139 / 512
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
城での一夜
「大丈夫ですか?」
「うん…エリック、もう少し強いお酒作って?今夜は飲まないとやってられないや。君も付き合ってよ。」
「構いませんよ。久々に腕が鳴ります。あの人超絶下戸なんでこういう楽しみがなくて。」
爽やかなライムのカクテルを作ると、カミールもエリックも何も言わずグラスを掲げて乾杯し、飲み干していく。
「あの娘、僕の前では怯えてたのに、デイビッドが来たら嬉しそうな顔してたでしょ?アイツと僕、結構似てるのに、こっちには少しも靡かなかった。」
「そうですね、一度も誰にも靡きませんでしたからね。」
「欲しかったなぁ…僕だったらあんな良い子捕まえたら離さないのに。」
「翼をもがれる苦痛を誰よりも知ってますから。少なくとも後戻りが出来なくなるまでは、自分が籠に閉じ籠もってるつもりですよ。」
2杯目は少し濃いミントの香りがした。
「それってさぁ、反動怖くない?グツグツに煮詰まってドロドロになった愛情、注がれた方はどうなるの?」
「案外スプーンですくって食べてしまうのでは?女の子は甘いものが好きですから。お砂糖足されてジャムにされちゃうかも知れませんね?!」
「なにそれ傑作!」
3杯目、4杯目、酒が進むと話も弾む。
そこへノックの音がしてアーネストが顔を出した。
「失礼、遅くなった…ってもう飲んでるのか!?」
「アーネストォ!何してた、もっと早く来い!」
「今晩は殿下、さすが良いお酒が揃ってますね。一杯お作りしますよ?」
「エリック?デイビッドはどうした?」
「ローベル子爵の様子を見て来るそうです。私はカミール様のお話相手をしておりました。」
花の香りが効いた一杯を飲み干すと、アーネストも会話に混ざる。
「ずいぶん荒れてるな。何かあったのか?」
「そうですね、強いて言えば失恋、ですかね?」
「女の子なんて僕が甘く囁やけば皆寄ってくると思ってたのに!一度もモテたこと無い豚野郎の方が良いと言われれば傷つくだろ?!」
「相当酔ってる…」
「アーネスト殿下にはいらっしゃらないのですか?王太子ともなればお相手は必須でしょう?」
「まだ選定段階かな。国内では決まらないかも知れない。」
「大変ですねぇ。」
「そう言うエリックはどうなんだ?彼女の1人2人居ないのか?!」
「そろそろ見つけないと色々マズイんですけどね、今の所は学園の講師の傍らデイビッド様の従者ですから、探す暇は無さそうですね。」
「経験は豊富そうだな?!今まで何人付き合った?」
「う~ん、そうですねぇ…」
その頃、冷たい夜風に吹かれながらローベル子爵の仮屋敷へ馬車が到着した。
仲間としこたま飲んで、立てなくなった子爵をデイビッドが背負い、ポーチまで連れていくと使用人たちは恐縮しきりだった。
ヴィオラは王城で姫の部屋に泊まることを伝え、また城へ戻って行く。
まだまだ明るく賑わうホールの端を横切ると、やはり視線がベタベタ張り付いて気持ちが悪い。
所詮はあの夜会の日と何ら変わらず、王都の貴族にとって自分は汚らわしい黒豚に過ぎない事を改めて刻み込まれる。
上階の貴賓室へ向かうと、丁度アリスティアが部屋から顔を出した所だった。
「あら、今晩はデイビッド様。」
「今晩は殿下。遅くなりましたが、デビュタントおめでとうございます。」
「あら、もう言って頂けないかと思ってドキドキしておりました。ありがとうございます。」
「ヴィオラはどうしてます?」
「うふふ、アザーレア様がお側から離しませんの。あのまま連れて行かれないようお気をつけ下さいね?!」
「そこまで気に入られてんのか?!」
女性部屋に使用人が運んで来たワゴンが入る時、楽しげな笑い声も一緒に溢れてきた。
