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四章 伝説の戦士との出会い
Ⅶ 腹を明かさない関係
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森から一番近い町が目視で確認出来る辺りにて、ビンセント達は魔獣の群れに遭遇した。
姿は一見して猿のようだが、背中に魚のような背びれ、額には角を生やし、爪と牙は鋭く長い。
半時間もすれば暮れなずむ状況であるためか、魔獣達の獰猛性も増している。
「夜行性の魔獣かい?」ミゼルが訊く。
「ああ、【アガト】と言う夜行性の魔獣だ。魔獣は基本、夜に凶暴性を増すが、とりわけこいつらはその性質が強い部類でな、襲われて死ねば死体は貪られ残骸しか残らん」
「それは難儀な。転生してすぐ血肉も残らない惨殺は御免被りたい」
「奴らは習性か体質か、魔力を手足に纏わせて攻撃する。並の武器だとすぐに壊されるぞ」
「ほう、ではこちらも魔力を?」
説明をしようとした矢先、ビンセントが跪いた。
「お前さんどうした!?」
訊くも、原因はすぐに判明した。睡魔に襲われて抗えないでいる。
(こんな時に)
ルバートがビンセントの中へ入ると、二体のアガドが襲ってきた。小癪な状況に舌打ちして身体を転がせて攻撃を躱すと、鞘から剣を抜く際に魔力を刃に纏わせて一体を斬った。
「ほう、今のように魔力を込めて……」
ミゼルは分析した意見を呟いた。このとき、三体のアガドの攻撃を躱しながらである。
「とはいえ、ただ纏わせるというのではないな」推測が立つと、声を大きくして意見した。「目測だが、魔力を収縮させたか質の違う魔力を纏わせたのかな?」
「良い読みだ」
ルバートは傍のアガドを斬ると、別のアガドが四体も現われた。
「答えは後者。効果は相手の魔力を鎮める。一時しのぎに過ぎないが魔力消費を抑え、相手の隙を突くのに最適だ。出来るか?」
「やってみよう」
魔力の消費を抑えて刃に纏わせ、まるで粘土をこねるように魔力の雰囲気を読み取り質や形を変える。アガドに襲われながらするのは困難だが、ミゼルは熟した。
ただ、表情は真剣で軽口もたたけない程集中している。
「……違う……こうか……いや、…………これか?」
アガドに襲われる度に技を繰り広げ、ようやくコツを掴んだ。
「……なるほど」
ようやく慣れると表情に余裕が伺えた。
一方のルバートは、剣技で対応する事に疲れ、群れて攻めてくる魔獣対応の魔術を使おうと判断し、剣を鞘の納めた。
右手に桃色、左手に橙色の魔力を出現させた。
「果てるまで乱心しろ。ガウロ・ブァーヒ」
手を叩くと音が響き渡り、アガド達の動きを止めた。
間もなく、アガド達は仲間同士見つめ合うと、険しい表情に変わり襲い合った。
「今のうちに行くぞ!」
ルバートの指示に従い、ミゼルは後をついて駆けた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。どうやら、体力までは魔力でどうこうできんようだ」
「ああ。身体に関しては鍛えるしか方法がない。魔力で出来るのは消耗を抑えるのが限度だろう。しかし器用なものだ。あの状況で魔力を玩び、コツを掴むなど」
「こちらも一か八かであったからな。如何な窮地であれ、やれることは試すに越したことは無い。死後に後悔しても仕方ないからね」
「説得力があるな、ガーディアンが言うと」
二人が訪れたのは、海に近い町・ピエスト。町を囲うように大人の背丈の石碑が建てられ、天辺に炎が盛っている。
「これは、魔獣避けか?」
「ああ。ガニシェット王国の土地はアガドのような夜行性の魔獣が多いからな。あそこまで凶暴であれ、炎には弱いというのだから不思議だ」
「ところで、ビンセント殿はどうしたのだ?」
「一身上の都合だ。時々強烈な睡魔に襲われる」
「ほう。そうなった際、身体に移り、面倒を見ると……。苦労性な事で」
「この苦労をビンセントにも分かって欲しいところだ。行こう。今後の相談をしたい」
二人はピエストの宿へ向かった。
翌朝、ルバートとミゼルはピエストから南西にある町へと向かった。ビンセントは夜中に目覚めるも、今朝方にはまた眠りに落ちた。
昨晩、ミゼルはルバートから魔力、魔女、七王国について、それぞれが大まかにだが教わり、ルバートもガーディアンに関する知識をラドーリオに聞いている。
「……ほう、ここまで異様な魔力を……。と、思い抱いているが、正しいだろうか?」
ピエストから少し離れたところで平地を進む道と山を登る道があった。
ミゼルは昨晩教わった魔力感知を実践し、それが目的の町側から発せられていると感じる。
「ああ、さすがだな。一応覚えておくと良い、コレが魔獣の群れによる乱れだ。こういった類の魔獣は多い分、危機回避にも役立つ。行くか?」
「ああ。特定加護がなにやら私をそちらへ向かわせているように思えてならんのでな。この世界を知る為にも向かうつもりだ」
「俺様も手を貸そうか? せっかく知り合った数少ない友を失いたくはないのでな」
「ほう。既に私がそこまでの位置に値するとは光栄だ。本心は定かではないが、私と同類と思わせて貰うよ」
互いに腹を割らず、別れの挨拶を終えた。
「宿で話した通り、二十日後にベイストスの町で落ち合おう。前後八日は誤差があっても十分だ、安心して日を違えても構わんぞ」
ベイストスの町はガニシェット王国の王城より大湖側に位置する南南西の山岳に囲まれた町である。
地形としてはガニシェット王国とレイデル王国間の砂漠の国境から大湖沿いを馬を走らせて半日で着く程、平地が続き距離も短い。
「気遣い痛み入るよ。お互い、生きて再会したいものだ」
別れを告げ、ミゼルが町へ向かうのをルバートは呼び止めた。
「昨晩も話したが、魔力の業が強い魔獣には気をつけろ。いつぞやの化け物が徘徊しているかもしれんからな」
ボリーグレスで逃した化け物が向かった方向は砂漠の国境の方向である。
忠告を聞いて返事したミゼルは手を上げて町へ向かった。
(お前ら、無意味な腹の探り合いが趣味か?)
ミゼルと別れ、山を登る途中、ビンセントが声をかけた。
「おいおい、英雄ともあろう者が盗み聞きか?」
(目覚めたら奇抜な別れの最中だ。面倒な争いはするなよ)
「せんよ。あの男は一筋縄ではいかんというのは分かった。おそらく昨晩の話にも秘め事を含んでいるだろうな」
(なぜ分かる? 魔力でも見たのか)
「その必要はない。あの男は俺様に似ているから理解出来るのさ。全てを語らず俯瞰して状況を見る。いつも何かを考えている人種だ」
(自分で自分の事を言ってるようだな。お前、いつも何かを考えてて疲れないか?)
「考察出来る事は楽しいぞ。お前さんもコレを機に魔力を感じ、思考を巡らせてみてはどうだ? 面倒な体質なのだから必要だろ」
(こんな眠くなる状態じゃ無理だ。引き続き眠らせて貰う)
言い残すと、ビンセントの念話が途絶えた。
会話から逃げたとも思われるが、ルバートは気にもとめず目的地へと向かった。
姿は一見して猿のようだが、背中に魚のような背びれ、額には角を生やし、爪と牙は鋭く長い。
半時間もすれば暮れなずむ状況であるためか、魔獣達の獰猛性も増している。
「夜行性の魔獣かい?」ミゼルが訊く。
「ああ、【アガト】と言う夜行性の魔獣だ。魔獣は基本、夜に凶暴性を増すが、とりわけこいつらはその性質が強い部類でな、襲われて死ねば死体は貪られ残骸しか残らん」
「それは難儀な。転生してすぐ血肉も残らない惨殺は御免被りたい」
「奴らは習性か体質か、魔力を手足に纏わせて攻撃する。並の武器だとすぐに壊されるぞ」
「ほう、ではこちらも魔力を?」
説明をしようとした矢先、ビンセントが跪いた。
「お前さんどうした!?」
訊くも、原因はすぐに判明した。睡魔に襲われて抗えないでいる。
(こんな時に)
ルバートがビンセントの中へ入ると、二体のアガドが襲ってきた。小癪な状況に舌打ちして身体を転がせて攻撃を躱すと、鞘から剣を抜く際に魔力を刃に纏わせて一体を斬った。
「ほう、今のように魔力を込めて……」
ミゼルは分析した意見を呟いた。このとき、三体のアガドの攻撃を躱しながらである。
「とはいえ、ただ纏わせるというのではないな」推測が立つと、声を大きくして意見した。「目測だが、魔力を収縮させたか質の違う魔力を纏わせたのかな?」
「良い読みだ」
ルバートは傍のアガドを斬ると、別のアガドが四体も現われた。
「答えは後者。効果は相手の魔力を鎮める。一時しのぎに過ぎないが魔力消費を抑え、相手の隙を突くのに最適だ。出来るか?」
「やってみよう」
魔力の消費を抑えて刃に纏わせ、まるで粘土をこねるように魔力の雰囲気を読み取り質や形を変える。アガドに襲われながらするのは困難だが、ミゼルは熟した。
ただ、表情は真剣で軽口もたたけない程集中している。
「……違う……こうか……いや、…………これか?」
アガドに襲われる度に技を繰り広げ、ようやくコツを掴んだ。
「……なるほど」
ようやく慣れると表情に余裕が伺えた。
