ひとつのにくまん

たかはら りょう

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ひとつのにくまん

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おいしそうな においにつられて
ぼくは、リビングに やってきた。

テーブルのうえに
しろくて ふっくらした にくまんがひとつ
おさらに のっかっているのが みえた。

あれはきっと、おかあさんが よういした
ハヤテくんの おやつだ。

それにしても いいにおい。

ぼくは、にくまんに ちかづいていった。

すると、 にくまんの はしっこに
パクリと だれかが かじったようなあとが あるのを みつけた。

この ちいさな かじりかたは、
ネズミか ネコに ちがいない。

ぼくは、なんだか しせんを かんじて、
キッチンのほうを ふりかえった。

いたいた、
れいぞうこのうえから、
ネコのマロンが じっと ぼくを みつめている。

「これ、マロンが かじったのかい?」

ぼくは、マロンに こえをかけたが、
マロンは、こたえない。

あいかわらず ぶあいそうな やつだ。

そのとき、テーブルのしたを なにかが チャチャっと はしりぬけた。

ネズミだ!

すると、マロンが れいぞうこのうえから すばやく とびおりて、
ネズミを おって はしりだした。

ネズミも ビックリして、リビングを にげまわる。

シャシャシャシャー
タッタッタッタ
ドタドタドタドタ

みぎへ いったとおもったら、
こんどは ひだりへ。

たなのうえに かけあがると、
はこや ビンや カンを なぎたおし、
バーン、ドーン
ゴロゴロゴロゴロ
カラカラカーンカーン

テーブルへ あがると、
にくまんと おさらを ふみつけ けとばし、
ムギュムギュ
ポーン
ガチャガチャ、ガッチャーン

「おい、マロン、おちつけよ!」

ぼくは、マロンをとめようと こえをかけたが、
マロンは、こうふんして とまらない。

そのとき、ドアが カチャッと あいて
おかあさんが 入ってきた。

「まあ、いったい なんのさわぎ?
へやが グチャグチャじゃないの!」

おかあさんは おこって、
にわへつうじるまどをあけて いった。

「みんな、そとにでてなさい!」

ぼくと マロンは しょんぼりと
まどをとおって、にわへ でた。

おかあさんは、まどのとびらを バタンと、しめてしまった。

「マロン、あばれすぎだよ。おかあさん、おこっちゃったじゃないか」

ぼくまで、とばっちりだ。

マロンは、すっかり おとなしくなって
まるくなって すわりこんだ。

そのとき、
「ただいまー」
ハヤテくんが げんきなこえが きこえてきた。

ぼくは、まどのガラスごしに ハヤテくんを みていった。
「ハヤテくん、おかえり!」

ハヤテくんは、にわにいる ぼくをみて
おおきく てをふった。

ぼくも おおきく しっぽを ふった。

しばらくして、ハヤテくんは、まどを あけてくれた。

「ただいま、タロウ。いいこにしてた?」

そういって、ハヤテくんは、ぼくのあたまを なでなでした。

「いいこにしてたよ、ぼくはね」

ぼくは、チラッとよこめで マロンをみたが、
マロンは、そしらぬかお。

ハヤテくんは、つぶれてない にくまんをひとつ てにもっていた。

そして、にくまんを はんぶんに わって
「おたべ」
と はんぶんを ぼくにさしだした。

「ハヤテくん、ありがとう」
ぼくは、にくまんを くわえたが、
よこから するどい しせんを かんじた。

だから、というわけではないが、
ぼくは、もらった はんぶんの にくまんを
さらに はんぶんに かみきって
マロンのまえに おいた。

マロンは、たちあがると
ぼくがおいた はんぶんのにくまんを
くちと まえあしで さらに はんぶんにわって
よこにおいた。

すると、さっきの ネズミが ちょろちょろと
でてくると、
マロンのよこにすわって にくまんに パクリと くいついた。

ハヤテくんと ぼくと マロンと ネズミは、
のきしたに ならんで
ひとつの にくまんを みんなで わけっこして、たべたのさ。

にくまん、さいこー!


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