138 / 411
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
だから出たくなかった夜会
しおりを挟む
パーティーの会場ではアリスティアやアザーレアに声を掛けようと大勢が隙を見ていた。
二言三言でもいい、挨拶をして印象を少しでも残さねばと躍起になっている貴族達の目に、アザーレアががっちり捕まえて離さない小柄な少女が常に写る。
デビュタントに出ていたため、ローベル家の娘と直ぐに知れ、そこから過去の出来事も容易く思い出されたが、他国の王女であり大使でもあるアザーレアが自ら手を取り気遣う姿に、何らかの寵愛を受けているという認識が貴族の間に広まっていった。
しばらくすると大使としての仕事もあり、やがてアザーレアの所にも使者が来て国王に呼ばれてしまう。
アリスティアもこの後は両親と役目があるので一旦離れないといけない。
「なんだつまらん。もう少し楽しませてくれても良いものを。仕方ない…アリスティア殿、シェルリアーナ殿、後でまた会おう!ヴィオラも…今夜は私の部屋へ来るといい。」
「こちらも、貴重なお話をたくさんありがとうございました。後ほどまたお話しましょう。」
2人と別れると残った3人はようやく肩の力が抜けた。
「なんて言うか…熱い方でしたわね…」
「大丈夫でしたかヴィオラ様?」
「あ、はい!緊張しましたけど、すごくいい匂いがして大人の女性を感じました!」
「おと…な…まぁ、年齢的には…」
「完全に異文化交流でちょっと疲れましたね!」
その内に、国王が年内で大きな功績を上げた者達や、新たな役目を授かる者達を呼び出し、それぞれに報奨を渡し始めた。
なんだか浮かない顔のアーネストもアリスティアの横に立っている。
度重なる粛清と摘発の結果、ここに来て王都内の貴族のパワーバランスはかなり崩れてしまい、今後の見通しが全く分からない。
王家に忠義の厚い家や、不正に関与していなかった高位貴族とその関係者達は生き残ったが、公爵家がひとつと侯爵家が2つも消え、他の家門もいくつも降格や代替えを余儀なくされた今、新たに据えられる後釜に注目が集まる。
他人事のように聞き流し拍手だけしていると、不意に王の口から聞き慣れた名前が滑り出した。
「デイビッド・デュロック辺境伯爵令息、前へ!」
人垣が割れてホールの奥から、あの夜会の日と同じ姿のデイビッドが、不機嫌を隠しもせずに歩いて来る。
花道に差し掛かると、アーネストが自ら歩み出て来た。
その場で片膝を付き、礼の姿勢は取って見せるがデイビッドの目は完全に座っていて、アーネストは膝が震えるのをひたすら我慢していた。
「国の発展に注力し、更には王家の危機を救った英雄に、栄誉と報奨を授ける…」
(拒否権は?)
(頼むからやめてくれ…)
(だから出たくなかったんだよ!)
小声で泣きそうになっているアーネストを突つくが、そんなものあるわけ無いと理解はしている。
「謹んでお受け致します。」
波のある歪な拍手が起こり、デイビッドは形だけ忠臣の振りをして、直ぐに引き下がってしまう。
玉座の横に戻ったアーネストは生きた心地がしなかった。
「今日一番緊張されておりましたね、お兄様。」
「これでアイツに縁を切られたら、僕は父上を一生恨む。」
「大丈夫ですよ。今回恨まれたのはお父様だけです。お兄様がただの橋渡しなくらい承知の上ですよ、きっと。」
「もし違ったら!?」
「ご愁傷様ですね。お兄様、あの方の友人の座は私が頂きます。」
「アリスティア!!?」
その頃、デイビッドは既にホールの端まで戻って来ていた。
「今世紀最大の不機嫌って顔してますね。」
「およそ婚約者の元に戻って来る顔じゃないわよ?!」
「デイビッド様、お帰りなさい!」
「よし、子爵拾って帰るか!」
「夜はこれからという時間に…」
「子供みたいなこと言ってんじゃないわよ!」
「いつまでも居ると余計な面倒に巻き込まれるから嫌だ!」
「失礼致します。奥でアデラ国のカミール第二王子殿下がお待ちです。」
「ほら見ろ!!」
「手遅れでしたね。」
使用人が呼びに来て、今度は貴賓室へ連れて行かれてしまう。
廊下の途中で、アザーレアとアリスティアもやって来てにこやかに手を振っている。
「ヴィオラ!待たせたな、一緒にアリスティア殿の部屋で女同士お喋りしないか?!」
「シェル様も是非ご一緒しませんか?今夜は泊まって行って下さい!」
「デイビッド様…あの…」
「行って来いよ。たまには羽伸ばして来るのもいいだろ?明日迎えに来てやるよ。」
「はい!行って来ます!!」
ヴィオラがデイビッドから離れると、すかさずアザーレアが捕まえて、有無を言わさず腰に手を回しぴったり張り付いて連れて行ってしまう。
「エライ気に入られてるな…」
「さっぱりはしてますが、とにかく色々濃い人でした。」
「おい、何してる!?早く来い!!待ちくたびれたぞ?!」
逆にデイビッドのところにはジャファルが飛び付いて、部屋へ連れて行こうとする。
「今夜は泊まって行くよな?!いいだろ?!王子の命令だぞ?!」
「帰りてぇ~…」
「観念しましょ?!せっかくアデラからいらしているんですから、接待と思って!」
連れて行かれた広い部屋の中には、豪華な調度品と広いベッドが置かれている。
ジャファルは寝間着に着替えるとその上に飛び込んだ。
「おい、少し落ち着け。」
「デイビッド!前に話してくれた雪の洞窟の話の続きが聞きたい!」
「何年前の話しだ?!もう忘れたわ!」
ソファ側ではエリックがカミールに何か飲み物を作って出していた。
「弟がすっかり世話になってしまったね。」
「構いませんよ、子供の相手は割と好きな人ですから。」
「ところで、従者の君に下世話な話していい?」
「なんでしょう?」
「アイツが婚約者を選んだ理由って何?」
「王族って皆恋バナ好きですね?!」
「だって、あんな絶世の美女が横にいて見向きもしないってどうなんだ?!よっぽど惚れ込んでるとしか思えないだろう?いや、可愛かったよ?!くりっとしててあどけないとことか、純粋そうで庇護欲掻き立てられるというか、怯えた顔なんかもめちゃくちゃ刺さるというか!」
「何しっかり惚れてんですか…」
「どうやって口説き落としたのかなって…気になって…」
「ああ、口説き落とされたのはこっちなんですよ。逃げ回って追い詰められて、反撃しようとしたら相手の思うツボでした。一番得したのはヴィオラ様じゃないかなぁ?!」
「は???」
