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終幕
一 アオ復活
しおりを挟む獄鬼の一件を終えて二十日後。
六蔵は次の仕事依頼を請けた町へ向かっていた。
(あー、あー、ああー)濁声が六蔵の頭の中で響いた。(――よし、ようやく完治した! ……あー、長かったぁ)
八卦葬送を行って以降、アオは強制的に転祈した。しかし、アオの鳳力が分散しての転祈により、六蔵の中にアオはいないが何かがいる不快な感覚にとらわれ続けていた。
「静かになったと思いきや、とうとう戻ったか」
八卦葬送から五日後にアオの鳳力が徐々に増えていくのを感じ、本体が身体に戻ったのはさらに十日後。
それから五日間、アオは自身の身体機能が著しく低下していたが、徐々に徐々に回復していき、ようやく完治した。
(ああ? いいだろ、ジジィ一人だと寂しいだろうからワシがいるんだよ。ってか、あんな博打技使う依頼になんで参加してんだよ)
「八卦葬送は二度ほど見たことがあってな。ありゃ、莫大な鳳力が動いて消える大技だった。祓い手が死ぬ理由は判明したが、死なない方法はないかとずっと考えていてな」
(で、老い先短い中、巡ってきた絶好の機会って事で自分の温めて来た可能性を確かめたくなった……ってか)
「人生の先が見えてくるとな、大博打というのを試してみたくなるのだよ」
八卦葬送の締めくくりは、膨大に発生した鳳力が急速に分散する際、如何にして術を使用して発生した光柱に術者が手を翳し、そこから鳳力を抜き取られ命を落とす。
六蔵の編み出した策は、術者の手を鳳力が抜き取られる前に強制的に手を離す。そういう技であった。
(結果的にどうして助かったか分からんが、お前の技は失敗したんだろ?)
「見事にな。自身の経験で自惚れて出来ると強がった結果がこれだ。この歳で考えさせられたよ」
(で、結果的に助かったが、どうして助かったかは分かったのか?)
六蔵は一言、さぁ。と返した。
二人は薄々気づいていた。それは志誠があの白風と鳳力渦巻く霧の中で無いかをしたのだと。
二の祓師・宇芭実独と大きく関係している存在が、宇芭実独が造り上げた葬送術なのだから、全員生存させるきっかけを作った事を。
(で、話し変わっけどこれから行く町って港にある町だろ? 復活祝いだから、うめぇ魚食わせてくれよ)
「ええい、金欠の老人に集るな馬鹿者」
六蔵はまた、アオと二人で過ごす事となったと、僅かながら、心のどこかで喜んでいた。
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