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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ノエル
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「凍えるかと思った!!」
「凍えなかったんだろ、ならいいじゃないか!?」
「良くねぇに決まってんだろ!耄碌すんな!!」
馬車が止まりようやく荷物と共に降ろされたデイビッドは、悪態を吐きながら速攻部屋に戻って行った。
まだ寒い研究室のストーブに薪を入れ、外に出て家畜小屋の中にも火を入れ餌を足してやりながら、壁に隙間が無いよう土嚢を積んだ。
水道にも凍らないよう薦を巻く。
そのうちいい加減手の感覚が鈍くなって来たので、部屋で着替えようとしていると、エリックが帰って来た。
「わぁ中あったか~い!って何してるんですか?まさかその格好のまま鳥小屋の世話したんですか?!信じらんないもう!早く着替えて下さいよ!!」
無理矢理服を脱がされたので、仕方なくシャワー室へ向かうとエリックまでついてきた。
「寒いからお風呂入れようと思って!」
「あー、例のでっかい風呂釜か…予想以上にデカいな!?」
立てた状態しか確認していなかったデイビッドは、シャワー室の真ん中にドンと置かれた風呂釜に驚いた。
成人男性が大の字で寝っ転がっても余る程底が広く、魔石を嵌め込む穴が2つ付いていて、そこで温度を調整するらしい。
こういった所の温水施設は熱を発する魔石を敷いたタンクに水を入れ、そこから温水を供給する仕組みだが、この風呂釜には直接水を入れて沸かすことができる。
丁度良い湯加減になったら魔石を停止させ、あとはゆっくり風呂を楽しめば良い。
「最近魔石の調子が良いんですよねー。市販のってすぐ枯れちゃうイメージだったけど、これも妖精の祝福のおかげなのかな?」
「そういや少し前に見たぞ、妖精。部屋の中で踊ってた。」
「えー?何いきなりメルヘンなことを…」
「ルーチェって名乗ってた。結構前からいたみたいだな。」
「ええ?!わっぷっ!」
エリックは驚いた拍子に風呂の縁から手を滑らせ、服のまま頭からまだぬるま湯の中へ落っこちた。
「寒いぃ!お湯早く沸いてぇ!!」
濡れた服は脱いだが、湯が沸き切ってないのでシャワーを浴び、体を洗って待つことに。
「もう!デイビッド様が驚かすからですよ!」
「先に妖精の話したのはお前だろ?」
「そう、それ!ルーチェは僕が仮契約した妖精なんですよ!妖精は本来魔力の他に、霊力も無いと見えない存在なんです。なんでデイビッド様に見えるんですか?!」
「以前拾ったアルラウネがいたろ?あれが成長してデカくなった時、果実を口に突っ込まれてな。そしたら見えた。」
「見えたって…そんな簡単に?!え?あのアルラウネ進化したんですか?!いつの間に?聞いてない!しかも果実って!伝説級の代物じゃないですか?!」
「大袈裟だろ?」
湯が沸いて、中で温まりながらエリックはデイビッドの背中を久々に目の当たりにした。
古傷だらけで、あちこち皮膚の色が裂けたように薄くなっている。
「デイビッド様お風呂入りません?温まりますよ!?」
「いい…鍋で煮られてる様な気になるから、あんま好きじゃねぇんだよ…」
デイビッドが髪が短くなり洗う手間が省けた分、いつも以上に早く出ていこうとするので、寒くないのかと聞くと体を拭けば問題ないと返されて、エリックは信じられないと言う顔をした。
風呂にゆっくり浸かって温まったエリックが部屋に戻ると、デイビッドは既に目を閉じていた。
(また端っこで寝てる…)
今日のパーティーは余程疲れたようだ。
エリックは明日の事を考えながら、デイビッドにもう一枚毛布を掛け足して、自分も布団に潜り込んだ。
次の日は良く晴れて風もなく、お祭日和だった。
「ミランダ起きて!!大変よ!?」
「なぁにぃローラ…出かけるのは午後の予定でしょ?」
「学園に商隊が来てる!!」
「ホント?!」
学園近くの下宿屋の窓から見える園庭に、たくさんのテント
とランタンを吊るした大きな木にグロッグマン商会の旗が立てられている。
ノエルにちなんだ小物から、手袋やマフラーなどの冬物に、お洒落な日用品も揃っていて、集まった女の子達はわくわくし通しだ。
「カイン先輩!早く!!ご馳走がいっぱいですよ?!」
「タダで食べさせてもらえるって!」
「わかったからはしゃぐな!意地汚いぞ!?」
別のテントには大きな鍋がいくつも並び、スープや煮込み料理が湯気を立て、あちこちから肉やソーセージを焼く良い匂いが漂っている。
甘いお菓子やケーキも振る舞われ、男子生徒達も目を輝かせていた。
上位貴族の生徒はほとんど家に帰り、ノエルの集まりやミサなど、伝統を重んじてこの日過ごすので、学園に残っている生徒は領地が遠くて帰れない者か、下位貴族と平民くらい。
誰に気兼ねする事無く外に出て、ノエルのマーケットを楽しむことができる。
