8 / 17
7 未来の記事
しおりを挟む
八月十日午前十時。
憂志郎は郷三郎の宿泊する清郷館と、昨日の続きに出向いた。
予定では三日以内にアリバイに関する場所全てを回る計画を立てていたが、奇案の調査や行く先々耳にする郷三郎の噂話の盗み聞き。調査の時間は大幅に削られた。
夏の風物詩である蝉の鳴き声は相変わらず騒音を維持し、照りつける日光はジリジリと暑く汗が止まらない。盗み聞きも楽ではない。
「……今日から盆過ぎまでか?!」
「しっ、声がデカい」
飲料自動販売機横でひそひそ話をする男性二人の会話を、煙草を吹かしながら耳にした。
男たちは余所を見て何気ない表情の憂志郎は聞いていないと思い会話を続ける。
「いつもの会合があちこちであるって話だ」
「え、それって、ヤーさん?」
「いや、政治家。つっても、政治家連中も右翼って話だから、沖島のおっさんもこの夏に力入れてんだろ」
「でもあちこちで厳ついツラの連中が屯してるって聞くぞ」
「無関係じゃないだろうけどな」
憂志郎は考えた。
政界進出は確実だろう。なら、郷三郎があちこち動いて顔を出し、会合にも出席しているなら、夜に清郷館へ戻れば疲れて寝るだろう。
そんな多忙な日々をこの町で過ごしているのに八月十四日だけは深夜に外へ。疲れ切っているだろうに夜中に出歩く不自然さが成り立っている。
真っ先に考えられるのは脅し。世に出ては行けない危険な秘密を握られたから嫌でも殺害現場へと向かわなければならなかった。
(遺体発見が午前六時台だから、取り巻き連中や清郷館の女将には寝るから部屋に入れないようにしていたんだろ。命令に背けば怒鳴る性格なら、誰もが従ったってのが自然だろうな。そして窓から外へ。これが一人で行き、発見時間まで誰も郷三郎を探さなかった理由、か?)
殺害も密会も容易な環境なのが偶然とは考えにくい。この時期に民家の住人が夏に出て行くと知っているのだろう。地元民である容疑者八名は調査しやすい。
資料を確認し、次のアリバイ現場へ向かおうと鞄を開けると、「あ」と、ついつい声が漏れた。資料を忘れてきてしまったのだ。
八月十日午前十一時十分。
晴子は憂志郎に昼飯を一緒にするかを確認しに部屋へ向かった。今までは外に出ていたが、明朝に出て行ったと知らないので部屋に籠っていると誤解していた。
扉をノックするも返事が無い。まだ寝ているのかと思い、ゆっくりと扉を開けた。
「羽柴さぁん、いますぅ?」
布団は畳まれ部屋はもぬけのから。しかし晴子の目を引いたのは玩具の机に置いてある冊子だった。
記者見習いの憂志郎がどういった記事を書いているか気になった晴子は、足音を殺して近づき、こっそりと冊子を手に取る。
「いーけないんだぁいけないんだぁ~」と、弾む小声で歌いつつ、冊子から資料を取り出した。
一番上の記事を見た途端、晴子は驚愕して言葉を失った。
(え、なんで?!)
沖島郷三郎殺害の新聞記事を目の当たりにし、周囲の些細な音も聞こえないほどに。だから、扉にいる人物が扉を締める音を耳にするまで油断が生じた。
「え!?」
「あーあ、見ちゃった?」
いつもの温和な雰囲気とは打って変わり、無表情の憂志郎は狂気を孕んでいるように見えた。
「ご、ごめんなさい!」
急いで資料をしまう。も、ガチャッと、いつもより大きく聞こえる鍵をかける音に反応して冊子を落としてしまった。
身体が震え、怯える目で憂志郎を見ると視線は晴子を逃さない。徐ろに座る動きすら恐ろしく感じる。
「あ、あの、私なにも見てません。見てませんから!」
そんな言葉聞く耳持たずと言わんばかりに、マッチの火で煙草に火を付け、大きく一息吐いた。
蒸し暑い部屋に煙はいつも通りに漂う。
「予言、してやろうか」
何をされるか分からない。ただ、殺される想像だけが頭を埋め尽くす。こんなことなら覗き見るのではなかったと後悔が強くなる。
「晴子ちゃん、窓を開けるよ。絶対」
飛び降り自殺をしろ。脅迫されているとしか考えられない。
「いや、私、まだ死にたくない。助けてください!」
「なんで窓開けるか分かる?」
自殺の二文字が晴子の頭に浮かぶ。
命令された死の誘導。けど自殺として処理される。
「こうやって、煙草の煙が充満するとぉ……」
予想とは無関係な言葉。急に訳が分からなくなり、思考が停止した。
ほどなくして本当に煙たくなる。
煙草の煙が充満する部屋になれていない晴子は急いで窓を全開にした。
「ほら当たった」
素っ頓狂な憂志郎の発言から、晴子を襲う気配が感じられない。妙に怯えていたのが馬鹿らしく思えた晴子は、気を取り直して確認をとる。
「あ、あの。私、殺さないんですか?」
「え、なんで?」
緊張が完全に解け、馬鹿らしさが明確となった。
「え、だって、なんか見ちゃいけないもの見た……から?」
「確かにいけないなぁ」
立ち上がってだらだらと歩き、冊子を手に取った。
「料亭の娘さんがお客様の持ち物を盗み見するなんてのぁ。女将さんかおやっさんにチクるか」
「待って、ごめんなさいごめんなさい。ほんっとうにごめんなさい! だからお父さんとお母さんには黙ってて」
「なーんつって」
言って煙を晴子へ向けて吐く。
「え? ゴホッ、ゴホッ、止めてください!」
「とりあえず、どこまで見た? 見られたからには色々話さないと晴子ちゃんの夏休みが恐怖満載の夏休みになっちゃうからねぇ」
暢気な口調がいよいよ晴子の恐怖心を払拭させた。
「あの……羽柴さんって、なんなんですか?」
「ん? ちょっと変わった探偵って言えば納得?」
「探偵?!」妙に嬉しい感情がこみ上げる。
晴子は友達と探偵シリーズの小説を読んでいたからだ。自分も少年ならぬ少女探偵として協力出来るのではと気持ちが少しばかり芽吹いた。
憂志郎は沖島郷三郎殺害の資料だけを取り出す。
「見たの、コレでしょ」
「うん。けど沖島様は」仕事の癖で様を付けてしまう。「まだ生きてますよ」
返答のように指さしされたのは日付。昭和四十二年八月十四日である。
「え、未来?」
もう、小説の展開から逸脱してしまい晴子は混乱する。
「俺はある条件で起こる殺人を阻止する為に動いてる。記者見習ってのは嘘で、そうでも言わないとただの不審者だろ」
「ま、まぁ、そうですけど。ある条件?」
「縁害って言ってな、この新聞記事に載ってる迷宮入りした殺しは狂った運命だったから起きた殺し。分かりやすく言うと、本来は無い殺しだ」
「なんでそんな事が起きてるんですか?」
「色んな理由はあるけど、今回は分かりやすいな。……まぁ、端的に言えば、この人が恨まれすぎてるから」
沖島郷三郎がどれ程嫌われているか晴子も知っている。松栄屋の従業員殆どが、沖島郷三郎の予約を見るだけで表情が曇るほどなのも。
「恨まれて、そんな変な殺人事件が起きるんですか?」
「怨恨での殺しはよくある話だけどな、恨みの念が別の恨みに加担しすぎるから、こういった無いはずの殺人事件が起きちまうんだ。で、本来の運命に俺は戻す役目。犯人も動機も殺害方法も分かりゃ苦労はしないんだがねぇ」
その苦労が煙草を吸う様子から、存分に表われている。
「なんで? 未来のことだったら分かるんじゃ」
「分かるのは人間が記した資料の一部だけ。こういった新聞記事や警察内部のちょいとした情報まで。それも確実って訳じゃないから、今ある情報と犯行が起きる前の現場を調べ回って阻止すんの。頭痛いよぉ」
それで”ちょっと変わった探偵”。
意味を晴子は理解したが、縁害と恐怖満載の夏休みが結びつかない。想像できるのは、良からぬ記事を見てしまった為に呪われるぐらいの発想しか。
「……私、呪われる、とかですか?」声が小さくなる。
晴子の不安を当たり前のように憂志郎は読み取った。こういった事は時々あるので慌てることもない。
「ちがうちがう。悪霊とかに憑かれるって想像してるでしょ?」
素直に頷かれた。
「ただ“怖いの”が見えるか巻き込まれるってだけ。この事件に関係した恨みが象った“怖いの”が。確認だけど、沖島郷三郎はご贔屓にしてくれる上客で予約もしっかり入ってるだろ?」
「まぁ、そうですが」
「傍に寄る機会があるなら念のために忠告。見たくないなら俺の言うこと、ちゃんと守ってくれる?」
「言うこと?」
「誰にもこのことを話さない。何か分かっても自分から動かず俺に言うこと。探偵気取りで解決しに向かわないこと。ぐらいかな」
「もし破ったら、地獄行きとか?」
あまりにも極論過ぎる発想に可笑しくなった。
「ははは、テレビか何かでやってた? あー、まあ、やってみても良いけど絶対無理だろうし。下手すればお盆過ぎまで晴子ちゃん、気を失って悪夢にうなされるかなぁ」
さらっと恐い事を言われ、何が起きるか不安になる。
「何が起きるんですか!」ついつい口調が強まる。
「話そうとすれば“怖いの”が現われる。それに捕まれば悪夢にうなされて阻止しようとした行動を妨害され、縁害期間後まで悪夢の中。表向きはちょっと長引いた夏風邪ってことになるだろうな。もしくは日射病か」
嘘か本当かは分からないが晴子は話を半分信じた。後の半分はでたらめだと疑っている。
「じゃあ、私、なにも出来ないの?」
「俺は普通じゃないから話して大丈夫。ついでだから情報提供もしてほしいかなぁ。容疑者八名がどういった人か知りたいし」
そこは見ていないので誰かを知りたい。そして、なぜ晴子に聞くような言い回しをするのかが気になる。
容疑者八名の資料を見た晴子は驚いて口に手を当てた。
全員知っている人。その中に両親の名もあった。
憂志郎は郷三郎の宿泊する清郷館と、昨日の続きに出向いた。
予定では三日以内にアリバイに関する場所全てを回る計画を立てていたが、奇案の調査や行く先々耳にする郷三郎の噂話の盗み聞き。調査の時間は大幅に削られた。
夏の風物詩である蝉の鳴き声は相変わらず騒音を維持し、照りつける日光はジリジリと暑く汗が止まらない。盗み聞きも楽ではない。
「……今日から盆過ぎまでか?!」
「しっ、声がデカい」
飲料自動販売機横でひそひそ話をする男性二人の会話を、煙草を吹かしながら耳にした。
男たちは余所を見て何気ない表情の憂志郎は聞いていないと思い会話を続ける。
「いつもの会合があちこちであるって話だ」
「え、それって、ヤーさん?」
「いや、政治家。つっても、政治家連中も右翼って話だから、沖島のおっさんもこの夏に力入れてんだろ」
「でもあちこちで厳ついツラの連中が屯してるって聞くぞ」
「無関係じゃないだろうけどな」
憂志郎は考えた。
政界進出は確実だろう。なら、郷三郎があちこち動いて顔を出し、会合にも出席しているなら、夜に清郷館へ戻れば疲れて寝るだろう。
そんな多忙な日々をこの町で過ごしているのに八月十四日だけは深夜に外へ。疲れ切っているだろうに夜中に出歩く不自然さが成り立っている。
真っ先に考えられるのは脅し。世に出ては行けない危険な秘密を握られたから嫌でも殺害現場へと向かわなければならなかった。
(遺体発見が午前六時台だから、取り巻き連中や清郷館の女将には寝るから部屋に入れないようにしていたんだろ。命令に背けば怒鳴る性格なら、誰もが従ったってのが自然だろうな。そして窓から外へ。これが一人で行き、発見時間まで誰も郷三郎を探さなかった理由、か?)
殺害も密会も容易な環境なのが偶然とは考えにくい。この時期に民家の住人が夏に出て行くと知っているのだろう。地元民である容疑者八名は調査しやすい。
資料を確認し、次のアリバイ現場へ向かおうと鞄を開けると、「あ」と、ついつい声が漏れた。資料を忘れてきてしまったのだ。
八月十日午前十一時十分。
晴子は憂志郎に昼飯を一緒にするかを確認しに部屋へ向かった。今までは外に出ていたが、明朝に出て行ったと知らないので部屋に籠っていると誤解していた。
扉をノックするも返事が無い。まだ寝ているのかと思い、ゆっくりと扉を開けた。
「羽柴さぁん、いますぅ?」
布団は畳まれ部屋はもぬけのから。しかし晴子の目を引いたのは玩具の机に置いてある冊子だった。
記者見習いの憂志郎がどういった記事を書いているか気になった晴子は、足音を殺して近づき、こっそりと冊子を手に取る。
「いーけないんだぁいけないんだぁ~」と、弾む小声で歌いつつ、冊子から資料を取り出した。
一番上の記事を見た途端、晴子は驚愕して言葉を失った。
(え、なんで?!)
沖島郷三郎殺害の新聞記事を目の当たりにし、周囲の些細な音も聞こえないほどに。だから、扉にいる人物が扉を締める音を耳にするまで油断が生じた。
「え!?」
「あーあ、見ちゃった?」
いつもの温和な雰囲気とは打って変わり、無表情の憂志郎は狂気を孕んでいるように見えた。
「ご、ごめんなさい!」
急いで資料をしまう。も、ガチャッと、いつもより大きく聞こえる鍵をかける音に反応して冊子を落としてしまった。
身体が震え、怯える目で憂志郎を見ると視線は晴子を逃さない。徐ろに座る動きすら恐ろしく感じる。
「あ、あの、私なにも見てません。見てませんから!」
そんな言葉聞く耳持たずと言わんばかりに、マッチの火で煙草に火を付け、大きく一息吐いた。
蒸し暑い部屋に煙はいつも通りに漂う。
「予言、してやろうか」
何をされるか分からない。ただ、殺される想像だけが頭を埋め尽くす。こんなことなら覗き見るのではなかったと後悔が強くなる。
「晴子ちゃん、窓を開けるよ。絶対」
飛び降り自殺をしろ。脅迫されているとしか考えられない。
「いや、私、まだ死にたくない。助けてください!」
「なんで窓開けるか分かる?」
自殺の二文字が晴子の頭に浮かぶ。
命令された死の誘導。けど自殺として処理される。
「こうやって、煙草の煙が充満するとぉ……」
予想とは無関係な言葉。急に訳が分からなくなり、思考が停止した。
ほどなくして本当に煙たくなる。
煙草の煙が充満する部屋になれていない晴子は急いで窓を全開にした。
「ほら当たった」
素っ頓狂な憂志郎の発言から、晴子を襲う気配が感じられない。妙に怯えていたのが馬鹿らしく思えた晴子は、気を取り直して確認をとる。
「あ、あの。私、殺さないんですか?」
「え、なんで?」
緊張が完全に解け、馬鹿らしさが明確となった。
「え、だって、なんか見ちゃいけないもの見た……から?」
「確かにいけないなぁ」
立ち上がってだらだらと歩き、冊子を手に取った。
「料亭の娘さんがお客様の持ち物を盗み見するなんてのぁ。女将さんかおやっさんにチクるか」
「待って、ごめんなさいごめんなさい。ほんっとうにごめんなさい! だからお父さんとお母さんには黙ってて」
「なーんつって」
言って煙を晴子へ向けて吐く。
「え? ゴホッ、ゴホッ、止めてください!」
「とりあえず、どこまで見た? 見られたからには色々話さないと晴子ちゃんの夏休みが恐怖満載の夏休みになっちゃうからねぇ」
暢気な口調がいよいよ晴子の恐怖心を払拭させた。
「あの……羽柴さんって、なんなんですか?」
「ん? ちょっと変わった探偵って言えば納得?」
「探偵?!」妙に嬉しい感情がこみ上げる。
晴子は友達と探偵シリーズの小説を読んでいたからだ。自分も少年ならぬ少女探偵として協力出来るのではと気持ちが少しばかり芽吹いた。
