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第一部 2章 狙われたヒトガミと、凍りつく京 ―妖界・予兆編―
第18話 地下牢の闇と、虚鬼の蠢き
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階段を降りた先。闘士控えの下に広がっていた空間は、地下牢になっていた。
並んだ格子の向こう側には、一箇所に複数人が入れられていたようで、中の者たちはほとんどが死んでいる。
光を壁に遮られて生き残ったらしい虚鬼が数体いて、全身やけど状態でガシャンと音を立てながら格子にぶつかってきたり、こちらに長い爪のついた手を伸ばしたりしてきたが、それを亘がことごとく始末していった。
「牢に囚え、闘士として使い潰していたんでしょうか……」
椿が眉根を寄せる。亘も、格子の向こうを見やって頷いた。
「死んでいる者たちは、虚鬼に食い殺された者よりも、武器で殺された者の方が多そうだな。闇の発生前に殺されて、憎悪や恐怖が闇の原因になったのだろう」
亘の言葉に、奏太は目元に手を当てた。
「囚えてたってことは、闘士として戦うことだって本人達の意思じゃ無かっただろうに、牢屋の中で殺されたり、闇に飲まれて虚鬼に変わらなきゃならないなんてな……」
なんとも惨い状況だ。やっぱり、闇の発生源なんて、碌なところはない。自分が同じ立場に置かれたらと思うと、やりきれなくて胸が痛くなる。
「奏太様、あの一番奥、闇が少し残っているようです」
亘にポンと軽く肩を叩かれ、奏太は顔を上げた。思考を切り替えろと、亘の目が言っているのが分かった。
示された方を見れば、確かに一番奥の牢に、祓いきれなかった闇が溜まっている。しかも、格子の間から、いくつか手が伸びている。三体ほどだろうか。
「一気に祓っていただいた方が良いかと」
亘の言葉に、奏太は眉根を寄せ、小さく息を吐き出した。
この牢屋に閉じ込められた者たちに一瞬でも心を寄せてしまったせいで、陽の気で焼くことに躊躇いができてしまった。たとえ虚鬼と言えど、元は理不尽に囚われた普通の者達だったはずだ。
「奏太様」
「……わかってるよ」
闇が残っている以上、やらないわけにはいかない。奏太はぐっと奥歯を噛み、闇の残る牢の前に立った。
中には虚鬼が三体。その後ろに、数名の遺体が積まれているのがチラと見える。
「……せめて、できるだけ苦しまないように、一瞬で焼いてやるから」
ここは石牢。周囲が焼け落ちる心配は要らない。苦痛の時間が長引かないように、強力な陽の気で一気に。
そう思いつつ、格子に向かって両手をかざし、手のひらに力を込めていく。
しかし、手のひらが光を帯び始めたところで、牢の中から、
「ま、待ってくれっ!!!」
という声が響いた。
通路側ではなく、格子の向こう側から声が響いた事に、奏太は目を瞬く。
虚鬼は言葉を発しない。それなのに、何故闇の中から声がしたのだろう。
声の主がいったいどこに居るのかを確認しようと、奏太は格子の方に一歩踏み出す。
しかしその前に、虚鬼達が声の主が居ると思われる方向を一斉に見た。
「亘、椿!」
ハッとした奏太が咄嗟に声を上げるかどうか、という一瞬の間。亘と椿は、格子ギリギリのところまで大きく踏み出し、刀を格子のこちら側から思い切り突き出し虚鬼を止める。
虚鬼達が声の主に襲いかかる前に、中にいた三体を格子の外から、あっという間に倒してしまった。
「……声がしたのは、どこからだ?」
奏太が言うと、積まれた遺体の山がごそごそっと動く。亘も椿も、奏太を護るようにしながら格子の中を警戒している。
ゴロリ、ゴロリと遺体が転がり落ちたかと思えば、そこから、体中に血の染みを作り薄汚れた若い男が一人、ムクリ体を起こし、ほっとしたように、こちらを見た。
並んだ格子の向こう側には、一箇所に複数人が入れられていたようで、中の者たちはほとんどが死んでいる。
光を壁に遮られて生き残ったらしい虚鬼が数体いて、全身やけど状態でガシャンと音を立てながら格子にぶつかってきたり、こちらに長い爪のついた手を伸ばしたりしてきたが、それを亘がことごとく始末していった。
「牢に囚え、闘士として使い潰していたんでしょうか……」
椿が眉根を寄せる。亘も、格子の向こうを見やって頷いた。
「死んでいる者たちは、虚鬼に食い殺された者よりも、武器で殺された者の方が多そうだな。闇の発生前に殺されて、憎悪や恐怖が闇の原因になったのだろう」
亘の言葉に、奏太は目元に手を当てた。
「囚えてたってことは、闘士として戦うことだって本人達の意思じゃ無かっただろうに、牢屋の中で殺されたり、闇に飲まれて虚鬼に変わらなきゃならないなんてな……」
なんとも惨い状況だ。やっぱり、闇の発生源なんて、碌なところはない。自分が同じ立場に置かれたらと思うと、やりきれなくて胸が痛くなる。
「奏太様、あの一番奥、闇が少し残っているようです」
亘にポンと軽く肩を叩かれ、奏太は顔を上げた。思考を切り替えろと、亘の目が言っているのが分かった。
示された方を見れば、確かに一番奥の牢に、祓いきれなかった闇が溜まっている。しかも、格子の間から、いくつか手が伸びている。三体ほどだろうか。
「一気に祓っていただいた方が良いかと」
亘の言葉に、奏太は眉根を寄せ、小さく息を吐き出した。
この牢屋に閉じ込められた者たちに一瞬でも心を寄せてしまったせいで、陽の気で焼くことに躊躇いができてしまった。たとえ虚鬼と言えど、元は理不尽に囚われた普通の者達だったはずだ。
「奏太様」
「……わかってるよ」
闇が残っている以上、やらないわけにはいかない。奏太はぐっと奥歯を噛み、闇の残る牢の前に立った。
中には虚鬼が三体。その後ろに、数名の遺体が積まれているのがチラと見える。
「……せめて、できるだけ苦しまないように、一瞬で焼いてやるから」
ここは石牢。周囲が焼け落ちる心配は要らない。苦痛の時間が長引かないように、強力な陽の気で一気に。
そう思いつつ、格子に向かって両手をかざし、手のひらに力を込めていく。
しかし、手のひらが光を帯び始めたところで、牢の中から、
「ま、待ってくれっ!!!」
という声が響いた。
通路側ではなく、格子の向こう側から声が響いた事に、奏太は目を瞬く。
虚鬼は言葉を発しない。それなのに、何故闇の中から声がしたのだろう。
声の主がいったいどこに居るのかを確認しようと、奏太は格子の方に一歩踏み出す。
しかしその前に、虚鬼達が声の主が居ると思われる方向を一斉に見た。
「亘、椿!」
ハッとした奏太が咄嗟に声を上げるかどうか、という一瞬の間。亘と椿は、格子ギリギリのところまで大きく踏み出し、刀を格子のこちら側から思い切り突き出し虚鬼を止める。
虚鬼達が声の主に襲いかかる前に、中にいた三体を格子の外から、あっという間に倒してしまった。
「……声がしたのは、どこからだ?」
奏太が言うと、積まれた遺体の山がごそごそっと動く。亘も椿も、奏太を護るようにしながら格子の中を警戒している。
ゴロリ、ゴロリと遺体が転がり落ちたかと思えば、そこから、体中に血の染みを作り薄汚れた若い男が一人、ムクリ体を起こし、ほっとしたように、こちらを見た。
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