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第二章 藍と学校

108. “砂神”アデライーダ Adelaida, The God of Sand

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 ザミールはアデライーダによくよく言われたものだ。

 『貴方は獣神体アニムスなんだから、下の子が人間体アニマになったら、絶対に守ってあげて。
 
 ……そしてもちろん獣神体アニムスとして、人間体アニマのお父さんのこともね。』

 その言葉はザミールの生を決定づける“呪いの言葉”だった。

 奇しくもアイとザミールは両方とも“母親”という“祝福のろい”にその生を縛られた者同士だったのだ。

 ◇◆◇

 アデライーダは身内に人間体アニマがいる者、不当に更迭こうてつされた人間体アニマたち、差別思想に反する者たちを集めて、エレクトラに戦いを挑んだ。

 いくら“雷神”エレクトラでも、ミルヒシュトラーセの剣として、その武力を担うザミール家のトップであり、本人も“砂神さじん”と呼ばれるほど強力なヘルツを持つアデライーダとり合うことはとてもリスキーだった。

 そこで、エレクトラは地球に住む地球人ゴミどもの知恵を借りて、極めて狡猾こうかつな手を使った。つまり、“分割統治政策”だった。

 ◇◆◇

 分割統治とは統治者が、少数のグループに特権的地位を与えて優遇し、それ以外の多数からの敵意を自分たち統治者ではなく、その少数に向けさせ、お互いに争わせることで、不毛な争いをしている所をやすやすと治めるという政策だ。

 エレクトラはまず、砂神アデライーダの陣営である革命軍ではなく、自分たちに与するのならば、その一族と家族に含まれる人間体アニマは例外的に獣神体アニムスと同じ特権的地位を与えると喧伝した。

 そして裏工作を担当するミルヒシュトラーセの手である、不知火家の人間に命じて実際に有力貴族に革命軍に対する裏切りを持ちかけた。

 これは効果が絶大だった。いくら此方こちらには“砂神アデライーダ”の加護がついているとはいえ、相手取るのは、“雷神エレクトラ”とその配下である陽炎家と不知火家である。

 全面戦争を仕掛ければ、たとい勝てたとしても、革命軍側の多大な犠牲は避けられない。そして、これはエレクトラにとってもそうなのだが、辺境伯派同士で争い、両者に多大な損害が出た場合、公王派が介入して漁夫の利を得ようとする可能性が高い。

 もちろん公王派と結託してエレクトラ派を攻撃するという手もないことはなかったのだが、今まで長らくエレクトラの、文字通り手先として反公王派を表明していたアデライーダに公王派が与するとは思えなかった。

 ◇◆◇

 つまり、エレクトラとアデライーダはお互いに、自陣営の被害は最小に抑え、かつ第三勢力が介入する余地も与えないほど迅速に、相手を完膚かんぷなきまでに叩きのめすことが求められた。

 これは非常に困難に思えたが、エレクトラは分割統治政策で相手方の疑心暗鬼を招き、不和を生み出し、その類稀たぐいまれなる権謀術数けんぼうじゅっすうによって血を流さずして相手を弱らせることに成功した。

 ……地球パンドラ人特有の姑息で汚く、卑怯な……しかし最も効果的なやり方で。

 ◇◆◇

 そうなると困ったのはアデライーダだ。今までの同じ、
 『エレクトラ辺境伯の差別主義を殲滅する』
 という旗本に集った仲間は一人、また一人とエレクトラの甘言かんげんによってアデライーダの元を離れていき、残った者たちもいつ身内が裏切るか分からない不安を常に抱えたまま戦うことになる。

 そこでアデライーダが選んだのは、いや……選ばされたのは、“誓い”使ったエレクトラとの一対一の決闘であった。

 この文学界リテラチュアでは、“心を込めた言葉”で結んだ“誓い”を破れば、その者は心をうしなうという性質から、しばしば誓いを利用した政策が行われる。

 つまり、アデライーダはエレクトラによって生み出された疑心暗鬼により、自らの勢力とエレクトラ派の全面戦争での勝ち目はなくなったと悟り、どうにかしてエレクトラとの一対一の決闘に持ち込むしか活路はないと考えたのだ。

 ◇◆◇

 アデライーダは十分に勝ち目があると踏んでいた。そもそも、アデライーダ・カラマードは“神聖ロイヤル帝国”
 ――当時はまだその国号を“ロイヤル王国”としており、他国を侵略する帝国主義でもなく、今ほど他国を勢力下に置いておらず、ずっと小さな国だったが――
 の“忠実なる騎士ロイヤル・ナイト”だった。

 では何故敵国の上級騎士であったアデライーダがエレクトラの部下になったのか?

