【R18】復讐の魔王は転生を重ね、女勇者に挑む。第1章~女騎士の誇りは濡れて~

異常那鬼

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第44話~会敵~

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 魔族が現れたという知らせに、ピエタ村は騒然となった。村の誰もが荷物をまとめ逃げ出そうとしていた。カリア率いるメリダの兵士達は、武装を整えると坑道へ向かう村の北へ集合した。そこへ、フィリー率いる白の騎士団も合流する。

 坑道へ向かう道はそう広くなく、馬は使えない。しかも登り坂になっている。馬を使った機動戦を得意とする白の騎士団にとっては、あまり良い状況ではなかった。戦術的には村の広場におびき出し、待ち伏せするのが得策だ。しかし、カリアは兵士達を坑道へと向かわせようとしていた。

「カリア殿、お待ちください」

 フィリーはカリアを引き留めた。何も考えずに山道を進めば、魔族の待ち伏せを受ける。ただでさえ、相手の戦力がわからないのだから。しかし、カリアはフィリーの助言に聞く耳を持たなかった。

「臆病者の騎士様達は、そこで見ていれば良い。我らが中央教会は魔族相手に背中など見せません」

 カリアがこうまで強気なのには理由があった。アンジェはカリアだけにこう伝えていた。

「魔族襲来の報告は虚偽で、迷いこんだ武装もしていない魔族数名が坑道から現れただけだ」と。

 当然の事だが、それこそが虚であり魔王の策だ。メリダの兵が迎えば、リスタルトの騎士達も来ないわけにはいかない。実際、フィリーは騎士達を馬から降ろし、カリア達の後に続いて坑道へと向かった。

 坑道の出口には、アダモンと四人の従者が座り込んで、タルスが打った鋼の弁当を美味そうに頬張っていた。

「アダモン様、そろそろ来るんじゃないですか?」
「んっ、そうか」

 アダモンは腰を上げると鎧兜をつけ、武器のアダマンハンマーを手にして、軽く振った。

「しかし、良く引き受けましたね」
「そうですよ。わざと負けて人間達を引き付けろなんて」

 アダモン達が坑道の出口で敵を引き付け、誘いこんだとこで、周囲に潜んでいるミスラ達が挟撃をかける手筈になっていた。魔王の策を受けたミスラからの頼みで、アダモンは囮となる事を心地よく了承した。ミスラ達ミスリルの一族は敏捷性に優れている。だが、それを活かすために最低限の防具しかつけず防御力は乏しい。言うなれば白の騎士団と条件は同じだ。それに対して、蒼魔四氏族の中で最も防御に長けたアダマン族の身に着ける全身鎧は硬度だけでなく、高い魔法耐性も誇る。

「ミスラには借りもある。お前達も先の撤退戦の事は聞いとるだろ」

 魔王が勇者に倒された後の撤退戦では蒼魔族の長としての責任からか、ミリアが殿を務めた。アダモンは自分達が残ると言ったが、足の遅い部隊だと最後に逃げ遅れるとミリアに説得された。

「俺は本当は嬉しかったんだ。あいつが生き残っててくれて。しかも、どういう理由かはわからねえが、失った魔力もほとんど回復してやがる。やっぱりあの女は俺達蒼魔族の長に相応しい」
「アダモン様はそうでも、他の二つの氏族はどう思ってるんですかね」

 蒼魔四氏族の残り二つはオリハルコンとヒヒイロカネの氏族で、魔法と謀略を好むオリハルコン一族。攻撃に特化したヒイイロカネの一族だ。

「特にオリハルコンの奴らは、何考えてるかわかりませんよね」

 アダモンにミリアへ闘技を申し込むように唆したのはオリハルコンの長であるオリスタリアだった。

「いいってことよ。あいつが何を考えていようが、思い通りにはならねえ」
「どうしてですか?」
「それはな……実は魔……」

 実は魔王は死んでいないと言おうとしてアダモンは口を閉ざした。ミリアから、他の誰にも言ってはならないと口止めされていたのを思い出したからだ。

「な、なんでもねえ」

 アダモンがごまかそうとしていると、風を切る音がした。アダモンの鎧兜に矢が当たり音を立てる。

「アダモン様!」
「おいでなすったか!」

 いつの間にか弓を手にしたメリダ兵がアダモン達を半円状に囲むように展開していた。

「矢を放て! 相手はたかだか五人だ!」

 カリアが吠える。アダモン達に向かって次々と矢が放たれる。四人の従者達が巨大な盾でアダモンの周囲に壁を作る。長を守る四人の従者、彼らが持つアダマンタイトを散りばめた盾は並の兵士の矢では到底貫けない。

「カリア殿、普通の矢では無理です。彼らの矢に魔法の力を!」

 フィリーがカリアに叫ぶ。メリダの神官ならば、矢に魔力を込め威力を増すことができる。

「わかっている! わかっているが……」

 そう、カリアの魔力は回復しきっていなかった。このままでは、矢の無駄使いにしかならない。そう判断したフィリーが号令をかける。

「白の騎士団。《身体強化》で接近戦に持ち込むぞ!」

 女騎士達が一斉に魔法を唱え始める。彼女達の身体が仄かな光に包まれる。《身体強化》の魔法といってもどこを強化するかで違うが、白の騎士団の女騎士達が得意とするのは、身体のあらゆる感覚を研ぎ澄ませることによって、俊敏性を増すものだ。

「奴らの鎧は硬い。波状攻撃で鎧の隙間を狙え! 抜刀!」

 フィリーに続いて三〇名もの女騎士が一斉に刀を抜いた。刀身に陽光が反射する。

「ありゃ、難敵だな」

 普通の矢など問題にしないアダモン達であったが、魔法によって強化された三〇名の騎士を相手にするのは、さすがに難しかった。

「よし、そろそろ逃げるぞ!ゆっくりな」

 アダモン達はじりじりを後退を始めた。その様子を見たカリアも、白の騎士団達に遅れをとるかと、兵士達に突撃を命じた。
 メリダの兵士達と白の騎士団がアダモン達五人に向かって駆ける。追いつくと思ったその時、アダモンが振り返ると手に持ったハンマーで地面を叩きつけた。その衝撃で地面が割れた。

「なにぃ!」

 地面の下には空間が広がっていた。メリダの兵士と白の騎士達はそこに落とされたのだ。



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