29 / 47
街の宿で…
しおりを挟む
「スゴいよ!どこで買ったの!?」
「アタシこの絵買いたいんやけど!?」
「え、えっと……」
……どうしたら……?
あの後、街の絵を描いて、書き終えたら夕方になっていた。で…そろそろ宿に帰るために、女性陣(スイも)を起こしたところで俺が描いた絵が見つかってしまった。どうやらエレンさんとリンファさんは買った物だと思っているようで、どこで買ったのか質問攻めにしてくる。そこまで上手くもないんだけどな……?
「……お前ら、勘違いしてるみたいだが……それ、ヒビキが描いたんだぞ。」
どうしようかとあたふたしていたらギルアスさんがフォローしてくれた。
「え、えぇ!?ヒビキが描いたの!?これを!?」
「ホンマかいな!?ヒビキはん、逆に聞くけど出来ひん事あるん!?なんでも出来るやん!!」
『なんでも』は出来ないんだけどな?リンファさんの中で随分と過大評価されてるみたいで荷が重いな……
「えっと……そこまで上手くはないと思いますが……気に入ってもらえたなら良かったです。」
「めちゃくちゃ上手だからね!?」
「ヒビキはん!謙虚すぎるんも嫌味に聞こえるから気ぃつけなアカンで!変なヤツに絡まれるで!」
「いや…でも……」
そんなに上手くないんだよなぁ……中学の美術部の部長はもっと上手かったし。
「まぁ……ヒビキだしな。気にしても仕方ない。そういうヤツだと思うのが一番だ。」
「それもそっか。」
「確かに納得やな。」
……ギルアスさん…何気にヒドイような……?エレンさんにリンファさんも……
「ヒビキ~……ねむいよ……」
隣でこんなに騒いでもスイはまだ半分寝ているみたいだ。
「う~ん…スイ、抱っこしようか?」
半分寝ているスイ(めっちゃ可愛い)にそう提案してみた。大通りは人が多いから危ないし、スイもまだもう少し寝れるから一石二鳥だよな?
「ヒビキ……だっこ……」
「はいはい。…よっと……」
俺がスイを抱いて少し揺れるとスイは直ぐに寝息を立て始めた。
「いや…もう完璧にお母さんやん……ヒビキはん、アタシ、いつでもヒビキはんとの子供産んでもええで~」
「はあっ!?」
「そ、それは結構です!」
なんでそうなるんだよ!ギルアスさんもリンファさんのことスゴい目で見てるし!そ、それに子供って…そ、そういうこと?…ああっ!!考えるのヤメだ!
「ハァ…とりあえず宿に帰るぞ。」
「はい。」
……と、そんな感じで宿に帰ってきた。
「あの…エレンさん。少しいいですか?」
寝ているスイを抱いて、部屋に入る前にエレンさんを呼び止めた。
「うん!どうしたの?」
「えっと……呼び止めてすみません……スイをベッドに寝かせたいので部屋に入ってから座って話しませんか?」
「うん、そうしよう!私も、ヒビキが立ったままなら提案しようと思ってたんだよ。」
「そうだったんですね。とりあえず、部屋に入りましょうか。」
ドアを開けると、ベッドと二人掛けの椅子とテーブル、台所があった。
ギルアスさんは安くもないし、高くもないって言ってたけど……実は結構いい宿だよな……?台所まであるし……
「……ねぇ…ヒビキ。ギルド長…高くもないし安くもないって言ってたよね…?絶対いい宿だよね?」
……エレンさんも同じことを感じたみたいだな。
「やっぱりそうですよね………まぁ…費用に関してはギルアスさんに任せていますから……とりあえず、座って下さい。お茶の準備をしますね。」
「え?別に気を使わなくていいよ?」
「いえ…親しき仲にも礼儀あり、ですから。」
エレンさんは驚いたように目を見開いてから嬉しそうに笑って言った。
「うん!じゃあ、お願い!」
俺はスイをベッドに寝かしてから、お茶…日本でいう紅茶を淹れて椅子に座る。
「あの……エレンさん、話しなんですが……」
「うん、どうしたの?」
「えっと……ダグラスさんのことで……俺はもう気にしてないので…そろそろ許してあげてほしいんです。ギルアスさんが言うには、大分落ち込んでいるみたいで……」
「……ヒビキがいいなら許してあげる。でも、次ヒビキに何かしたら絶対に許さないよ。」
「そ、そうですか……ま、まぁ…とりあえず、今回の件については許してあげてください。」
「うん、分かったよ。」
「ありがとうございます。」
なんか俺がお礼を言うのも違う気がするけど……とりあえず…次は許さないって言ったエレンさんの顔が怖かった……
「確か明日は集合が十時だったよね?」
「はい、そうですね。十時に関所で商人と合流です。」
「じゃあさ、明日の朝、ちょっと朝市に行ってみない?果物とか、お肉とか安くで売ってるんだよ!」
「いいですね。何時くらいから見に行きますか?」
「う~ん……八時くらいかな?」
「了解です。」
……それからエレンさんと少し雑談した後、今日はお開きになった。
※エレン視点
私はヒビキとスイの部屋を出て、私とリンファさんが借りている部屋に入ると真っ先にベッドに転がりこんだ。リンファさんはギルド長達と明日の打ち合わせをしてるみたいで部屋にいなかった。
「ふふふっ…」
今、私の顔はかなり、にやけてると思う。
―― 親しき仲にも礼儀あり、ですから ――
そう言ったヒビキの声が私の耳から離れない。
だって、ヒビキは私と親しいって思ってくれてるんだもん。これって脈アリかな!?
