「無」の魔王

エルド

文字の大きさ
31 / 32
第2章「統治」

第七話-③「アーデリアスの決意」

しおりを挟む
「……ていうのが経緯です」

 アーデリアスはムイカを襲ったきっかけを昔の話を交えて正直に吐いた。

ムイカに縛られながら……。

「まさか持っていたナイフを軽々と避けたと思ったら、そこからジャブやアッパーを何発か食らわして、さらにサマーソルトキックからもジャンピングパンチをお見舞いさせるとはおみませんでしたよ! 後最後のジャンピングパンチに至ってはなんか演出みたいの起こったし! しかもなんて言ったら分からない絞め技で身動きを取れなくしてくる!」

 そうムイカは攻撃してきたアーデリアスを反撃していたのだ。

それはもう相手を一瞬でアッパーでK.O.させるくらいの速さでアーデリアスを拘束した。

「あのそろそろ解いてくれませんか? 肩が外れそうなんですけど……」

 アーデリアスの言葉にムイカは「分かりました」と素直に開放しました。

「……早くしてください」

 アーデリアスは突然何かを言い出した。

その言葉の意味はムイカには全く理解できず聞き返してしまった。

「何を早くするんですか?」

 ムイカの質問にアーデリアスはやけくそのような喋り方で説明を始めた。

「決まっているでしょう。ボクは主である貴方に危害を加えようとした。それはつまり即死刑と言ってもおかしくありません。だからもう早くボクを処分してください。早く彼女の元に行かせてください」

 アーデリアスが言いたいことを言い終えるとムイカはとんでもないことを言い始めた。

「貴方を殺しません」

 スラッと言ったムイカの発言にアーデリアスは驚きのあまり遠くを見ていたはずの眼が彼に集中した。

「殺さないってどういうことですか?」

 アーデリアスは訳が分からないという感じでムイカに質問をした。

「理由は二つあります。一つは大魔王様から秘書である貴方は決して殺してならないと命令されているからです」

 その理由を聞いたアーデリアスは急に投げやり的な口調になった。

「つまりなんですか、ボクは大魔王様から見て便利な魔物扱いですか! ボクはそんなことのために生きて来たわけじゃない!」

 そんな沸き上がる怒りをムイカにぶつけていた。

しかしムイカはそれを動じることなく二つ目を話し始めた。

「二つ目は『検討の神の加護』の結論から貴方の損失はこれからのアクセスの街の活性化に必要不可欠だからです」

 その瞬間アーデリアスは「え」と情けない声を出した。

そんなアーデリアスの気持ちを気にすることなくムイカは二つ目の理由を詳しく説明しました。

「貴方は紅蓮の魔王のところで培った経験は単純な秘書としての能力だけではなく統治する者の観点で物事を話せる力は唯一無二のものであるといます」

 こんなにも良く評価をしてくれたことにアーデリアスは自然と涙を落としてしまった。

嬉しかったのだろう。

いつも肉親である母親はただ押し付けるだけで助けることを全くしない魔物だったから、こんなにも褒めてくれることは何よりも嬉しいものだろう。

後付けに加護のお告げと言っていたムイカの言葉が聞こえないくらいに。

けれどアーデリアスはふとナーティスの姿を思い出してしまった。

ナーティスのことを思い出したアーデリアスは覚悟を決まったように涙を拭い、ムイカに向かった。

「でもボクは彼女に会いたい。どんな方法でもいいからお願いします。彼女を、ナーティスに会わせてください!」

 そう言ったアーデリアスは深々と頭を下げた。

彼の頭の中にはナーティスの幽体を現世に蘇らせるか、はたまた一度死んでからナーティスと再会果たすかと色んなパターンを予想していた。

だからアーデリアスはそれくらいの覚悟を持っていた。

しかしムイカが口から出た言葉は彼を予想していたものとは違っていました。

「それではついて来てください」

 そう言うとムイカはゆっくりと何処かに歩き始めた。

アーデリアスは訳の分からない行動に困惑していました。

そんな面持ちのままムイカについて行くことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...