一方のルバートは、剣技で対応する事に疲れ、群れて攻めてくる魔獣対応の魔術を使おうと判断し、剣を鞘の納めた。
右手に桃色、左手に橙色の魔力を出現させた。
「果てるまで乱心しろ。ガウロ・ブァーヒ」
手を叩くと音が響き渡り、アガド達の動きを止めた。
間もなく、アガド達は仲間同士見つめ合うと、険しい表情に変わり襲い合った。
「今のうちに行くぞ!」
ルバートの指示に従い、ミゼルは後をついて駆けた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。どうやら、体力までは魔力でどうこうできんようだ」
「ああ。身体に関しては鍛えるしか方法がない。魔力で出来るのは消耗を抑えるのが限度だろう。しかし器用なものだ。あの状況で魔力を玩び、コツを掴むなど」
「こちらも一か八かであったからな。如何な窮地であれ、やれることは試すに越したことは無い。死後に後悔しても仕方ないからね」
「説得力があるな、ガーディアンが言うと」
二人が訪れたのは、海に近い町・ピエスト。町を囲うように大人の背丈の石碑が建てられ、天辺に炎が盛っている。
「これは、魔獣避けか?」
「ああ。ガニシェット王国の土地はアガドのような夜行性の魔獣が多いからな。あそこまで凶暴であれ、炎には弱いというのだから不思議だ」
「ところで、ビンセント殿はどうしたのだ?」
「一身上の都合だ。時々強烈な睡魔に襲われる」
「ほう。そうなった際、身体に移り、面倒を見ると……。苦労性な事で」
「この苦労をビンセントにも分かって欲しいところだ。行こう。今後の相談をしたい」
二人はピエストの宿へ向かった。
翌朝、ルバートとミゼルはピエストから南西にある町へと向かった。ビンセントは夜中に目覚めるも、今朝方にはまた眠りに落ちた。
昨晩、ミゼルはルバートから魔力、魔女、七王国について、それぞれが大まかにだが教わり、ルバートもガーディアンに関する知識をラドーリオに聞いている。
「……ほう、ここまで異様な魔力を……。と、思い抱いているが、正しいだろうか?」
ピエストから少し離れたところで平地を進む道と山を登る道があった。
ミゼルは昨晩教わった魔力感知を実践し、それが目的の町側から発せられていると感じる。
「ああ、さすがだな。一応覚えておくと良い、コレが魔獣の群れによる乱れだ。こういった類の魔獣は多い分、危機回避にも役立つ。行くか?」
「ああ。特定加護がなにやら私をそちらへ向かわせているように思えてならんのでな。この世界を知る為にも向かうつもりだ」
「俺様も手を貸そうか? せっかく知り合った数少ない友を失いたくはないのでな」
「ほう。既に私がそこまでの位置に値するとは光栄だ。本心は定かではないが、私と同類と思わせて貰うよ」
互いに腹を割らず、別れの挨拶を終えた。
「宿で話した通り、二十日後にベイストスの町で落ち合おう。前後八日は誤差があっても十分だ、安心して日を違えても構わんぞ」
ベイストスの町はガニシェット王国の王城より大湖側に位置する南南西の山岳に囲まれた町である。
地形としてはガニシェット王国とレイデル王国間の砂漠の国境から大湖沿いを馬を走らせて半日で着く程、平地が続き距離も短い。
「気遣い痛み入るよ。お互い、生きて再会したいものだ」
別れを告げ、ミゼルが町へ向かうのをルバートは呼び止めた。
「昨晩も話したが、魔力の業が強い魔獣には気をつけろ。いつぞやの化け物が徘徊しているかもしれんからな」
ボリーグレスで逃した化け物が向かった方向は砂漠の国境の方向である。
忠告を聞いて返事したミゼルは手を上げて町へ向かった。
(お前ら、無意味な腹の探り合いが趣味か?)
ミゼルと別れ、山を登る途中、ビンセントが声をかけた。
「おいおい、英雄ともあろう者が盗み聞きか?」
(目覚めたら奇抜な別れの最中だ。面倒な争いはするなよ)
「せんよ。あの男は一筋縄ではいかんというのは分かった。おそらく昨晩の話にも秘め事を含んでいるだろうな」
(なぜ分かる? 魔力でも見たのか)
「その必要はない。あの男は俺様に似ているから理解出来るのさ。全てを語らず俯瞰して状況を見る。いつも何かを考えている人種だ」
(自分で自分の事を言ってるようだな。お前、いつも何かを考えてて疲れないか?)
「考察出来る事は楽しいぞ。お前さんもコレを機に魔力を感じ、思考を巡らせてみてはどうだ? 面倒な体質なのだから必要だろ」
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