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七章 女神ニ捧グ憤怒ノ業
64.始動
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ニーメルラッゼが派遣してきた人数は男女含め十五人。
やる気に満ちた表情、物珍しく城内を見回す者、不安を隠しきれずに周囲を見渡す者。
エルメラが挨拶をした後、今後について説明した。
使用人が城内を案内して、今日は旅の疲れを取って明日から動くという話しになった。
開拓が進み、様子を見て今後増員を検討するようだ。
何れ一つの村なり、町になるかもしれない。
そうなったら、近場なので遊びに行くことも可能だろうか。
ただ、本国の食料受給のために来ているのだから、一般的な町というわけにはいかないかもしれない。
それでも、交流があればそこから何かしら発展するだろう。
エルメラはそんな事を言っていた。
翌日。
「さて、一段落もついた事じゃ。目的の詳細について話そう。」
エルメラが集まった顔ぶれを見て言う。
午後も間近の会議室。
いつも通り、お茶と焼き菓子が用意されている机には、塵八人とウリカ。
エウスとカラフは居ない。
二人とも、朝早くからニーメルラッゼの一団と出かけて行った。
「エウスとカラフは女神の浄化の塵の枠外じゃ。これからの話しに巻き込むつもりは無い。」
「いいんじゃない。」
「だな、俺もその方がいいと思うぜ。」
リリエルとグエンが直ぐに同意する。
私もそれでいいと思う。
女神が何者かわからないけれど、巻き込むべきじゃない。
「僕も良いと思う。ランフェルツの事を考えれば、ニーメルラッゼの一団と共にあるのがカラフにとっては良いだろう。」
当の本人は、そんな簡単じゃないと思うけどな。
今は、それを議論する場じゃないけれど。
「うむ、その通りじゃ。余も、エウスに領主を譲るつもりじゃ。」
「えぇっ!?」
「あら・・・」
それは私も驚いた。
リリエルは椅子を蹴倒して立ち上がるほどの衝撃だったらしい。
でもそれはみんな一緒で、ウリカとオルディヌ以外は驚きを隠せない。
リリエルの次に驚きが大きかったのは、ユーテだった。
元貴族という立場からなのかもしれない。
「驚くほどの事でもあるまい。余は本来の目的に向かうだけじゃ。」
いや、普通に驚くから。
「で、その女神って本当にいるの?今までは話しの流れで頷いてきたけれど、一度も詳しい話しは聞いていないわ。」
確かに、それはマリアの言う通りだ。
でも、居るかどうかわからない存在のためにここまでするだろうか。
「居る。意外と近くにな。」
「え、嘘!?」
またも衝撃発言。
リリエルが座れない。
「じゃ、さっさと行って殺っちゃおうよ。」
ウリカは散歩程度の乗りで言うが、それが出来たら現状は無い。
「俺らの力の根源だぞ、そう簡単にいかねぇだろうよ。」
「そんなのわかんないじゃん。」
グエンに言われ、頬を膨らませるウリカ。
実際のところ、会った事が無いからなんとも言えないけれど、グエンの言う通りな気がする。
「グエンの言う通りじゃ。余らの力が塵と言われるほど一部であれば、本体は想像もつかないくらい強いじゃろうのぅ。」
