【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス

文字の大きさ
122 / 123
【最終章:ベルナデットの記憶】

●おまけEND【ちーとだいまほうつかいロナ】

しおりを挟む


 あらゆる結末を見た元大魔法使いベルナデット=エレゴラを改め、すっかり魔力が戻ったアルラウネのロナはほんのちょっぴり不満を覚えた。

 みんな仲良しハーレムでのエンドは、確かに彼女が望んだものではある。これはこれで良し。
問題は、それぞれの少女達との個別の可能性である。

「なんで私だけクルスさんとの二人きりラブラブエンドがないんですか! これは由々しき事態です! タイトルにもある通り、私はメインヒロインなんです! だから個別エンドが無いのは、さすがに頂けません!」

 かくして、“初代”といって差し支えない、【ちーとだいまほうつかい】は禁忌魔法を発動させる決意を固めた。

その禁忌魔法こそ! 【次元連結魔法メイオウゼーライマ】――あらゆる時間、可能性を操作し、因果を無理やりこねくり回して自由に組み替える、魔女に匹敵するこの力。

 ぶっちゃけ無茶ぶりである、禁忌にも程がある。さすがは初代ちーとだいまほうつかいのベルナデット、否、ロナである。

「次元解析完了……因果の調整は、これぐらいかなぁ……ああ、でもリンカの設定は難しいけど必須で……よし! さぁ、クルスさんと私たちだけのラブラブ未来をこの手に! めいおーっ!!」

 ロナは蔓に輝きを宿して、それを地面へ叩き付ける。
輝きは一瞬で世界を、次元を、時間を包みこみ、捻じ曲げ、こねくりまわして、無理やりくっつけて、そして――


●●●


 ここは聖王国のとある森の中にある小さな一軒家。

 厨房に立つロナは、鼻歌を口ずさみつつ、今夜の夕食である特製サンダーバードシチューをコトコト煮込んでいる。

「戻ったぞ」
「お帰りなさい!」

 弾んだ声で迎えるは、狩りから戻った彼女の最愛の夫の“クルス”

「お帰りなのだ―!」
「ベラお姉ちゃん、お家の中を走っちゃだめだよぉー!」

 ロナとクルスの愛の結晶であるお父さん大好きッ子の姉妹ベラ(姉)とリンカ(妹)は、早速夫へ飛び着いた。
 本当はロナが真っ先に飛びつきたいが、ここは我慢。お母さんたるもの、まずは子供たちのことを優先すべきである。

「ベラ、リンカ、ただいま」
「でへへ、パパぁ! チューなのだぁ!」
「も、もうぅ! ベラお姉ちゃんばっかずるいよぉ! リンカもぉ!」
「リンカは妹だからお姉ちゃんの方が先なのだ~」
「ベラ、お姉ちゃんはね、妹を大事にしなきゃいけないのよ? わかる?」

 と、ロナがそういうと、ベラは「はひぃ!」と背筋を伸ばし短い悲鳴を上げながら、クルスをリンカへ譲り渡す。

「お、おとーさん! お帰りなさい……」
「ただいまリンカ。神代文字は上手になったか?」
「うん!“え”がね、ちゃんと書けるようになったよ!」

 クルスに撫でられ、リンカ(妹)もご満悦な様子。

「あらあら、ベラもリンカも甘えんぼさんね」

 そう言いつつちゃかりロナもクルスの腕へ抱き着くのだった。
 胸を押し付けるのは勿論わざとで計算の内。こうすれば、きっとクルスの食後のデザートはロナで決定である。

「今日は貴方の大好きなシチューですよ?」
「そうか。ロナのシチューは絶品だからな。楽しみだ」
「もちろん、食後は?」
「う、むぅ……実は息子と弓で狩りにでかけるのが、夢の一つでな……」

 全くもって、朗らかな良い家庭の風景。
 ロナの望んだ、最高のハッピーエンド。
 やはり次元をこねくり回して、無理やり繋いで正解である。

 と、そんな幸せな家庭へ伸びた二つの影。
 影の主はジャラジャラと、錫杖を鳴らしてやってきた。

「やっぱり先輩は、ご、ご家庭を持って……ふぁわ~……!」
「ビギッち! しっかりするっす! 気をしっかり持つ……って、クルス先輩!? もしかしてビギッちが言ってたお付き合いしてる先輩ってクルス先輩のことだったんすか!?」

 ゼラはビギナを抱き留めつつ、驚きの声を上げた。
 気絶した筈のビギナをすぐさま起き上がり、

「あ、あれ? もしかしてゼラが今度結婚するっていう冒険者の先輩って……もしかして!?」

 二人は顔を突き合わせながら何度も「え?」を繰り返し、やがて声を声を揃えて「ええ――!?」と大絶叫。

「先輩、これはどういうことですか!?」
「正直に白状するっす、クルス先輩!」

 二人は眉を吊り上げずずっと迫り、クルスは声にならない声を漏らしつつ、後ずさりする。

 と、そんな中、突然家の中へ飛んで入ってきた、複数の謎の飛行物体。
正体は刃を持つ、鋭い種である。
 一同は思わずしゃがみ込んだ。そうして種の襲撃が一通り収まった時のこと、

「クルスっ! あんたやっぱり!! 私、という女が居ながら、他所の女とこんな! むきー!! 殺すわ、殺してやる、殺すぅー!!」

 次いでずかずかと遠慮なしに入ってきたのは、顔を真っ赤に染めて眉をピンと吊り上げたカロッゾ男爵家の三女セシリー=カロッゾ嬢。お怒りモードなのは誰の目にも明らかである。

 そしてセシリーの後ろに控えていた侍女騎士のフェアは、腰に差したサーベルを握り締めつつ、鋭い殺気を放つ。

「我が師よ、これはどういうことか。まずはきちんとお嬢様へご説明を。しかる後私にもきちんと説明をしていただこうか」
「お前ら急に入ってきて何なのだ! パパは僕のパパなのだ!」

 ベラは勇ましく、般若のような四人の闖入者へ立ちはだかった。

「先輩、私と農園を継いでくれるって話はどうなったんですか!?」
「クルス先輩! ビムガン自治区でウチと添い遂げてくれるってのは嘘だったんすか!?」
「何言ってんのよ! クルスは私と樹海でお茶をしながら暮らすのよ! それ以外の生き方なんて認めないわ!」
「私だけの師になってくれるのではなかったのか? クルス殿?」
「だ・か・ら! パパは僕とリンカとロナママのパパなのだぁ! お前ら何むちゃくちゃ言ってるのだぁ!! いい加減にしないとぶち殺すぞい!」

 五つの視線が交錯しあい、バチバチと火花を散らす。

 すると突然、ドン! と机を叩く激しい音が鳴り響く。

 五つの視線が向かう先、そこには渦中の男、クルスの姿が!

「お前たち、一体なんの話をしているんだ!? 俺はそんな約束した覚えがない! 決してないぞ!! ビギナと農園? ゼラと添い遂げる? セシリーとお茶だとか、フェアだけの師匠だとか、知らん! 申し訳ないが、知らんぞ、そんなことはっ!!」

(あらら……ちょっと調整間違えちゃいましたかね……?)

 やはり因果の調整には細心の注意を払うべきだった。
自分の周りの設定をいじくりまわすのに必死で、他の設定をサボりがちにしてしまったがために、個別のラブラブエンドの世界から、ビギナ、ゼラ、セシリー、フェアを“ロナとクルスのラブラブ明るい家族計画エンド”の世界へ呼び込んでしまったらしい。

 でも、これはこれで……

「みなさん! クルスさんは私だけのクルスさんです! 大事な大事な私の旦那様です! だから誰にも譲りません!」
「ロ、ロナ、君は何を!?」
「ふふ……」

 こんな可能性も面白いような、先がどうなるかみてみたいような。
 いたずらっ子のロナである。

「先輩!」
「クルス先輩!」
「クルスっ!」
「クルス殿!」
「パパぁ!」

 これから始まるのはハートフルなラブコメか、はたまた血で血を洗う凄惨な一人の男を奪い合う女たちの闘争劇か。
 
 いずれにしてもロクでも無さそな物語がこれから始まる……のかもしれない?

「さぁ、クルスさん、ここであなたはどの子を選びます?」
「私ですっ!」
「ウチっす!」
「私よ!」
「クルス殿……?」
「僕なのだぁ!」


「無茶いうなぁ!! これは一体なんなんだぁ!!」


 おしまい



*これまでご覧いただきありがとうございました!
また、近況ボードへ裏話などを記載しておりますので宜しければご覧ください。

(文字数制限あるため一部抜粋です。全文をご覧になりたい方は、なろう、もしくはカクヨムでお願いしたします)

 最後になりますが、面白そう・面白かったなど、思って頂けましたらお気に入り登録などをよろしくお願いいたします! ご感想もお待ちしております。

また関連作である「パーティーを追い出された元勇者志望のDランク冒険者、声を無くしたSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される」も併せてよろしくお願いいたします!

 それでは約三か月間、お付き合い頂きありがとうございました。
最新作が出た際はまたご覧いただければ幸いです!

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...