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四章 臍の街、集うアルビスの女たち
爆弾発言
しおりを挟む「教えて! なんであの優しいアルさんが、あなた達に辛く当たっているのかを!」
ーー2年前、アルさんと別れた直後。
あたしは"漆黒の騎士団"が滞在している宿の一室で、そう声を荒げた。
途端、漆黒の騎士団の全員が、バツの悪そうな顔をする。
やがて、リーダーのノワルとかいう男があたしに視線を合わせてくる。
「君は確か、アルビスと一緒にいた……」
「あたしはドレ! アルさんのパートナーだよ!」
「そうか……アルビスにはこんなにも良い仲間ができたんだな……」
「グジグジ言ってないで、さっさとあたしの問いに答えてよ! なんでアルさんはあなた達のことを嫌ってるの!?」
ようやくノワルが口を割り、アルさんとの過去を語り始めた。
かつて彼らがアルさんの力に嫉妬し、一方的に追放したことを……
全てを聞こえたあたしは怒りを通り越して、呆れてしまった。
「なんなのそれ? アンタ達、ただのバカじゃない」
「ッ……」
「はんっ! そんな最低な連中があの漆黒の騎士団だったなんて幻滅だね! そんなんだから、アラモなんかに捕まってたんだね!」
漆黒の騎士団は何も言えず、黙りこくっていた。
アルさんにフラれたネーロだかいう、女の魔法使いがこっちを睨んできていた。
しかし私が逆に睨み返すと、短い悲鳴をあげて、視線を外す。
こんな女にアルさんが騙されなくて良かった、と心底思った。
「真実を教えてくれたことにはお礼を言っておくよ。どうもありがとう! せいぜいこれからのご活躍をご祈念しておりますね!」
ーーこの時、あたしは決意した。
あたしは必ず強くなる。強くなって必ずアルさんを支えてみせると。
交換した銃に誓って。あの人の横へ再び並ぶために。
15歳を迎えたあたしは、街の大人達の反対を押し切って、イーストウッドタウンを飛び出した。
そしてバウンティハンターを名乗り、アラモのような悪漢や魔物を倒しつつ、アルさんを探す旅に出る。
あたしがバウンティハンターを選んだのは、お金のため以上に、この名前を広大なる大陸全土へ轟かせたかったからだ。
あたしの名が広まれば、大陸のどこかにいるアルさんにあたしの存在を知らせることができる。
そうしたらきっと再会できる。
そして再会できたら、あたしはもう一度、アルさんに伝えたい。
あなたのことが大好きで、ずっと側にいたいと!
●●●
俺は深夜の街で、ドレの姿を求めて走り続けた。
しかしなかなか姿が見つからない。
焦りは募る一方だった。
でもこういう時こそに冷静に。
もしも俺がドレだったら、今どこへ行くだろうかと改めて考え始める。
もう魔列車の始発まで時間がない。
俺は急いで駅へと向かってゆく。
「はぁ、はぁ……み、見つけた……!」
予想が当たり、駅舎のベンチで膝を抱えてうずくまっているドレの姿を見つけたのだった。
「探したぞ、ドレ」
「アルさん……?」
きっとすごく泣いたんだろう。
ドレは酷い顔になっていた。
「隣、座っても良いか?」
ドレは良いともダメとも答えなかった。
それならばと、俺はドレの横に座る。
すると彼女は僅かに俺から距離を置いた。
「ダメだよ、これ以上あたしに近づいちゃ……じゃなきゃ、あたしきっと……」
「……」
「きっとアルさんなら追いかけて来てくれるって期待してた。その通りになっちゃった。今、すごく嬉しい。でも、これ以上はダメ……我慢、できなくなっちゃう……」
「…………」
「あたし、そんなズルいことしたくないの。アルさんのことを想い続けていたのはあたしの勝手だし。いつまでもアルさんみたいな素敵な人が、ずっと一人でいる訳ないし……そんなことも想像できなかっただんて、あたしは相当なバカだよね……」
「……ありがとうドレ。そしてごめん。まさかあの時の言葉が、ここまで本気だったなんて……」
もしも過去に戻れるならば、その時の自分へドレの気持ちにもっと向き合うよう伝えたかった。
しかしそんなことできるはずも無い。
それに何となくだけど、ドレの中ではもう、答えが決まっているような気がしてならない。
やがてドレはずっと埋めていた膝から顔を上げる。
そして妙に色っぽくなった視線で俺を見つめてきた。
「あーあっ……あたしがアルさんの恋人になりたかったなぁ……敢えて、言うけどあたし結構モテるんだよ? 結構いろんなお誘いがあったんだけど、アルさんのために全部断ってきたんだよ?」
「それは……ごめん、本当に……」
「まぁでも、そういう選択をしてきたのはあたしだし……だからって欲望のまま、行動なんてしたくないし……」
「……」
「あくまであたしはアルさんを幸せにしたい。その上で一緒に時を重ねたいって想っていただけだから……」
「そっか」
「短い時間だったけど、またアルさんに会えて嬉しかったよ。今度会うときは、お互い冒険者として……」
「その話、ちょーっと待ったぁ!!」
突然、どこからともなくシグリッドの声を響き渡った。
俺とドレは揃って周囲を見渡す。
すると、目の前の闇が歪んで、形を成してゆく。
「シ、シグリッド!? なんでお前……?」
「や、やっぱり気になるから、幻視の術を使ってこっそり付けてた! それよりもーー!」
シグリッドはドレの目線まで屈み込む。
「貴方もしかして、西岸事変の英傑ドレで間違いないかな?」
「えっ? ま、まぁ、そういう人はたまにいますけど……」
「やっぱり! お兄ちゃん、この子すごい人なんだよ!」
それからシグリッドは嬉々とした様子で、西岸事変とやらのことを語り始める。
丁度一年前、西の果ての国の西海岸へ多数の魔群侵攻が確認された。
不意打ちを受けた海上警備隊は全滅し、西の果ての国は建国以来の危機に晒される。
そんな国家の危機を救ったのが、その場にたまたま居合わせたバウンティーハンター……ドレのことらしい。
その頃の俺は、ボルドー家で毎日レオヴィルに引っ張り回されていたから、世間のことをよく知らない。
「一つ聞かせて。ドレさん、貴方はなんでそこまで強くなったの? なんのために強くなろうと決意したの?」
「それは……」
「ごめん、この状況だと答えづらいよね。なら少し私のことも話すね。私は四年前、大きくなったらアルお兄ちゃんの力になりたくて、魔法の勉強を頑張った。だから、今のあたしがある。もう二度と、お兄ちゃんい辛いおもいをさせたくない。その一心で。貴方はどうなの?」
「あたしも……シグリッドさんと同じです。アルさんのことは好きです。それ以上に、いつの日か彼の力になりたいと思って今日まで努力をしてきました」
「そう……」
シグリッドは暫くの間黙り込む。
やがてシグリッドは口を開き、そして……
「な、なら……なら! そういうことならっ! これからは二人でお兄ちゃんのことを支えよう!」
「えっ……ええ!? い、良いんですか!?」
シグリッドの爆弾発言にドレを驚きの声を上げた。
渦中の俺も、状況がうまく飲み込めず、唖然としてしまっている。
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