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四章 伝説の戦士との出会い
Ⅴ 奇異なる男
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偶然にもベリトから目的地の森の途中まで向かう荷車があり、馭者の男性に「乗るか?」と訊ねられたビンセント達は言葉に甘えて乗せてもらうことになった。
そのため、夕方に着く筈だった森へは昼過ぎに到着出来た。
「この森か?」
森と呼ぶには木に隙間があり、林と呼ぶには木が多い。雑草の茂りもあまりなく、そのまま歩いても迷わないと思われる。
「運が良いぞルバート、雑草だらけならどうしようかと思ってた」
ルバートは釈然としない表情で周囲を眺めている。
「どうした?」
「いや、巫女の情報通りなら魔力の歪みか変動か。何かしらの変化があると思われたのだが……」
あまりにも静かで平穏すぎる。それがあまりにも不気味であった。
「こういった何も無い感じってのもガーディアンならではの特性なんじゃないのか? 日暮れまでに野営地を構えたいから早く行くぞ」
確かにその通りだと思い素直に従った。
小一時間ほど進むと、ルバートは何かに気付いて立ち止まった。
「ん、どうした?」
人差し指を立て自分の口元に当てるとビンセントは黙った。
(念話で話す。まだ姿は見えにくいが、かなり奥に誰かいる)
(そりゃ、薪とか拾いに来たんじゃないのか?)
(いや、この魔力の質……業か? それも違う。……なんだ? あれは俺様も分からん力だ。とにかく気付かれないように静かに近づくぞ。向こうが俺様達に気付いたと分かったら合図するから止まれ)
ビンセントは頷くも、あることに気付いた。
(ルバート、俺の中に入った方が安全じゃないのか?)
(お前さんの妙な力に俺の感知力が妨害されるから、この方が分かりやすい。行くぞ)
二人はできるだけ足音を立てずに進む。
小枝や枯れ葉などの些細な音は、ルバートが足下だけを包んだ魔力の膜によって消音された。
緊張して進む中、突如ルバートが手を上げたのですぐさま木陰に隠れ、手が下ろされるまで待つ。
しばらくして進むと、ようやく人影らしきものが見えた。
何者か分からない中、静かに、慎重に。ビンセントは冷や汗を掻きながら、呼吸をできるだけ静かにゆっくりとして進む。
ようやく衣服が緑色のローブ姿だと分かるまで近づけた。頭にはフードを被って髪色や髪型が分からない。
また少し進むと、その人物が地面に何かをしている様子を伺った。
(あのローブは?)
ビンセントが念話で呟くと、ローブ姿の人物が驚いた様子で振り返った。
「いいかげん鬱陶しい、誰だ!」
音は立てていない。気配も絶っている。魔力も絶っているから気付かれる筈は無い。
相手の出任せだと思い、二人は木陰に隠れたまま待った。
「出てこい! そこの二人」
人数まで当てられ焦るも、二人はまだ動かない。
ただ、ローブ姿の人物が男だと分かる。
「……変わった魔力……ああ、魔女だった奴か」
そこまで見抜かれると、驚きつつようやく二人は姿を現した。
男は頭を掻きながら、僅かばかり悔しそうな様子を示す。
「嘘だろマジかよ! 何でこの局面でこいつが登場すんだよ! ありえねぇだろ!!」
話し方が独特で、ビンセント達は疑って警戒する。
”こいつ”呼びがどちらを指しているかよく分からない。恐らくはルバートだとビンセントは思った。
「お前、ガーディアンなのか?」
「んあ? ……ああ、こっちじゃガーディアンにしたんだったな。テンセイシャのほうがしっくりくるんだけどなぁ。流行りだし」
「何を言ってる?」
「え? ああ、説明めんどいからパスパス」鬱陶しく手で払って返された。「つーかイレギュラーのサブイベとか、マジかんべんだから。バトルとか、今は乗らねぇし」
言葉がまるで分からない。
男は両手を三人の間の地面へ翳す。すると、広範囲で地面が白く輝いた。
「何!? この術は!」
ルバートは警戒から魔力を自身とビンセントの身体に纏わせた。
「お、博識だなぁ。まぁ、あんたらと関わんの、もうちょい先だし。今は邪魔なんでぇ」
男が手に力を込めると光が強くなり、ビンセントとルバートは視界を手で覆った。知らぬ間に二人は光の球体に包まれた。
「どっか飛べよ」
あざ笑いながら両手を左右へ動かすと、光の球体が上空へ昇って弾けて消えた。
「さ、”仕掛け”の続き続きっと」
男は作業に戻る。
謎の男の術により飛ばされたビンセントが目を覚ますと、そこは岩場の多い森の中であった。
(あれ? ……ここは……)
見覚えのある場所。
記憶をたぐろうとしたが、ルバートの事が気になった。
「ルバート! どこだルバート!」
しかし何処にもいない。
もしやあの術で消されたのでは? と、疑うと、念話が聞こえた。
(今、俺様が消されたと思っただろ)
(――ルバート!)
安堵の声で返す。
(え、まだ念話しなきゃならんのか?)
(俺様だけな。あの術で魔力が不安定となった。もうしばらくはお前さんの中だが、お前さんは声に出してかまわんぞ)
「じゃあそうさせてもらう。それより、あの術はなんだったんだ?」
(空間術の高位に値する術だ。簡単に言えば『瞬間長距離移動』だが、空間や時間軸やらをねじ曲げる荒技だ。使える奴は限られている)
「お前でも無理なのか?」
(個人であそこまで瞬時には無理だ。時間と魔力がかかりすぎるからな。本来は陣術や印術、その地の神性な気や魔力が関係しなければならない。しかしどういった災難だ? ここ最近、奇異な存在によく出くわすではないか)
「俺に言うなよ。お前の存在も俺の中ではかなりの奇異だからな。それよりも……」
ビンセントは男が来ていたローブが気になった。それが何を指すものか、喉元まで出ているが思い出せないのがもどかしくあった。
(どうした?)
「ああ、あのローブ、どっかで見たような……」
思い出そうとするも出ないなら、先に現在地の情報を知る為に周囲を見回した。
(……知ってる場所か?)
「ああ。……似てるだけかもしれないからなんとも」
(いや、その情報で正確な位置が分かるかもしれん。森に流れる魔力の質を探ることができるからな)
ビンセントが告げた場所は、ガニシェット王国東端の岩石地帯にある森。
ルバートはビンセントの身体に憑いたまま地面に手を当て、魔力を感じ取った。
「……分かったか?」
手が離れ、探知が終了したと感じて訊いた。
(ああ。場所は確かに合ってる)
それは砂漠の国境を越え、遙か東へ飛ばされたと証明された。
「あまり遠くへ飛ばされなくて助かった。全く未知の場所なら大変な目に遭うところだった」
(だからといって、易々と元に戻れんぞ、この場所だと山脈越えは高すぎて無理だからな。北から山沿いに移動しなければならん。なかなかに長い陸路だぞ)
「けどここいらの獣は凶暴ではないから」
(――?! ビンセント後ろだ!)
真っ先に背後に気配を感じ取ったルバートの言葉に反応し、ビンセントは背後を振り返って警戒した。
「おっと、そう警戒しないでくれるかな。驚かすつもりはないよ」
安物の革製の鎧を纏い、長剣を腰に携えた男性が現われた。しかし、ビンセントとルバートはその男性以外の、今まで見たことの無い浮遊する存在に気を取られた。
「……おいルバート、ありゃなんだ?」
(俺様も初めて見る)
男性の斜め上を、やや黄色みがかった白色の衣装を纏った少年が浮遊している。肌の色も服の色とやや似ており、見るからに人間では無い。
ビンセントの驚く様子と視線から、男性は傍で浮遊する存在が原因だと察した。
「ほう。先ほどの説明では”常人には見えない”と言ってなかったか? ラオ」
「ボクが知りたいよ」
二人は、謎の浮遊体と平然に言葉を交わす男性の姿を見て、さらに警戒心が高まった。
そのため、夕方に着く筈だった森へは昼過ぎに到着出来た。
「この森か?」
森と呼ぶには木に隙間があり、林と呼ぶには木が多い。雑草の茂りもあまりなく、そのまま歩いても迷わないと思われる。
「運が良いぞルバート、雑草だらけならどうしようかと思ってた」
ルバートは釈然としない表情で周囲を眺めている。
「どうした?」
「いや、巫女の情報通りなら魔力の歪みか変動か。何かしらの変化があると思われたのだが……」
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「こういった何も無い感じってのもガーディアンならではの特性なんじゃないのか? 日暮れまでに野営地を構えたいから早く行くぞ」
確かにその通りだと思い素直に従った。
小一時間ほど進むと、ルバートは何かに気付いて立ち止まった。
「ん、どうした?」
人差し指を立て自分の口元に当てるとビンセントは黙った。
(念話で話す。まだ姿は見えにくいが、かなり奥に誰かいる)
(そりゃ、薪とか拾いに来たんじゃないのか?)
(いや、この魔力の質……業か? それも違う。……なんだ? あれは俺様も分からん力だ。とにかく気付かれないように静かに近づくぞ。向こうが俺様達に気付いたと分かったら合図するから止まれ)
ビンセントは頷くも、あることに気付いた。
(ルバート、俺の中に入った方が安全じゃないのか?)
(お前さんの妙な力に俺の感知力が妨害されるから、この方が分かりやすい。行くぞ)
二人はできるだけ足音を立てずに進む。
小枝や枯れ葉などの些細な音は、ルバートが足下だけを包んだ魔力の膜によって消音された。
緊張して進む中、突如ルバートが手を上げたのですぐさま木陰に隠れ、手が下ろされるまで待つ。
しばらくして進むと、ようやく人影らしきものが見えた。
何者か分からない中、静かに、慎重に。ビンセントは冷や汗を掻きながら、呼吸をできるだけ静かにゆっくりとして進む。
ようやく衣服が緑色のローブ姿だと分かるまで近づけた。頭にはフードを被って髪色や髪型が分からない。
また少し進むと、その人物が地面に何かをしている様子を伺った。
(あのローブは?)
ビンセントが念話で呟くと、ローブ姿の人物が驚いた様子で振り返った。
「いいかげん鬱陶しい、誰だ!」
音は立てていない。気配も絶っている。魔力も絶っているから気付かれる筈は無い。
相手の出任せだと思い、二人は木陰に隠れたまま待った。
「出てこい! そこの二人」
人数まで当てられ焦るも、二人はまだ動かない。
ただ、ローブ姿の人物が男だと分かる。
「……変わった魔力……ああ、魔女だった奴か」
そこまで見抜かれると、驚きつつようやく二人は姿を現した。
男は頭を掻きながら、僅かばかり悔しそうな様子を示す。
「嘘だろマジかよ! 何でこの局面でこいつが登場すんだよ! ありえねぇだろ!!」
話し方が独特で、ビンセント達は疑って警戒する。
”こいつ”呼びがどちらを指しているかよく分からない。恐らくはルバートだとビンセントは思った。
「お前、ガーディアンなのか?」
「んあ? ……ああ、こっちじゃガーディアンにしたんだったな。テンセイシャのほうがしっくりくるんだけどなぁ。流行りだし」
「何を言ってる?」
「え? ああ、説明めんどいからパスパス」鬱陶しく手で払って返された。「つーかイレギュラーのサブイベとか、マジかんべんだから。バトルとか、今は乗らねぇし」
言葉がまるで分からない。
男は両手を三人の間の地面へ翳す。すると、広範囲で地面が白く輝いた。
「何!? この術は!」
ルバートは警戒から魔力を自身とビンセントの身体に纏わせた。
「お、博識だなぁ。まぁ、あんたらと関わんの、もうちょい先だし。今は邪魔なんでぇ」
男が手に力を込めると光が強くなり、ビンセントとルバートは視界を手で覆った。知らぬ間に二人は光の球体に包まれた。
「どっか飛べよ」
あざ笑いながら両手を左右へ動かすと、光の球体が上空へ昇って弾けて消えた。
「さ、”仕掛け”の続き続きっと」
男は作業に戻る。
謎の男の術により飛ばされたビンセントが目を覚ますと、そこは岩場の多い森の中であった。
(あれ? ……ここは……)
見覚えのある場所。
記憶をたぐろうとしたが、ルバートの事が気になった。
「ルバート! どこだルバート!」
しかし何処にもいない。
もしやあの術で消されたのでは? と、疑うと、念話が聞こえた。
(今、俺様が消されたと思っただろ)
(――ルバート!)
安堵の声で返す。
(え、まだ念話しなきゃならんのか?)
(俺様だけな。あの術で魔力が不安定となった。もうしばらくはお前さんの中だが、お前さんは声に出してかまわんぞ)
「じゃあそうさせてもらう。それより、あの術はなんだったんだ?」
(空間術の高位に値する術だ。簡単に言えば『瞬間長距離移動』だが、空間や時間軸やらをねじ曲げる荒技だ。使える奴は限られている)
「お前でも無理なのか?」
(個人であそこまで瞬時には無理だ。時間と魔力がかかりすぎるからな。本来は陣術や印術、その地の神性な気や魔力が関係しなければならない。しかしどういった災難だ? ここ最近、奇異な存在によく出くわすではないか)
「俺に言うなよ。お前の存在も俺の中ではかなりの奇異だからな。それよりも……」
ビンセントは男が来ていたローブが気になった。それが何を指すものか、喉元まで出ているが思い出せないのがもどかしくあった。
(どうした?)
「ああ、あのローブ、どっかで見たような……」
思い出そうとするも出ないなら、先に現在地の情報を知る為に周囲を見回した。
(……知ってる場所か?)
「ああ。……似てるだけかもしれないからなんとも」
(いや、その情報で正確な位置が分かるかもしれん。森に流れる魔力の質を探ることができるからな)
ビンセントが告げた場所は、ガニシェット王国東端の岩石地帯にある森。
ルバートはビンセントの身体に憑いたまま地面に手を当て、魔力を感じ取った。
「……分かったか?」
手が離れ、探知が終了したと感じて訊いた。
(ああ。場所は確かに合ってる)
それは砂漠の国境を越え、遙か東へ飛ばされたと証明された。
「あまり遠くへ飛ばされなくて助かった。全く未知の場所なら大変な目に遭うところだった」
(だからといって、易々と元に戻れんぞ、この場所だと山脈越えは高すぎて無理だからな。北から山沿いに移動しなければならん。なかなかに長い陸路だぞ)
「けどここいらの獣は凶暴ではないから」
(――?! ビンセント後ろだ!)
真っ先に背後に気配を感じ取ったルバートの言葉に反応し、ビンセントは背後を振り返って警戒した。
「おっと、そう警戒しないでくれるかな。驚かすつもりはないよ」
安物の革製の鎧を纏い、長剣を腰に携えた男性が現われた。しかし、ビンセントとルバートはその男性以外の、今まで見たことの無い浮遊する存在に気を取られた。
「……おいルバート、ありゃなんだ?」
(俺様も初めて見る)
男性の斜め上を、やや黄色みがかった白色の衣装を纏った少年が浮遊している。肌の色も服の色とやや似ており、見るからに人間では無い。
ビンセントの驚く様子と視線から、男性は傍で浮遊する存在が原因だと察した。
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