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誘拐

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※三人称です!



「ねぇ、リリアさん。リリアさんから見て勇輝ってどんな人なの?」

「へ?わ、私から見て…ですか?そう…ですね……やっぱり…その…素敵な方…ですね。」

そういうリリアの頬はほんのり赤かった。

「素敵って……具体的には?」

「ぐ、具体的に……ですか?えっと……その……」

「…その?」

「…………カッコいい…ですし……優しいですし……ぜ、全部…素敵……です…」

最初はほんのり赤らんでいた頬も、気がつけば真っ赤になっていた。

「へぇ~…なるほどねぇ……」

「そ、そういうミクさんはどうなんですか!?」

恥ずかしさをごまかすようにリリアは美空に問いかけた。

「う~ん……どうなんだろうね?でもね…昔、同級生にいじめられてた私を助けてくれたのが勇輝なんだよ。それからかな?」

「いじめられてた……ですか?」

「そうそう。筆箱を盗られたりとか、靴を隠されたりとか。それを知った勇輝がいじめっこを懲らしめてくれたんだよ。」

「さすがユウキさんですね!……あ!着きました!ここです!ここのスイーツは絶品なんですよ!」

目的地であるお菓子屋さんに着き、二人は早速店に入る。

「このお店は中でもレアチーズケーキがオススメです!」

「そうなの?じゃ、それにしよっと。」

二人でケーキを食べ終え、次に向かったのは洋服屋だ。

「私は普段着はいつもここで購入してるんです。お値段もお手頃ですし、質もいいんです。今日は私がプレゼントしますね!」

「え?いいの?」

「はい!私もたくさんいただいてますから!」

「じゃ、お言葉に甘えようかな。」

リリアが美空の服を選んでいる間は、美空は店の外で待っておくことになった。

「あっ……」

美空は走っている小さい男の子が転けたのを見て、すぐに駆け寄った。

「大丈夫?歩ける?」

「うぅ…いたいよ……」

「……お母さんはどこにいるのかな?」

人通りも多く、危ないのに子供を一人にしている親に美空は違和感を覚えた。

「あの…お姉ちゃん……そこのお店、僕のお家でお父さんとお母さんがいると思うんだけど……」

男の子が指差したのは向かい側にあるお店で、今は店を閉めているみたいだ。美空は『家の近くだから一人でも大丈夫だと思ったのかな』と男の子が一人で歩いている状況に納得した。

「そっか。じゃ、私と一緒に帰ろっか。」

美空と男の子は手を繋いで男の子の家である店に向かった。

美空達が店の裏口から店に入ると大柄な男が三人がいた。その三人とは別に、手足を縛られ、気を失っている男性もいた。明らかに異様な雰囲気に美空は連れてきた男の子を見た。

「ごめんなさいっ!」

「…え……?」

男の子は美空に体当たりをした後、裏口から出て鍵を閉めた。

「え?ちょっ!ド、ドア…開かな……ッ!!」

美空がドアを開けようとしても鍵を閉められたドアが開くことはなく、三人いた男のうち一人が美空の首元にナイフを当てた。

「よお…姉ちゃん……死にたくなかったら俺達の言う通りにしろ?いいな?」

「……分かった。」

美空に焦った様子はなく、男の言いなりになることにした。理由は縛られている男性は恐らくさっきの男の子の父親で、男の子は父親を助けるために男達の言いなりになっていただけだと思ったから。それが事実ならとりあえず男の言う通りにして二人の安全を確保したほうがいい…そう考えたのだ。

「ずいぶんと素直だな?何か企んでのか?んん?」

「別に?私も自分が戦う術を持ってないのに抵抗するだけ無駄だと思っただけ。」

「自分の立場をわきまえているようだな。それにかなり賢いようだ。よし、お前みたいな頭のいい奴にはいい物をやるよ。オイ!アレを持ってこい!」

男がそう言うと別の男が腕輪とコップ一杯の水を持ってきた。

「腕を見せろ。」

美空は一瞬躊躇したが、直ぐに腕を男に見せた。男は美空の手を強引に掴むと腕輪を着けた。

「その腕輪は魔力を封じる効果がある。魔法を使って逃げ出そうなんて思うなよ?」

「…ッ!!」

美空は最悪の場合はなんとか魔法を使って逃げようと考えていたため明らかに動揺した。

「ん?なんだ?俺達の言う通りにするんだろ?今さら前言撤回はないからな?」

男は気持ちの悪い笑みを見せた。

「ッ……分かった。唯一の希望もなくなったことだし、ここからは本当に抵抗しようなんて考えないよ。」

「あぁ、それでいいんだ……」

「ッ……」

男は地面に座り込んでいた美空に目線を合わせ、太ももを撫でた。

「おい…縄を持ってこい。」

「こちらに!」

男が縄を手に取ると、美空の手を後ろで縛った。

次に男が手に取ったのは水が入ったコップだった。

「ほら、飲めよ。ああ…手が使えなかったな。お前ら、コイツを押さえてろ。」

二人が美空の体を押さえつけ、身動きが取れないようにした。

「いたっ………ッ!?」

美空を押さえつけていた二人の手が少しイヤらしいように動いた。それはお構い無しに男は美空の口にコップを押し付ける。

「ほら、特別に飲ませてやるよ。」

嫌でも入ってくる水も男の子のことを考えると飲まないわけにもいかず、口に入ってきた水は全て飲み込んだ。

「いいこだなぁ…」

「ッ!!」

そう言いながら男は美空の頬に手を触れた。

「安心しろよ。すぐには手を出さないさ。しっかり働いてもらわないといけないからな。」

男はまた気持ちの悪い笑みを浮かべ、美空を見た。

「しっかり働いたらご褒美に気持ちよくしてやる……楽しみにしてろよ?」

「……ッ!!」

美空は恐怖感から男の顔を見ることが出来ず、目を逸らしていた。やがて、少し時間が経つと体に異変を感じ始めた。

「……?」

どこか、ボーッとして視界もボヤけ、頭が真っ白になる。

目は開いているものの、生気はなかった。

「いい感じになってきたな。お前ら、そろそろ場所を……ッ!」

バンッ!

というドアを開けた音がした。

「ミクさん!」

リリアは店から出ると美空がいないことに気付き、魔力探知で美空の魔力を探し、美空を追いかけて来たのだ。
 
「クソッ!」

男は魔法陣が書かれた紙を取り出すとそれをビリッと破いた。

「……ッ!それは!待って!」


リリアは美空に駆け寄る。だが……遅かった。美空と男三人は姿を消し、リリアと手足を縛られた男性だけが部屋に残ったのだった……



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