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第三章 iと姉

169. 愛のきょうだい達 Ordinary Days

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169. 愛のきょうだい達 Ordinary Days
 その午後の談話室には、淡い陽光と三人の笑い声が溶け合っていた。アイは、今はもう胸を張れば良いだけの幸福を知らなかった少女だった。
 
 だがこの日初めて“親が子を慈しむ温度”に触れた。

 公王の優しさも、ラアルの愛しさも、
 彼女にとっては生まれてから一度も両親から与えられなかった種類の温もりだった。

 それは、彼女の小さな胸の奥に静かに灯った。
 
 ――自分は、与えられたのではなく、自分で見つけた新しい親に愛されていいのかもしれないという確かな予感として。

 ◇◆◇

「病気が治った!?」

 わたくしは思わず中庭で大声を出してしまう。
 しかし、それほど動揺しても仕方ないというものだ。

「そうなのよ~。もう病弱キャラは卒業よ~。
 ピースピース!イェーイ!」

 エゴおねえさまが明るくお道化どける。

「本当……なのですか?
 わたくしどうしても信じられなくて……いえ、とても嬉しいのですが、わたくしは生まれてからずっと病に苛まれているエゴおねえさましか知りませんでしたので……。」

「あぁ~、そうね。確かにアイちゃんが生まれてからはずっとそうだったわね。私これでも生まれてからずっと病気だったわけじゃないのよ?ヘルツの使いすぎで身体が弱ってただけで、今はもう快復したわ~。」

ヘルツの使いすぎ……?」

「そうよ~だから、アイちゃんもヘルツの使いすぎには注意よ!軽い散華さんげ状態になって免疫力も落ちて、軽い病気でも重い症状がでるようになっちゃうんだから。アイちゃんは絶対に私みたいになっちゃダメだからね!

 ――ほら、約束。」

 右手の小指を差し出される。
 わたくしはなんでかふと、わたくしが手を握っている間はエゴおねえさまが安らかに眠られることを思い出した。あれもわたくしのヘルツがエゴおねえさまに伝わっていたからなのだろうか?

「はい……やくそく、です。」

「よくできました!アイちゃんは自分を大切にね!」

「……エゴおねえさまもですよ?」

「ええ!そうね!もう完全体エゴペーおねーちゃんだし!さいきょーよ!」

 エゴおねえさまの後ろの人影に気づいてわたくしは悪戯いたずらを仕掛ける。

「ふふっ……パンドラ公国最強のゲアーターおにいさまよりもですか?」

「そりゃあもう!ゲアーターなんて瞬殺よ!瞬殺!」

「……お~い、誰が誰を瞬殺だって?」

「わっ!ゲアーター?いつから聞いてたのよ?」

 驚いたエゴおねえさまがバット振り返る。

「……お前が快復かいふくした~ってとこだな。で?誰が瞬殺だってぇ……?」

「お?る気ね?ってみるかしら?」

「わーわー!お待ちください!治ったとはいえ、エゴおねえさまは病み上がりでしょう?」

「そうだなぁ、病み上がりのエゴペーを“瞬殺”、しても楽しくないしなぁ……?」

 おにいさまが人差し指と中指をクイクイと曲げて“瞬殺”を強調する。

「おっ!る気ね?るかしら!?」

「だから!もう!おやめください!おにいさまも悪乗りしないでください!」

「「あはは!冗談冗談!」」

 ◇◆◇

「おい!エゴペー!聞いたぞ!
 療養が終わって快復したと!」

 今まで見たことがないくらい上機嫌なおねえさまがエゴおねえさまに笑いかける。心のそこから嬉しいのだろう。

「シュヴァちゃん……。」

「よかったな!おめでとう。これでヘルツも使い放題か!」

「あ……そうね、シュヴァちゃんも知らなかったか、そうよ~!私の全盛期はすごかったんだから~!」

「そうなのですか?おにいさま。」

「あぁ……病気になる前はエゴペーは俺の次ぐらいには強かったな。まぁ……お母様を除いたらパンドラ最強の俺の次にだがな。」

「あー!そんなこという?やっちゃってもいいのよ?私の“骨”と貴方の“雷”、どっちが強いかをここで決める~?」

 おねえさまが興味深そうに呟く。

「……ほう……エゴペーはそんなに強かったのか。」

「おねえさまも知らなかったのですか?」

「あぁ……私が物心ついた時にはもうエゴペーはとこふせせっていたしな。」

「へ~。」

「いや、エゴペーやめておこう。“心の無駄遣い”は……やめておいたほうがいい……だろう?」

 意味深な間があった気がする。気のせいかな?

