24 / 80
三章 暒空魔術への想い
Ⅲ ガドでの夜
しおりを挟む
ガドの村で夜を迎え、夕食時にサラは唖然となった。
「……ジェイクさんって、普段からこんなに食べるんですか?」
既に四品の肉料理それぞれ三人前、野菜料理三品二人前は平らげている。
「まだ数日しか見てないけど、その時から食費は凄いよ」
金管理が面倒と言い張るジェイクは、トウマと出会って以降、管理は任せきりにしている。一応、非常時用にトウマはジェイクに微々たる金額を預けている。
「うちの子は育ち盛りなので」
母親のように振舞うベルメアを無視して、ジェイクは自分が注文した最後の肉料理を完食した。
「あー、美味い。……俺よりお前らの方が食細すぎだろ」
カレリナが現れて分析した。
「住む世界や立場が違うのではないでしょうか……。転生した身体とはいえ、これだけ時間が経過したなら体質の殆どは前世の状態に寄りますから」
「けど、烙印の影響もあるんじゃない?」
ビィトラがトウマの背にしがみつくように現れる。
「あれだけ謎ばっかで強力なんだ。体力の消費は凄い筈だよ。今までだって激戦後は満身創痍だったし」
ここぞとばかりにジェイクは胸を張ってベルメアへ告げた。
「つーわけだベル。トウマの資金が底尽きる前に受肉しねぇと、生き死に以前にトウマの財布が臨終しちまう」
「他人事みたいに言わないでくださいよ。ジェイクさんの剣も消耗品状態なの、分かってます?」
無理な烙印技で使用した剣は全てボロボロになり、激戦後は買い替えている。
サラは剣に関して意見した。
「今後の課題じゃないですけど、ジェイクさん専用の頑丈な剣も探さないといけませんよね。私達が生き残るためにはジェイクさんの未知の力が鍵でしょうから」
「そんな都合良く頑丈な剣とかあるのか?」食事を終え、ジェイクは傍に置いてある剣(鞘には収まったまま)を持ち上げた。「……まあ、危険な代物でしかねぇ烙印に対応出来る剣が、その辺の店で売ってるわけねぇだろうな。もっと特別な鍛冶屋探して頼むしかねぇだろ」
サラは頷いた。
「ですね。魔術も使える世界なんだから、特別な武器とかあるだろうし」
武器以外の疑問が浮かんだトウマは不安になる。
「けど、悠長にしてられないかも。これからは転生者同士で戦う事もあるだろうし、何もなかったとしてもいつまで””転生者”でいれるか分からないから」
転生者達の傍らで、ビィトラとベルメアは若干の焦りの表情を滲ませる。
「そうだな。終わりが分かんねぇなら」
ベルメアは躊躇いながらも何かを告げようとした。しかし、すぐに話す期を逃した。
「え? 三年ですよね。転生者でいれる期間」
なぜサラが知っているかと驚く二人が理由を聞くと、転生後にカレリナから説明を受けたとされる。
「おいどういうことだベル」
「え?! あ、あれ……、言ってなかったけ?」とぼけてみせた。
同様にトウマもビィトラに訊いた。
「言うの忘れてた」潔く悪びれない。
「おいおいしっかりしてくれよ。昇格してぇんじゃねぇのかよ」
「しょうが無いでしょうよ! いろんなところであんたが勝手に行動するし、物わかり微妙だし、説明量も多くなるし!」
”こっちの苦労も分かってくれ”と言わんばかりの訴えに、ジェイクは視線を逸らせた。
「ビィもビィだよ」
「仕方ないじゃん。トウマも仲間出来たり失ったりで気が気でなかったみたいだし。ビィは悪くないし」
熱意ある訴えはないものの、トウマも何も言えない。
この話題から外れようと、ジェイクは咳払いして話を変えた。
「ところでミライザはどうした? 飯食わねぇと死ぬぞ」
「何言ってるんですか、ミライザさん死んでますよ」サラが返す。
「お、そうだな。こいつぁ一本取られちまった。ははは」
くだらないやりとりに、トウマは呆れながらも補足した。
「自然界の気に触れて魔力を浄化するのが夕食替わりらしいですよ」
「へぇ……安上がりだけど苦労する体質なんだな」
村を出てすぐの所でミライザは目当ての町の方角を眺め、魔力と大地の気を感じていると、ある男性の言葉が思い出される。
(ミラ、本当にここから見える町が好きなんだな)
(きっとうまくいくよ。だって君は頑張って研究してただろ?)
