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一章 東の山と憧れの女性と亡霊騎士
物真似カウンター。アルビスにとって今、一番大切な人。
しおりを挟むある日、俺はいつものように一人で山に出た。
東の山の中でも、もっとも危険で、強い魔物がうじゃうじゃいる"古き魔術師の森"へ踏み込んでゆく。
さて、今日はどんな相手に出会えるか……
「FUNGA!」
そうして俺の前に現れたのは古のゴーレムと言われる、危険クラスの魔物だった。
更に高額な報奨金がかけられている討伐対象でもある。
こいつは丁度いい相手だぜ!
俺はいつものようにショートソードを手にして突っ込む。
できるだけ闘争心をむき出しにする。
すると、古のゴーレムの目が強い光を放った。
「FUNNN GAAAA!!」
古のゴーレムは地面を隆起させ、砕くガイヤインパクトという技を放った。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
正面から喰らった俺は盛大に吹っ飛ばされる。
目の前がくらくらする。多分肋が何本か折れたようだ。
だけど意識はある。なら、十分!
「ガイヤインパクトぉ!」
「FUNGA!?」
俺は古のゴーレムのガイヤインパクトを「物真似」した。
肋が折れるくらいの威力で放ってきたんだから、威力は十分相当なものだ。
俺の物真似ガイヤインパクトは古のゴーレムを一撃で粉砕する。
これこそ2年間の活動の中で気がついた俺の必殺技――「物真似カウンター」だ。
俺の「物真似」能力は、直前の相手の行動をそっくりそのまま真似ることができる。それは敵に対しても同じだった。
加えて、受けたダメージに応じて威力が変化するらしい。
そしてこのカウンターの便利なところは、どんな怪我を負っても、意識さえ残っていれば体が勝手に動いて発動してくれるという点だ。
どんなに敵が格上だろうと、どんなに強い技を放ってこようとも、意識さえ残っていれば、戦闘力が低い俺でも十分に対処ができる。
「ぐわぁ……いてぇ……! は、早くしないと死んじまうっ……」
とはいえ、痛みが伴うのは否めない。今だって、このまま数分もがいていたら死んでしまうだろう。
俺はたんまり買い込んだ最高級回復薬であるエリクサを、2本まとめてがぶ飲みした。
さすがは最高級品。あっという間に肋が繋がって、体から傷が消えてゆく。
みんなに引っ張りだこなおかげで、お金はたんまりある。
エリクサをいくら買ったって、生活に困ることはないんだな、これが。
「うっし! じゃあ、次行ってみようか!」
すっかり傷を癒した俺は、更なる強敵を求めて、森を彷徨い歩く。
この鍛錬のお陰で大分、戦闘力が鍛えられた。お金も稼げるようになったので、命の危険が少なくなった。
それにおまけでたくさんの魔物の耐久力や特性を知ることができた。
だからこそ今の俺がある。
別に大金が欲しいからじゃなかった。
みんなにチヤホヤされたいとかそういうのでもなかった。
俺はただ、自分の授かった能力を活かして、みんなの役に立ちたかった。
貴重な力を得たからこそ、これをみんなの為に役立てたい。
みんなの笑顔を守りたいと願って、こんなことを続けている……なんて、カッコつけたことを考えているけど、実は別の気持ちがあることは十分に承知している。
「そ、そろそろ帰るか……」
エリクサの在庫がなくなった俺は、ボロボロの身体を引きずって東の山の都へ帰ってゆく。
そして都の入り口付近に佇む、"治癒教会"へ飛び込んだ。
「た、ただいま……!」
「お帰りー……ってぇ、お兄ちゃんまたぁ!?」
祭壇の向こうから、金髪の可愛い女の子が駆け寄ってくる。
最初の頃はボロボロの俺を心配してくれたけど、もうすっかり慣れてしまったらしい。
「お兄ちゃん、来るなら来るって言ってよ! いきなり来られても、お夕飯困るんだよ?」
「は、はは……ごめんね……」
「それにいっつもそんなボロボロじゃあ、いつか死んじゃうんだよ? わかってる?」
「わ、わかってるから……頼む、シグリッド! は、はやくシルバルさんを……今日はマジで、このままじゃ死ぬぅ……」
「もう……お姉ちゃーん! またぼろう雑巾のアルお兄ちゃんが来たよー!」
シグリッドがそう叫ぶと、脇の部屋から俺にとっての女神様が出てきた。
相変わらず俺好みの立派な胸で……眼福っす!
「シグリッド、お湯を沸かして! あと治療の準備を!」
「はぁーい」
「アル君立てる?」
「は、はい……いつもすみません、シルバルさん……」
俺は妹のシグリッドと違って、今でも真剣に心配してくれるシルバルさんの肩を借りた。
意識は朦朧としているんだけど、シルバルさんのいい匂いやら、体の柔らかやらははっきりと感じ取れる。
やべ……いつも思うけど、このまま死んじまいそう……
なんて考えながら、俺は教会にあるシルバルさんの治療室へ運ばれて行く。
シルバルさんは東の山の都で、唯一の治癒教会を運営している。
治癒教会ってのは、東の山独特の施設で、魔法と医術を掛け合わせた診療施設のことだ。
この2年、俺は結構な頻度でシルバルさんの治癒教会のお世話になっている。
「ふぃー……いつもありがとうございます、シルバルさん。やっぱシルバルさんの腕は凄いですね!」
すっかり傷を癒してもらった俺はいつも通りに礼を言う。
するとシルバルさんは、いつにも増して寂しそうな笑顔を浮かべた。
「聞いてはくれないと思うけど、もう一度敢えて言わせて。いくら治癒技術が発展しているからって、いつどうなるかわからないのよ? 止めることはできないの?」
「ありがとうございます。でも、できません。これが俺にできる唯一のことです。物真似士の宿命だと思ってます」
シルバルさんはそれ以上に何も言っては来なかった。
実はシルバルさんだけは、俺の持つ「物真似」の能力を知っている。
この人には知ってもらいたいと思ったからだ。
実際、俺は東の山でうまく立ち回ってはいる。でも、時に辛くなったり、孤独を覚えたりすることはある。
だからこそ、信頼する誰かに、俺の真実を知っていてもらいたい。
そう思えたのがシルバルさんだった。
なんで相手がシルバルさんだったかというと……俺はこの年上の女神様に、ずっと恋をしているからだ。
時々、同じ家業の女の子が告白してきたりするけど俺は決して揺らがない。
シルバルさん一筋だからだ。
でも、この想いはきっと叶うことはない。
何故ならば……
「アルお兄ちゃーん! 元気になったんだったら手伝ってよー! こっちは急に来られて大変なんだよー!」
扉の向こうから、シグリッドの声が響いてきた。
「それじゃ今日も腕を振るっちゃいますかね!」
「あ、い、良いよわ! いつも悪いわよ……」
俺の女神様は困った顔をすると、むっちゃ可愛いんだよね。
「良いっす、良いっす! 料理、趣味なんで! それじゃ待っててくださいね!」
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