「……ヒビキは何に怯えてるんだろう……?」
私はふとそう思った。ヒビキはいつも人の事を考えてて、自分のことは後回し。最初はただ親切にしてくれてるだけだと思ってた。でも……『あの人』に怒鳴られた時のヒビキは何かに怯えてた。それから、私の目にはヒビキが何かから目を背けてるように写るようになった。
「……いつか………いつか、ヒビキに心の底から笑ってほしいな……」
ヒビキの笑顔はとても優しくて暖かい。でも、やっぱり無理をしてる気がする。どこか、作り笑いのような気がする……
「ううん……笑ってほしいなら、私が笑わせてあげればいいんだよね。」
ヒビキは今、自分のことでいっぱいなんだよね?……ねぇ、ヒビキ。いつか、心に余裕が出来て、他のことに目を向けれるなら、私を見てほしいな……
……そんなことを考えていると、私は気が付けばそのまま眠っていた……
「アタシこの絵買いたいんやけど!?」
「え、えっと……」
……どうしたら……?
あの後、街の絵を描いて、書き終えたら夕方になっていた。で…そろそろ宿に帰るために、女性陣(スイも)を起こしたところで俺が描いた絵が見つかってしまった。どうやらエレンさんとリンファさんは買った物だと思っているようで、どこで買ったのか質問攻めにしてくる。そこまで上手くもないんだけどな……?
「……お前ら、勘違いしてるみたいだが……それ、ヒビキが描いたんだぞ。」
どうしようかとあたふたしていたらギルアスさんがフォローしてくれた。
「え、えぇ!?ヒビキが描いたの!?これを!?」
「ホンマかいな!?ヒビキはん、逆に聞くけど出来ひん事あるん!?なんでも出来るやん!!」
『なんでも』は出来ないんだけどな?リンファさんの中で随分と過大評価されてるみたいで荷が重いな……
「えっと……そこまで上手くはないと思いますが……気に入ってもらえたなら良かったです。」
「めちゃくちゃ上手だからね!?」
「ヒビキはん!謙虚すぎるんも嫌味に聞こえるから気ぃつけなアカンで!変なヤツに絡まれるで!」
「いや…でも……」
そんなに上手くないんだよなぁ……中学の美術部の部長はもっと上手かったし。
「まぁ……ヒビキだしな。気にしても仕方ない。そういうヤツだと思うのが一番だ。」
「それもそっか。」
「確かに納得やな。」
……ギルアスさん…何気にヒドイような……?エレンさんにリンファさんも……
「ヒビキ~……ねむいよ……」
隣でこんなに騒いでもスイはまだ半分寝ているみたいだ。
「う~ん…スイ、抱っこしようか?」
半分寝ているスイ(めっちゃ可愛い)にそう提案してみた。大通りは人が多いから危ないし、スイもまだもう少し寝れるから一石二鳥だよな?
