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八月十日午前十時。
憂志郎は郷三郎の宿泊する清郷館と、昨日の続きに出向いた。
予定では三日以内にアリバイに関する場所全てを回る計画を立てていたが、奇案の調査や行く先々耳にする郷三郎の噂話の盗み聞き。調査の時間は大幅に削られた。
夏の風物詩である蝉の鳴き声は相変わらず騒音を維持し、照りつける日光はジリジリと暑く汗が止まらない。盗み聞きも楽ではない。
「……今日から盆過ぎまでか?!」
「しっ、声がデカい」
飲料自動販売機横でひそひそ話をする男性二人の会話を、煙草を吹かしながら耳にした。
男たちは余所を見て何気ない表情の憂志郎は聞いていないと思い会話を続ける。
「いつもの会合があちこちであるって話だ」
「え、それって、ヤーさん?」
「いや、政治家。つっても、政治家連中も右翼って話だから、沖島のおっさんもこの夏に力入れてんだろ」
「でもあちこちで厳ついツラの連中が屯してるって聞くぞ」
「無関係じゃないだろうけどな」
憂志郎は考えた。
政界進出は確実だろう。なら、郷三郎があちこち動いて顔を出し、会合にも出席しているなら、夜に清郷館へ戻れば疲れて寝るだろう。
そんな多忙な日々をこの町で過ごしているのに八月十四日だけは深夜に外へ。疲れ切っているだろうに夜中に出歩く不自然さが成り立っている。
真っ先に考えられるのは脅し。世に出ては行けない危険な秘密を握られたから嫌でも殺害現場へと向かわなければならなかった。
(遺体発見が午前六時台だから、取り巻き連中や清郷館の女将には寝るから部屋に入れないようにしていたんだろ。命令に背けば怒鳴る性格なら、誰もが従ったってのが自然だろうな。そして窓から外へ。これが一人で行き、発見時間まで誰も郷三郎を探さなかった理由、か?)
殺害も密会も容易な環境なのが偶然とは考えにくい。この時期に民家の住人が夏に出て行くと知っているのだろう。地元民である容疑者八名は調査しやすい。
資料を確認し、次のアリバイ現場へ向かおうと鞄を開けると、「あ」と、ついつい声が漏れた。資料を忘れてきてしまったのだ。
八月十日午前十一時十分。
晴子は憂志郎に昼飯を一緒にするかを確認しに部屋へ向かった。今までは外に出ていたが、明朝に出て行ったと知らないので部屋に籠っていると誤解していた。
扉をノックするも返事が無い。まだ寝ているのかと思い、ゆっくりと扉を開けた。
「羽柴さぁん、いますぅ?」
布団は畳まれ部屋はもぬけのから。しかし晴子の目を引いたのは玩具の机に置いてある冊子だった。
記者見習いの憂志郎がどういった記事を書いているか気になった晴子は、足音を殺して近づき、こっそりと冊子を手に取る。
「いーけないんだぁいけないんだぁ~」と、弾む小声で歌いつつ、冊子から資料を取り出した。
一番上の記事を見た途端、晴子は驚愕して言葉を失った。
(え、なんで?!)
沖島郷三郎殺害の新聞記事を目の当たりにし、周囲の些細な音も聞こえないほどに。だから、扉にいる人物が扉を締める音を耳にするまで油断が生じた。
「え!?」
「あーあ、見ちゃった?」
いつもの温和な雰囲気とは打って変わり、無表情の憂志郎は狂気を孕んでいるように見えた。
「ご、ごめんなさい!」
急いで資料をしまう。も、ガチャッと、いつもより大きく聞こえる鍵をかける音に反応して冊子を落としてしまった。
身体が震え、怯える目で憂志郎を見ると視線は晴子を逃さない。徐ろに座る動きすら恐ろしく感じる。
「あ、あの、私なにも見てません。見てませんから!」
そんな言葉聞く耳持たずと言わんばかりに、マッチの火で煙草に火を付け、大きく一息吐いた。
蒸し暑い部屋に煙はいつも通りに漂う。
「予言、してやろうか」
何をされるか分からない。ただ、殺される想像だけが頭を埋め尽くす。こんなことなら覗き見るのではなかったと後悔が強くなる。
「晴子ちゃん、窓を開けるよ。絶対」
飛び降り自殺をしろ。脅迫されているとしか考えられない。
「いや、私、まだ死にたくない。助けてください!」
「なんで窓開けるか分かる?」
自殺の二文字が晴子の頭に浮かぶ。
命令された死の誘導。けど自殺として処理される。
「こうやって、煙草の煙が充満するとぉ……」
予想とは無関係な言葉。急に訳が分からなくなり、思考が停止した。
ほどなくして本当に煙たくなる。
煙草の煙が充満する部屋になれていない晴子は急いで窓を全開にした。
「ほら当たった」
素っ頓狂な憂志郎の発言から、晴子を襲う気配が感じられない。妙に怯えていたのが馬鹿らしく思えた晴子は、気を取り直して確認をとる。
「あ、あの。私、殺さないんですか?」
「え、なんで?」
緊張が完全に解け、馬鹿らしさが明確となった。
「え、だって、なんか見ちゃいけないもの見た……から?」
「確かにいけないなぁ」
立ち上がってだらだらと歩き、冊子を手に取った。
「料亭の娘さんがお客様の持ち物を盗み見するなんてのぁ。女将さんかおやっさんにチクるか」
「待って、ごめんなさいごめんなさい。ほんっとうにごめんなさい! だからお父さんとお母さんには黙ってて」
「なーんつって」
言って煙を晴子へ向けて吐く。
「え? ゴホッ、ゴホッ、止めてください!」
「とりあえず、どこまで見た? 見られたからには色々話さないと晴子ちゃんの夏休みが恐怖満載の夏休みになっちゃうからねぇ」
暢気な口調がいよいよ晴子の恐怖心を払拭させた。
「あの……羽柴さんって、なんなんですか?」
「ん? ちょっと変わった探偵って言えば納得?」
「探偵?!」妙に嬉しい感情がこみ上げる。
晴子は友達と探偵シリーズの小説を読んでいたからだ。自分も少年ならぬ少女探偵として協力出来るのではと気持ちが少しばかり芽吹いた。
憂志郎は沖島郷三郎殺害の資料だけを取り出す。
「見たの、コレでしょ」
「うん。けど沖島様は」仕事の癖で様を付けてしまう。「まだ生きてますよ」
返答のように指さしされたのは日付。昭和四十二年八月十四日である。
「え、未来?」
もう、小説の展開から逸脱してしまい晴子は混乱する。
「俺はある条件で起こる殺人を阻止する為に動いてる。記者見習ってのは嘘で、そうでも言わないとただの不審者だろ」
「ま、まぁ、そうですけど。ある条件?」
「縁害って言ってな、この新聞記事に載ってる迷宮入りした殺しは狂った運命だったから起きた殺し。分かりやすく言うと、本来は無い殺しだ」
「なんでそんな事が起きてるんですか?」
「色んな理由はあるけど、今回は分かりやすいな。……まぁ、端的に言えば、この人が恨まれすぎてるから」
沖島郷三郎がどれ程嫌われているか晴子も知っている。松栄屋の従業員殆どが、沖島郷三郎の予約を見るだけで表情が曇るほどなのも。
「恨まれて、そんな変な殺人事件が起きるんですか?」
「怨恨での殺しはよくある話だけどな、恨みの念が別の恨みに加担しすぎるから、こういった無いはずの殺人事件が起きちまうんだ。で、本来の運命に俺は戻す役目。犯人も動機も殺害方法も分かりゃ苦労はしないんだがねぇ」
その苦労が煙草を吸う様子から、存分に表われている。
