【R18】復讐の魔王は転生を重ね、女勇者に挑む。第1章~女騎士の誇りは濡れて~

異常那鬼

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第34話~蒼魔族の里~

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 隔絶の山脈内の坑道を北に抜けてすぐの場所に、ミスラが治める一族の村はあった。ミスラは南の大地からの撤退戦で、自ら殿を務めた。その際に、胎内の魔力のほとんど使い果たした。その為、今は村の奥に隠れるよ
うにして療養に努めていた。しかし、魔王によって鍛えられた魔力容量は、そう簡単に回復させる事はできなかった。ミスラの力が果てた事が他の蒼魔族に知れれば、一族の危機にもなりかねなかった。魔王が死ぬと、その跡目を継ぐ争いが北の大地では起きる。各氏族が代表を選び戦い、最も強きものが魔王という称号を与えられるからだ。

「女神の使いだと?」

 村に戻ったミスリアは、姉であるミスラの元へ赴くと、その眼前に跪き、興奮した口調で話し出した。

「間違いありません。何者にも寄り添うことのない双頭の蛇を従えていたのです」
「ありえない。人間の女が女神の使いなど……」
「ですが、私は見たのです。いや、見ただけではありません。私は……」

 言いかけて、ミスリアは押し黙った。いくら女神の使いとはいえ、人間と交わった事を言えるわけはなかった。

「そうだ、これがその証拠です!」

 ミスリアはアンジェと別れた後、双頭の蛇が居た場所から持ってきた鉱石を渡した。それは、純度の高いミスリル銀であった。 

「これは……まだ残っていたか」

 ミスラ達の一族にとって、ミスリル銀は最も加工を得意とする希少鉱石であり、一番の御馳走でもあった。

「人間達の坑道の最も深い場所でした」
「そうか、それは良い話だ。だが、そもそもだ。お主は何をしに、一人で坑道に入った! 今は勝手な動いていい時ではないぞ」
「それは……」

 ミスラは大きなため息を一つすると、周囲に誰もいない事を確認して、呟いた。

「……わかっている。ミスティの事だな」
「姉上は、御存じだったのですか」
「知ったのは最近だ。だが、この事が他の氏族に知れれば……」

 人間と通じていた裏切り者が一族の中にいたとなれば、ミスラの蒼魔族内での立場は危うくなる。ミスリアもそれを考えたからこそ、自分の手で妹を始末しようと考えたのであった。

「私は、皆に知られる前に、何とかしようと」
「もう遅いかもしれん。明日にもアダマン一族の者が、私を訪ねてくるらしい」
「アダマン族のものが!」

 希少鉱石アダマンタイトの名を持つ一族は北の大地のほぼ中央、魔王城の近くに里を持ち、蒼魔族の中でも、もっとも屈強な体躯を持っていた。

「会うのは控えるべきです。姉上は、先の戦いで魔力をほとんど失われています。今、その事を知られては」
「わかっている。だが、蒼魔族を束ねる身としては、会わぬわけにはいかぬ」
「どうするのですか?」
「心配するな。先日、朱龍族のセリカから届けられたものがある」
「セリカ様から?」
「魔王様が残したものではないかという事だ。どうやら魔王城も変貌を遂げているらしい。それにしても、本当に魔王様は亡くなられたのであろうか」

 魔王が勇者に負けたと聞いた時、ミスラには信じられなかった。あれほどまでに自信と力に溢れていた魔王が、不意を突かれたとはいえ、人間如きに遅れを取るとは思えなかったのだ。それに、どこかで魔王が生きているという思いもあった。ミスラの胎内にある、魔王の痕跡は消えていなかったからだ。ミスラは下腹部に手を当てると、静かに目を閉じた。魔王との日々を思い出しているのか、その瞳には涙が浮かんでいた。

「姉上は、それほどまでに魔王様の事を……」
「私のこの身全ては、あの方に捧げているのだ」
「……姉上」

 その時、外が慌ただしくなった。ただならぬ雰囲気に二人は顔を見合わせた。里の若者が一人、駆けこんでくると叫んだ。

「た、大変です!ミスラ様、行方不明だったミスティが戻ってきました。しかも、人間を二人引き連れて!」
「なんだと!」
「人間の女はミスラ様へ会わせろと」
「まさか、アンジェ様が!」

 ミスリアは思わず立ち上がった。

「姉上、その方こそ私が話した御方です」

 ミスリアは瞳を輝かせて姉を見た。その瞳は、完全に恋する男のものだった。末弟をここまで興奮させる女を見てみたいとミスラは思った。

「……わかった。その人間達に会おう。ミスティと共にここへ」

 ミスラはまだ知らなかった。人間の女と共に、魔王が居るということを。
 
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