「ヒビキ……だっこ……」
「はいはい。…よっと……」
俺がスイを抱いて少し揺れるとスイは直ぐに寝息を立て始めた。
「いや…もう完璧にお母さんやん……ヒビキはん、アタシ、いつでもヒビキはんとの子供産んでもええで~」
「はあっ!?」
「そ、それは結構です!」
なんでそうなるんだよ!ギルアスさんもリンファさんのことスゴい目で見てるし!そ、それに子供って…そ、そういうこと?…ああっ!!考えるのヤメだ!
「ハァ…とりあえず宿に帰るぞ。」
「はい。」
……と、そんな感じで宿に帰ってきた。
「あの…エレンさん。少しいいですか?」
寝ているスイを抱いて、部屋に入る前にエレンさんを呼び止めた。
「うん!どうしたの?」
「えっと……呼び止めてすみません……スイをベッドに寝かせたいので部屋に入ってから座って話しませんか?」
「うん、そうしよう!私も、ヒビキが立ったままなら提案しようと思ってたんだよ。」
「そうだったんですね。とりあえず、部屋に入りましょうか。」
ドアを開けると、ベッドと二人掛けの椅子とテーブル、台所があった。
ギルアスさんは安くもないし、高くもないって言ってたけど……実は結構いい宿だよな……?台所まであるし……
「……ねぇ…ヒビキ。ギルド長…高くもないし安くもないって言ってたよね…?絶対いい宿だよね?」
……エレンさんも同じことを感じたみたいだな。
「やっぱりそうですよね………まぁ…費用に関してはギルアスさんに任せていますから……とりあえず、座って下さい。お茶の準備をしますね。」
「え?別に気を使わなくていいよ?」
「いえ…親しき仲にも礼儀あり、ですから。」
エレンさんは驚いたように目を見開いてから嬉しそうに笑って言った。
「うん!じゃあ、お願い!」
俺はスイをベッドに寝かしてから、お茶…日本でいう紅茶を淹れて椅子に座る。
「あの……エレンさん、話しなんですが……」
「うん、どうしたの?」
「えっと……ダグラスさんのことで……俺はもう気にしてないので…そろそろ許してあげてほしいんです。ギルアスさんが言うには、大分落ち込んでいるみたいで……」
「……ヒビキがいいなら許してあげる。でも、次ヒビキに何かしたら絶対に許さないよ。」
「そ、そうですか……ま、まぁ…とりあえず、今回の件については許してあげてください。」
「うん、分かったよ。」
「ありがとうございます。」
なんか俺がお礼を言うのも違う気がするけど……とりあえず…次は許さないって言ったエレンさんの顔が怖かった……
「確か明日は集合が十時だったよね?」
「はい、そうですね。十時に関所で商人と合流です。」
「じゃあさ、明日の朝、ちょっと朝市に行ってみない?果物とか、お肉とか安くで売ってるんだよ!」
「いいですね。何時くらいから見に行きますか?」
「う~ん……八時くらいかな?」
「了解です。」
……それからエレンさんと少し雑談した後、今日はお開きになった。
※エレン視点
私はヒビキとスイの部屋を出て、私とリンファさんが借りている部屋に入ると真っ先にベッドに転がりこんだ。リンファさんはギルド長達と明日の打ち合わせをしてるみたいで部屋にいなかった。
「ふふふっ…」
今、私の顔はかなり、にやけてると思う。
―― 親しき仲にも礼儀あり、ですから ――
そう言ったヒビキの声が私の耳から離れない。
だって、ヒビキは私と親しいって思ってくれてるんだもん。これって脈アリかな!?
「……ヒビキは何に怯えてるんだろう……?」
私はふとそう思った。ヒビキはいつも人の事を考えてて、自分のことは後回し。最初はただ親切にしてくれてるだけだと思ってた。でも……『あの人』に怒鳴られた時のヒビキは何かに怯えてた。それから、私の目にはヒビキが何かから目を背けてるように写るようになった。
「……いつか………いつか、ヒビキに心の底から笑ってほしいな……」
ヒビキの笑顔はとても優しくて暖かい。でも、やっぱり無理をしてる気がする。どこか、作り笑いのような気がする……
「ううん……笑ってほしいなら、私が笑わせてあげればいいんだよね。」
ヒビキは今、自分のことでいっぱいなんだよね?……ねぇ、ヒビキ。いつか、心に余裕が出来て、他のことに目を向けれるなら、私を見てほしいな……
……そんなことを考えていると、私は気が付けばそのまま眠っていた……
33
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる