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第43話~激突間近~
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「白の騎士団だ。白の騎士団が来たぞ!」
白馬に乗り隼の紋章を掲げた騎士達は昼過ぎにピエタ村に到着した。総勢三十名ほどの騎士は全員が女だ。出迎えたのはメリダの神官カリアだった。先頭で騎士達を率いてきたフィリーは馬から降りるとカリアに対し、きちんとした作法に乗っ取った礼を示した。
「リスタルト王国、白の騎士団副団長を務めております。フィリー・フォスナーと申します」
フィリーの父、ファイリス・フォスナーは騎士王リスタルトがメリダから独立するさいに随った人物であり、その前はメリダ法国で「神の勇気」と呼ばれる第5階位であった。
「私は法王様からここピエタ村の復興を任されているカリアと申します。まさか、魔王を倒した英雄、清風の騎士様が来られるとは」
「そのよう呼ぶ者もいますが、今の私には関係ありません」
あくまで、リスタルトの正式な使者という事であろう。あの魔王を倒した英雄を相手に事を荒立てるのは得策ではないとカリアは考えていた。
「さっそくですが、一昨日から先遣隊との連絡が途絶えております。カリア様は何かご存じではないですか?」
ミオンとマナからの定期連絡が途絶えていた。ピエタ村は先の大戦のさい、真っ先に魔族の襲撃を受けた場所と聞いていたので心配だった。
「それは私も聞きたいところです。リスタルトの騎士ともあろう者が二人も、姿をくらますとは」
多少の嫌味と共に、二人の失踪には自分達は関わっていない事を強調した。
「ところでこれで全員ですかな?」
「あまり大人数で来ても迷惑かと思いましたから」
「まったくです。ピエタ村は復興の途中、余分な食料等はありませんので」
カリアの言葉はピエタ村の復興はメリダが主導で行うという意思表示であった。
「心配はいりません。逗留する間の食料は持参しておりますし、復興の御役に立てばと思い、村への援助物資も持ってきております」
「それは殊勝なことですな」
「当然の事です。ピエタ村はリスタルトの領土ですから」
リスタルトにとっても、ピエタ村で作られる武器を失うわけにはいかなかった。良質な武器はそのまま軍の強さにもなるからだ。
「それよりも、この村に魔族と通じている者がいたというのは本当なのですか?」
「あんなのは単なる噂です。そもそも人が魔族と通じるなど、ありえません」
「私もそうは思います。ですが少しでも可能性があるのなら、調べてみなければいけません。ここピエタ村は北の大地とも近い。それに坑道の全てを封鎖したわけではないと聞いております。その調査も併せて行いたいと」
「それは……」
カリアは痛いとこを突かれた。何度も村長に進言したのだ。魔族が現れる可能性が少しでもあるのなら坑道の全てを爆破し封鎖しろと。だが村の鍛冶師達からの猛反対を受け、一部は残された。鉱石が取れなくなれば村の武器産業が成り立たなくなる。
「カリア様!」
その時、慌てて駆け込んできたのはアンジェだった。衣服は汚れ、一部が裂けている。その尋常ではない様子にカリアは慌てた。
「アンジェ、その姿はいったい?」
「大変です。魔族が!」
「何だと!」
アンジェの説明はこうだ。タルスが村から逃げ出さないようにするため、アンジェは坑道近くの小屋に彼を閉じ込めることにした。ところが、行動の中から数人の魔族が現れた。その姿に気づいたアンジェは命からがら逃げてきたのだと言う。
「まさか、本当に魔族なのか!」
「はい。あの青い肌、間違えありません!」
「蒼魔族か! 何人いた」
フィリーがすぐに尋ねる。蒼魔族とは先の大戦でも何度か戦ったことがあった。
「わかりません。でも、二人ほど強大な魔力を感じさせるものが」
蒼魔族の族長クラスになれば、希少鉱石の武器や鎧を装備している。硬さだけでなく対魔法防御も高く、精鋭の騎士団といえど一人では渡り合えない。
「嫌な予感があたったか……」
ピエタ村に派遣される時、フィリーは人員を増やして欲しいと頼んだ。しかし、メリダ側を下手に刺激してはまずいとの意見で退けられた。魔族の侵攻の危険性も訴えたが、魔王が倒れた後は次の魔王が決まるまで魔族達同士の争いが起きる。そのため南の大地に来ることは無いというのがこれまでの常識であった。正直、今の戦力では心もとない。フィリーが判断に悩んでる僅かな時間、アンジェはカリアに耳打ちをした。
カリアはかすかに笑みを浮かべると言った。
「私達は村を守る為、魔族達を迎え撃ちます。あなた達はどうされますか?」
その言葉を聞いて、フィリーは決断した。
「全員、戦闘準備! 魔族を迎え撃つぞ!」
フィリーの掛け声に部隊に緊張が走る。まさか、こんな辺境の村に派遣され、再び魔族と戦うことになろうとは誰も思っていなかった。
「し、しかしフィリー様、相手の数もわからないのに!」
「その通りです。一度退いてから本国に伝令を出し、援軍を呼びましょう」
騎士達の言うことはもっともだった。だが、ここで退却すればピエタ村を二度見捨てた事になる。メリダから来ているカリア達が戦うと言っているのに、それは許されることではなかった。
白馬に乗り隼の紋章を掲げた騎士達は昼過ぎにピエタ村に到着した。総勢三十名ほどの騎士は全員が女だ。出迎えたのはメリダの神官カリアだった。先頭で騎士達を率いてきたフィリーは馬から降りるとカリアに対し、きちんとした作法に乗っ取った礼を示した。
「リスタルト王国、白の騎士団副団長を務めております。フィリー・フォスナーと申します」
フィリーの父、ファイリス・フォスナーは騎士王リスタルトがメリダから独立するさいに随った人物であり、その前はメリダ法国で「神の勇気」と呼ばれる第5階位であった。
「私は法王様からここピエタ村の復興を任されているカリアと申します。まさか、魔王を倒した英雄、清風の騎士様が来られるとは」
「そのよう呼ぶ者もいますが、今の私には関係ありません」
あくまで、リスタルトの正式な使者という事であろう。あの魔王を倒した英雄を相手に事を荒立てるのは得策ではないとカリアは考えていた。
「さっそくですが、一昨日から先遣隊との連絡が途絶えております。カリア様は何かご存じではないですか?」
ミオンとマナからの定期連絡が途絶えていた。ピエタ村は先の大戦のさい、真っ先に魔族の襲撃を受けた場所と聞いていたので心配だった。
「それは私も聞きたいところです。リスタルトの騎士ともあろう者が二人も、姿をくらますとは」
多少の嫌味と共に、二人の失踪には自分達は関わっていない事を強調した。
「ところでこれで全員ですかな?」
「あまり大人数で来ても迷惑かと思いましたから」
「まったくです。ピエタ村は復興の途中、余分な食料等はありませんので」
カリアの言葉はピエタ村の復興はメリダが主導で行うという意思表示であった。
「心配はいりません。逗留する間の食料は持参しておりますし、復興の御役に立てばと思い、村への援助物資も持ってきております」
「それは殊勝なことですな」
「当然の事です。ピエタ村はリスタルトの領土ですから」
リスタルトにとっても、ピエタ村で作られる武器を失うわけにはいかなかった。良質な武器はそのまま軍の強さにもなるからだ。
「それよりも、この村に魔族と通じている者がいたというのは本当なのですか?」
「あんなのは単なる噂です。そもそも人が魔族と通じるなど、ありえません」
「私もそうは思います。ですが少しでも可能性があるのなら、調べてみなければいけません。ここピエタ村は北の大地とも近い。それに坑道の全てを封鎖したわけではないと聞いております。その調査も併せて行いたいと」
「それは……」
カリアは痛いとこを突かれた。何度も村長に進言したのだ。魔族が現れる可能性が少しでもあるのなら坑道の全てを爆破し封鎖しろと。だが村の鍛冶師達からの猛反対を受け、一部は残された。鉱石が取れなくなれば村の武器産業が成り立たなくなる。
「カリア様!」
その時、慌てて駆け込んできたのはアンジェだった。衣服は汚れ、一部が裂けている。その尋常ではない様子にカリアは慌てた。
「アンジェ、その姿はいったい?」
「大変です。魔族が!」
「何だと!」
アンジェの説明はこうだ。タルスが村から逃げ出さないようにするため、アンジェは坑道近くの小屋に彼を閉じ込めることにした。ところが、行動の中から数人の魔族が現れた。その姿に気づいたアンジェは命からがら逃げてきたのだと言う。
「まさか、本当に魔族なのか!」
「はい。あの青い肌、間違えありません!」
「蒼魔族か! 何人いた」
フィリーがすぐに尋ねる。蒼魔族とは先の大戦でも何度か戦ったことがあった。
「わかりません。でも、二人ほど強大な魔力を感じさせるものが」
蒼魔族の族長クラスになれば、希少鉱石の武器や鎧を装備している。硬さだけでなく対魔法防御も高く、精鋭の騎士団といえど一人では渡り合えない。
「嫌な予感があたったか……」
ピエタ村に派遣される時、フィリーは人員を増やして欲しいと頼んだ。しかし、メリダ側を下手に刺激してはまずいとの意見で退けられた。魔族の侵攻の危険性も訴えたが、魔王が倒れた後は次の魔王が決まるまで魔族達同士の争いが起きる。そのため南の大地に来ることは無いというのがこれまでの常識であった。正直、今の戦力では心もとない。フィリーが判断に悩んでる僅かな時間、アンジェはカリアに耳打ちをした。
カリアはかすかに笑みを浮かべると言った。
「私達は村を守る為、魔族達を迎え撃ちます。あなた達はどうされますか?」
その言葉を聞いて、フィリーは決断した。
「全員、戦闘準備! 魔族を迎え撃つぞ!」
フィリーの掛け声に部隊に緊張が走る。まさか、こんな辺境の村に派遣され、再び魔族と戦うことになろうとは誰も思っていなかった。
「し、しかしフィリー様、相手の数もわからないのに!」
「その通りです。一度退いてから本国に伝令を出し、援軍を呼びましょう」
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