【R18】復讐の魔王は転生を重ね、女勇者に挑む。第1章~女騎士の誇りは濡れて~

異常那鬼

文字の大きさ
13 / 46

第11話~法王の思惑~

しおりを挟む

 魔力が満ちた身体を法衣に包むクレアの姿を法皇帝は満足そうに眺めなていた。

「それでは、法皇様、私も宴のほうに戻りますわ」
「私も後で顔を出す。それからクレア、しばらくあの勇者と行動を共にするのだ」
「かまいませんけど。魔王が倒れ、魔族の脅威が去った今、彼女と一緒にいる理由は何ですか?」
「勇者の持つ剣だ」
「あの魔剣ですか」
「あれが、魔王城に封印されていたのだとすれば……もしかすると」
「もしかすると?」
「いや、推測は良そう。私の思い過ごしであるかもしれん」
「どうして強引にでも取り上げなかったのですか?」
「お前達と共にあるのが、最も安全かもしれぬからだ」

 そう言う法皇の表情は、何かを恐れているようでもあった。
 
 クレアが部屋を出ると、外で控えていた二人の少女が睨みつけてきた。
クレアは二人の少女達の胸をチラリと見ると、自らのを強調するように胸を張った。

「なっ!」

 ターニャは侮辱されたと感じ、怒りの視線をクレアに向けた。その視線に微笑みで返して、クレアはお尻を振りながら歩いていった。

「何なのよ、あの女!」

 クレアの行為と地団太を踏むターニャの姿に、ネフィーリアがクスッと笑う。

「何笑ってるのよ! 私だって、後三年もすれば、あれくらいには!」

 強気な台詞を言いながらも、ターニャは半分泣きそうな顔になっていた。


 宴の会場では、挨拶に来るメリダの貴人を完全に無視して、両手に肉を持ち、獣のように食らうリリアの姿があった。その隣では、フィリーが頭を抱えている。

「リリア、お前はもう少し行儀というものをだな」
「うるせえな。性欲は我慢してんだ。食欲くらい大目に見ろや」

 勇者達一行に用意された席に、クレアが戻ってきた。幸せそうにスイーツを頬張っていたアリスはクレアの変化に気づいた。

「クレア、あんた……」

 魔王との戦いで消費した魔力が、全てとは言わないが、かなり充填されていた。しかも、この短時間でだ。

「さすが、アリスさん、気づきましたか?」
「どうやってそれだけの魔力を補充したの?」

 アリスは興味深々に聞いた。どんな大魔法使いでも、体内に蓄えている魔力の消耗には気を使う。アリスは魔法を使用する時は、魔力を充填させた触媒を使うことが多い。

「ひみつです。それに、アリスさんには、まだ早すぎると思います」
「なるほど、それがメリダ法国に伝わる禁呪というわけね、まぁ良いわ。いずれは、その術も私が暴いてみせるから」

 そう言うと、アリスはテーブルの上のスイーツに意識を戻した。

「それより、リリアさん。これから、どうするんですか?」

 肉をがっついてるリリアにクレアが訪ねた。

「ふぉうふるってーうぐっ!」
「食べながら話すからだ!」

 小言を言いながらも、フィリーは喉に肉を詰まらせたリリアの背中を叩いてやり、グラスの水を渡す。

「今後の事ですわ」

 アリスが渡したナプキンでリリアは口元を拭いた。

「戦もしばらく無さそうだし、金はたんまり貰ったし、久しぶりにアーバンにでも戻るか」
「私も、御一緒してよろしいですか?」
「構わねえけど、何でだ?」
「リリアさんの事が、気になるからですわ」

 妙なしなを作ってクレアが答える。が、その瞳は笑ってはいなかった。

「言っとくが、俺にはそっちの気はねえからな」
「私も、同行するわ」

 次のフルーツに手を出しながら、アリスが言う。

「なんでお前まで」
「その魔剣の力を封じ込めることができるのは、私くらいよ。それと……」

 アリスは周囲を見渡すと、声のトーンを落とした。

「あんたに正式に依頼したい事があるの」
「依頼?」 
「もう一度、魔王城に行きたいの」
「はぁ、魔王が死んだ城に何しに行くんだよ」
「覚えてない。その剣が封じられていた部屋の事?」

 言いながら、アリスは一冊の古びた本を取り出した。

「なんだ、そのきったねえ本は?」
「あの部屋にあった本よ。気になったから何冊か持ってきたの」

 魔力食い(マジックイーター)は魔王城の地下深くに封じられていた。部屋の台座に突き刺さっていた剣をリリアが抜いたのだ。その部屋には無数の書物が収められていた。

「ここに書かれてるのは、ほとんどが今では失われた禁呪よ」

 リリアの眉がピクリと動いた。金になる話を聞きつけた時の癖だ。

「金になるのか?」

 アリスが頷く。

「いいだろう。ただし、今度は前回みたいに奇襲はできねえぞ。魔族の土地をつっきらねえとな。それと、城の場所はわかるのか?」
「ちゃんと、目印を置いてきてるわ」
「よし、決まりだな。アーバンで十分に準備して行くとするか」

 リリアは楽しそうに言った。その中で一人、気の進まない顔をしていたのはフィリーだった。

「お前はどうすんだ、フィリー?」
「私は、一度国へ帰ろうと思う。魔族との戦いは終わったかもしれぬが、だからと言って、全てが元に戻ったわけでもない。復興が終わっていない所もある」
「相変わらず、くそ真面目だね、お前は」
「これが私だ、仕方あるまい」
「よし、じゃあフィリーの為に、乾杯すっかぁ!」

 そう言うと、リリア達はフィリーの為にグラスを掲げた。

 その後、リスタルト王国に戻ったフィリーは、父である騎士団長の命を受け、ピエタの村へと赴くことになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...