 まだロイヤル王国のナイトだった時代、まだエレクトラが地獄パンドラからの贈り物を見つける前に、2人は現在はパンドラ公国の支配下となっている白い森ヴァイス・ヴァルトの領有権をめぐっていさかいを起こした。

 そして、“忠実なる騎士ロイヤル・ナイト”が皆そうするように、アデライーダはエレクトラに決闘を申し込んだ。その時の誓いの内容は、《敗者が勝者の軍門に下る。》という単純明快なものだった。

 エレクトラがこの危ない賭けになったのは、自分が負けるわけがないという絶対的な自信と、まだ子が一人もおらず母親ではなかったこと、そして何よりアデライーダのような強者を自陣営に引き込み、いつか起こすパンドラ公国を公王から乗っ取るという計画に、利用する為だった。

 そして、2人は三日三晩白い森ヴァイス・ヴァルトのなかで戦い。空を裂き、大地を揺るがすその戦いが終わった夜……最後の夜明けに立っていたのは、エレクトラだった。

 こうしてエレクトラは“忠実なる騎士ロイヤル・ナイト”の筆頭と白い森ヴァイス・ヴァルトの領有権を得て、その戦いぶりから“雷神”と呼ばれるようになった。

 つまり、エレクトラは一つの戦いで敵国の兵力を削ぎ、自国の戦力を拡充し、さらにはその強さを国内外に周知させることに成功したのだった。

 ◇◆◇

 アデライーダが革命軍としてエレクトラと一騎打ちをする際に勝機を見いだしたのは、以前の決闘で自身が三日三晩喰らいつき、決してエレクトラが全くかなわない相手ではないと知っていたからだ。

 そして、アデライーダは周囲の人間にエレクトラに一騎打ちの決闘を挑むことを周知し、国内のすべてにその情報が行き渡るよう喧伝けんでんした。そうすることで、『強いものが正義』という思想を紐帯ちゅうたいとする軍閥ぐんばつのエレクトラが決闘から逃避することを防いだのだ。

 もしこの状況でエレクトラがアデライーダからの決闘の申し込みを断れば、臆病者のそしりを受けることはまぬかれないだろうからだ。

 そうして、“雷神”エレクトラと“砂神”アデライーダとの決闘が再び執り行われることになった。

 ……エレクトラの夫であるオイディプスはエレクトラの身を案じて、最後まで決闘を受けることに反対していた。

 ◇◆◇

「……エレクトラ……。」

 オイディプスが不安そうな顔で、自身より少し背の高いエレクトラを見上げる。

「……そんな不安そうな顔をするな、オイディプス。、おれが負けることはねぇ……ほら、いつもみたいに笑ってくれよ。」

 愛おしそうにその頬を人差し指と中指の甲でなでるエレクトラ。

「ほんとうに気をつけてくれよ……それに、今はゲアーターもいるんだし……。」

 オイディプスが自分が抱いている赤ん坊に目を落とす。エレクトラは自分の瞳にはかえす。

「ん?……あぁ?……あぁ、そうだな……おぅ……じゃあ、いってくる。」

 エレクトラが決闘場に向かって確かな自信に満ちた足取りで歩き出す。そこは後にアイとはるひが聖別の儀セパレーションの決闘を行うことになる場だった。

 ◇◆◇

「あなた……それに私のかわいいザミール、そんな泣きそうな顔をしないで……この私……“砂神アデライーダ”が負けるわけないでしょう……?

 それに……私には“夫と子供”を護るという使命があるの……こんなとこで負けてなんて居られないわ。

 ……じゃあ……いってくる。」

 ◇◆◇

「……エレクトラ様……いや、エレクトラちゃん。」

「ロイヤルを裏切って、今度はおれを裏切んのかぁ?とんだコウモリ野郎ひきょうものだなァ……?なぁ?……アデライーダ。」

 先程オイディプスに向けていた慈愛に満ちた笑顔から一転して、ヘラヘラと相手を嘲笑あざわらうエレクトラ。

「……黙りなさい。私は確かに裏切り者だけど、自分の信念を裏切ったことはないわ。それに……今回先に裏切ったのは貴女でしょう……?エレクトラ。」
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