(楽しんでるならいいか…)
男性側の部屋の戸を開けると、酒盛り独特の熱気が漏れて来た。
「なんだもう寝落ちてんのか?!」
「いや~楽しく飲んでたんですけどね?!日頃のお疲れでしょうか、お二人共すっかり潰れてしまって!」
「ザルのお前に合わせて飲んでたらそうなるわ!ちったぁ加減しろ!」
デイビッドが正体なく眠る2人の上着を脱がせベッドに放り込むと、エリックはその場の片付けをし、空気を入れ替えて明かりを消した。
「お休みにならないのですか?」
「ん?ああ、ここに来るとな、眠くならない。」
「そういえば、乾杯でグラスを開けて以降何も口にされてませんね。」
「不思議だろ、全部どうでも良くなるんだ。眠くもない腹も減らない、なんなら暑くも寒くもない。下手すると痛みも感じない。」
「それは…」
「ガキの頃からだよ。城に来ると俺は人間じゃなくなる。だからあまり来たくないんだ。」
「でも、何か食べないと…」
「いい、どうせ味もわかんねぇだろうし。1日食わないくらい何ともないから安心しろ。」
「申し訳ありません…僕が余計な事を言わなければ…」
「どの道足止めはされてたろうから、エリックのせいじゃない。留まると決めたのも自分だ。気にすんな。」
ならせめて一緒に起きていようとしたが、他愛もない話をしている内にエリックも眠ってしまい、気が付けばベッドの上で朝を迎えていた。
(やられた…あの人ホント従者をなんだと思ってんだろ…)
「おい、エリック!デイビッドはどうした?!」
元気なジャファルの声が頭に響く。
「アーネストもいない!兄上も起きないし、つまらない!」
「散歩にでも行ってんですかね?ジャファル様も着替えたら一緒に探しに行きましょうか?まずは顔を洗いますよ。」
エリックも着替えて、ジャファルの身支度を整えてやっていると、ノックの音がして使用人達が朝食のワゴンを運んできた。
後ろからアーネストとデイビッドもついてきている。
「デイビッド!どこ行ってたんだ?!」
「ん?厨房借りてた。」
ワゴンの上にはまだ湯気の立つ料理が並んでいる。
「明け方に起きたら厨房使いたいって言うから、ついて行ったんだ!手際の良さがプロ並みで、仕込みに来たコックが驚いて固まってた!」
初めて知る友人の特技にアーネストは興奮しきりだ。
「料理したんですか?食欲…出ました?」
「いや、自分で作ったら食えるかと思って試してみた…食材の味はなんとかわかったが、だいぶボヤけてイマイチだったけどな…」
「オムレツとガレットとスープと、ソーセージにもなんかひと手間かけてた!」
「こっちは記憶と感覚頼りだってのに、コイツの注文がエライうるさくてな…作ったはいいが味の保証は無いぞ?!」
「シフォンケーキ焼いてもらったんだ!ラムレーズンの!」
「朝っぱらから面倒くせぇ事させやがって…」
使用人を下がらせ、エリックがまずアーネストの分を取り分ける。
待ち切れないジャファルの分とカミールの分も出し、テーブルに並べると、早速ジャファルが飛び付いて来た。
「早く食べよう!豊穣の女神に感謝をー!」
「はい、頂きましょう。」
アーネストも何か短い祈りを唱えてからフォークを取り、ガレットを口にして動かなくなった。
「うん、美味しいです。いつもの味ですよ。流石ですね。」
「は?!エリック、お前いつもこんなの食べてるのか?!」
「ウチの食べる担当みたいな奴だからな。真っ先に食べてる。」
「美味しい!!このオムレツ最高だ!凄いなデイビッド!スープおかわり!」
「パンはお城の物なんですね。」
「そこまで時間はねぇよ。」
「この上パンまで焼くのか?!」
結局デイビッドはオムレツを一切れ食べただけだったが、それでもバケモノよりはマシになれた気がして、少しだけ安心した。