「ずいぶん大盤振る舞いで来たな?!」
「そりゃ日頃お世話になっておりますからな。デイビッド様が学園の講師をされてからこっち、商会は右肩上がりの留まるところ知らず。このくらいは還元させて頂かないと商会の沽券に関わります!デュハハハ!!」
デイビッドの横で不気味な笑い方をしているこの男。
でっぷり肥えた体つきに、ジャラジャラと宝石をぶら下げ成金丸出しの服装に、品の無いニヤケ顔を隠しもしないこの男こそ、グロッグマン商会会頭ロドム・グロッグマンその人である。
「…その格好も相変わらずか…」
「コレはもう私のスタイルなので、外に出る時はこの姿でないと落ち着きませんでな!デュハハハ!」
王都一の商会を営み、郊外を牛耳るまさに大商人。
どんな注文も報酬次第で引き受けるという、後ろ暗い噂まであるが、その実彼に依頼して手に入らない商品は無いとまで言われている。
会頭はマーケットの滑り出しが順調なのを確認すると、直ぐに商会へ帰って行った。
今日はノエル。
パーティーの少し前、街に出られないヴィオラにも祭の雰囲気を楽しんでもらえるよう、何かできないかエリックに相談を持ちかけたところ、朝起きたら予想の斜め上でこうなっていた。
「なんで会頭に繋げちまったんだよ…」
「こうなるかなって思って!」
「こうなるって分かっててなんで呼んだのか聞いてんだよ!?」
「だって郊外はノエルの習慣が薄くて規模も小さいから盛り上がりに欠けるんですよ。それじゃヴィオラ様も充分楽しめないでしょう?大丈夫、学園に残って寒さを凌ぐだけの生徒達に何かできないか心砕いた結果って建前で来てますから。」
「…本音は?」
「僕だってノエルを思い切り楽しみたいです!!」
「ただのワガママじゃねぇか!!」
今回取り揃えたのは、雪と氷の国キリフの工芸品と、エルム帝国でも選りすぐりの細工物や魔導具の中から、学生向けに選別した品々だと言う。
ヴィオラが来ていないか探していると、料理中のテントから声を掛けられた
「あ!若旦那、丁度良い所に!」
「ここでそれはヤメてくれ!!」
「今、食材の追加を取りに若いのが出てっちまったんですよ。こっちのテント頼みますね!?」
「俺、従業員枠?!」
仕方なくテントに入ると、大きなボールに粉と卵とミルクに砂糖。
そして大鍋に油が煮えている。
「ドーナツか?」
「その通りですよ、流石ですね。じゃ、お願いします。」
他の従業員達も皆忙しく立ち回っていて、どのテントも大賑わいだ。
材料を混ぜて、ひとまとめになったら台の上に広げ、型で抜いてどんどん油の中へ。
キツネ色に揚がったら砂糖とシナモンをまぶして完成。
できた分からバットに並べていると、騎士科の生徒達がわらわらやって来た。
「凍えなかったんだろ、ならいいじゃないか!?」
「良くねぇに決まってんだろ!耄碌すんな!!」
馬車が止まりようやく荷物と共に降ろされたデイビッドは、悪態を吐きながら速攻部屋に戻って行った。
まだ寒い研究室のストーブに薪を入れ、外に出て家畜小屋の中にも火を入れ餌を足してやりながら、壁に隙間が無いよう土嚢を積んだ。
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そのうちいい加減手の感覚が鈍くなって来たので、部屋で着替えようとしていると、エリックが帰って来た。
「わぁ中あったか~い!って何してるんですか?まさかその格好のまま鳥小屋の世話したんですか?!信じらんないもう!早く着替えて下さいよ!!」
無理矢理服を脱がされたので、仕方なくシャワー室へ向かうとエリックまでついてきた。
「寒いからお風呂入れようと思って!」
「あー、例のでっかい風呂釜か…予想以上にデカいな!?」
立てた状態しか確認していなかったデイビッドは、シャワー室の真ん中にドンと置かれた風呂釜に驚いた。
成人男性が大の字で寝っ転がっても余る程底が広く、魔石を嵌め込む穴が2つ付いていて、そこで温度を調整するらしい。
こういった所の温水施設は熱を発する魔石を敷いたタンクに水を入れ、そこから温水を供給する仕組みだが、この風呂釜には直接水を入れて沸かすことができる。
丁度良い湯加減になったら魔石を停止させ、あとはゆっくり風呂を楽しめば良い。
「最近魔石の調子が良いんですよねー。市販のってすぐ枯れちゃうイメージだったけど、これも妖精の祝福のおかげなのかな?」
「そういや少し前に見たぞ、妖精。部屋の中で踊ってた。」
「えー?何いきなりメルヘンなことを…」
「ルーチェって名乗ってた。結構前からいたみたいだな。」
「ええ?!わっぷっ!」
エリックは驚いた拍子に風呂の縁から手を滑らせ、服のまま頭からまだぬるま湯の中へ落っこちた。
「寒いぃ!お湯早く沸いてぇ!!」
濡れた服は脱いだが、湯が沸き切ってないのでシャワーを浴び、体を洗って待つことに。
「もう!デイビッド様が驚かすからですよ!」
「先に妖精の話したのはお前だろ?」