「なんで? 未来のことだったら分かるんじゃ」
「分かるのは人間が記した資料の一部だけ。こういった新聞記事や警察内部のちょいとした情報まで。それも確実って訳じゃないから、今ある情報と犯行が起きる前の現場を調べ回って阻止すんの。頭痛いよぉ」
それで”ちょっと変わった探偵”。
意味を晴子は理解したが、縁害と恐怖満載の夏休みが結びつかない。想像できるのは、良からぬ記事を見てしまった為に呪われるぐらいの発想しか。
「……私、呪われる、とかですか?」声が小さくなる。
晴子の不安を当たり前のように憂志郎は読み取った。こういった事は時々あるので慌てることもない。
「ちがうちがう。悪霊とかに憑かれるって想像してるでしょ?」
素直に頷かれた。
「ただ“怖いの”が見えるか巻き込まれるってだけ。この事件に関係した恨みが象った“怖いの”が。確認だけど、沖島郷三郎はご贔屓にしてくれる上客で予約もしっかり入ってるだろ?」
「まぁ、そうですが」
「傍に寄る機会があるなら念のために忠告。見たくないなら俺の言うこと、ちゃんと守ってくれる?」
「言うこと?」
「誰にもこのことを話さない。何か分かっても自分から動かず俺に言うこと。探偵気取りで解決しに向かわないこと。ぐらいかな」
「もし破ったら、地獄行きとか?」
あまりにも極論過ぎる発想に可笑しくなった。
「ははは、テレビか何かでやってた? あー、まあ、やってみても良いけど絶対無理だろうし。下手すればお盆過ぎまで晴子ちゃん、気を失って悪夢にうなされるかなぁ」
さらっと恐い事を言われ、何が起きるか不安になる。
「何が起きるんですか!」ついつい口調が強まる。
「話そうとすれば“怖いの”が現われる。それに捕まれば悪夢にうなされて阻止しようとした行動を妨害され、縁害期間後まで悪夢の中。表向きはちょっと長引いた夏風邪ってことになるだろうな。もしくは日射病か」
嘘か本当かは分からないが晴子は話を半分信じた。後の半分はでたらめだと疑っている。
「じゃあ、私、なにも出来ないの?」
「俺は普通じゃないから話して大丈夫。ついでだから情報提供もしてほしいかなぁ。容疑者八名がどういった人か知りたいし」
そこは見ていないので誰かを知りたい。そして、なぜ晴子に聞くような言い回しをするのかが気になる。
容疑者八名の資料を見た晴子は驚いて口に手を当てた。
全員知っている人。その中に両親の名もあった。
憂志郎は郷三郎の宿泊する清郷館と、昨日の続きに出向いた。
予定では三日以内にアリバイに関する場所全てを回る計画を立てていたが、奇案の調査や行く先々耳にする郷三郎の噂話の盗み聞き。調査の時間は大幅に削られた。
夏の風物詩である蝉の鳴き声は相変わらず騒音を維持し、照りつける日光はジリジリと暑く汗が止まらない。盗み聞きも楽ではない。
「……今日から盆過ぎまでか?!」
「しっ、声がデカい」
飲料自動販売機横でひそひそ話をする男性二人の会話を、煙草を吹かしながら耳にした。
男たちは余所を見て何気ない表情の憂志郎は聞いていないと思い会話を続ける。
「いつもの会合があちこちであるって話だ」
「え、それって、ヤーさん?」
「いや、政治家。つっても、政治家連中も右翼って話だから、沖島のおっさんもこの夏に力入れてんだろ」
「でもあちこちで厳ついツラの連中が屯してるって聞くぞ」
「無関係じゃないだろうけどな」
憂志郎は考えた。
政界進出は確実だろう。なら、郷三郎があちこち動いて顔を出し、会合にも出席しているなら、夜に清郷館へ戻れば疲れて寝るだろう。
そんな多忙な日々をこの町で過ごしているのに八月十四日だけは深夜に外へ。疲れ切っているだろうに夜中に出歩く不自然さが成り立っている。
真っ先に考えられるのは脅し。世に出ては行けない危険な秘密を握られたから嫌でも殺害現場へと向かわなければならなかった。
(遺体発見が午前六時台だから、取り巻き連中や清郷館の女将には寝るから部屋に入れないようにしていたんだろ。命令に背けば怒鳴る性格なら、誰もが従ったってのが自然だろうな。そして窓から外へ。これが一人で行き、発見時間まで誰も郷三郎を探さなかった理由、か?)
殺害も密会も容易な環境なのが偶然とは考えにくい。この時期に民家の住人が夏に出て行くと知っているのだろう。地元民である容疑者八名は調査しやすい。
資料を確認し、次のアリバイ現場へ向かおうと鞄を開けると、「あ」と、ついつい声が漏れた。資料を忘れてきてしまったのだ。
八月十日午前十一時十分。
晴子は憂志郎に昼飯を一緒にするかを確認しに部屋へ向かった。今までは外に出ていたが、明朝に出て行ったと知らないので部屋に籠っていると誤解していた。
扉をノックするも返事が無い。まだ寝ているのかと思い、ゆっくりと扉を開けた。
「羽柴さぁん、いますぅ?」
布団は畳まれ部屋はもぬけのから。しかし晴子の目を引いたのは玩具の机に置いてある冊子だった。
記者見習いの憂志郎がどういった記事を書いているか気になった晴子は、足音を殺して近づき、こっそりと冊子を手に取る。
「いーけないんだぁいけないんだぁ~」と、弾む小声で歌いつつ、冊子から資料を取り出した。
一番上の記事を見た途端、晴子は驚愕して言葉を失った。
(え、なんで?!)
沖島郷三郎殺害の新聞記事を目の当たりにし、周囲の些細な音も聞こえないほどに。だから、扉にいる人物が扉を締める音を耳にするまで油断が生じた。
「え!?」
「あーあ、見ちゃった?」
いつもの温和な雰囲気とは打って変わり、無表情の憂志郎は狂気を孕んでいるように見えた。
「ご、ごめんなさい!」
急いで資料をしまう。も、ガチャッと、いつもより大きく聞こえる鍵をかける音に反応して冊子を落としてしまった。
身体が震え、怯える目で憂志郎を見ると視線は晴子を逃さない。徐ろに座る動きすら恐ろしく感じる。
「あ、あの、私なにも見てません。見てませんから!」
そんな言葉聞く耳持たずと言わんばかりに、マッチの火で煙草に火を付け、大きく一息吐いた。
蒸し暑い部屋に煙はいつも通りに漂う。
「予言、してやろうか」
何をされるか分からない。ただ、殺される想像だけが頭を埋め尽くす。こんなことなら覗き見るのではなかったと後悔が強くなる。
「晴子ちゃん、窓を開けるよ。絶対」
飛び降り自殺をしろ。脅迫されているとしか考えられない。
「いや、私、まだ死にたくない。助けてください!」
「なんで窓開けるか分かる?」
自殺の二文字が晴子の頭に浮かぶ。
命令された死の誘導。けど自殺として処理される。
「こうやって、煙草の煙が充満するとぉ……」
予想とは無関係な言葉。急に訳が分からなくなり、思考が停止した。
ほどなくして本当に煙たくなる。
煙草の煙が充満する部屋になれていない晴子は急いで窓を全開にした。
「ほら当たった」
素っ頓狂な憂志郎の発言から、晴子を襲う気配が感じられない。妙に怯えていたのが馬鹿らしく思えた晴子は、気を取り直して確認をとる。
「あ、あの。私、殺さないんですか?」
「え、なんで?」
緊張が完全に解け、馬鹿らしさが明確となった。
「え、だって、なんか見ちゃいけないもの見た……から?」
「確かにいけないなぁ」
立ち上がってだらだらと歩き、冊子を手に取った。
「料亭の娘さんがお客様の持ち物を盗み見するなんてのぁ。女将さんかおやっさんにチクるか」
「待って、ごめんなさいごめんなさい。ほんっとうにごめんなさい! だからお父さんとお母さんには黙ってて」
「なーんつって」
言って煙を晴子へ向けて吐く。
「え? ゴホッ、ゴホッ、止めてください!」
「とりあえず、どこまで見た? 見られたからには色々話さないと晴子ちゃんの夏休みが恐怖満載の夏休みになっちゃうからねぇ」
暢気な口調がいよいよ晴子の恐怖心を払拭させた。
「あの……羽柴さんって、なんなんですか?」
「ん? ちょっと変わった探偵って言えば納得?」
「探偵?!」妙に嬉しい感情がこみ上げる。
晴子は友達と探偵シリーズの小説を読んでいたからだ。自分も少年ならぬ少女探偵として協力出来るのではと気持ちが少しばかり芽吹いた。
憂志郎は沖島郷三郎殺害の資料だけを取り出す。
「見たの、コレでしょ」
「うん。けど沖島様は」仕事の癖で様を付けてしまう。「まだ生きてますよ」
返答のように指さしされたのは日付。昭和四十二年八月十四日である。
「え、未来?」
もう、小説の展開から逸脱してしまい晴子は混乱する。
「俺はある条件で起こる殺人を阻止する為に動いてる。記者見習ってのは嘘で、そうでも言わないとただの不審者だろ」
「ま、まぁ、そうですけど。ある条件?」
「縁害って言ってな、この新聞記事に載ってる迷宮入りした殺しは狂った運命だったから起きた殺し。分かりやすく言うと、本来は無い殺しだ」
「なんでそんな事が起きてるんですか?」
「色んな理由はあるけど、今回は分かりやすいな。……まぁ、端的に言えば、この人が恨まれすぎてるから」
沖島郷三郎がどれ程嫌われているか晴子も知っている。松栄屋の従業員殆どが、沖島郷三郎の予約を見るだけで表情が曇るほどなのも。
「恨まれて、そんな変な殺人事件が起きるんですか?」
「怨恨での殺しはよくある話だけどな、恨みの念が別の恨みに加担しすぎるから、こういった無いはずの殺人事件が起きちまうんだ。で、本来の運命に俺は戻す役目。犯人も動機も殺害方法も分かりゃ苦労はしないんだがねぇ」
その苦労が煙草を吸う様子から、存分に表われている。
「なんで? 未来のことだったら分かるんじゃ」
「分かるのは人間が記した資料の一部だけ。こういった新聞記事や警察内部のちょいとした情報まで。それも確実って訳じゃないから、今ある情報と犯行が起きる前の現場を調べ回って阻止すんの。頭痛いよぉ」
それで”ちょっと変わった探偵”。
意味を晴子は理解したが、縁害と恐怖満載の夏休みが結びつかない。想像できるのは、良からぬ記事を見てしまった為に呪われるぐらいの発想しか。
「……私、呪われる、とかですか?」声が小さくなる。
晴子の不安を当たり前のように憂志郎は読み取った。こういった事は時々あるので慌てることもない。
「ちがうちがう。悪霊とかに憑かれるって想像してるでしょ?」
素直に頷かれた。
「ただ“怖いの”が見えるか巻き込まれるってだけ。この事件に関係した恨みが象った“怖いの”が。確認だけど、沖島郷三郎はご贔屓にしてくれる上客で予約もしっかり入ってるだろ?」
「まぁ、そうですが」
「傍に寄る機会があるなら念のために忠告。見たくないなら俺の言うこと、ちゃんと守ってくれる?」
「言うこと?」
「誰にもこのことを話さない。何か分かっても自分から動かず俺に言うこと。探偵気取りで解決しに向かわないこと。ぐらいかな」
「もし破ったら、地獄行きとか?」
あまりにも極論過ぎる発想に可笑しくなった。
「ははは、テレビか何かでやってた? あー、まあ、やってみても良いけど絶対無理だろうし。下手すればお盆過ぎまで晴子ちゃん、気を失って悪夢にうなされるかなぁ」
さらっと恐い事を言われ、何が起きるか不安になる。
「何が起きるんですか!」ついつい口調が強まる。
「話そうとすれば“怖いの”が現われる。それに捕まれば悪夢にうなされて阻止しようとした行動を妨害され、縁害期間後まで悪夢の中。表向きはちょっと長引いた夏風邪ってことになるだろうな。もしくは日射病か」
嘘か本当かは分からないが晴子は話を半分信じた。後の半分はでたらめだと疑っている。
「じゃあ、私、なにも出来ないの?」
「俺は普通じゃないから話して大丈夫。ついでだから情報提供もしてほしいかなぁ。容疑者八名がどういった人か知りたいし」
そこは見ていないので誰かを知りたい。そして、なぜ晴子に聞くような言い回しをするのかが気になる。
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