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閑話 苦手なもの
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私には苦手なものがある。
それは暗い場所、そして嵐だ。
◇10年前◇
その日はフィー父様とシル父様が街に出稼ぎに出ていて、ベル父様と私は家で留守番をしていた。
出稼ぎに出ている二人は三時頃に帰ってくる予定だった。
朝から雨が降っていてその予定の10分前くらいになって急に雨風が激しくなってきていた。雷もなり始めて外に出ている二人のことが心配になってきていた。
『雨ひどくなってきたね。フィー父様たち濡れて風邪引いたりしないかな…?』
「大丈夫だ。あいつらは大人だからリアよりも体が強いから心配いらねぇよ。」
そう言ってベル父様は頭をくしゃっと撫でてくれた。
そして、
「だが、セリさんがちっと心配だな…」
セリさんとは街に一人で住んでいるお年寄りで周囲の人間は声をかけたり、力仕事を引き受けたりしていてそれは私達も例外ではない。
ベル父様は少し考えて、外に出かける身支度を始めた。どうやらセリさんの様子を見に行くようだ。
「もう少ししたらあいつらが帰ってくるからそれまで待ってられるか?」
しゃがんで私の目線を合わせて聞いてきたので私も少しくらいだったら待てると思って、
『うん!長い針が12のところに来たら父様達は帰ってくるんでしょ?もうお姉さんになったから全然大丈夫だよ!』
3歳になって、父様達が「もう立派なお姉さんだな」とことあるごとに褒めてくれるので大人の仲間入りをしたようなちょっと得意な気持ちだった。
「おっ、そうか。お姉さん留守番よろしく頼んだぞ!」
そう言って家を出るベル父様のお見送りをして、自分の部屋に戻った。
「いやぁ、まさか土砂崩れが起きるとは思わなかったな。」
「そうだね。結構遅くなっちゃったからリアたちが心配してるかもね。」
そんなふうな会話をフィーとシルがしていると、
「あれ?お前ら、なんでここにいるんだ?!」
後ろから声をかけられ振り向いた先にいたのはベルだった。
「え、何でベルがここにいるの?家で待ってる番じゃないっけ?」
その言葉から少し間が空いてようやく三人が状況を理解した。
「リアを一人にしてきてるじゃねえか!」
ベルが、そう言ったのを皮切りに三人は焦って雨の中を走り出した。
最初のうちは本を読んだり、人形で遊んだりしていたリアだったが、ベル父様が出発してから30分ほどたったとき一際雷が大きく鳴ったのを聞いてだんだん一人でいるのが怖くなってきていた。
さっきベル父様は長い針が12を指した頃には父様達は帰ってくると言ってたのにそんなのはとっくに超えて長い針は5を指していた。
雷が鳴る間隔が少しずつ短くなり、じっとしていられなくなったリアはいつも父様達と過ごしている部屋に行った。そして椅子の下に入り込んで耳を塞いで目を瞑った。
『父様達早く帰ってきて…』
誰もいない空間に小さくつぶやかれたそれは涙声だった。
リアが部屋を移動してから2時間ほど経ったときやっと三人の父親は家に到着した。
そしてリアの部屋に向かうがそこは誰もいなかった。三人は焦って名前を呼びながら手分けをして各部屋を探した。
「リアちゃん!どこにいるんだい?」
「リア!帰ってきたぞ!」
「リア!頼むから出てきてくれ!」
必死に各部屋を探し回って最後に三人が行き着いたのはいつもみんなで過ごす部屋だった。
部屋の扉を開けるとすすり泣くような声が聞こえてきた。声がする場所を見つけ出して、覗いてみると、そこには泣きながら震えているリアがいた。
「リア、一人にしてすまなかった。」
ベルがそう言うと、リアはゆっくりと顔を上げて椅子の下から這い出て来た。
『…ヒクッ………怖かったよ。』
しゃくりをあげている合間に絞り出したようにそう言うリアを三人は謝りながら抱きしめた。
身長がまだ低いため電気のスイッチをつけることができず、また一人で雨の激しく叩きつける音と幾度となくなる雷の地響きするように感じられる音は大きくなってきた今でもかなり苦手だ。10年前の一人でひたすら耐えていた状況を思い出してしまうから。
