スウィートカース(Ⅴ):カラミティハニーズ

湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)

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第三話「疾駆」

「疾駆」(7)

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 日本、赤務市。

 こちらの時間では、いまは真夜中だ。

 いびきをかいて眠っていた褪奈英人あせなひでとは、いきなり叩き起こされるはめになった。がたがた震える携帯電話を手探りで掴むと、通話ボタンを押す。

「っせえな。だれだよこんな夜中に?」

〈私です、ヒデト〉

 ヒデトのつけた電灯は、そのくせ毛だらけの頭を照らした。

「ああ? ミコ? 変えたのか、ケータイ?」

〈はい、くわしい説明はまたのちほど。いま自宅ですね?〉

 頭をかいてあくびしながら、ヒデトは答えた。

「あたりまえだろ。いま何時だと思ってやがる……なんだそっち、やけに騒がしいな。戦争でもやってるのか?」

〈さすが、勘が鋭いですね。大至急、美樽びたる山の研究所へ向かってください〉

「はあ? なんだよいきなり?」

〈ヒデトの〝黒の手ミイヴルス〟の能力で〝熱砂の琴イズルハープ〟を送ってほしいんです〉

 驚きに、ヒデトは一メートルも跳ね上がった。

「い、いい〝熱砂の琴イズルハープ〟だって!? 組織に無断でか!? ってーかおまえ、いまどこでなにしてる!?」

〈おっしゃったように、戦争です。現在と未来の。詳細は戻ってから報告しますし、組織への始末書も私が書きます〉

「いや簡単に言うけどな、けっきょく研究所に忍び込むのは俺だぜ?」

〈そうですね……あとは一回、あなたの勉強を肩代わりしましょう。あいた時間でデートしません?〉

「あれだけかたくなに宿題の代行をこばんでたおまえが、まさか自分からそれを切り出すなんて。ただごとじゃなさそうだな。どうなっても知らないぞ?」

〈ありがとうございます。その、遠く離れた場所で、ヒデトの声が聞けて嬉しいです〉

 携帯電話を肩と耳ではさんだまま、おおいそぎで着替えしながら、ヒデトはほほ笑んだ。

「俺もさ、ミコ」
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