そう言われると嫌な感じ。
単純に塵が八人居たところで、本体の足元にも及ばないんじゃないかと思わされる。
「でも行くことに変わりはないのでしょう?問題は居場所。」
「そうじゃったな。この国の王城の真下じゃ。」
「はぁっ!!?」
またもリリエルの椅子が大きな音を立てた。
「おいおい、冗談じゃねぇぞ・・・」
まさか、王城だなんて。
「王様が女神と仲良し?」
ウリカは首を傾げて言ったけど、多分違う。
「王城は関係ないでしょ。」
なんとなく、そんな気がした。
おそらく偶然。
まぁ単に、その事情を知っているエルメラが、王様と仲がいいから違うんじゃないかってだけなのだけど。
「アリアの言う通りじゃ。女神の住処の上に、王都が築かれただけじゃ。」
「じゃぁ、エルの彼は知らないんだね。」
リリエルがエルメラに睨まれる。
「冗談だって・・・」
「もちろん知らぬ。」
「それはいいとして、何故エルメラはその事を知っているのかしら?」
フィナが確認すると、エルメラは立って背後の棚に向かう。
棚は観音開きの扉になっていて、鍵が三つ。
エルメラはそれを一つずつ外していった。
「余が、子供の頃に王城から持ち出したものじゃ。」
中から取り出したのは、薄汚れ変色した紙の束。
触れば崩れてしまいそうなほど、劣化している。
「一応ローデに断って持ち出しているが、所詮国王も人の身。内容については語っておらぬ。」
エルメラが言いながら広げた紙をみんなが近寄って見るが、それぞれ首を傾げるなり疑問を浮かべる。
「読めねぇよ。」
そう、文字がわからない。
「じゃろうな。余も王室図書館の古い文献から文字を探し、かろうじて読めた程度じゃ。」
子供の頃からそんな事をしていたのね。
だから王様とも知り合いなのかな。
それについては聞いても答えが返って来そうにないけれど。
「余が女神を屠る事を目的とした決定打はこの紙じゃ。」
束の中から数枚の紙片を取り出す。
やはり読めない・・・
あと、多分字が汚い。
「これは?」
「おそらく手記じゃ。余と同じことを考えた塵のな。」
フィナの問いにエルメラが答える。
前にも同じ事を考えた人がいるわけね。
そりゃ、どれだけの歴史があるのかわからないけれど、塵の存在は昨日今日の問題じゃない。
この手記を書いた人だけじゃなく、やろうと思った塵はもっといたりするのだろう。
「本当かよ?」
「お主より信用できるぞ。」
「どういう意味だよ!」
その掛け合いはどうでもいいが。
「その根拠は?」
「エルメラデウス領は、領名の通り余が領主となってから名を変えたものじゃ。当時は国の直轄領でな、領主館も此処とは別の場所にあった。」
へぇ、そうなんだ。
「つまり、女神に繋がる何かしらがこの土地にあったと?」
「そうじゃ。これを見るがいい。」
エルメラは手記の中から一枚の紙片を取り上げる。
それは地図っぽいものに何かを書き込んだもののようだけど、文字はやはり読めない。
今とは違うものの、おそらくこの地域を描いたものだと思える。
「その太く印がつけてある場所って、もしかして此処?」
マリアが言うと、エルメラは笑みを浮かべて頷いた。
「そうじゃ。そしてこれこそが、余が此処に居城を構えた理由でもある。」
あの印が?
「一体何があったの?」
「穴じゃ。」
・・・
フィナの問いにしっかりと答えたのはいいけど、それじゃわからない。
「つまり、此処から女神の下へ通じているという事か?」
「うむ。」
ユーテの問いにエルメラが頷く。
なるほど、やっと理解できた。
「ちなみに天馬を見つけたのもこの場所じゃ。」
「そうなの!?」
リリエルと同じで、それにも私は驚いた。
となると、信憑性は高いのかもしれない。
「天馬は取り出し、穴は現在塞いでおるがの。」
誰かが迷い込まないようにだろう。
「他にも女神のところに続く道はある?」
リリエルの疑問にエルメラは首を振った。
「わからぬ。余が見つけたのは此処だけじゃ。此処とて荒地で放置されておった場所じゃ、他に在ったとしても塞がっている可能性が高いのではないかのう。」
それは言えてる。
きっと、何百年、もっとかもしれない長い年月を放置されていたら。
「それでも、入り口がわからないだけじゃろうな。おそらく中の路は朽ちてはおらぬはず。」
「どういう事だ?」
ユーテの疑問も当然、何故それがわかるのか。
「塞ぐ前に少し中を確認しておる。入ればわかるが、ただ掘っただけの穴ではない。」
「入ってみなければわからないって事ね。」
「うむ。それは自分で確認せよ。」
確かに気にはなる。
けれど、いざ向かうとなった時にそこまで余裕があるだろうか。
「で、いつ行くんだ?明日か?」
入ってみなければわからないものを、これ以上議論しても仕方がない。
だから後は決行日。
そう思ってグエンは言ったのだろうが、私を含め何人かが呆れた目を向ける。
「な、なんだよ?早い方がいいんだろ?」
「女神の居場所、わかってる?」
「王城の下だろ。」
私の問いに、何を当たり前の事をみたいに返してくる。
だったらもう少し考えて欲しいところ。
「どれくらいかかると思ってんの。」
「一か月もあれば十分だろ、行った事のないところじゃあるまいし。」
うわ、本当に考えてないのね。
言ったリリエルも、グエンの応えに溜息を吐いた。
「お主、聞いておったのか?」
「聞いてただろうが。」
「余らは地上を往くのではない、その一か月只管穴の中を進まねばならぬ。」
「あ・・・そうか。」
やっと気付いたか。
「そうよ。きっと見たい景色も無いし、休憩出来る町村も無ければ、食事もまともに出来ないと考えるのが普通よね。」
マリアが口にした事で、改めて考える。
進むだけで疲れそう、気持ちが。
「そ、そうか。言われてみればそうだな。」
言われなくても想像がつくでしょうよ。
「とりあえず準備期間として一か月を考えておる。水や食料を運ぶだけでもかなりの量になるのぅ。」
一か月分とか、備蓄ならまだしも運ぶとなると、人の力じゃ無理。
どうするのかな。
「どこかから地上に出れないのかしら。」
マリアの言う通り、それが出来たらいいのだけど。
「わからぬ。奥に進んだことは無いし、この手記にはそんな事は書いておらぬ。」
だったら。
「何回かに分けて、休憩地点を設置していくとか?」
「お、いいじゃねぇか。」
私の案にグエンが同調する。
「確かに、それはありかもしれぬ。辿り着くまでにかなりの月日を要するじゃろうが、疲弊した状態で行くよりは現実的じゃな。」
時間がかかるのは今更だ。
一か月が半年になったところで、何も変わらない。
「それなら、分かれて交代で潜るのもありじゃないかしら?」
あ、フィナの案もいいかも。
「うむ、確かにな。最初は全員で行き状況を確認後、交代で進めるとしようかの。」
「賛成。一か月お風呂も入れないかと思ったよ。」
リリエルの言う通り、私も思ったけどそれはちょっと嫌。
湧き水でもあればそこで何とかできるかもしれないけれど、都合よく何カ所もあるとは思えないし。
「では、この方針でいこうかの。出発は変わらず一か月後じゃ。」
一先ず今後の方針が決まった事で、打ち合わせは終わった。
出発までに、食料等の準備をする必要がある。
衣類とかも地下に潜ることを前提に揃えておいた方がいいかもしれない。
「ユーテ、一緒にゴハン食べよ。」
そんな事を考えていると、ウリカがユーテに近付いて声を掛けた。
「一緒にご飯。」
反対側に立ったオルディヌも一緒に声を掛ける。
きっと、ウリカに言われたんだね。
「え、僕と?」
二人の笑顔を見て戸惑ったユーテは、私の方を見た。
私は笑顔で頷くと、すぐに顔を逸らされた。
酷くない?
「おねぇも一緒だよね?」
「そうね。行こうか。」
女神以前に、そこに辿り着くまでの路を知り不安が込み上げる。
無事辿り着けるのだろうかと。
それでも、只管模索するより目標があるだけで気持ちは違う。
示された光明に、気持ちが前に進めるのだから。
そんな事を考えながら、ユーテを連れて食堂に向かった。
やる気に満ちた表情、物珍しく城内を見回す者、不安を隠しきれずに周囲を見渡す者。
エルメラが挨拶をした後、今後について説明した。
使用人が城内を案内して、今日は旅の疲れを取って明日から動くという話しになった。
開拓が進み、様子を見て今後増員を検討するようだ。
何れ一つの村なり、町になるかもしれない。
そうなったら、近場なので遊びに行くことも可能だろうか。
ただ、本国の食料受給のために来ているのだから、一般的な町というわけにはいかないかもしれない。
それでも、交流があればそこから何かしら発展するだろう。
エルメラはそんな事を言っていた。
翌日。
「さて、一段落もついた事じゃ。目的の詳細について話そう。」
エルメラが集まった顔ぶれを見て言う。
午後も間近の会議室。
いつも通り、お茶と焼き菓子が用意されている机には、塵八人とウリカ。
エウスとカラフは居ない。
二人とも、朝早くからニーメルラッゼの一団と出かけて行った。
「エウスとカラフは女神の浄化の塵の枠外じゃ。これからの話しに巻き込むつもりは無い。」
「いいんじゃない。」
「だな、俺もその方がいいと思うぜ。」
リリエルとグエンが直ぐに同意する。
私もそれでいいと思う。
女神が何者かわからないけれど、巻き込むべきじゃない。
「僕も良いと思う。ランフェルツの事を考えれば、ニーメルラッゼの一団と共にあるのがカラフにとっては良いだろう。」
当の本人は、そんな簡単じゃないと思うけどな。
今は、それを議論する場じゃないけれど。
「うむ、その通りじゃ。余も、エウスに領主を譲るつもりじゃ。」
「えぇっ!?」
「あら・・・」
それは私も驚いた。
リリエルは椅子を蹴倒して立ち上がるほどの衝撃だったらしい。
でもそれはみんな一緒で、ウリカとオルディヌ以外は驚きを隠せない。
リリエルの次に驚きが大きかったのは、ユーテだった。
元貴族という立場からなのかもしれない。
「驚くほどの事でもあるまい。余は本来の目的に向かうだけじゃ。」
いや、普通に驚くから。
「で、その女神って本当にいるの?今までは話しの流れで頷いてきたけれど、一度も詳しい話しは聞いていないわ。」
確かに、それはマリアの言う通りだ。
でも、居るかどうかわからない存在のためにここまでするだろうか。
「居る。意外と近くにな。」
「え、嘘!?」
またも衝撃発言。
リリエルが座れない。
「じゃ、さっさと行って殺っちゃおうよ。」
ウリカは散歩程度の乗りで言うが、それが出来たら現状は無い。
「俺らの力の根源だぞ、そう簡単にいかねぇだろうよ。」
「そんなのわかんないじゃん。」
グエンに言われ、頬を膨らませるウリカ。
実際のところ、会った事が無いからなんとも言えないけれど、グエンの言う通りな気がする。
「グエンの言う通りじゃ。余らの力が塵と言われるほど一部であれば、本体は想像もつかないくらい強いじゃろうのぅ。」
そう言われると嫌な感じ。
単純に塵が八人居たところで、本体の足元にも及ばないんじゃないかと思わされる。
「でも行くことに変わりはないのでしょう?問題は居場所。」
「そうじゃったな。この国の王城の真下じゃ。」
「はぁっ!!?」
またもリリエルの椅子が大きな音を立てた。
「おいおい、冗談じゃねぇぞ・・・」
まさか、王城だなんて。
「王様が女神と仲良し?」
ウリカは首を傾げて言ったけど、多分違う。
「王城は関係ないでしょ。」
なんとなく、そんな気がした。
