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第16話~鍛冶職人タルス~
しおりを挟むピエタの村では、日が沈もうとしていた、見張り台の櫓が立つ高台に気を失った男が下半身丸出しで倒れている。その横で法衣姿のシスターアンジェが男の身体を揺すっていた。その法衣の胸元からは、一匹のトカゲが、頭をちょこんと出している。
「あのぉ、目を覚ましませんけど」
「急激に魔力を奪われ、気を失っているのだ。少し魔力を与えてやればよい」
「魔力を与えるって、そんな術知りません」
「お前には既に、その術が備わっている。体内の魔力の流れを意識しろ。いいか、力の中継点は鼠径部から、腹、脇の下を中継し、鎖骨から身体全体に行き渡る」
「えっと、力の流れを意識する……」
アンジェは目を閉じて、下腹部に感じる男から吸収した力に意識を向けた。下腹部が仄かに光る。
「その力を、腹、脇へと移動させ、鎖骨まで持っていくのだ。そこから、身体の隅々まで流し込む」
「はい」
アンジェが集中する。魔力が身体全体に行き渡り、身体に満ちていく。他者から奪った魔力が、アンジェのものへとなっていく。
「ふむ、やはりセンスが良い。その力をまた集めるのだ。首筋から、耳の裏側を意識しろ」
「あぁ、力の流れを感じます」
アンジェは魔力を集中させ、喉まで移動させた。《眷属の萌芽》は、魔王に魔力を供給させる為の媒体だ。これを埋め込まれた者は、魔力の流れを意識することができる。そして、許可を与えられればだが、魔王以外にも魔力を与える事ができる。
「その力を男に流し込むのだ。少しづつだぞ」
倒れている男に、アンジェは口付けをした。最初は軽くだった。魔力を注ぎ込むと、男の身体がピクンと反応した。
「そう、その調子だ」
唇を重ねていたアンジェは、次第に我慢できなくなり、自分から舌を男の口内に挿し込み、絡ませた。
「んっ……ぴちゃ、ちゅぷ」
男の舌も、それに反応して無意識に動き始める。舌と舌が絡まり合い、唾液が混じりあう。
「お、おい。そこまでせんでも良いぞ」
アンジェが男の口を貪りながら、自らの手を下に伸ばそうとした時、男の目が開いた。男は驚愕の表情を浮かべ、アンジェを突き放した。アンジェは尻もちをつき、法衣の裾がめくれる。
「いたっ! もぅ、何するんですか」
「あ、あぁ、すいません!」
男はアンジェに駆け寄った。めくり上がった法衣から見える生足に、目を逸らしながらも手を差し出した。その手を借りて、アンジェは立ち上がる。法衣の乱れをなおすと、男に言った。
「それで、どうしてあなたは、魔族の女と一緒にいたの?」
その言葉に、男の表情が凍り付く。言葉が出ず、鯉のようにただ口を開閉していた。
「理由を、聞かせてもらえる?」
男は観念したように俯いた。そして、裸の下半身に気づき、慌ててパンツを履いた。
「俺、ピエタ村で鍛冶職人やってる、タルスって言います」
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