それは暗い場所、そして嵐だ。
◇10年前◇
その日はフィー父様とシル父様が街に出稼ぎに出ていて、ベル父様と私は家で留守番をしていた。
出稼ぎに出ている二人は三時頃に帰ってくる予定だった。
朝から雨が降っていてその予定の10分前くらいになって急に雨風が激しくなってきていた。雷もなり始めて外に出ている二人のことが心配になってきていた。
『雨ひどくなってきたね。フィー父様たち濡れて風邪引いたりしないかな…?』
「大丈夫だ。あいつらは大人だからリアよりも体が強いから心配いらねぇよ。」
そう言ってベル父様は頭をくしゃっと撫でてくれた。
そして、
「だが、セリさんがちっと心配だな…」
セリさんとは街に一人で住んでいるお年寄りで周囲の人間は声をかけたり、力仕事を引き受けたりしていてそれは私達も例外ではない。
ベル父様は少し考えて、外に出かける身支度を始めた。どうやらセリさんの様子を見に行くようだ。
「もう少ししたらあいつらが帰ってくるからそれまで待ってられるか?」
しゃがんで私の目線を合わせて聞いてきたので私も少しくらいだったら待てると思って、
『うん!長い針が12のところに来たら父様達は帰ってくるんでしょ?もうお姉さんになったから全然大丈夫だよ!』
3歳になって、父様達が「もう立派なお姉さんだな」とことあるごとに褒めてくれるので大人の仲間入りをしたようなちょっと得意な気持ちだった。
「おっ、そうか。お姉さん留守番よろしく頼んだぞ!」
そう言って家を出るベル父様のお見送りをして、自分の部屋に戻った。
「いやぁ、まさか土砂崩れが起きるとは思わなかったな。」
「そうだね。結構遅くなっちゃったからリアたちが心配してるかもね。」
そんなふうな会話をフィーとシルがしていると、
「あれ?お前ら、なんでここにいるんだ?!」
後ろから声をかけられ振り向いた先にいたのはベルだった。
「え、何でベルがここにいるの?家で待ってる番じゃないっけ?」
その言葉から少し間が空いてようやく三人が状況を理解した。
「リアを一人にしてきてるじゃねえか!」
ベルが、そう言ったのを皮切りに三人は焦って雨の中を走り出した。
最初のうちは本を読んだり、人形で遊んだりしていたリアだったが、ベル父様が出発してから30分ほどたったとき一際雷が大きく鳴ったのを聞いてだんだん一人でいるのが怖くなってきていた。
さっきベル父様は長い針が12を指した頃には父様達は帰ってくると言ってたのにそんなのはとっくに超えて長い針は5を指していた。
雷が鳴る間隔が少しずつ短くなり、じっとしていられなくなったリアはいつも父様達と過ごしている部屋に行った。そして椅子の下に入り込んで耳を塞いで目を瞑った。
『父様達早く帰ってきて…』
誰もいない空間に小さくつぶやかれたそれは涙声だった。
リアが部屋を移動してから2時間ほど経ったときやっと三人の父親は家に到着した。
そしてリアの部屋に向かうがそこは誰もいなかった。三人は焦って名前を呼びながら手分けをして各部屋を探した。
「リアちゃん!どこにいるんだい?」
「リア!帰ってきたぞ!」
「リア!頼むから出てきてくれ!」
必死に各部屋を探し回って最後に三人が行き着いたのはいつもみんなで過ごす部屋だった。
部屋の扉を開けるとすすり泣くような声が聞こえてきた。声がする場所を見つけ出して、覗いてみると、そこには泣きながら震えているリアがいた。
「リア、一人にしてすまなかった。」
ベルがそう言うと、リアはゆっくりと顔を上げて椅子の下から這い出て来た。
『…ヒクッ………怖かったよ。』
しゃくりをあげている合間に絞り出したようにそう言うリアを三人は謝りながら抱きしめた。
身長がまだ低いため電気のスイッチをつけることができず、また一人で雨の激しく叩きつける音と幾度となくなる雷の地響きするように感じられる音は大きくなってきた今でもかなり苦手だ。10年前の一人でひたすら耐えていた状況を思い出してしまうから。
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