(……必ずまた会おう)
集中が途切れ、首飾りを握りしめる。
「ダン、最後にもう一度だけ……」
想いを胸に、再び集中した。
今、余命僅かな奇跡としかいえない現状において、ミライザは”希望”にすがりつつも冷静に考えて行動している。
叶う事を切に願いつつ。
◇◇◇◇◇
ジェイク達がベルゲバの塔で魔女もどきと対峙していた時、【ビスト】と呼ばれる街では人知れず奇妙な現象が起き始めていた。
夜、街を徘徊する荒くれ者達が、まるで廃人のような様子でフラフラと歩き、建物の間へと行くと姿を消した。そういった事例が一日に五件も発生し、翌日にもまた消える者が現れる。
全員が鼻つまみ者ばかりであり、住民たちは失踪に大して気にも留めなかった。
そんなビストに、二人の強力な術師がいる。ジェイク達がガドの村に訪れた日であった。
一人は女。三か月前に魔女を倒した英雄の一人である。
仲間の予言から”ビストに禍々しい気を帯びた異変が起きる”と告げられた。
同時期に重なる問題ごとと関連してると判断し、ビストへ訪れた。
もう一人の術師は男。英雄術師よりも五日早く訪れて、自らが計画する惨事を遂行しようと、準備に余念を欠かさなかった。その甲斐あってか、ジェイク達がガドの村を出発した時には準備を終えていた。
「さっさと来いガーディアンと賢師様。狂気の舞台は整ってからよ」
男は昂る感情を抑えつつも不適な笑みを浮かべ、街の一角で静かに時が来るのを待ち構えた。
ビストにて、激戦が繰り広げられようとしている事をジェイク達は知らない。
「……ジェイクさんって、普段からこんなに食べるんですか?」
既に四品の肉料理それぞれ三人前、野菜料理三品二人前は平らげている。
「まだ数日しか見てないけど、その時から食費は凄いよ」
金管理が面倒と言い張るジェイクは、トウマと出会って以降、管理は任せきりにしている。一応、非常時用にトウマはジェイクに微々たる金額を預けている。
「うちの子は育ち盛りなので」
母親のように振舞うベルメアを無視して、ジェイクは自分が注文した最後の肉料理を完食した。
「あー、美味い。……俺よりお前らの方が食細すぎだろ」
カレリナが現れて分析した。
「住む世界や立場が違うのではないでしょうか……。転生した身体とはいえ、これだけ時間が経過したなら体質の殆どは前世の状態に寄りますから」
「けど、烙印の影響もあるんじゃない?」
ビィトラがトウマの背にしがみつくように現れる。
「あれだけ謎ばっかで強力なんだ。体力の消費は凄い筈だよ。今までだって激戦後は満身創痍だったし」
ここぞとばかりにジェイクは胸を張ってベルメアへ告げた。
「つーわけだベル。トウマの資金が底尽きる前に受肉しねぇと、生き死に以前にトウマの財布が臨終しちまう」
「他人事みたいに言わないでくださいよ。ジェイクさんの剣も消耗品状態なの、分かってます?」
無理な烙印技で使用した剣は全てボロボロになり、激戦後は買い替えている。
サラは剣に関して意見した。
「今後の課題じゃないですけど、ジェイクさん専用の頑丈な剣も探さないといけませんよね。私達が生き残るためにはジェイクさんの未知の力が鍵でしょうから」
「そんな都合良く頑丈な剣とかあるのか?」食事を終え、ジェイクは傍に置いてある剣(鞘には収まったまま)を持ち上げた。「……まあ、危険な代物でしかねぇ烙印に対応出来る剣が、その辺の店で売ってるわけねぇだろうな。もっと特別な鍛冶屋探して頼むしかねぇだろ」
サラは頷いた。
「ですね。魔術も使える世界なんだから、特別な武器とかあるだろうし」
武器以外の疑問が浮かんだトウマは不安になる。
「けど、悠長にしてられないかも。これからは転生者同士で戦う事もあるだろうし、何もなかったとしてもいつまで””転生者”でいれるか分からないから」
転生者達の傍らで、ビィトラとベルメアは若干の焦りの表情を滲ませる。
「そうだな。終わりが分かんねぇなら」
ベルメアは躊躇いながらも何かを告げようとした。しかし、すぐに話す期を逃した。
「え? 三年ですよね。転生者でいれる期間」
なぜサラが知っているかと驚く二人が理由を聞くと、転生後にカレリナから説明を受けたとされる。
「おいどういうことだベル」
「え?! あ、あれ……、言ってなかったけ?」とぼけてみせた。
同様にトウマもビィトラに訊いた。
「言うの忘れてた」潔く悪びれない。
「おいおいしっかりしてくれよ。昇格してぇんじゃねぇのかよ」
「しょうが無いでしょうよ! いろんなところであんたが勝手に行動するし、物わかり微妙だし、説明量も多くなるし!」
”こっちの苦労も分かってくれ”と言わんばかりの訴えに、ジェイクは視線を逸らせた。
「ビィもビィだよ」
「仕方ないじゃん。トウマも仲間出来たり失ったりで気が気でなかったみたいだし。ビィは悪くないし」
熱意ある訴えはないものの、トウマも何も言えない。
この話題から外れようと、ジェイクは咳払いして話を変えた。
「ところでミライザはどうした? 飯食わねぇと死ぬぞ」
「何言ってるんですか、ミライザさん死んでますよ」サラが返す。
「お、そうだな。こいつぁ一本取られちまった。ははは」
くだらないやりとりに、トウマは呆れながらも補足した。
「自然界の気に触れて魔力を浄化するのが夕食替わりらしいですよ」
「へぇ……安上がりだけど苦労する体質なんだな」
村を出てすぐの所でミライザは目当ての町の方角を眺め、魔力と大地の気を感じていると、ある男性の言葉が思い出される。
(ミラ、本当にここから見える町が好きなんだな)
(きっとうまくいくよ。だって君は頑張って研究してただろ?)
(……必ずまた会おう)
集中が途切れ、首飾りを握りしめる。
「ダン、最後にもう一度だけ……」
想いを胸に、再び集中した。
今、余命僅かな奇跡としかいえない現状において、ミライザは”希望”にすがりつつも冷静に考えて行動している。
叶う事を切に願いつつ。
◇◇◇◇◇
ジェイク達がベルゲバの塔で魔女もどきと対峙していた時、【ビスト】と呼ばれる街では人知れず奇妙な現象が起き始めていた。
夜、街を徘徊する荒くれ者達が、まるで廃人のような様子でフラフラと歩き、建物の間へと行くと姿を消した。そういった事例が一日に五件も発生し、翌日にもまた消える者が現れる。
全員が鼻つまみ者ばかりであり、住民たちは失踪に大して気にも留めなかった。
そんなビストに、二人の強力な術師がいる。ジェイク達がガドの村に訪れた日であった。
一人は女。三か月前に魔女を倒した英雄の一人である。
仲間の予言から”ビストに禍々しい気を帯びた異変が起きる”と告げられた。
同時期に重なる問題ごとと関連してると判断し、ビストへ訪れた。
もう一人の術師は男。英雄術師よりも五日早く訪れて、自らが計画する惨事を遂行しようと、準備に余念を欠かさなかった。その甲斐あってか、ジェイク達がガドの村を出発した時には準備を終えていた。
「さっさと来いガーディアンと賢師様。狂気の舞台は整ってからよ」
男は昂る感情を抑えつつも不適な笑みを浮かべ、街の一角で静かに時が来るのを待ち構えた。
ビストにて、激戦が繰り広げられようとしている事をジェイク達は知らない。
0
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる