烙印騎士と四十四番目の神・Ⅰ 転生者と英雄編 

赤星 治

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四章 伝説の戦士との出会い

Ⅵ 気の合うガーディアン

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 男はミゼル=ウォードと名乗り、傍らに浮遊する少年は守護神ラドーリオと紹介する。ミゼルはラオと呼んでいる。
 ビンセント達はミゼルがガーディアンであり、別名で”転生者”と呼ばれる存在だと知った。さらにガーディアンは魔力の有無がこの世界で生きていく上でかなり重要な力であり、”神力”と呼ばれる力を回収するとも聞く。

「いやはや、そちらはガーディアンである私の事を不思議なものでも見るように窺えるが、こちらとしては幽霊の様に姿を消したり現わしたりするルバート殿のような存在が不思議でしかないのだがね」
 森で話している内にルバートの魔力も落ち着きを取り戻して姿を現わしている。
「こいつは訳ありでこうなってる。本当ならこんな人間はいない」
 ビンセントは続けて魔女の存在について教え、詳細をルバートが話した。
 二人の話を聞いてミゼルは疑問が浮かんだ。
「しかし妙な話だ。そちらが神力を知らないというのは筋の通る所だが、ラオを認識出来る魔力の業なる力を備えている。しかし神力と魔力の業二つの力は全く別の性質であるというのは」
「俺様も驚いている所だ。しかし見えるのだから二つの力は何かしらの共通点があるのだろ。……それはともかく、この身体となって珍しい存在や現象と遭遇する機会に恵まれすぎていてな、運は良いが逆に不気味ですらある」
「ほう、それは奇遇。こちらもこのような身体となって運が良いのやら悪いのやら分からなくてね。僅かながらルバート殿の心情は理解しているつもりだ。しかしどうしたものか、……私個人としては色々迷いかねてしまっている。というのも、前世では人外の不可思議な現象などを調べる役職に身を置き、その体質からお二方と共に色々知りたい気持ちもあるのだが……」

 歯切れが悪く、事情があるのは明白。
 ビンセントは説明を求めた。

「『前世の話を持ち出されても』と言われてしまえばこちらも返す言葉がすぐには出ないのが恥ずかしいのだが。人を信用して痛い目をみた故、気を悪くする言い方になってしまうが、其方達と行動を共にしようかどうか迷いかねている」
「至極当然の意見だ。この世界では術師はあらゆる現象に興味を抱く種族と捉えていいからな。”ガーディアン”なる存在など研究にはもってこいだ。今後とも警戒するに越したことはないと忠告はしよう。しかし貴殿の魔力を拝見したところ、そのように脆弱なものではこの森を抜け、近くの村までは容易に向かえるだろう。しかしこのガニシェット王国は所変われば魔獣の力量差が激しくてな、野獣とて魔獣に匹敵する凶暴な奴も徘徊している始末だ」
「これはこれは、現状では其方達を頼るほかないということか」
 雰囲気から悩んでいる様子は窺えない。
「随分と余裕なんですね。俺らが怪しい連中だとか考えないんですか?」
「私とて何も考えなしという訳でもないさ。ただ、先ほど申したとおり、生前は研究や調査に励んだ身の上。習性として色々知りたいという気持ちが逸っている始末だ」
「じゃあ、俺らがかなり危険な人物だったら?」
 不意にルバートは愉快な気持ちが勝り微笑した。
「無駄だビンセント。『探求』がその者の本質とあらば、どのような窮地であれ、危険区域であれ、足を踏み入れたくなるもの。それは俺様がよく知っている」
 あまりにも説得力があった。
「ガーディアン殿は面白い。くだらん国に使われるなど俺様が許したくない程だ」
 ミゼルは余裕の笑みを向け、一方でレイデル王国が荒らされると誤解したビンセントは焦りの色を見せた。
「案ずるなお前さん。俺様は何も戦争をしてでもガーディアン殿を我が物にしようというのではない。性根が同類なら、手を貸してやりたいと思っているのだよ」
「だったら素直にそう言え馬鹿者」

 二人のやりとりがミゼルにとっては愉快でしかなかった。

「はははは。奇天烈な生まれ変わりを果たして心細い所を、このような楽しい者達に出会えたというのは、どうやらこちらの世界では幸福者なのかもしれんな」
「俺様と出会えたのは紛れもない幸福だ。では早速だが道すがら魔力の特別な使い方を教えてやろう」
「教えるのはいいが、先に町へ行かなければならんだろ。ミゼル殿は魔力の有無が命取りとなる程に重要っていうなら尚更」
「ふん。俺様をその辺の術師同様の教え方をすると思われては困る。見たところ、魔力の質や総量を見るだけでも基礎はなかなかのものだ。優先的に覚えた術や魔力の扱いだけでもそれなりに修羅場はしのげるだろうよ」
「これは心強い。では旅の道すがら、魔力のご教授を賜らせて貰おう」
 どうみても怪しい雰囲気と笑顔を滲ませる二人を見て、ビンセントは妙な胸騒ぎを覚えた。それが杞憂であって欲しいと願いつつ。


 森を抜ける頃に、ミゼルは魔力を用いた『脚力向上』を我が物のように扱えていた。
「凄いなぁ。本当に魔力の使い方は初めてとは思えない」
 ビンセントは感服した。
「私の世界では気功や、それに似た力が存在していてね、扱いは似たようなものだ。こちらでは気功は無いのかな?」
「気功術はあるが魔力とは扱いが異なるんだ。俺は魔力が扱えないけどな」
「ほう。しかしビンセント殿には魔力の流れが出来ているのでは?」
 既に魔力を見る事も覚えていた。
「ビンセントは少々特殊でな。何が原因かは分からんが不思議な体質になってしまったのだ」
「お前が俺に憑いたからだろうが」
「その分、お前さんには益のある状況にはなってるだろ?」
 ぐうの音も出ない。
 事実、ルバートがいて助かることの方が多い。
「それに、俺様が憑く前にお前さんの不思議な体質は出来上がっていただろ? 憑いて以降、特別な環境には身を置かなかったしな」
 何も言い返せず、ビンセント手を叩いた。
「はいはい分かりましたよ。俺はルバートに助けられてばかりのしがない英雄だ」
 英雄という称号を得ているのに”しがない”の言葉は合わないだろうと抱きつつ、ルバートもミゼルもその点に言及しなかった。

「ははは。まるで互いを知り合う幼馴染みのようだ」
「それは違うから!」ビンセントがすかさず指摘した。
「……失礼。さておき、異質な力というのは研究者である以上そそられるものはある。早々に魔力の理解を進めたいところだ」
「残念ながら魔力は奥が深い。先ほど申した気功も魔力と合わせればより使い勝手の良い技や術が可能となるからな。当面は魔力の理解に尽力する事を薦めよう。上辺のみの知識では後々痛い目に遭うからな」
「承知しているよ。耳の痛い話だが前世でも似たような理解の甘さが原因で死んでしまったからね。この度は同じ轍を踏まないように心がけるよ」
「へぇ。なんでも出来そうなミゼル殿でもそういった失態があるんだな」
「あまり追求しないでくれよ。穴があったら入りたい程の情けない思い出でね。”自分は大丈夫”という驕りが招いた死だからね」
「うむ。詳細は知らないが俺様も似た経歴がある。互いに傷を広げるのは無しとしよう」

 魔女となる経緯を知るビンセントは、目を閉じ深く頷いて納得した。
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