「無」の魔王

エルド

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第1章「誕生」

第四話-③「決闘と制約」

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「……と言ったことがありまして以下のことから私は勇者パーティーの一員ではない証明です」

 ムイカの事情を聞いたその場にいた魔物たちは思わずの唖然としてしまった。

それもそのはずだろう。

 何故なら一国の王女がそのような奇行を働いたのだから驚くのに無理はない。

 そんな状況の中、ようやく疑問の種が除かれたがそれでも気になる部分があるためもう一度直接に聞いてみることにした。

「まあ、理由は重々理解した。なら今ここで問う。ムイカという人間よ、そなたの実力は一体どれほどのものなのだ?」

 その言葉と同時にラリルに衝撃が走り、その瞬間緊張の感情が膨れ上がった。

(それに関しては私も気になっていた。何故人間があの魔獣だらけの森に一人でいたというのに無傷のままで生きていたのか不思議だった)

 そんなラリルの疑問について考えているとムイカは口を開いた。

 その瞬間その場にいた全員が身構えることになった。

 だがしかし、ムイカの口から予想外の答えが返ってきた。

「申し訳ありません。それをお答えすることは出来ません」

 まさかの返答に一同はまた唖然としました。

 するとすぐさま大魔王が冷静にその訳を聞き始めた。

「何故言えないのだ? 少なくともこの場にいるのは私と君を含めて一人と三体だ。何か問題があるのか?」

 大魔王の質問にムイカは変わることなく答えました。

 するととんでもない真実を知ることになります。

「私の力は今管理をされているため正確な情報をお教えすることが出来ません。申し訳ありません」

 その衝撃発言を聞いたその場のいた魔物たちは今度は驚きで頭が混乱していました。

 力を"管理"という意味の分からない単語を発言したムイカの存在に魔物たちは疑問の渦に飲み込まれた。

 だが一人だけ取り乱すことがなく理解した。

 その魔物は大魔王だった。そこで大魔王は衝撃な発言を口にした。

「なるほど理解した。では今のそなたの実力を我、自ら確かめてみせよう! どうだ我からの挑戦状を受ける気はないか? いやそなたの場合は”受けろ”と命令したら良かったか」

 その言葉を聞いた魔物たちはさらに混乱した。

 何故なら”管理”という単語を平然とした顔でいうムイカにそのような発言をすれば何が起きる分かったものではない。

 さらにムイカは自分で考えることが出来ないため返事の言葉なんて想像に難くない。

 そしてムイカは想定通りの返答をした。

「分かりました。それとお願いすることに命令形である必要はありません」

 ムイカの発言を聞いて魔物たち、特にラリルは思っていた通りだったのかとてもでかいため息をつきました。

 そうこうしていると大魔王はムイカの了承を言葉を聞いたあとすぐに感謝の言葉と対戦の形式を伝えました。

「理解してくれたようでありがとう。それでは対戦の形式についてだが、単純明快相手が倒れるまで、また相手が降参を宣言した時点で決着をつける。よいな?」

 大魔王の説明を聞いたムイカは「分かりました」と理解の意を伝えた。

 そして大魔王の命令に従って対戦するための立ち位置まで誘導されました。

 それから大魔王の自分の最初の立ち位置に移動を始めました。

 するとムイカの元にラリルが駆け寄った。

「ね、ねぇ一応聞いておくんだけど全力でやるの?」

 その言葉を聞いたムイカは少し曖昧なことを言い始めた。

「それに関しては大魔王様から聞いてはいないので分かりません」

 それを聞いたラリルは頭の中ではてなマークが浮かぶような表情をしました。

 なのでラリルはその訳を聞きました。

「その曖昧な理由は何なの? 何で自分の力を出すだけなのに躊躇うような姿勢を取るの?」

 ラリルの疑問に思う質問を聞いたムイカはその訳をスラスラと話し始めた。

「大魔王様は『挑戦状を受けて欲しい』と言われただけで私はどれほどの力を解放するかというお願いは受けていません」

 その理由を聞いたラリルは納得したのか右手をグーにして大きく広げた左手をゆっくりを添えるように落とした。

 その動作は”ポン”と効果音が鳴りそうでした。

(なるほど! だから彼は力を出すことについての言葉に曖昧なっていたのね。確かに彼は命令がなければ行動すらしないからどんな風に動けばいいか分からないんだ)

 なんて考えているとムイカが余計な一言を付け加えた。

「……と『屁理屈の神』のお告げが下りました」

 その一言を聞いたラリルは思わずその場でガクッと体制を崩してしまった。

(そ、そういえば彼は神の加護があったわね)

 ラリルはそのことに思い出したことで苦笑いになった。

 ですがその数秒後にラリルはとあることを思いつきました。

 そこでラリルはその思いついたことをムイカに伝えることにしました。

「ねぇ、貴方は一切大魔王様に攻撃はしないで。その代わりに大魔王様の攻撃を避けてちょうだい」

 なんと大魔王にとっては真剣な決闘にムイカに制限を科して戦わせようとしているのだ。

 本来ならそんな命令など聞き入れたいと思う人も魔物もいないだろう。

 だがそんな一般的な考えをムイカに持っているわけが無かった。

「分かりました。ちなみに大魔王様の攻撃はどれほど回避していたら良いですか?」

 ムイカの素直で一瞬思考が放棄しそうになる質問にラリルはしっかり答えた。

「そうね……30回に1回は攻撃を受けて」

 ラリルの追加の命令を伝えるとまだ気になる部分があるのかさらに質問をしました。

「それは一度だけですか? それとも何度も行いますか?」

 ムイカの言わなくても分かりそうで、確かに聞いておかないと思えてしまう細かい質問にラリルは少し呆れたように答えました。

「えっと、何度もでお願い……」

 それを聞くとムイカは「分かりました」と返事をしました。

そうこうしている内に大魔王が自分の定位置に着いたのかラリルに声をかけた。

「おいラリルよ。戦いの邪魔になるから離れよ」

 ラリルは大魔王の言葉を聞いてすぐさまその場から離れた。

 ラリルが離れた後大魔王は大きく息を吸い込み、声高らかに戦いの宣誓を始めた。

「今宵、この場に気高き戦士の戦いの狼煙を、そして己の誇りをかけた戦いを誓う!」

 その声はその場にいた者たちには緊張が走り、領地にいる民たちが全員が起きてしまいそうな雄叫びだった。

 しかしそれほどの雄叫びだというのに民は一体たりとも騒ぎが起きない。何故かという疑問を置き去りにし戦いが始まった。
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