憂志郎は沖島郷三郎殺害の資料だけを取り出す。
「見たの、コレでしょ」
「うん。けど沖島様は」仕事の癖で様を付けてしまう。「まだ生きてますよ」
返答のように指さしされたのは日付。昭和四十二年八月十四日である。
「え、未来?」
もう、小説の展開から逸脱してしまい晴子は混乱する。
「俺はある条件で起こる殺人を阻止する為に動いてる。記者見習ってのは嘘で、そうでも言わないとただの不審者だろ」
「ま、まぁ、そうですけど。ある条件?」
「縁害って言ってな、この新聞記事に載ってる迷宮入りした殺しは狂った運命だったから起きた殺し。分かりやすく言うと、本来は無い殺しだ」
「なんでそんな事が起きてるんですか?」
「色んな理由はあるけど、今回は分かりやすいな。……まぁ、端的に言えば、この人が恨まれすぎてるから」
沖島郷三郎がどれ程嫌われているか晴子も知っている。松栄屋の従業員殆どが、沖島郷三郎の予約を見るだけで表情が曇るほどなのも。
「恨まれて、そんな変な殺人事件が起きるんですか?」
「怨恨での殺しはよくある話だけどな、恨みの念が別の恨みに加担しすぎるから、こういった無いはずの殺人事件が起きちまうんだ。で、本来の運命に俺は戻す役目。犯人も動機も殺害方法も分かりゃ苦労はしないんだがねぇ」
その苦労が煙草を吸う様子から、存分に表われている。
「なんで? 未来のことだったら分かるんじゃ」
「分かるのは人間が記した資料の一部だけ。こういった新聞記事や警察内部のちょいとした情報まで。それも確実って訳じゃないから、今ある情報と犯行が起きる前の現場を調べ回って阻止すんの。頭痛いよぉ」
それで”ちょっと変わった探偵”。
意味を晴子は理解したが、縁害と恐怖満載の夏休みが結びつかない。想像できるのは、良からぬ記事を見てしまった為に呪われるぐらいの発想しか。
「……私、呪われる、とかですか?」声が小さくなる。
晴子の不安を当たり前のように憂志郎は読み取った。こういった事は時々あるので慌てることもない。
「ちがうちがう。悪霊とかに憑かれるって想像してるでしょ?」
素直に頷かれた。
「ただ“怖いの”が見えるか巻き込まれるってだけ。この事件に関係した恨みが象った“怖いの”が。確認だけど、沖島郷三郎はご贔屓にしてくれる上客で予約もしっかり入ってるだろ?」
「まぁ、そうですが」
「傍に寄る機会があるなら念のために忠告。見たくないなら俺の言うこと、ちゃんと守ってくれる?」
「言うこと?」
「誰にもこのことを話さない。何か分かっても自分から動かず俺に言うこと。探偵気取りで解決しに向かわないこと。ぐらいかな」
「もし破ったら、地獄行きとか?」
あまりにも極論過ぎる発想に可笑しくなった。
「ははは、テレビか何かでやってた? あー、まあ、やってみても良いけど絶対無理だろうし。下手すればお盆過ぎまで晴子ちゃん、気を失って悪夢にうなされるかなぁ」
さらっと恐い事を言われ、何が起きるか不安になる。
「何が起きるんですか!」ついつい口調が強まる。
「話そうとすれば“怖いの”が現われる。それに捕まれば悪夢にうなされて阻止しようとした行動を妨害され、縁害期間後まで悪夢の中。表向きはちょっと長引いた夏風邪ってことになるだろうな。もしくは日射病か」
嘘か本当かは分からないが晴子は話を半分信じた。後の半分はでたらめだと疑っている。
「じゃあ、私、なにも出来ないの?」
「俺は普通じゃないから話して大丈夫。ついでだから情報提供もしてほしいかなぁ。容疑者八名がどういった人か知りたいし」
そこは見ていないので誰かを知りたい。そして、なぜ晴子に聞くような言い回しをするのかが気になる。
容疑者八名の資料を見た晴子は驚いて口に手を当てた。
全員知っている人。その中に両親の名もあった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる