「無」の魔王

エルド

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第2章「統治」

第七話-④「まさかの……!」

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 ムイカの誘導の元、移動をしているとある小売店に着きました。

明かりが付いているので中には人がいるのだと思われる。

アーデリアスがどんな店なのか確認をしているとムイカはその店の扉を開けた。

アーデリアスはムイカの何を考えているか分からない行動に頭を悩ませんがら店の中に入った。

お店の中に入ると内装は一般のポーションや小さい袋といった道具屋のようだった。

アーデリアスが店の中を隈なく見ていると幼い女の子の声が店の中に響いた。

「あ、おんじんさんだ!」

 その女の子は幼いとは思えないほどの脚力でムイカの胸のところまでジャンプした。

「おんじんさん! 久しぶり!」

 女の子はムイカの顔をものすごくスリスリしていた。

そんな光景を見てしまったアーデリアスはすかさず注意しようとした。

「き……君、魔王様になんてことを!」

 すると店の奥から声が聞こえた。その声にアーデリアスは耳を傾けた。

「ちょっとミーもう店じまいなんだからお客さんは帰して……」

 その声の主はアーデリアスの姿を見て固まってしまった。

何故ならその主はアーデリアスが会いたいと願っていたナーティスだったからだ。

アーデリアスはナーティスの姿を見てどういうことなのか状況が飲み込めていなかった。

「あの魔王様これは一体?」

 アーデリアスが質問をしているとムイカ女の子をゆっくり下ろしてサラッとした口調で話した。

「では彼女に会わせたのでこれで失礼します」

 そう言ってムイカは店の扉に手をかけて外に出てしまった。

女の子はムイカに大きく手を振って帰りの挨拶をした。

「え、ちょっとちゃんと説明してから帰ってくださいー!」

 そんなアーデリアスの叫びはムイカには届かなかった。



 ボクはとても緊張をしていた。

何故ならずっと死んでいたと思っていた魔物が今目の前にいるのだから驚くなと言う方が無理だ。

僕たちは今お店の裏でお茶をしていた。

すると先に口を開いたのはナーティスだった。

「にしても久しぶりだね。こうやってゆっくり二人で話すのは」

 そんなことを話す彼女のカップはゆっくりだが震えているのが分かる。

ボクだって同じような心境だから気持ちは理解している。

こんなにも何とも言えない雰囲気だが、ボクはあの日について聞いてみることにした。

「君はあの時勇者たちとの戦いの日に何があったのか聞かせてくれないか?」

 ボクがそのことを聞くとナーティスは少し恥ずかしそうな感じであの日のことを話してくれた。

「そうだね。あれは勇者たち三人の人間たちに負けたんだよねー……」

 そしてボクはあの日のことを知ることになる。



 そうあれは勇者たちとの闘いで負傷した私はナーガの特性を生かして地中に身を潜めていた。

(クソ! あの二人の女たちが強すぎる! 逆に勇者と呼ばれてたあの男はむしろ弱すぎて話にならなかった。けどそのおかげで無事逃げ出すことに成功した)

 あのときの戦闘はよく覚えている。

武器を巧みに扱う黒髪の女と次から次へと魔法が飛ばしてくるあの女も今となっては恐怖そのものだった。

けど腰抜けの勇者が彼女たちの妨害をしていたから上手く逃げ出すことが出来た。

(でもこのまま帰ったとしても腰抜けのような気がして癪だわ。ただでさえ期待外れだった勇者にがっかりしていたのに)

 そんなことを考えていると真上に足音が聞こえた。

実は私は何かチャンスになることが無いかと思い、アクセスの地中に隠れていた。

(音はおそらく小さな女の子と成人した男かしら? まあどっちにしてもこれはチャンスよ! あいつらを人質にしてあの勇者の首を貰って行くわ)

 そう思い立ったらすぐに私は地中から姿を現した。

突然地面から何かが飛び出してきたのだから女の子の方は大層驚いていた。

そして私は隙を見せることなく魔法を詠唱した。

「『バインド』」

 そのときだったもう一人の男が素早く口を早く動かした。

「キャンセル」

 その言葉と同時に私の魔法がかき消された。

そして男はすかさず次の詠唱を始めた。

「グラビティー・アップ」

 すると私は勢いよく地面に叩きつけられた。

私はなんと立ち上がろうしたが、全くびくともしなかった。

そのときゆっくりと男の姿を見た。

その男の姿は冷徹のような雰囲気を醸し出しているように感じてしまった。

そして私は本能で理解した。

私が街に被害を与えるために放った『メテオシャワー』を消滅させた人物なのだと気づく。

そして私は自分自身の死を悟った。

(せめてアーデリアスに話をしたかったな)

 なんて考えていると急に押し付けれていた圧力が急に消えてしまった。

私が何故魔法を解除したのか疑問に思いつつ身体を起こすと女の子が私に声をかけた。

「ねぇお姉さん、私のお店を手伝ってください!」

 そんな突拍子のない申し出に思わず驚いてしまった。



「……そんなわけで今はこうしてお店の手伝いをしているのよ。だからあの子がいなかったら今の私はいなかったわ」

 ボクはその話を聞いて驚きと面白いという感情が入り混じってなんとも言えない感情になってしまった。

「でも良かったー。もう二度と君と会えなくなると思って気が気でなかったよ」

 そんな安堵するボクの姿を見てナーティス耳元で囁いた。

「……私も同じことを考えてたよ」

 その言葉に思わず驚きの言葉をあげてしまった。

するとお店の片づけをしていた女の子は入って来た。

「お姉さんたち何してるの? 私も混ぜてー!」

 女の子はボクたちの方に飛んできた。そしてこの夜楽しい時間を過ごした。

そしてボクはあの人に絶対に守り抜こうと決心した。

どんな苦難が待ち受けるか分からないが今の魔王様を守れるのはボクしかいない。

だからこれからも魔王様の秘書として隣で立ち続けよう。
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