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プロローグ
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道の途中に、たくさんのイチョウが舞い落ちた。そこを複雑に曲がり抜けると、静かな雰囲気の公園に出た。開けた広場を囲むようにジョギングロードのある公園で、遊具などは少ない。
友人と別れた後の高校の帰り、ビルの立ち並ぶ都心部を抜けて公園広場を自転車で突っ切り家に帰ることが、最近の俺の趣味だ。
元々サイクリングが好きだし、何よりも公園で見かける家族に心が癒される。
公園のベンチでアイスを食べる姉妹、ジョギングをする老夫婦、犬の散歩をする一家…。いろんな人がいる。
彼らは皆、何の悩み一つもなさそうな姿で、当たり前のように遊んでいる。
家族と過ごす時間は何にも変えがたいものだ。友達遊ぶときよりも、恋人といるときよりも深い安らぎが得られる。緊張もなく心配もなく付き合える仲というのは、尊く大事にすべき貴重なものなのだ。
まあ、元々「家族」のあるべき姿はこういうもので、それが当然だというのは知っている。変に気を使う関係性の家族の方がおかしいだろう。何の気なしにいつでもそばにいて笑い会える温かい関係、それが「家族」だ。
俺にも兄弟がいるが、別に兄弟たちに気を遣ったりなどしない。兄弟間で不仲なわけでもなく、むしろ仲はいい方だと思っている。俺の友人の中には兄弟が目障りで一週間も口をきかない奴らもいるらしいから、それに比べれば仲は随分といい。8人もいて一番上と一番下の歳の差が12歳もありながら全員仲良しなのは、ある意味かなり珍しいことだろう。
俺はそんな兄弟を大切に思っているし、たぶん向こうも俺のことは大事に思っているはずだ。何もおかしくはない。至って「普通」の兄弟だ。
…俺はいつも自分にそう言い聞かせている。
家にいたくない故にわざわざ遠回りして帰る自分に強烈な嫌悪感を抱きながら。
「見てろよ」と兄が言う。
兄がコップに手をかざすと、中に入った水が意志を持っているかの如く動いた。そして、兄の手のひらに引き寄せられていく。兄がマジシャンのように手をひっくり返すと、コップの水が球体になり兄の手の上に収まった。
球体の水など滅多に見られたものではないだろうが、俺は何も言わずぼうっとそれを見つめていた。
兄は球体をポンっと放り投げ口の中に入れる。水は崩れて流体に戻った。
「どうだ?」
ドヤ顔の兄に俺は「普通に飲めよ」と一言。兄は不機嫌になってどこかへ行った。
すると次は弟が来た。
「兄ちゃん、見て見て!」
弟が俺の袖を引いてどこかへ連れ出す。弟が風を起こして浮き上がると、俺の手を取った。
ただ、どうしても俺と兄弟の間には、壊せない壁があるのだ。
自分に兄弟がいて、兄弟だけ持っていて自分は持っていないものがあったら、自分はコンプレックスを持つ。それが身長だったり成績なら、まだ俺は耐えられたかもしれない。他の家庭にも少なからずこのくらいの格差ならあるから、学校で友達に「俺の弟が頭良いってウザくてさ~」などと他愛ない話ができる。
でも、俺と兄弟たちを隔てるコンプレックスはそんなものではない。俺と兄弟たち…いや、最早「俺の兄弟とその他大勢」と言った方がいいほど、深い隔たりがある。
疎外感の原因は簡単だ。
俺は普通の人間であり、俺の兄弟は全員、普通の人間ではないのだ。
理由は知らないが、俺だけ変なのか、天文学的確率で生まれる恐るべし奇跡の産物が、たまたま我が家の兄弟たちだったのか。
炎を操り、風を操り、水を操る。そんなおとぎ話のような奴らが、俺と血を分けた兄弟として存在している。
俺の7人の兄弟は、全員超能力者だ。
友人と別れた後の高校の帰り、ビルの立ち並ぶ都心部を抜けて公園広場を自転車で突っ切り家に帰ることが、最近の俺の趣味だ。
元々サイクリングが好きだし、何よりも公園で見かける家族に心が癒される。
公園のベンチでアイスを食べる姉妹、ジョギングをする老夫婦、犬の散歩をする一家…。いろんな人がいる。
彼らは皆、何の悩み一つもなさそうな姿で、当たり前のように遊んでいる。
家族と過ごす時間は何にも変えがたいものだ。友達遊ぶときよりも、恋人といるときよりも深い安らぎが得られる。緊張もなく心配もなく付き合える仲というのは、尊く大事にすべき貴重なものなのだ。
まあ、元々「家族」のあるべき姿はこういうもので、それが当然だというのは知っている。変に気を使う関係性の家族の方がおかしいだろう。何の気なしにいつでもそばにいて笑い会える温かい関係、それが「家族」だ。
俺にも兄弟がいるが、別に兄弟たちに気を遣ったりなどしない。兄弟間で不仲なわけでもなく、むしろ仲はいい方だと思っている。俺の友人の中には兄弟が目障りで一週間も口をきかない奴らもいるらしいから、それに比べれば仲は随分といい。8人もいて一番上と一番下の歳の差が12歳もありながら全員仲良しなのは、ある意味かなり珍しいことだろう。
俺はそんな兄弟を大切に思っているし、たぶん向こうも俺のことは大事に思っているはずだ。何もおかしくはない。至って「普通」の兄弟だ。
…俺はいつも自分にそう言い聞かせている。
家にいたくない故にわざわざ遠回りして帰る自分に強烈な嫌悪感を抱きながら。
「見てろよ」と兄が言う。
兄がコップに手をかざすと、中に入った水が意志を持っているかの如く動いた。そして、兄の手のひらに引き寄せられていく。兄がマジシャンのように手をひっくり返すと、コップの水が球体になり兄の手の上に収まった。
球体の水など滅多に見られたものではないだろうが、俺は何も言わずぼうっとそれを見つめていた。
兄は球体をポンっと放り投げ口の中に入れる。水は崩れて流体に戻った。
「どうだ?」
ドヤ顔の兄に俺は「普通に飲めよ」と一言。兄は不機嫌になってどこかへ行った。
すると次は弟が来た。
「兄ちゃん、見て見て!」
弟が俺の袖を引いてどこかへ連れ出す。弟が風を起こして浮き上がると、俺の手を取った。
ただ、どうしても俺と兄弟の間には、壊せない壁があるのだ。
自分に兄弟がいて、兄弟だけ持っていて自分は持っていないものがあったら、自分はコンプレックスを持つ。それが身長だったり成績なら、まだ俺は耐えられたかもしれない。他の家庭にも少なからずこのくらいの格差ならあるから、学校で友達に「俺の弟が頭良いってウザくてさ~」などと他愛ない話ができる。
でも、俺と兄弟たちを隔てるコンプレックスはそんなものではない。俺と兄弟たち…いや、最早「俺の兄弟とその他大勢」と言った方がいいほど、深い隔たりがある。
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俺は普通の人間であり、俺の兄弟は全員、普通の人間ではないのだ。
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炎を操り、風を操り、水を操る。そんなおとぎ話のような奴らが、俺と血を分けた兄弟として存在している。
俺の7人の兄弟は、全員超能力者だ。
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