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田舎カプセル
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一年前に天使になったシェットランド羊犬のジロを連れてるつもりで小さな橋の上を歩いていると後ろから ヒタヒタ スタラタ と自転車を漕ぐ音が近づいて来るので身の危険を感じて振り返るとジロをほうふつとさせる黒に茶色の混じった髪の毛の男子中学生があたしを追い越していった
追い越し際に「ただいま帰りましたー」と言ったその声にドップラー効果がかかってしかもペダルの音とくっついて「ただいま帰りまスターラター」みたいになって前へ消えていった
あたしは東京生まれじゃない
大阪生まれでもない
あたしが生まれたのは山陰の田舎町
何もない町
でも県庁はある
そんな田舎の町に生まれたくせに
どうしようもない理由あって
さらなるド田舎の村に今は住んでいる
土のいっぱいついた大根を手に持って
おばさんたちが道端で会うとうんこの話をする
そんなところだ
空はやたらとおおきくて
でもUFOの姿は見えない
見えないけれどどこかから宇宙人があたしを見下ろしていて
あたしのいる場所を不憫に思っていてくれたらいいな
飛んでいけ
どこかへ飛び出していきたい
田舎カプセルをぱっかり開いて
地酒と泥の匂いのするここから
ワインとアルミニウムの匂いの似合う場所へと
ころころと
転がっていきたい
でも足はびっしりと根を張ってしまっていて
恋をするにもここしかない
で
あたしは恋をした
何回目の恋だとか覚えちゃいない
さすがに千回はしていないと思うけど
何百回目だ?
そう聞かれたらさすがに数えてしまう
彼は毎日出勤にスポーツ自転車を使う健康マンで
歳はあたしより40も上
あたしは彼に「ムキリーマン」と名前をつけた
ほんとうは社会的に正しい名前があったけど
似合わないと思ったので
「いよっす!」
彼の朝のあいさつ
ムードは健康
ヨーグルトの似合う気持ちになる
あたしはただぺこりと頭を下げて
自分の気持ちを見送った
川はさらさらと流れて
あたしの気持ちを遠く連れていってくれた
ねえUFO
見ててくれた?
次の朝目覚めると
あたしは高い空から落ちていた
雲を突き破ると
フライトシュミレーターで見たことあるような地上の風景が迫ってきた
「あー……あーーー……ああー……」
あたしはそれしか言えなかった
まあ
どうせ夢だし
そう思って余裕こいてると
見たことある屋根が迫ってきた
自分の住んでる家の屋根だあれ
田んぼや畑やあぜ道にも見覚えがある
流れる川も見知ってる
あたしの住んでる村だ
おらが村だ
そう思ってると
激突して
あたしはバラバラのしめっぽい肉片になって飛び散って
親切なひとがかき集めてくれた
そのひとはどうやら宇宙人らしかった
集める手つきもくっつける手際も地球人とは違っていたからだ
やめて
あたしそんな形じゃない
ストップ
あたしちゃんと地球人の形してたはず
出来上がったあたしは
見たことのないあたし
なりたくもないあたし
触手もちゃんとあった
目が覚めると夢だったのでクッキーを作った
ふるった薄力粉にバターを混ぜて
たまごは黄身だけとってしろみは捨てて
数えきれないたまごを割った
数えきれないしろみを捨てた
捨てられたしろみは流しの排水溝を通って
いつかしろみすての海へ辿り着くのだろう
しろみすての海に辿り着いたしろみたちは
メレンゲのように美しく
軽く
は
ならなくて
どろりとしたまま海藻に絡みついて
人間に集められてぬるぬるした液体として売られて
いつかお風呂場に戻ってくるのだろう
きっとそのほうが幸せだ
きっとみんなに喜ばれる
みんな
集まれー
体育会系も
文系も
髪を染めた中学生もちゃんといる
この田舎の村
みんな集まって
ラジオ体操もちゃんとする
消防団も結構張り切ってる
そんな朝に寝ぼけて
あたしは余熱でクッキーを焦がしてしまった
プレーンなのに
チョコみたい
何か忘れてる気がするな
そうだ猫の背中をまだ撫でてなかった
急いで撫でて
急いで準備をして
急いでクッキーをタッパーに詰めて
外に出ると
のどかな緑色の景色の上に浮かんだ青空に
UFOだ
UFO
飛んでる!
追い越し際に「ただいま帰りましたー」と言ったその声にドップラー効果がかかってしかもペダルの音とくっついて「ただいま帰りまスターラター」みたいになって前へ消えていった
あたしは東京生まれじゃない
大阪生まれでもない
あたしが生まれたのは山陰の田舎町
何もない町
でも県庁はある
そんな田舎の町に生まれたくせに
どうしようもない理由あって
さらなるド田舎の村に今は住んでいる
土のいっぱいついた大根を手に持って
おばさんたちが道端で会うとうんこの話をする
そんなところだ
空はやたらとおおきくて
でもUFOの姿は見えない
見えないけれどどこかから宇宙人があたしを見下ろしていて
あたしのいる場所を不憫に思っていてくれたらいいな
飛んでいけ
どこかへ飛び出していきたい
田舎カプセルをぱっかり開いて
地酒と泥の匂いのするここから
ワインとアルミニウムの匂いの似合う場所へと
ころころと
転がっていきたい
でも足はびっしりと根を張ってしまっていて
恋をするにもここしかない
で
あたしは恋をした
何回目の恋だとか覚えちゃいない
さすがに千回はしていないと思うけど
何百回目だ?
そう聞かれたらさすがに数えてしまう
彼は毎日出勤にスポーツ自転車を使う健康マンで
歳はあたしより40も上
あたしは彼に「ムキリーマン」と名前をつけた
ほんとうは社会的に正しい名前があったけど
似合わないと思ったので
「いよっす!」
彼の朝のあいさつ
ムードは健康
ヨーグルトの似合う気持ちになる
あたしはただぺこりと頭を下げて
自分の気持ちを見送った
川はさらさらと流れて
あたしの気持ちを遠く連れていってくれた
ねえUFO
見ててくれた?
次の朝目覚めると
あたしは高い空から落ちていた
雲を突き破ると
フライトシュミレーターで見たことあるような地上の風景が迫ってきた
「あー……あーーー……ああー……」
あたしはそれしか言えなかった
まあ
どうせ夢だし
そう思って余裕こいてると
見たことある屋根が迫ってきた
自分の住んでる家の屋根だあれ
田んぼや畑やあぜ道にも見覚えがある
流れる川も見知ってる
あたしの住んでる村だ
おらが村だ
そう思ってると
激突して
あたしはバラバラのしめっぽい肉片になって飛び散って
親切なひとがかき集めてくれた
そのひとはどうやら宇宙人らしかった
集める手つきもくっつける手際も地球人とは違っていたからだ
やめて
あたしそんな形じゃない
ストップ
あたしちゃんと地球人の形してたはず
出来上がったあたしは
見たことのないあたし
なりたくもないあたし
触手もちゃんとあった
目が覚めると夢だったのでクッキーを作った
ふるった薄力粉にバターを混ぜて
たまごは黄身だけとってしろみは捨てて
数えきれないたまごを割った
数えきれないしろみを捨てた
捨てられたしろみは流しの排水溝を通って
いつかしろみすての海へ辿り着くのだろう
しろみすての海に辿り着いたしろみたちは
メレンゲのように美しく
軽く
は
ならなくて
どろりとしたまま海藻に絡みついて
人間に集められてぬるぬるした液体として売られて
いつかお風呂場に戻ってくるのだろう
きっとそのほうが幸せだ
きっとみんなに喜ばれる
みんな
集まれー
体育会系も
文系も
髪を染めた中学生もちゃんといる
この田舎の村
みんな集まって
ラジオ体操もちゃんとする
消防団も結構張り切ってる
そんな朝に寝ぼけて
あたしは余熱でクッキーを焦がしてしまった
プレーンなのに
チョコみたい
何か忘れてる気がするな
そうだ猫の背中をまだ撫でてなかった
急いで撫でて
急いで準備をして
急いでクッキーをタッパーに詰めて
外に出ると
のどかな緑色の景色の上に浮かんだ青空に
UFOだ
UFO
飛んでる!
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