「そう、それ!ルーチェは僕が仮契約した妖精なんですよ!妖精は本来魔力の他に、霊力も無いと見えない存在なんです。なんでデイビッド様に見えるんですか?!」
「以前拾ったアルラウネがいたろ?あれが成長してデカくなった時、果実を口に突っ込まれてな。そしたら見えた。」
「見えたって…そんな簡単に?!え?あのアルラウネ進化したんですか?!いつの間に?聞いてない!しかも果実って!伝説級の代物じゃないですか?!」
「大袈裟だろ?」
湯が沸いて、中で温まりながらエリックはデイビッドの背中を久々に目の当たりにした。
古傷だらけで、あちこち皮膚の色が裂けたように薄くなっている。
「デイビッド様お風呂入りません?温まりますよ!?」
「いい…鍋で煮られてる様な気になるから、あんま好きじゃねぇんだよ…」
デイビッドが髪が短くなり洗う手間が省けた分、いつも以上に早く出ていこうとするので、寒くないのかと聞くと体を拭けば問題ないと返されて、エリックは信じられないと言う顔をした。
風呂にゆっくり浸かって温まったエリックが部屋に戻ると、デイビッドは既に目を閉じていた。
(また端っこで寝てる…)
今日のパーティーは余程疲れたようだ。
エリックは明日の事を考えながら、デイビッドにもう一枚毛布を掛け足して、自分も布団に潜り込んだ。
次の日は良く晴れて風もなく、お祭日和だった。
「ミランダ起きて!!大変よ!?」
「なぁにぃローラ…出かけるのは午後の予定でしょ?」
「学園に商隊が来てる!!」
「ホント?!」
学園近くの下宿屋の窓から見える園庭に、たくさんのテント
とランタンを吊るした大きな木にグロッグマン商会の旗が立てられている。
ノエルにちなんだ小物から、手袋やマフラーなどの冬物に、お洒落な日用品も揃っていて、集まった女の子達はわくわくし通しだ。
「カイン先輩!早く!!ご馳走がいっぱいですよ?!」
「タダで食べさせてもらえるって!」
「わかったからはしゃぐな!意地汚いぞ!?」
別のテントには大きな鍋がいくつも並び、スープや煮込み料理が湯気を立て、あちこちから肉やソーセージを焼く良い匂いが漂っている。
甘いお菓子やケーキも振る舞われ、男子生徒達も目を輝かせていた。
上位貴族の生徒はほとんど家に帰り、ノエルの集まりやミサなど、伝統を重んじてこの日過ごすので、学園に残っている生徒は領地が遠くて帰れない者か、下位貴族と平民くらい。
誰に気兼ねする事無く外に出て、ノエルのマーケットを楽しむことができる。
「ずいぶん大盤振る舞いで来たな?!」
「そりゃ日頃お世話になっておりますからな。デイビッド様が学園の講師をされてからこっち、商会は右肩上がりの留まるところ知らず。このくらいは還元させて頂かないと商会の沽券に関わります!デュハハハ!!」
デイビッドの横で不気味な笑い方をしているこの男。
でっぷり肥えた体つきに、ジャラジャラと宝石をぶら下げ成金丸出しの服装に、品の無いニヤケ顔を隠しもしないこの男こそ、グロッグマン商会会頭ロドム・グロッグマンその人である。
「…その格好も相変わらずか…」
「コレはもう私のスタイルなので、外に出る時はこの姿でないと落ち着きませんでな!デュハハハ!」
王都一の商会を営み、郊外を牛耳るまさに大商人。
どんな注文も報酬次第で引き受けるという、後ろ暗い噂まであるが、その実彼に依頼して手に入らない商品は無いとまで言われている。
会頭はマーケットの滑り出しが順調なのを確認すると、直ぐに商会へ帰って行った。
今日はノエル。
パーティーの少し前、街に出られないヴィオラにも祭の雰囲気を楽しんでもらえるよう、何かできないかエリックに相談を持ちかけたところ、朝起きたら予想の斜め上でこうなっていた。
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「こうなるかなって思って!」
「こうなるって分かっててなんで呼んだのか聞いてんだよ!?」
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「…本音は?」
「僕だってノエルを思い切り楽しみたいです!!」
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ヴィオラが来ていないか探していると、料理中のテントから声を掛けられた
「あ!若旦那、丁度良い所に!」
「ここでそれはヤメてくれ!!」
「今、食材の追加を取りに若いのが出てっちまったんですよ。こっちのテント頼みますね!?」
「俺、従業員枠?!」
仕方なくテントに入ると、大きなボールに粉と卵とミルクに砂糖。
そして大鍋に油が煮えている。
「ドーナツか?」
「その通りですよ、流石ですね。じゃ、お願いします。」
他の従業員達も皆忙しく立ち回っていて、どのテントも大賑わいだ。
材料を混ぜて、ひとまとめになったら台の上に広げ、型で抜いてどんどん油の中へ。
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