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「捨てられた勇者」
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「っ……眩し……」
目を開けた瞬間、真木智也(まき ともや)は強い光に包まれていた。金属の匂いと荘厳な鐘の音、肌を撫でる冷たい石の感触が五感を満たす。
「成功か……!?」
誰かの声が響く。光が収まると、そこは豪華な大広間だった。大理石の床に、赤絨毯が敷かれ、正面には王座。そして、玉座に座る髭を蓄えた男が立ち上がる。
「異界の勇者よ。そなたを我が王国〈サリオス〉に召喚せし者である」
智也は思考を整理できずに呆然と立ち尽くしていた。
「ここ……どこですか……?」
「うむ、戸惑うのも無理はない。そなたはこの世界の外より呼ばれし存在。我らが勇者として、魔王を討つ使命を負っている」
――異世界召喚。夢のような話だが、今この場の現実感は、疑いようもない。
「……俺が、勇者……?」
「その通りだ」
王の隣にいた、金髪の青年が前に出る。煌びやかな服装と自信に満ちた態度。どうやら第一王子らしい。
「おい、さっさと“鑑定”を使え。こいつが本物の勇者なら、固有スキルを持っているはずだ」
魔法陣が智也の頭上に浮かび、淡く光る。
「ふむ……これは……?」
王子の隣にいた老人――魔導士らしき男が、顔をしかめた。
「……魔力量、限界値0。スキル無し、身体能力も並以下……これは……」
「はぁ!? ちょっと待て、なんだそれ!」
王子が怒鳴る。
「た、たぶん何かの間違いでは――」
智也が口を挟もうとしたが、貴族の一人が鼻で笑った。
「こいつ、ただの平民ではないか。魔力もスキルも持たぬ者など、掃いて捨てるほどおるわ!」
「勇者どころか、ただのゴミだな」
別の貴族も冷笑を浮かべる。
「陛下、このままでは民に示しがつきません。すぐに次の召喚を行うべきかと」
智也はその言葉に、心を締めつけられた。
「ま、待ってください……俺は、何もわからないけど、呼ばれてここに来たんです。勝手に“使えない”って――」
「黙れ」
王子が一喝する。
「勘違いするな。この国の命運を背負わせるに値しないと判断されただけのこと。貴様のような“ハズレ”には、下町で生きる自由をやろう」
王が静かにうなずいた。
「門番に言って、寝床と粗末な衣を与えよ。追放せよ」
「……そんな……」
智也の声は、誰にも届かなかった。
* * *
城門の外。薄汚れた地面の上に投げ出された智也は、衛兵の一人に背を向けられたまま、言い放たれる。
「感謝しろよ。生きて帰されたんだからな、“元・勇者様”」
石畳の上に響く冷笑とともに、城門が閉ざされた。
空は赤く染まり、街の喧騒が遠く聞こえる。だが智也の耳には、何も入ってこなかった。
「なんだよ……それ……。ふざけんな……!」
拳を握り、地面を殴る。悔しさと無力感が胸を締めつける。
「見てろよ……。絶対に、見返してやる……」
その言葉が、世界のどこかに響いた。
闇の底で、何かが目覚めた気がした。
目を開けた瞬間、真木智也(まき ともや)は強い光に包まれていた。金属の匂いと荘厳な鐘の音、肌を撫でる冷たい石の感触が五感を満たす。
「成功か……!?」
誰かの声が響く。光が収まると、そこは豪華な大広間だった。大理石の床に、赤絨毯が敷かれ、正面には王座。そして、玉座に座る髭を蓄えた男が立ち上がる。
「異界の勇者よ。そなたを我が王国〈サリオス〉に召喚せし者である」
智也は思考を整理できずに呆然と立ち尽くしていた。
「ここ……どこですか……?」
「うむ、戸惑うのも無理はない。そなたはこの世界の外より呼ばれし存在。我らが勇者として、魔王を討つ使命を負っている」
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「……俺が、勇者……?」
「その通りだ」
王の隣にいた、金髪の青年が前に出る。煌びやかな服装と自信に満ちた態度。どうやら第一王子らしい。
「おい、さっさと“鑑定”を使え。こいつが本物の勇者なら、固有スキルを持っているはずだ」
魔法陣が智也の頭上に浮かび、淡く光る。
「ふむ……これは……?」
王子の隣にいた老人――魔導士らしき男が、顔をしかめた。
「……魔力量、限界値0。スキル無し、身体能力も並以下……これは……」
「はぁ!? ちょっと待て、なんだそれ!」
王子が怒鳴る。
「た、たぶん何かの間違いでは――」
智也が口を挟もうとしたが、貴族の一人が鼻で笑った。
「こいつ、ただの平民ではないか。魔力もスキルも持たぬ者など、掃いて捨てるほどおるわ!」
「勇者どころか、ただのゴミだな」
別の貴族も冷笑を浮かべる。
「陛下、このままでは民に示しがつきません。すぐに次の召喚を行うべきかと」
智也はその言葉に、心を締めつけられた。
「ま、待ってください……俺は、何もわからないけど、呼ばれてここに来たんです。勝手に“使えない”って――」
「黙れ」
王子が一喝する。
「勘違いするな。この国の命運を背負わせるに値しないと判断されただけのこと。貴様のような“ハズレ”には、下町で生きる自由をやろう」
王が静かにうなずいた。
「門番に言って、寝床と粗末な衣を与えよ。追放せよ」
「……そんな……」
智也の声は、誰にも届かなかった。
* * *
城門の外。薄汚れた地面の上に投げ出された智也は、衛兵の一人に背を向けられたまま、言い放たれる。
「感謝しろよ。生きて帰されたんだからな、“元・勇者様”」
石畳の上に響く冷笑とともに、城門が閉ざされた。
空は赤く染まり、街の喧騒が遠く聞こえる。だが智也の耳には、何も入ってこなかった。
「なんだよ……それ……。ふざけんな……!」
拳を握り、地面を殴る。悔しさと無力感が胸を締めつける。
「見てろよ……。絶対に、見返してやる……」
その言葉が、世界のどこかに響いた。
闇の底で、何かが目覚めた気がした。
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