おそらく偶然。
まぁ単に、その事情を知っているエルメラが、王様と仲がいいから違うんじゃないかってだけなのだけど。
「アリアの言う通りじゃ。女神の住処の上に、王都が築かれただけじゃ。」
「じゃぁ、エルの彼は知らないんだね。」
リリエルがエルメラに睨まれる。
「冗談だって・・・」
「もちろん知らぬ。」
「それはいいとして、何故エルメラはその事を知っているのかしら?」
フィナが確認すると、エルメラは立って背後の棚に向かう。
棚は観音開きの扉になっていて、鍵が三つ。
エルメラはそれを一つずつ外していった。
「余が、子供の頃に王城から持ち出したものじゃ。」
中から取り出したのは、薄汚れ変色した紙の束。
触れば崩れてしまいそうなほど、劣化している。
「一応ローデに断って持ち出しているが、所詮国王も人の身。内容については語っておらぬ。」
エルメラが言いながら広げた紙をみんなが近寄って見るが、それぞれ首を傾げるなり疑問を浮かべる。
「読めねぇよ。」
そう、文字がわからない。
「じゃろうな。余も王室図書館の古い文献から文字を探し、かろうじて読めた程度じゃ。」
子供の頃からそんな事をしていたのね。
だから王様とも知り合いなのかな。
それについては聞いても答えが返って来そうにないけれど。
「余が女神を屠る事を目的とした決定打はこの紙じゃ。」
束の中から数枚の紙片を取り出す。
やはり読めない・・・
あと、多分字が汚い。
「これは?」
「おそらく手記じゃ。余と同じことを考えた塵のな。」
フィナの問いにエルメラが答える。
前にも同じ事を考えた人がいるわけね。
そりゃ、どれだけの歴史があるのかわからないけれど、塵の存在は昨日今日の問題じゃない。
この手記を書いた人だけじゃなく、やろうと思った塵はもっといたりするのだろう。
「本当かよ?」
「お主より信用できるぞ。」
「どういう意味だよ!」
その掛け合いはどうでもいいが。
「その根拠は?」
「エルメラデウス領は、領名の通り余が領主となってから名を変えたものじゃ。当時は国の直轄領でな、領主館も此処とは別の場所にあった。」
へぇ、そうなんだ。
「つまり、女神に繋がる何かしらがこの土地にあったと?」
「そうじゃ。これを見るがいい。」
エルメラは手記の中から一枚の紙片を取り上げる。
それは地図っぽいものに何かを書き込んだもののようだけど、文字はやはり読めない。
今とは違うものの、おそらくこの地域を描いたものだと思える。
「その太く印がつけてある場所って、もしかして此処?」
マリアが言うと、エルメラは笑みを浮かべて頷いた。
「そうじゃ。そしてこれこそが、余が此処に居城を構えた理由でもある。」
あの印が?
「一体何があったの?」
「穴じゃ。」
・・・
フィナの問いにしっかりと答えたのはいいけど、それじゃわからない。
「つまり、此処から女神の下へ通じているという事か?」
「うむ。」
ユーテの問いにエルメラが頷く。
なるほど、やっと理解できた。
「ちなみに天馬を見つけたのもこの場所じゃ。」
「そうなの!?」
リリエルと同じで、それにも私は驚いた。
となると、信憑性は高いのかもしれない。
「天馬は取り出し、穴は現在塞いでおるがの。」
誰かが迷い込まないようにだろう。
「他にも女神のところに続く道はある?」
リリエルの疑問にエルメラは首を振った。
「わからぬ。余が見つけたのは此処だけじゃ。此処とて荒地で放置されておった場所じゃ、他に在ったとしても塞がっている可能性が高いのではないかのう。」
それは言えてる。
きっと、何百年、もっとかもしれない長い年月を放置されていたら。
「それでも、入り口がわからないだけじゃろうな。おそらく中の路は朽ちてはおらぬはず。」
「どういう事だ?」
ユーテの疑問も当然、何故それがわかるのか。
