陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした

日向

文字の大きさ
49 / 53
閑話

閑話 幼なじみのそうた君 後編

しおりを挟む
「「そうたくん‼」」

 私達の声が重なる。
 颯太君が殺されちゃう!
 でも颯太君は顔色一つ変えずに、空手の上げ受けの要領でオジさんのナイフを腕ごと吹き飛ばした。
 そのまま鳩尾を思い切り蹴り上げ、追い打ちに身体を反転させて踵でオジさんの顎を蹴っ飛ばした。
 オジさんは凄い勢いで吹き飛ばされた。

 ドサッ!

「…ふぅ」

 一つ一つの動きはとても素早くて、私じゃ目で追うだけで精一杯だった。

「す、すっげえ…」

 それは大輝君も同じだったみたいで、颯太君の華麗な攻撃動作に感嘆していた。
 オジさんは気絶しているようで、起き上がる気配はない。
 颯太君はこっちを振り返ってきてニカッと笑った。

「おわったよ」

 颯太君はもう一度、オジさんがちゃんと気絶しているか確認して、ごみ捨て場にあった紐でオジさんの身体を電柱に縛り付け、落ちているナイフを回収して私達に走り寄ってきた。

「ふたりとも、だいじょうぶだった?」
「お、おう。おれはだいじょぶ」
「わたしも」
「よかった。じゃあいこっか」

 颯太君は何事もなかったかのように私達の腕を引いて走り出した。

「あ、あの…」
「?」
「ありがとう。そうたくん」
「ううん。ともだちがこまっていたらたすけるのはあたりまえだよ。あやのちゃんにけががなくて、ほんとによかった」
「だいきくんも、ありがとう」
「いや、おれはそうたくんとちがって、ただうけとめただけだから…」
「だいきくんがいなかったら、おれあのばであやのちゃんといっしょにころされてたよ。ありがとう、だいきくん!」
「!…うん…」

 大輝君、とっても嬉しそう!
 三人共無事で良かった。
 でも大輝君、何か変な顔してる。

「それにしても…なんかへんなかんじ」
「「?なにが?」」

 私と颯太君の声がハモる。

「わかんないんだけど、さっきからむねがモヤモヤ~ってするんだよ」
「だいじょうぶ?だいきくん」

 颯太君が心配そうに彼の名前を呼んだ時、大輝君はハッとした顔で颯太君の顔を指差した。

「それだー!」
「「ええ?」」
「よびかただよ、よびかた!さっきあやのちゃんをほうったとき、おれをよびすてしてたのに、いまはまた、くんづけなんだ!」
「あ」
「なるほど」

 言われて気が付いた。
 確かに私を大輝君に向かって放り投げた時は確かに呼び捨てだった。
 突然の事だったから気に止めてなかったみたいだ。

「もうおれのことはだいきでいいぜ!そうた!」
「うん、わかったよ、だいき」

 二人は顔を見合わせて笑った。
 私は何か仲間はずれにされた気分でムキになって言ってた。

「あ、ずるいずるい!わたしも!わたしもあやのでいい!そうた!だいき!」
「わかったわかった。おちつけよあやの」
「じゃあこんどから、あやのってよぶね」

 颯太君…ううん、颯太に名前を呼ばれた時、大輝に呼ばれた時とは違う感じがした。
 なんか、ドキッとした。
 私はまた顔が赤くなるのを感じて、思わず俯いた。

 何だろ…この気持ち…
 変なの、モヤッてする。
 でも嫌な感じとかじゃなくて…ふわってしてて、あったかくて…

「それにしても、そうたってつよかったんだな!さいしょにあのおっさんけっとばしたの、とびげりだよな?」
「そうだけど…おれはつよくないよ。おじいちゃんからみれば、まだまだだし…」
「そうたのじいちゃんはつよいのか?」
「すっごくつよいよ!おれのあこがれ!」

 そう言った颯太はさっきよりも眩しい、輝くような笑顔だった。
 私は、心臓が大きく跳ね上がった。
 少し息苦しかったけど、なんとなく走り続けての息切れとは違うのが分かった。

