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第二章 藍と学校

113. アイと“人間”の出会い Ai meets the 'Human'.

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 そうか。

 そうか。

 そうだったのか。

 ケダモノを殺して回っていたのは、お母様のヘルツではなくて、俺の、俺のヘルツ……俺自身のこころだったのか。

 なんだぁ。そうだったのか。お母様が起きてくださったわけではなかったんだ。少し残念だなぁと思った。

 しかしなんだか可哀想な子だな、と思った。
 自分のことを。
 父と妹、弟は殺され、母は寝たきり。
 この子は人殺し。
 それも大量虐殺者。

 なんだか可哀想だなぁ……きっと一生クソみたいな人生を送るんだろう。

 あぁ、可哀想になぁ……。

 ◇◆◇

 ――そんなかれを救ったのは“人間せいじつであること”だった。

 ◇◆◇

「「ガアアァアア!!!」」

 アイとザミールが自分のヘルツの全てを、自分のこころを全て曝け出して、お互いにぶつけ合う。

 それは旧友が何十年かけて、ベンチの上で育むような、カフェの一席で育てるような……お互いの部屋に遊びに行ってつむぐような……そんなこころの分かち合いを刹那せつなのうちに行うような、そんな戦いだった。

 お互いのこころを押し付け合い、磁石のように反発し、しかしまた磁石のようにくっつきあう。

 そうして最後はアイの絶望と、ザミールの希望、アイの哀しみとザミールの哀しみが……ミルクとコーヒーのように混ざり合う。

 そうして、決して交わることのなかった2人の人生が、最高権力者の子と反政府組織レジスタンスのリーダーという正反対の2人の人生が……混ざり合った。

 そうして2人は轟音とともに暗闇の洞窟の地面の底へと落ちていった。

「「倒れろおおおぉおおぉ!!」」

 ザミールの砂塵が地面に溶けていき、アイの水流が上へとほどけていく。

 ……しばらくして、2人は産まれ堕ちたばかりの赤子のように、手を握って横になって倒れていた。

 ――しかし、2人の気分は最高だった。

 ◇◆◇

 アイがゆっくりと腕だけを使い上半身を起こしながら言う。

「なぁザミール!!……最高だぜぇ……!!
 なんだか気分がいいんだぁ……分かるかぁ!?」

 ザミールはすでに膝を立て、アイよりもずっと先に臨戦態勢に入っていた。戦闘経験の差が出ている……しかし、ザミールの顔は敵を捉えることはなく、地面を見据えていた。

「……あぁ……いい気分だ。これは、所謂いわゆるブチ上がってるってやつだ……。」

「オイオイオイ!にしてはテンションひけぇじゃあねぇか?どうしたんだよ……?」

 アイは決して自分の方を見ようともしない、ザミールに向けて問いかける。アイの身体はどうやらまだ起き上がれはしないらしい。

 ザミールが静かに言葉を地面にこぼす。

「……お前も……クソみてぇな環境で人生を送ってきたんだな。」

「……?……あぁ……おれがお前のヘルツの中にお前のこころをみたように、お前も見たのか……。
 ……おれのごみ糞みてぇな生き様をよ。」

 ザミールがやっとアイの方へ目を遣る。その身体を……。
 
 その華奢きゃしゃで満身創痍の、ザミールに痛めつけられた……今までの人生でずっとなぶられてきたこころと身体を……。

「アイ……俺はお前の、“環境”をクソみてぇだと言ったが……お前の“生き様”をクソだとは言ってねぇよ……。
 
 ――むしろ、お前の生き様は……“うつくしい”。」

 アイの大きな瞳がさらに大きく見開かれる。

「……!……。」

 アイは何かを言おうと、いつものようにお道化どけて誤魔化そうと……口を開いたが……何も言えなかった。

 表面上の見た目やミルヒシュトラーセ家であることを褒められることには慣れていたが、面と向かって“生き様”を……内面を……“こころ”を、称賛されることには慣れていなかった。

 母親ですら……いや、元母親ですらアイの生き様を、生きぎたなさを責めて、アイを堕胎だたいしたのに……。

 確かに友はそれを褒めてくれたこともあった。……だけどどこかで自分が絶対にそうだと思っていることを友達に、
 
 『あなたはそんな人じゃない。』
 
 と言ってもらえても、母親に1回言われた言葉のほうがアイの胸に刺さった、それは決して抜けないのだ……親から言われたその言葉を胸から抜こうとしても……決して抜けない……むしろ抜こうとするたびに、ただその痛みを増すばかりだった。

 ◇◆◇

「汚ねぇから触んじゃねぇよ、ボケがぁ……。テメェのせいで!テメェみてぇなゴミが生まれてきたせいで!!おれがぁ!!どんだけ迷惑してると思ってる?!あぁ!?やっとぉ!!生まれてはじめておれこ役に立てるチャンスを!!テメェで潰そうとしてんだぞ!!分かってんのか?!テメェが役に立つっつうから!!使える息子になるっつうからよぉ!!おれは愛してやったよなぁ!?塵屑ゴミクズみてぇなテメェのこともよぉ!!その!!愛してやったその恩を!!あだでやがって!!分かってんのかぁ?!あぁ!?……。
 
 ――あぁ……ほんとうに……お前みたいなゴミ、産むんじゃなかったぜ……。」

「それに、……?……知ってただと?!!テメェ自分がおれの子じゃねぇと知りながら!!よく今までのうのうと生きてこられたなぁ?!この穀潰ごくつぶしが!!よく今まで家の資産を食い潰せたもんだ!!おれのガキじゃねえと知りながら!!」

「アイ・サクラサクラ―ノヴナサクラの子・フォン・ミルヒシュトラーセよ、おれは最初からお前はみたいな、ごみ、産んじゃあいねぇ。もうおれはテメェの母親でもねぇし、テメェはおれの子でもねぇ。

 やっとともオサラバだ。気分いいぜぇ。」

 ◇◆◇

 アイは口を開いては閉じる。
 
 ……敵に対して何を言えばいいのか考えているうちに、“今のアイとオイディプス”が、“あの日のエレクトラとアデライーダ”と同じような状況だということに気がついた。

 それならこのままどちらかがもう一人を散華させて……相手を地獄の底まで追い落とすのだろうか、と思った。

 けどアイは自分たちの戦いを、あの日のエレクトラとアデライーダの決闘の再演さいえんにはしたくなかった。だから言った。

 ◇◆◇

「……ありがとう。ありがとう、ザミール。」

 ザミールは自分が、あの日のエレクトラがアデライーダにしたように痛めつけた、アイの身体をみながら問う。

「……それは、何に対してだ?
 
 ……痛めつけられ。身体も傷だらけにされ、勘違いで殺されかけて、ミルヒシュトラーセ家だからという理由だけでその身を狙われて、なぜそんなことをした俺に、そんな俺に……礼を言う?」

 アイは頭をガシガシとかきながら言う。
 
「わっかんねぇよ!おれも!なんで俺ん家を狙ってるクソ野郎にお礼を言ってるのかも、なんで友の命を狙ったカスに『ありがとう』なんて言ってんのかも!!」

「……。」

「でも!お前の全力のヘルツのなかに、お前の人生を見て、お前のこころをみて……!こんなヤツになら……こんなヤツにずっと憎んできた自分の“生き方”を褒められちまったら嬉しくなっちまったんだよ!!
 あ゙ぁ゙!?……だからありがとうっつってんだよ!なんか文句あるかぁ!?んだぁ!?」

 ザミールはしばらくポカンとしたあと、笑いだした。

「あははっ!なんで今度は急にキレてんだよ!クククッ切れながら感謝するヤツぁ初めてみたぜ……ケケケッ!!」

「あ゙ぁ゙!?人が感謝してやってんのに何笑ってんだ?ぶっとばすぞ!?
 ……ゲハハっ!!……いってぇ……!!」

「テメェも笑ってんじゃねぇか!……ケケケッ!
 ……まじでおもしれーヤツだぜ、アイは。」

「アイじゃなくて、“アイ様”、な。二度と間違えんなよ。」

「おう、アイアイアイ。」

「ぶっとばすぞ……!……ケケケッ。ゲホッ……!ゲホゲホ……。ぐっ!体中ボロボロで笑うといてぇんだよ、笑わせんなボケが……!クククッ……!いってぇ!!」

「お前も本気で俺をぶっ飛ばしに来てただろうが。こんな洞窟を使ったきったねぇ手まで使いやがってよぉ!」

「おれの尊敬そんけーするお兄様が言ってたんだよ。
 
 『自分より遥かに強い敵と戦わなければならない時は、絶対に相手の得意分野で戦うな、自分の得意分野に相手を引きずり込め。』
 
 ってなぁ……。」

「ゲアーター・エレクトラーヴナ・ミルヒシュトラーセか……やつぁ……強かったなぁ……。」

「……!……お兄様と戦って生きてんのか?
 じゃあ今度はおれが褒めてやるよ。
 ザミールくんは偉いでちゅね~。」

「クククッ……うるせーよ、ぶっとばすぞ。」

 ◇◆◇

「なぁザミール……。」

「なんだ?」

「おれと……腹ぁ割って“対話”しねぇか……?」
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