陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした

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プロローグ 勇者召喚

第一話 勇者召喚と分析と

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 立花たちばな颯太そうたはクラスで目立たない陰キャラ男子だ。漫画とかでいうモブ的位置。
 しかしイジメられるような事もなく、ただ目立たずひっそりとそこに居るだけである。
 今日もいつもと変わらない日常を過ごす…はずだった。

(……ここは…どこだ…!?)

 今颯太はとても日常とは言い難い状況にに陥っていた。
 目の前に広がるのは見たこともない所で、同じ様に唖然としているクラスメイト達が居た。
 その周りには、ドレスに身を包んだ美しい女性と変な格好をした男達も居て、女性は汗びっしょりで息を切らしている。
 暫しの沈黙…男達はそれぞれ顔を見合わせ、次の瞬間感極まった様子で大歓声を上げた。

「やったぞ!成功だ!」
「遂にやりましたぞ!姫様!」
「これでこの国は救われた!」
「流石は姫様だ!」

 女性はその場にへたり込み、大きな瞳に涙を溜め、颯太達私立楯原高等学校1年B組メンバーにこう言った。

「ようこそいらっしゃいました!勇者様!」

(…はぁ?)



 どうやらここ最近ラノベとかでよく見る異世界召喚とやらに巻き込まれてしまい、ここは現代日本とは違う、剣や魔法の存在するファンタジーな世界である。颯太は冷静に現状を分析していく。
 さっきの彼らの話を簡単に纏めるとこういう事だ。
 およそ千年前から封印されていた魔王が最近復活し世界が大混乱。各国ごとに意見が分かれ、魔王そっちのけで戦争勃発。それが激化してきて国民の不満も高まり、もうてんてこ舞い。
 そこで、魔力や潜在能力が高い傾向がある異世界人を召喚して、世界平和への道を切り開いてもらおう、と考えたらしい。
 話を聞きながら、颯太はこの世界の人間に呆れていた。

(自分達の世界の話だろうが。なんで自分達だけで解決しようって気がないんだ)

 呆れてものが言えないどころか怒りさえ湧かない。
 しかし周りのクラスメイト達は、こんなラノベみたいな出来事を自分で体験している事にテンションが上がっているのか、この話が理不尽だらけな事に気付いていない様子だ。

「お願いします!この国を…この世界を救ってください!」

 ドレス姿の女性、いや、この世界一の大国レイドナルク王国第一王女アストレア・フォン・レイドナルク様は颯太達に深々と頭を下げた。
 するとB組の中から、クラス一のイケメンで人気者の有本ありもと良輔りょうすけがアストレアの前に出て、彼女の肩に手を掛けた。

「頭を上げてくださいアストレア様。一国の王女様が簡単に頭を下げるのは良くないですよ」

 歯の浮くような気取った台詞を並べながら、良輔は大多数の女子が見たら陥落しそうな甘い笑みをアストレアに向けた。
 アストレアは少しの間、その笑みに見惚れていたがすぐにハッとして良輔にお礼を言う。

「あ、ありがとうございます。そんな風に言ってくださるなんて…」
「いえいえ。それにそんな大変な事情を聞いて放っておくなんて出来ませんよ。俺も皆も出来る限り協力します」

(おいおい何勝手に決めてんだ!まだ誰も協力するなんて言ってないけど!?)

 良輔の勝手なやり取りに、颯太は内心ツッコみながら恨めしそうな視線を向ける。
 だがこの考えは少数派だったようで、周りの殆どのクラスメイト達は良輔に同調した声を上げる。

「そうですよ!私達頑張ります!」
「出来る事があったら言って下さい!」
「よっしゃ!いっちょやってやるか!」
「てかマジでラノベみてぇ!」

 次々に良輔とアストレアの周りに集まって、口を揃えて協力の意志を告げていく。
 そんな中颯太はその輪には加わらず、バレないように注意しながら周囲の様子を探っていた。
 そして、後ろの方で男達が何やらこちらの様子を伺い、コソコソと相談し合っていることに気が付いた。

(…この人達は信用できないな)

 颯太はさっさと今この場に居る第一王女やその周りの男達を切り捨てた。
 王女は最初に自分達に頭を下げた時、僅かに不満の色が顔に出ていた。
 何故私がこんな人達に頭を下げないといけないの?とでも言いたそうな様子から見て、誰かに指示されてやったことだと分かる。
 国の王女に頭を下げさせれば協力するだろうという絶対的な自信も垣間見えた。
 俺達を利用する気だ、と颯太は見当をつけた。
 多分男達は、この中で誰が一番影響力があるか、一番利用やすいのは誰かを値踏みしていたのだろう。
 不意に、二人の人物が颯太の肩を叩く。
 叩かれる前に近づいてくる気配を感じ取っていた颯太は、驚かず振り返る事もせずに後ろの人物に訪ねた。

「行かなくていいか?大輝も綾乃も」
「颯太が行かねーのに行く訳ないじゃん」
「何かあるんでしょ?」

 良輔達の輪に加わらなかったのは颯太だけではない。
 最初に颯太の肩を叩いたのは、彼の親友でクラスの中心的存在の江川えがわ大輝だいき
 大輝と一緒に颯太の側に来た黒髪ロングの美少女は一宮いちみや綾乃あやの
 三人は共に武を修める者、切磋琢磨し合える者として幼い頃からの親友だ。
 大輝は空手道と柔道、綾乃は剣道と合気道、颯太は武術全般。
 二人は颯太の事をとても信頼し、同年代の武術家として尊敬していた。
 想定外の事態になった事で、早々に彼と行動すると決めたようだ。
 颯太もこの二人の事は誰よりも信頼している。

「二人はあの人達の言う事、信用できると思うか?」

 颯太の唐突な問いに二人は怪訝な顔をする事なく、周りに気を配りながら思考を巡らせる。

「…いやぁ…今んとこ半信半疑、かな」
「私も。颯太は?」
「信用できない」

 バッサリ切り捨てた颯太に、カカッと笑う大輝と訝しげに顔を顰める綾乃。

「結構はっきり言うんだな」
「どうして、そう思うの?」
「多分あっちは、俺達を利用する気だ。王女の目を見てみな」

 そう言いながらアストレアを見やる。側で良輔が冗談を言って皆を笑わせ、空気を明るくしている所だった。
 アストレアも微笑んではいるが、その目が笑っていないのを彼らが見逃すはずがなかった。

「よく気付いたなぁそんな事」
「流石は《武神ぶしん》ね。あの異名は伊達じゃないわ」
「…それで呼ぶのやめろ…過大評価だってば」

 《武神》
 元の世界での、武道界における颯太の二つ名、異名だ。
 様々な武の大会に出場し、その全てにおいて全国大会で最低でも三位以内の成績を修める彼に、尊敬と畏怖の念を込めて付けられた。
 はっきり言って決して過大評価などではない。
 寧ろ過小評価なのでは、との声も上がる程だ。
 ちなみに最近では、剣道、柔道、合気道、空手道で、三年連続全国大会優勝と驚異的な成績を残している。
 しかし颯太本人は、彼の師匠である祖父に未だ一度も勝てていない事と、彼自身人一倍自分に厳しいが故に、人様からそんな風に見られているなんて微塵も思っていなかった。

「それにその話、あまりここではしないでくれって言ってるよな?」

 颯太は目立つ事が嫌いなのだ。
 だから校内の部活動には属さず、有名な武術家である祖父に直々に修行をつけてもらい、同じ学校の人達には気付かれないようにしてきた。
 その点、大輝と綾乃は小学校以前からの付き合いで、大輝は空手道の、綾乃は剣道の試合で知り合った。
 この二人に直接的な接点はなかったが、近所の公園で初めて出会ってすぐ、颯太という共通の繋がりで仲良くなった。
 所謂幼馴染みだ。

(…ったく、嫌味かそれは!)
(これ無自覚なのよね…はぁ…)

 なので二人共颯太の事は大体分かるし、彼のおかげで今の強さが得られたと言っても過言ではない、と感謝もしている。
 だが彼のこの天然っぷりには、ほとほと呆れていた。
 しかも本人にその自覚がないので質が悪い。
 「お前、達より何倍も強いだろでしょう!」と膝詰めで説教したくなるが、これは我慢だ。
 喉まで出かかった言葉をどうにか飲み込んで大輝が口を開く。

「少し話逸れたけど、どうすんだ?そこまで勘付いててまさかこのまま言いなりになる、とかじゃないよな?」

 颯太は無邪気とも不敵ともとれる笑みを浮かべ、ゆっくりと答えた。

「言いなりになる気なんてサラサラないさ。でも今すぐどうこうする気もない」
「というと?」
「暫く従うフリをしてここに留まる」
「……情報収集、ね?」
「ああ。彼らにはバレないように、慎重にな」

 三人の会話が途切れた所で、丁度アストレアの後ろの扉から白髪の威厳溢れる雰囲気を纏った老人が出て来た。

「お父様!」

(お父様?…ってことは…)

『こ、国王陛下!?』

(ですよねー)

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