「うん…エリック、もう少し強いお酒作って?今夜は飲まないとやってられないや。君も付き合ってよ。」
「構いませんよ。久々に腕が鳴ります。あの人超絶下戸なんでこういう楽しみがなくて。」
爽やかなライムのカクテルを作ると、カミールもエリックも何も言わずグラスを掲げて乾杯し、飲み干していく。
「あの娘、僕の前では怯えてたのに、デイビッドが来たら嬉しそうな顔してたでしょ?アイツと僕、結構似てるのに、こっちには少しも靡かなかった。」
「そうですね、一度も誰にも靡きませんでしたからね。」
「欲しかったなぁ…僕だったらあんな良い子捕まえたら離さないのに。」
「翼をもがれる苦痛を誰よりも知ってますから。少なくとも後戻りが出来なくなるまでは、自分が籠に閉じ籠もってるつもりですよ。」
2杯目は少し濃いミントの香りがした。
「それってさぁ、反動怖くない?グツグツに煮詰まってドロドロになった愛情、注がれた方はどうなるの?」
「案外スプーンですくって食べてしまうのでは?女の子は甘いものが好きですから。お砂糖足されてジャムにされちゃうかも知れませんね?!」
「なにそれ傑作!」
3杯目、4杯目、酒が進むと話も弾む。
そこへノックの音がしてアーネストが顔を出した。
「失礼、遅くなった…ってもう飲んでるのか!?」
「アーネストォ!何してた、もっと早く来い!」
「今晩は殿下、さすが良いお酒が揃ってますね。一杯お作りしますよ?」
「エリック?デイビッドはどうした?」
「ローベル子爵の様子を見て来るそうです。私はカミール様のお話相手をしておりました。」
花の香りが効いた一杯を飲み干すと、アーネストも会話に混ざる。
「ずいぶん荒れてるな。何かあったのか?」
「そうですね、強いて言えば失恋、ですかね?」
「女の子なんて僕が甘く囁やけば皆寄ってくると思ってたのに!一度もモテたこと無い豚野郎の方が良いと言われれば傷つくだろ?!」
「相当酔ってる…」
「アーネスト殿下にはいらっしゃらないのですか?王太子ともなればお相手は必須でしょう?」
「まだ選定段階かな。国内では決まらないかも知れない。」
「大変ですねぇ。」
「そう言うエリックはどうなんだ?彼女の1人2人居ないのか?!」
「そろそろ見つけないと色々マズイんですけどね、今の所は学園の講師の傍らデイビッド様の従者ですから、探す暇は無さそうですね。」
「経験は豊富そうだな?!今まで何人付き合った?」
「う~ん、そうですねぇ…」
その頃、冷たい夜風に吹かれながらローベル子爵の仮屋敷へ馬車が到着した。
仲間としこたま飲んで、立てなくなった子爵をデイビッドが背負い、ポーチまで連れていくと使用人たちは恐縮しきりだった。
ヴィオラは王城で姫の部屋に泊まることを伝え、また城へ戻って行く。
まだまだ明るく賑わうホールの端を横切ると、やはり視線がベタベタ張り付いて気持ちが悪い。
所詮はあの夜会の日と何ら変わらず、王都の貴族にとって自分は汚らわしい黒豚に過ぎない事を改めて刻み込まれる。
上階の貴賓室へ向かうと、丁度アリスティアが部屋から顔を出した所だった。
「あら、今晩はデイビッド様。」
「今晩は殿下。遅くなりましたが、デビュタントおめでとうございます。」
「あら、もう言って頂けないかと思ってドキドキしておりました。ありがとうございます。」
「ヴィオラはどうしてます?」
「うふふ、アザーレア様がお側から離しませんの。あのまま連れて行かれないようお気をつけ下さいね?!」
「そこまで気に入られてんのか?!」
女性部屋に使用人が運んで来たワゴンが入る時、楽しげな笑い声も一緒に溢れてきた。
(楽しんでるならいいか…)
男性側の部屋の戸を開けると、酒盛り独特の熱気が漏れて来た。
「なんだもう寝落ちてんのか?!」
「いや~楽しく飲んでたんですけどね?!日頃のお疲れでしょうか、お二人共すっかり潰れてしまって!」