 もっと颯太の色んな顔がみたい。
 もっと颯太とお喋りしたい。
 もっと颯太の側に、一緒に居たい。

 何だろう、この気持ち。
 とっても幸せな気持ち。
 でも分からない。
 こんな風に感じるの初めてだもん。

「あやの、どした?」
「…へ?」
「さっきからだまりこんでるけど、どうかした?」

 心配そうに私の顔を覗き込んでくる颯太と大輝。
 颯太の顔が凄く近くにあってびっくりした。

「かお、あかいよ?だいじょうぶ?」
「ううん!だいじょうぶ!なんでもない!」
「「ほんと?」」
「ほんと!」

 私は恥ずかしくなった。
 スピードを上げて二人を追い越す。
 二人は不思議そうな顔で首を傾げたが、すぐに追ってきた。

「まってよ、あやの!」
「おいてくなよ!」
「はやくはやく!」

 私達は走りながら笑い合った。

 その後、無事颯太の家に着いて事情を説明した事で、私を攫おうとしていた男達は警察に捕まった。
 お父さんもお母さんも、その事を聞いて、お仕事が忙しい筈なのに私の所に駆けつけてくれて、お母さんは「無事で良かった」って泣きながら私を抱きしめて、お父さんも優しい顔で頭を撫でてくれた。
 二人共、私を守ってくれた颯太と大輝、匿ってくれた颯太の家の人達に頭を下げてお礼を言っていた。
 その日は三人でお家に帰った。
 どうやって守ってくれたのか聞かれたから私は正直に、颯太がオジさんを蹴りで倒した事やナイフを躱すため、颯太に投げられた私を大輝が受け止めてくれた事を話した。
 お父さんもお母さんも目を丸くして、口をあんぐりと開け驚いていた。
 本当がどうか疑ってたけど、捕まった男達の内の一人の、顔やお腹に蹴られたような痣があって電柱に縛られていたことを警察に聞いていたから信じてくれた。
 警察の人は、とても私と同い年の子どもがやった事とは思えないって言ってた。
 お父さんは「これから颯太君と大輝君の二人と一緒に強くなれ」って言ってくれた。
 顔が引き攣ってて苦笑いだったけど。

 それで、私はお母さんに助けられてから颯太に対して変な感じがする事を相談した。
 お母さんはまた驚いたけど、しっかりと私の話を聞いてくれた。
 でも話を進める内にだんだんとニヤニヤ笑いになってきてた。
 なんでそんな顔してるのって聞いたら、お母さんがこの気持ちは変なんかじゃないよって言ってくれた。
 それは、“恋”なんだよって教えてくれた。
 恋。
 その言葉を聞いた瞬間、私は心の霧が晴れたかような気がした。
 テレビのアニメやドラマでもよく聞く言葉。
 人が人の事を好きになる気持ち。

 私は、颯太が好きなんだ。
 だから、颯太に名前を呼ばれた時にドキッとしたし、もっと一緒に居たいって感じたんだ。

 私はとっても嬉しかった。
 その気持ちは大事にしないってお母さんが頭を撫でてくれた。

「いつかその気持ちを、颯太君に伝えられると良いわね、綾乃」
「うん!」

 今日は颯太が私を守ってくれた。
 次は私が、颯太を助けられたら良いな。
 そのためには、強くなろう。
 大好きな彼の隣を歩いていたいから。


________________________________

 家族構成の部分は残します。
 ↓

【立花家】

祖父 幸三こうぞう  72歳
祖母 早希子さきこ  (享年)65歳
父 健治けんじ  36歳
母 奈津子なつこ  36歳
長男 颯太  16歳
長女 佳代かよ  12歳


【一宮家】

祖父 虎次郎とらじろう  70歳
祖母 文香ふみか  67歳
父 平助へいすけ  45歳
母 まな  44歳
長女 綾乃あやの  16歳


【江川家】

父 影斗かげと (享年)37歳
母 優奈ゆうな  42歳
長女 ひかり  21歳
長男 光輝こうき  19歳
次男 大輝だいき  16歳
三男 元輝げんき  15歳
次女 光子こうこ  12歳
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...