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第2章「統治」
第五話-②「新魔王の秘書の苦闘」
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「ふ、ふざけんなー!」
そうボクが叫んだのは魔物領の中で唯一全ての魔王領の行政や人員の管理を担う中央都市『アビス』にいた。
そして大魔王様の所有する城の中なのである。
そんな場所なので当然魔物の通り多いので一気に注目の的になってしまった。
でもボクはそんなことに何も気にしてはいなかった。
「マジで何でボクが出向なんだよ! しかも大魔王様からの推薦って、もっと別のことで推薦が欲しかったー!」
そうボクが嘆くのには無理はない。
何故なら前職の紅蓮の魔王の職場はとにかく最悪の一言だった。
まず時間外労働は当たり前だし、商業や政治、魔王の領での統制など全て秘書が賄っていた。
そして肝心の本人はというと自分自身の保身のためか毎日修行や研究と言って業務を全て丸投げしていた。
確かに自分の命を大切に思うのは必要だけど流石に限度というのもがある。
そのせいで秘書課だけでどれだけ辞めていったか50から数えていない。
とにかくだ今紅蓮の魔王の職場環境から抜け出せたというのにまた命の危険がある職場に出向になるなんて思いもしなかった。
これじゃあ"出向"じゃなくて"左遷"じゃないか。
「しかしこれで辞退なんて言ったら『大魔王様の推薦があるというのにそれを受け入れられないとはなんて恥知らずな魔物だ』と言われかねない。……かと言って辞退なんて今のボクには無理だよなー」
そう実はボクには借金と共に帰って来た種違いの7人の兄妹とクズの母親がいる。
ボクは当時母親とは絶縁状態だった。
にも関わらず、勝手にボクが住んでいたアパートに転がり込み危うく連帯保証魔物にされかけた。
その後ボクは人事に異動願いを提出してすぐさま逃げた。
あそこにいた兄弟たちには悪いが、ずっと音信不通で連絡一つ寄越さなかったどうしようもない母親とはきっぱり離れたかった。
「もしそんなことで辞退なんてすれば絶対にあの母親の借金返済の駒にされるのは目に見えてるし、う~ん……」
などと一人で葛藤していると一人の秘書がこちらに近づいてきた。
「初めまして、貴方がアーデリアス・フューバーさんですか?」
秘書から自分の名前が呼ばれたと同時にビュンと飛び上がり、すぐに胸ポケットに入れていた名刺を取り出し挨拶をする。
「はい! 私がアーデリアス・フューバーと申します」
ボクが慌てて感じで挨拶すると秘書さんはボクの名刺を手に取った。
そして秘書さんも挨拶を交わした。
「名刺、拝見しました。私は大魔王様の秘書をしております。ハフセフ・クワイエルと申します。以後お見知りおきを」
するとハフセフさんは軽くお辞儀をした。
そして自分も軽く会釈をした。
そんな通過儀礼のようなものを済ませるとハフセフさんは先に口を開いた。
「本日遠くからお越しいただきありがとうございます。事前に伺っていると思いますが、貴方が新たに魔王となる者の秘書をしてもらいます。顔合わせのためにその魔王様の元へご案内します」
その言葉を聞くとボクはいよいよかと腹を括った。
(今から魔王様のところへ向かうのか。急に緊張と腹痛が……)
そんなことを考えていると、ハフセフさんが耳元にこんなことを呟いてきた。
「それにこの場では貴方に注目を浴びて集中できないでしょう」
そうハフセフさんに言われて周りの見渡すと周囲の魔物たちがボクを白い目で見ていた。
きっとボクが大きな声で愚痴ったことで注目を浴びていたことにようやく気が付いた。
するとボクは急に恥ずかしさが込み上げてきて先の緊張と腹痛が一気に消え去ってしまった。
「あ、あの早く魔王様のところへ案内してください!」
そうボクが早口で言うとハフセフさんは「こちらです」と冷静な言葉使いで案内をしてくれた。
ボクは黙ってそれについて行った。
そうボクが叫んだのは魔物領の中で唯一全ての魔王領の行政や人員の管理を担う中央都市『アビス』にいた。
そして大魔王様の所有する城の中なのである。
そんな場所なので当然魔物の通り多いので一気に注目の的になってしまった。
でもボクはそんなことに何も気にしてはいなかった。
「マジで何でボクが出向なんだよ! しかも大魔王様からの推薦って、もっと別のことで推薦が欲しかったー!」
そうボクが嘆くのには無理はない。
何故なら前職の紅蓮の魔王の職場はとにかく最悪の一言だった。
まず時間外労働は当たり前だし、商業や政治、魔王の領での統制など全て秘書が賄っていた。
そして肝心の本人はというと自分自身の保身のためか毎日修行や研究と言って業務を全て丸投げしていた。
確かに自分の命を大切に思うのは必要だけど流石に限度というのもがある。
そのせいで秘書課だけでどれだけ辞めていったか50から数えていない。
とにかくだ今紅蓮の魔王の職場環境から抜け出せたというのにまた命の危険がある職場に出向になるなんて思いもしなかった。
これじゃあ"出向"じゃなくて"左遷"じゃないか。
「しかしこれで辞退なんて言ったら『大魔王様の推薦があるというのにそれを受け入れられないとはなんて恥知らずな魔物だ』と言われかねない。……かと言って辞退なんて今のボクには無理だよなー」
そう実はボクには借金と共に帰って来た種違いの7人の兄妹とクズの母親がいる。
ボクは当時母親とは絶縁状態だった。
にも関わらず、勝手にボクが住んでいたアパートに転がり込み危うく連帯保証魔物にされかけた。
その後ボクは人事に異動願いを提出してすぐさま逃げた。
あそこにいた兄弟たちには悪いが、ずっと音信不通で連絡一つ寄越さなかったどうしようもない母親とはきっぱり離れたかった。
「もしそんなことで辞退なんてすれば絶対にあの母親の借金返済の駒にされるのは目に見えてるし、う~ん……」
などと一人で葛藤していると一人の秘書がこちらに近づいてきた。
「初めまして、貴方がアーデリアス・フューバーさんですか?」
秘書から自分の名前が呼ばれたと同時にビュンと飛び上がり、すぐに胸ポケットに入れていた名刺を取り出し挨拶をする。
「はい! 私がアーデリアス・フューバーと申します」
ボクが慌てて感じで挨拶すると秘書さんはボクの名刺を手に取った。
そして秘書さんも挨拶を交わした。
「名刺、拝見しました。私は大魔王様の秘書をしております。ハフセフ・クワイエルと申します。以後お見知りおきを」
するとハフセフさんは軽くお辞儀をした。
そして自分も軽く会釈をした。
そんな通過儀礼のようなものを済ませるとハフセフさんは先に口を開いた。
「本日遠くからお越しいただきありがとうございます。事前に伺っていると思いますが、貴方が新たに魔王となる者の秘書をしてもらいます。顔合わせのためにその魔王様の元へご案内します」
その言葉を聞くとボクはいよいよかと腹を括った。
(今から魔王様のところへ向かうのか。急に緊張と腹痛が……)
そんなことを考えていると、ハフセフさんが耳元にこんなことを呟いてきた。
「それにこの場では貴方に注目を浴びて集中できないでしょう」
そうハフセフさんに言われて周りの見渡すと周囲の魔物たちがボクを白い目で見ていた。
きっとボクが大きな声で愚痴ったことで注目を浴びていたことにようやく気が付いた。
するとボクは急に恥ずかしさが込み上げてきて先の緊張と腹痛が一気に消え去ってしまった。
「あ、あの早く魔王様のところへ案内してください!」
そうボクが早口で言うとハフセフさんは「こちらです」と冷静な言葉使いで案内をしてくれた。
ボクは黙ってそれについて行った。
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