憑く鬼と天邪鬼

赤星 治

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七幕 獄鬼との対峙

十 転祈の後

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 白風山で宇芭実独と別れて以降のこと――

 志誠が目を覚ますと、一人の導師が傍にいた。
 実独同様、交流のある導師。名を【蓬流ほうりゅう】という。

「無事か志誠」
 白い顎鬚が特徴的なその顔を見て一瞬戸惑った。
「ああ。十五年経ってたんだな」
「何を言う。お前が消えて三十年経つぞ!」

 驚愕した。
 何が何だか分からず、質問をして整理しようとした。

「実独がいなくなったのはいつだ?」
「導師たちの間で白風山暴風災害が起きた頃だから……十五年前になるかなぁ。それよりお前、実独の所在を知らんのか? あの事件からいなくなってしまった」
 思い出された彼の姿と、告げた言葉を思い出した。
「蓬流! 鬼がそこら中に現れなかったか!」
 それを聞いて、蓬流も驚いた。
「やはりお前、実独と何かあったのだな」
「いいから教えろ! あの事件から亜界の奴らに何があった」
「荒れに荒れたよ。白風もそうだが、異念体や幻体の化物がそこかしこに現れる。十数年に一度現れる筈の六赫希鬼が約一年おきに現れるわで、導師も祓い手も動きっぱなしだ。それに、幻体や異念体を見えん上に、見える奴らを嫌う偏見意識が強い町や村の連中が妨害して祓えんなども起こる事態だ。かといって祓ったところで異念体同士結びついてキリが無い」
「鬼は? 鬼は出たのか?」
「あ~、儂の知る限りでは六嚇希鬼ぐらいだが……」

 志誠は眉間に皺を寄せ、強く目を閉じて考え込んだ。
 その様子に、白風山事件で何かあったのだと蓬流は察した。

「やはり実独が起こしたのだな」
「気づいてたのか?」
「臆測程度だ。命令命令で、嫌な仕事を幾度も任されてた。転祈でお前が消え、支えのいなくなったあいつは、最後に見た時は無理な笑顔で固定されたように見苦しいものだった。今日もこの場所で黙って涙を流す奴の夢を見てな。来てみてお前がいた」

 そうか。と呟いて実独の苦しみを痛感した。

「……蓬流。奴らを祓う術がある」
「なに!? お主それをどこで」
「実独の置き土産だ。まだ確実な技じゃないが、この技術を追求すれば必ず異常発生の化物たちを浄化できる」
「浄化?」
 この時、悪性のある異念体等は祓う事が通例であり、浄化等は考えさえされなかった。
「なんにせよそのような事をしなくても、祓い手が普通に祓い、巨大な鬼には封印術を用いればいい」
「あれでは人が死ぬだけだ。現存する封印術のすべては術者への負担が大きい。木桶いっぱいに土を詰め、さらに土を無理やり入れて桶を壊すようなもんだ」
「しかし、封印術が無ければ巨大な鬼は祓えんではないか」
「手はある。実独の方法を使えば」

 とはいえ、その方法も未完成であり、他の封印術と同様術者を死に至らしめる危険性の高い術である。
「時間をくれ」
 志誠は蓬流に求め、封印術を完成させる決心をした。
(また私を救ってくれ)忘れることのできない記憶が残った。

 実独とは関係ないかもしれないが、出来る限り浄化しなければ彼が報われない。
 その一心で志誠は蓬流と封印術の完成に励んだ。

 長い年月の果て、浄化術は確立したが、祓い手や導師の中でその術を使用する者はごく僅かであった。また、封印術の中で術者たちが死なない方法を志誠は幾度か行い、事あるごとに木彫りの仏像を陣に置いた。
 その陣を行う際、仏像を置く事で実独の思いが夢に現れる。それが、実独の感情の一部が浄化されていると、確証はないが志誠はそう思っている。

 蓬流の死後、浄化を起用する者はさらに減った。
 それでも、志誠は現世にいる間は異念体や幻体を浄化し続けた。
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