「……まぁ、そうね!ミルヒシュトラーセの最終兵器は秘密にしておかないとね!」

「というかゲアーター、お前最近チェルマシニャーさいぜんせんじゃなくて、たまにこっちに帰ってくるな?とうしたんだ?」

「……ん?あぁ、なんでも公王派に不穏な動きがあるらしい。奴らの一部が最近何か企んでいるらしい。」

 公王派と聞いてあいはドキッとしてしまう。

「アイは何か知らないか?ファンタジア王女殿下と仲がいいし、最近王宮に泊まったばかりだろう?」

「ええと……公王様はわたくしを愛娘まなむすめのお友達として扱ってくださったので、政治の話はあんまり……。」

「そうか……まぁ敵対勢力の俺たちにはそう簡単に情報を漏らしはしないか。」

「そんなよしなしごとよりも!よ!もっと大事なことがあるでしょ?ゲアーター?」

「ん……なんだ?お前の快復祝いでもするか?」

「おぉ、それはいいな折角エゴペーが元気になったことだし、四人でお祝いでもしようじゃないか。“きょうだい全員”でな。」

 ――きょうだい全員?

「……おねえさまもわたくしたちの妹には会ったことがないのですか?」

「ん?……あ、ああ。そうだな。まだ会わせてもらったことはないな。まぁ、お母様はいつでも正しいからな。何かお考えがあるんだろう。ゲアーターはどうだ?会ったことがあるのか?」

「……。……あぁ……というより、ことがあるだけだけどな。」

「どんな娘でしたか?」

「ん?あぁ~そんなことより、今はエゴペーの快復祝いでもだろう?エゴペー何がしたい?お前がしたいことをきょうだい皆でしょうじゃないか。それでいいな?シュベスターも。」

 おにいさまが露骨に妹の話をそらした気がして、何か気にかかった。

「あぁ!こんなめでたいことはない!エゴペーなんでも言え!私たちが叶えてやろう!」

 おねえさまも心のそこから喜んでいるみたいで良かった。今だけは天の子エレクトラーヴナ桜の子サクラサクラーノヴナの違いがないように感じた。

「そうです!エゴおねえさま!なんなりと!」

「う~んそうねぇ……そこはやっぱり……。」

 おにいさまは優しい笑顔で、おねえさまはどんな願いでも叶えてやろうという興奮した顔つきで……あいも楽しくエゴおねえさまの答えを待つ。

「四人でお昼寝かしらね?」

 え?……お昼寝?なんだかいつも通りだ。

「……はぁ?……お前はいつもそれだな。私たちがお前の願いをなんでも聞いてやると言っているのだぞ?もっと何か特別なことはないのか?」

 おねえさまは驚いているが、おにいさまは何故かまんじりともしなかった。

「いいのよ~かわいい弟妹したのこたちとかっこいいお兄ちゃんと寝られればそれだけで私にとっては特別なんだから~。私はこういう“普段の日常”こそが“特別な日”になると思うの!」

 ――エゴおねえさまが太陽のように、桜のようにわらう。

 なんだかおねえさまもあいも気が抜けてしまった。

「そうだなぁ……そうするか!せっかくの妹のお願いだ!お兄様が叶えてやろう!」

「はぁ……まぁ本人がそう望んでいるならいいか……。」

「あはは……そうですね。きっと楽しいですよ。」

「……ん!!??」

 おねえさまが急に大声を出したのであいはビクッとしてしまう。まだ大きな音も手を目の前で上げられることも苦手だ。……お母様だった人に殴られたことを思い出すからだ。

「ど……どうかなされましたか?おねえさま。」

「四人で寝るという事はここでか!?この中庭か!?エゴペー!?それとも談話室か!?」

「え?……えぇ~と、ここで日向ぼっこしながら、とか……?」

「そうか!つまり四人で川の字になったということだな!?」

 どんどん声が大きくなるなぁ。

「ハァ……また、始まった……。」

 おにいさまは何かに気がついたらしい。

「えぇ……そうね?」

 おねえさまはとても深刻な、世界のすべてがかかっているという声音で言った――。

「――誰にアイの隣で寝転がる権利が発生する……?」  
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