🔴全話挿絵あり《堕胎告知》「オマエみたいなゴミ、産むんじゃなかった。」「テメェが勝手に産んだんだろ、ころすぞ。」🔵毎日更新18時‼️

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第二章 藍と学校

115. わたくしは自然のなかに神をみた。 The Beauty of Nature is Divine.

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「あぁ……それもある。だがそもそも哲学や宗教が好きじゃあねぇ……それが文学界リテラチュア産のものであってもな。」

「何故だ……?」

「だってそうだろう?哲学者たちや宗教家どもはわけ知り顔で人生の指針ししんを押し付けてきやがる。
 、他人の人生に介入してくる。
 
 哲学者たちのいう。宗教家が講釈こうしゃくたれる。
 
 幸福すぎるということがあるか?
 愛しすぎるということが、信じすぎるということが、金がありすぎるということが、敬意を払いすぎるということが……哲学者たちを殺すべきだ。

 奴らは“原罪”振りまく一旦いったんになっていることに気づいちゃあいねぇ……。」

「確かに……自分たちは何でも知ってると思い上がって……“無知の知”の欠片もねぇ奴らも多いよ。
 だが、哲学者はやはり……いや知を愛する者、“愛知者あいちしゃ”は必要だと思う。」

「俺にとってはそれが“誠実であること”だ。
 すべてを失った俺を、父も妹たちも死んで……自分も大量虐殺者になった……そんな俺を救ってくれたのは……“誠実であること”だった……ただ“人間であること”だった。

 神もそうだ。地獄パンドラ産の神なんてクソの役にもたたねぇ……神がいるならなぜ苦しむ人がいる?
 それもアイツラの言う“より高い所へ行くためにお与えになった試練”だとでも?
 
 ……そんなのは……糞食らえだ。」

「おれは
 一方お前は……やっぱり相容あいいれねぇな……。

 ――でもじゃあなんでおれは、こんなにもお前のことが大好きなんだろうなぁ――?」
 
 ◇◆◇

 ザミールにアイは言葉をこぼす。

 ぽつり、ぽつり、と大地に降り、花を育てる育花雨いくかうのように。

先刻さっき……お前、言ったよな。お前を救ったのは……ただ……“誠実であること”と……。
 
 どういうことだ?
 
 お前の人生の指針は……あんなクソみてぇな人生を与えられて、それでもお前を救ったのは、なんなんだ?
 あんな過去を持っていて、なんで部下にあんなに誠実でいられる?」

「チッ……先刻さっきり合いで俺と部下のやり取りまで見えたのかよ……。」

「あぁ……ザミール、お前がソンジュを背中に優しくおぶってやってるとこもみえたぜぇ……ケケケッ。」

「うっせぇな……で?」

 ◇◆◇

「部下を……部下たちを愛するお前をみて、おれはお前のことを……妹弟きょうだいたちを、おれを愛してくれるおにいさまのようだと思った。
 ソンジュを背負って歩くお前をみて、おにいさまに背負われてみた夕陽を思い出していた。
 
 なんでだろうなぁ……?
 敵、なのになぁ……。」

 ザミールが顔を少し上げる、うつむいていた紫陽花あじさいが首をもたげるように。

「俺とお前の兄貴が似てる?
 やめてくれよ、ゲアーター・ミルヒシュトラーセと似てるなんて寒気がしてくるぜ。
 まぁ、強いという点では似てる……か?」

「オイ、調子のんなよ。
 ……おにいさまの方が百倍強いわ。」

「いや~、前り合ったときゃあ俺の圧勝だったけどなぁ。」

「ぶっとばすぞ、おにいさまは“パンドラ最強”なんだよ。あんま調子ちょーしのんなよ?
 マザコンがよ。」

「黙れブラコン。
 それに、お前にだけはマザコンって言われたくねぇんだが。
 ……ところで……アイ。」

「ん?」

「俺も聞いていいか?」

「あぁ、なんでも聞けや。
 ……もうお互いの人生の殆ど曝け出しちまったから、この際だ、なんでも聞け。」

 ◇◆◇

「お前は何で生きてる?
 何がお前を生きながらえさせる?
 
 育ての母に憎まれ、捨てられ、生みの母親は顔も知らねぇ。父親には殴って育てられた。
 優しくしてくれるきょうだいもお前とは相容あいいれない“差別主義者”だ。

 ――しかも、お前以外のきょうだい全員が親に愛されてる。
 
 、信じてた母親に売られ、知らねぇ女の相手をさせられて……信じてたダチには裏切られ……その、無理やり――」

 アイの瞳が揺れる……何かがぽたぽたと地面を濡らす。……その何かはいつか花を育てるのだろうか。

「――!すまねぇ!……触れられたくないよな。」

「……いや、いいんだ。全部事実だし……ただ……面と向かって言葉にされると……なかなかこころにくるってだけだ……。
 くそっ!今日のおれぁすげぇ気持ちワリィな……お父様の言いつけを2回も破っちまった。」

「……泣けばいいだろう。泣きたい時に。
 お前の父親オイディプスのクソみてぇな言葉なんか気にしてんじゃねぇよ。」

「……かもな。俺の友達にも先刻さっきのそう言われたよ……やさしい、王女様にな。」 

 アイが語り始める。

 ◇◆◇

「おれぁ実は宗教を信じてるわけじゃあねぇ。
 神も“信じ”ちゃあいねぇ。ただ“愛して”いるんだ。」

「“神を信じる”ことと、“神を愛する”ことに何の違いがある?」

「……おれは神を愛しているが、信じてはいねぇ。
 『神を信じる』って言うと、二通りあると思う。

 まず『神の“存在”信じる』か……そして、『神が“救ってくれる”』と信じるか。

 思うに世の中の多くの問題はこの2つをごっちゃにしてることから始まってると思う。おれは神が“存在してる”とは信じてるが、“救ってくれる”とは信じちゃあいねぇ。

 だってそうだろう?神様からしてみたらおれらは便だ。なのに 
 『神様がいるなら、なんで不幸な人間がいるんだ!』 
 なんていうのは馬鹿げてると思うんだ。
 
 だっておれが神だったら砂場に捕まえたありのことなんて次の日にはどうでもよくなってる。
 もし神様が居るとして、
 おれたちがその辺の虫を平気で踏んで歩くように、神様だってそうするだろう?

 思うに……
 『神様がいるなら、この世に不幸な人間はいないはずだ。』
 なんていうやつは自分の存在を、してる。
 
 ……動物だって毎日野垂のたんでるのに、

 もし人格のある神がいる場合、“俺たち人間”みたいな“些末さまつごみ”に気をめて、目をらして、救ってくれなくちゃあならないってのはおごりだと思うんだ。」

 ザミールは純粋な疑問口にする。

「じゃあなんでお前はそんな神を愛する?
 
 救ってもくれねぇのに、助けてもくれねぇのに……そんなくそ野郎をなぜ愛する?」

 ◇◆◇

「今のは神に人格があるという仮定の話だ。
 おれが信じてる神は人格神じゃあねぇ。
 ……いわば自然だ、自然そのものだ。

 おれぁチグ教や地獄パンドラのキリスト教とかの特定の宗教を信じてるわけじゃあない、チグ神とかの“唯一神”を……“人格のある神”を信じてるわけじゃあねぇ。
 
 自然を……
 教会なんぞ信じちゃあいねぇ。だ。
 神は聖職者の祈る豪奢ごうしゃな教会のなかじゃなく、純粋に土をたがやす農民の手の中にいるはずだ。

 ……
 人はチグ教会に金をおさめずとも、ただ自然の美に触れるだけで救われるはずだったんだ。」

「……なるほどな。俺は“神”を信じてるやつは、イコールで“教会”も“宗教”も信じてると思ってたぜ……。
 
 じゃあアイ……お前のいう神とは?
 先刻さっきも聞いたがなぜ
 
 みたいな存在を、
 
 
 みてぇな存在を愛する?」

 アイはその……顔で言った。

「――ただ……“うつくしい”からさ。

 おれは人格神を信じてねぇって言ったな。いわばおれが信じる神は……“自然”そのものだ。
 最初地獄パンドラ科学触れたときに、おれだって神なんていなんじゃあないかと思った。

 だってと思ったからだ。だけど……科学を突き詰めれば突き詰めるほど、真理に近づこうとするほど、が見えてくるんだ。

 ……おれが最初にそう思ったのは、最初の切欠きっかけは自然の中に、木々の中に“黄金比おうごんひ”をみたときだった。

 ……皮肉なもんだよな。
 神の存在を否定しようと科学を……この世界を探求するほど、超自然的な物の……神の存在を確かに感じちまうんだ。

 ――。」
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