「ザルのお前に合わせて飲んでたらそうなるわ!ちったぁ加減しろ!」
デイビッドが正体なく眠る2人の上着を脱がせベッドに放り込むと、エリックはその場の片付けをし、空気を入れ替えて明かりを消した。
「お休みにならないのですか?」
「ん?ああ、ここに来るとな、眠くならない。」
「そういえば、乾杯でグラスを開けて以降何も口にされてませんね。」
「不思議だろ、全部どうでも良くなるんだ。眠くもない腹も減らない、なんなら暑くも寒くもない。下手すると痛みも感じない。」
「それは…」
「ガキの頃からだよ。城に来ると俺は人間じゃなくなる。だからあまり来たくないんだ。」
「でも、何か食べないと…」
「いい、どうせ味もわかんねぇだろうし。1日食わないくらい何ともないから安心しろ。」
「申し訳ありません…僕が余計な事を言わなければ…」
「どの道足止めはされてたろうから、エリックのせいじゃない。留まると決めたのも自分だ。気にすんな。」
ならせめて一緒に起きていようとしたが、他愛もない話をしている内にエリックも眠ってしまい、気が付けばベッドの上で朝を迎えていた。
(やられた…あの人ホント従者をなんだと思ってんだろ…)
「おい、エリック!デイビッドはどうした?!」
元気なジャファルの声が頭に響く。
「アーネストもいない!兄上も起きないし、つまらない!」
「散歩にでも行ってんですかね?ジャファル様も着替えたら一緒に探しに行きましょうか?まずは顔を洗いますよ。」
エリックも着替えて、ジャファルの身支度を整えてやっていると、ノックの音がして使用人達が朝食のワゴンを運んできた。
後ろからアーネストとデイビッドもついてきている。
「デイビッド!どこ行ってたんだ?!」
「ん?厨房借りてた。」
ワゴンの上にはまだ湯気の立つ料理が並んでいる。
「明け方に起きたら厨房使いたいって言うから、ついて行ったんだ!手際の良さがプロ並みで、仕込みに来たコックが驚いて固まってた!」
初めて知る友人の特技にアーネストは興奮しきりだ。
「料理したんですか?食欲…出ました?」
「いや、自分で作ったら食えるかと思って試してみた…食材の味はなんとかわかったが、だいぶボヤけてイマイチだったけどな…」
「オムレツとガレットとスープと、ソーセージにもなんかひと手間かけてた!」
「こっちは記憶と感覚頼りだってのに、コイツの注文がエライうるさくてな…作ったはいいが味の保証は無いぞ?!」
「シフォンケーキ焼いてもらったんだ!ラムレーズンの!」
「朝っぱらから面倒くせぇ事させやがって…」
使用人を下がらせ、エリックがまずアーネストの分を取り分ける。
待ち切れないジャファルの分とカミールの分も出し、テーブルに並べると、早速ジャファルが飛び付いて来た。
「早く食べよう!豊穣の女神に感謝をー!」
「はい、頂きましょう。」
アーネストも何か短い祈りを唱えてからフォークを取り、ガレットを口にして動かなくなった。
「うん、美味しいです。いつもの味ですよ。流石ですね。」
「は?!エリック、お前いつもこんなの食べてるのか?!」
「ウチの食べる担当みたいな奴だからな。真っ先に食べてる。」
「美味しい!!このオムレツ最高だ!凄いなデイビッド!スープおかわり!」
「パンはお城の物なんですね。」
「そこまで時間はねぇよ。」
「この上パンまで焼くのか?!」
結局デイビッドはオムレツを一切れ食べただけだったが、それでもバケモノよりはマシになれた気がして、少しだけ安心した。
あなたにおすすめの小説
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。
とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。