレースをふんだんに使ったドレス。
薔薇の花を散らしたような赤が目立っている。
「こっちもどうかしら?ちょっと好戦的に赤を差してみたの!デコルテは出し過ぎないペアトップ。でも脚元はアンクル丈で。踊りやすさならこれが一番ね!」
「こんなドレスで踊れたら夢のようです…」
フィズ夫人はまだまだ止まらない。
隣にあったのは黒と紫を重ねたベロアドレス。
「紫色がお好きと聞いたから、アメジストをイメージしたドレスも用意したわ!フリルを全体に使って重厚感もたっぷりよ。」
「シックなのにゴージャス!!」
「次は……」
この辺りでデイビッドはそろそろ疲れて来て、何かの詠唱の様な説明をする義叔母と、うっとりしているヴィオラは少し離れて見ていた。
(いや…黒多いって!!アトリエのここだけ真夜中みたいになってて怖ぇわ!どんだけ黒着せたいんだよ!!注文は淡い色っつったろうがよ!何がご注文の品だよ!ひとつもできてねぇよ!?)
思っても口に出さない方が身の為、という悲しい教訓を母から得ているため、ただ黙って後ろにいる事しかできない拷問のような時間が過ぎていく。
「ふぅ…ごめんなさいね。一気に喋りすぎてしまったわ!ひと休みしましょう。」
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カクヨムで公開したものに手を入れたものです。