「塞ぐ前に少し中を確認しておる。入ればわかるが、ただ掘っただけの穴ではない。」
「入ってみなければわからないって事ね。」
「うむ。それは自分で確認せよ。」
確かに気にはなる。
けれど、いざ向かうとなった時にそこまで余裕があるだろうか。
「で、いつ行くんだ?明日か?」
入ってみなければわからないものを、これ以上議論しても仕方がない。
だから後は決行日。
そう思ってグエンは言ったのだろうが、私を含め何人かが呆れた目を向ける。
「な、なんだよ?早い方がいいんだろ?」
「女神の居場所、わかってる?」
「王城の下だろ。」
私の問いに、何を当たり前の事をみたいに返してくる。
だったらもう少し考えて欲しいところ。
「どれくらいかかると思ってんの。」
「一か月もあれば十分だろ、行った事のないところじゃあるまいし。」
うわ、本当に考えてないのね。
言ったリリエルも、グエンの応えに溜息を吐いた。
「お主、聞いておったのか?」
「聞いてただろうが。」
「余らは地上を往くのではない、その一か月只管穴の中を進まねばならぬ。」
「あ・・・そうか。」
やっと気付いたか。
「そうよ。きっと見たい景色も無いし、休憩出来る町村も無ければ、食事もまともに出来ないと考えるのが普通よね。」
マリアが口にした事で、改めて考える。
進むだけで疲れそう、気持ちが。
「そ、そうか。言われてみればそうだな。」
言われなくても想像がつくでしょうよ。
「とりあえず準備期間として一か月を考えておる。水や食料を運ぶだけでもかなりの量になるのぅ。」
一か月分とか、備蓄ならまだしも運ぶとなると、人の力じゃ無理。
どうするのかな。
「どこかから地上に出れないのかしら。」
マリアの言う通り、それが出来たらいいのだけど。
「わからぬ。奥に進んだことは無いし、この手記にはそんな事は書いておらぬ。」
だったら。
「何回かに分けて、休憩地点を設置していくとか?」
「お、いいじゃねぇか。」
私の案にグエンが同調する。
「確かに、それはありかもしれぬ。辿り着くまでにかなりの月日を要するじゃろうが、疲弊した状態で行くよりは現実的じゃな。」
時間がかかるのは今更だ。
一か月が半年になったところで、何も変わらない。
「それなら、分かれて交代で潜るのもありじゃないかしら?」
あ、フィナの案もいいかも。
「うむ、確かにな。最初は全員で行き状況を確認後、交代で進めるとしようかの。」
「賛成。一か月お風呂も入れないかと思ったよ。」
リリエルの言う通り、私も思ったけどそれはちょっと嫌。
湧き水でもあればそこで何とかできるかもしれないけれど、都合よく何カ所もあるとは思えないし。
「では、この方針でいこうかの。出発は変わらず一か月後じゃ。」
一先ず今後の方針が決まった事で、打ち合わせは終わった。
出発までに、食料等の準備をする必要がある。
衣類とかも地下に潜ることを前提に揃えておいた方がいいかもしれない。
「ユーテ、一緒にゴハン食べよ。」
そんな事を考えていると、ウリカがユーテに近付いて声を掛けた。
「一緒にご飯。」
反対側に立ったオルディヌも一緒に声を掛ける。
きっと、ウリカに言われたんだね。
「え、僕と?」
二人の笑顔を見て戸惑ったユーテは、私の方を見た。
私は笑顔で頷くと、すぐに顔を逸らされた。
酷くない?
「おねぇも一緒だよね?」
「そうね。行こうか。」
女神以前に、そこに辿り着くまでの路を知り不安が込み上げる。
無事辿り着けるのだろうかと。
それでも、只管模索するより目標があるだけで気持ちは違う。
示された光明に、気持ちが前に進めるのだから。
そんな事を考えながら、ユーテを連れて食堂に向かった。
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