「ちょっと特殊な出会いがありまして…私も一番肝心なとこは見逃しちゃってるから人伝なんですけど。」
エリックが事の経緯を掻い摘んで説明すると、カミールは少し顔色を悪くした。
「それって…ドラゴンと騎士の心理なんじゃ…」
「否めませんねぇ…」
騎士がドラゴンに襲われそうになった姫を助ける事で始まる単純な恋物語になぞらえて、危機的状況で助けに来た相手と恋に落ちる事をそう呼ぶ。
しかしこれは簡単に冷めてしまう恋愛の比喩表現でもある。
「いつか魔法が解けたら…」
「楽しい夢を見たと思って終わりにするつもりでしょう。」
「その間なんにもしないつもりか?!男なら手ぇ出すだろ普通!!どういう神経してんだアイツ?」
「その辺焼き切れちゃってる感はありますねぇ。」
「聞こえてるぞー?!」
ジャファルが早々に寝てしまうと、デイビッドはまた上着を着直して外へ出ようとする。
「どちらへ?」
「子爵が心配なんで一応声掛けてくる。ついて来なくていい。」
ドアが閉まり足音が聞こえなくなると、カミールはソファに倒れてしまった。
二言三言でもいい、挨拶をして印象を少しでも残さねばと躍起になっている貴族達の目に、アザーレアががっちり捕まえて離さない小柄な少女が常に写る。
デビュタントに出ていたため、ローベル家の娘と直ぐに知れ、そこから過去の出来事も容易く思い出されたが、他国の王女であり大使でもあるアザーレアが自ら手を取り気遣う姿に、何らかの寵愛を受けているという認識が貴族の間に広まっていった。
しばらくすると大使としての仕事もあり、やがてアザーレアの所にも使者が来て国王に呼ばれてしまう。
アリスティアもこの後は両親と役目があるので一旦離れないといけない。
「なんだつまらん。もう少し楽しませてくれても良いものを。仕方ない…アリスティア殿、シェルリアーナ殿、後でまた会おう!ヴィオラも…今夜は私の部屋へ来るといい。」
「こちらも、貴重なお話をたくさんありがとうございました。後ほどまたお話しましょう。」
2人と別れると残った3人はようやく肩の力が抜けた。
「なんて言うか…熱い方でしたわね…」
「大丈夫でしたかヴィオラ様?」
「あ、はい!緊張しましたけど、すごくいい匂いがして大人の女性を感じました!」
「おと…な…まぁ、年齢的には…」
「完全に異文化交流でちょっと疲れましたね!」
その内に、国王が年内で大きな功績を上げた者達や、新たな役目を授かる者達を呼び出し、それぞれに報奨を渡し始めた。
なんだか浮かない顔のアーネストもアリスティアの横に立っている。
度重なる粛清と摘発の結果、ここに来て王都内の貴族のパワーバランスはかなり崩れてしまい、今後の見通しが全く分からない。
王家に忠義の厚い家や、不正に関与していなかった高位貴族とその関係者達は生き残ったが、公爵家がひとつと侯爵家が2つも消え、他の家門もいくつも降格や代替えを余儀なくされた今、新たに据えられる後釜に注目が集まる。
他人事のように聞き流し拍手だけしていると、不意に王の口から聞き慣れた名前が滑り出した。
「デイビッド・デュロック辺境伯爵令息、前へ!」
人垣が割れてホールの奥から、あの夜会の日と同じ姿のデイビッドが、不機嫌を隠しもせずに歩いて来る。
花道に差し掛かると、アーネストが自ら歩み出て来た。
その場で片膝を付き、礼の姿勢は取って見せるがデイビッドの目は完全に座っていて、アーネストは膝が震えるのをひたすら我慢していた。
「国の発展に注力し、更には王家の危機を救った英雄に、栄誉と報奨を授ける…」
(拒否権は?)
(頼むからやめてくれ…)
(だから出たくなかったんだよ!)
小声で泣きそうになっているアーネストを突つくが、そんなものあるわけ無いと理解はしている。
「謹んでお受け致します。」
波のある歪な拍手が起こり、デイビッドは形だけ忠臣の振りをして、直ぐに引き下がってしまう。
玉座の横に戻ったアーネストは生きた心地がしなかった。
「今日一番緊張されておりましたね、お兄様。」
「これでアイツに縁を切られたら、僕は父上を一生恨む。」
「大丈夫ですよ。今回恨まれたのはお父様だけです。お兄様がただの橋渡しなくらい承知の上ですよ、きっと。」
「もし違ったら!?」
「ご愁傷様ですね。お兄様、あの方の友人の座は私が頂きます。」
「アリスティア!!?」
その頃、デイビッドは既にホールの端まで戻って来ていた。
「今世紀最大の不機嫌って顔してますね。」
「およそ婚約者の元に戻って来る顔じゃないわよ?!」
「デイビッド様、お帰りなさい!」
「よし、子爵拾って帰るか!」
「夜はこれからという時間に…」
「子供みたいなこと言ってんじゃないわよ!」
「いつまでも居ると余計な面倒に巻き込まれるから嫌だ!」
「失礼致します。奥でアデラ国のカミール第二王子殿下がお待ちです。」
「ほら見ろ!!」
「手遅れでしたね。」
使用人が呼びに来て、今度は貴賓室へ連れて行かれてしまう。
廊下の途中で、アザーレアとアリスティアもやって来てにこやかに手を振っている。
「ヴィオラ!待たせたな、一緒にアリスティア殿の部屋で女同士お喋りしないか?!」
「シェル様も是非ご一緒しませんか?今夜は泊まって行って下さい!」
「デイビッド様…あの…」
「行って来いよ。たまには羽伸ばして来るのもいいだろ?明日迎えに来てやるよ。」
「はい!行って来ます!!」
ヴィオラがデイビッドから離れると、すかさずアザーレアが捕まえて、有無を言わさず腰に手を回しぴったり張り付いて連れて行ってしまう。
「エライ気に入られてるな…」
「さっぱりはしてますが、とにかく色々濃い人でした。」
「おい、何してる!?早く来い!!待ちくたびれたぞ?!」
逆にデイビッドのところにはジャファルが飛び付いて、部屋へ連れて行こうとする。
「今夜は泊まって行くよな?!いいだろ?!王子の命令だぞ?!」
「帰りてぇ~…」
「観念しましょ?!せっかくアデラからいらしているんですから、接待と思って!」
連れて行かれた広い部屋の中には、豪華な調度品と広いベッドが置かれている。
ジャファルは寝間着に着替えるとその上に飛び込んだ。
「おい、少し落ち着け。」
「デイビッド!前に話してくれた雪の洞窟の話の続きが聞きたい!」
「何年前の話しだ?!もう忘れたわ!」
ソファ側ではエリックがカミールに何か飲み物を作って出していた。
「弟がすっかり世話になってしまったね。」
「構いませんよ、子供の相手は割と好きな人ですから。」
「ところで、従者の君に下世話な話していい?」
「なんでしょう?」
「アイツが婚約者を選んだ理由って何?」
「王族って皆恋バナ好きですね?!」
「だって、あんな絶世の美女が横にいて見向きもしないってどうなんだ?!よっぽど惚れ込んでるとしか思えないだろう?いや、可愛かったよ?!くりっとしててあどけないとことか、純粋そうで庇護欲掻き立てられるというか、怯えた顔なんかもめちゃくちゃ刺さるというか!」
「何しっかり惚れてんですか…」
「どうやって口説き落としたのかなって…気になって…」
「ああ、口説き落とされたのはこっちなんですよ。逃げ回って追い詰められて、反撃しようとしたら相手の思うツボでした。一番得したのはヴィオラ様じゃないかなぁ?!」
「は???」
「ちょっと特殊な出会いがありまして…私も一番肝心なとこは見逃しちゃってるから人伝なんですけど。」
エリックが事の経緯を掻い摘んで説明すると、カミールは少し顔色を悪くした。
「それって…ドラゴンと騎士の心理なんじゃ…」
「否めませんねぇ…」
騎士がドラゴンに襲われそうになった姫を助ける事で始まる単純な恋物語になぞらえて、危機的状況で助けに来た相手と恋に落ちる事をそう呼ぶ。
しかしこれは簡単に冷めてしまう恋愛の比喩表現でもある。
「いつか魔法が解けたら…」
「楽しい夢を見たと思って終わりにするつもりでしょう。」
「その間なんにもしないつもりか?!男なら手ぇ出すだろ普通!!どういう神経してんだアイツ?」
「その辺焼き切れちゃってる感はありますねぇ。」
「聞こえてるぞー?!」
ジャファルが早々に寝てしまうと、デイビッドはまた上着を着直して外へ出ようとする。
「どちらへ?」
「子爵が心配なんで一応声掛けてくる。ついて来なくていい。」
ドアが閉まり足音が聞こえなくなると、カミールはソファに倒れてしまった。
48
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる