憑く鬼と天邪鬼

赤星 治

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終幕

三 あの竹藪前で

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 年を越し、四カ月過ぎて辺りに桜咲く季節を迎えた。

 獄鬼を祓って以降、鳳力の調子を万全にするために、永最は蓬清の寺で過ごすこととなった。
 役目を終えた宗兵衛も幸之助を連れて張然の国へと帰って行った。
 あの一件の翌年の春を迎えたこの時期、永最は改めて三賀嶺の導師・山本幾蔵の元へ向かう事となった。前回のように寄り道をすることの無いよう念を押され、永最は寺を後にした。

 一年前同様、菊乃のいる宿で長屋宿を借り一晩越した。そこで幸之助と志誠に初めて出会った事を思い出し、一人しかいない部屋で懐かしみながらも笑みが自然と浮かんだ。
 明朝、宿を発ち、初めて化物と対峙してススキノと出会った竹藪の前を通ると、自然と立ち止まり、竹の間に広がる奥を眺めた。

 以前の様な不思議な気配はしないものの、なぜか眺めてしまっていた。

「もう、そこには何もねぇぞ」
 突然声が聞こえ向くと、そこには幻体姿の志誠が腕を組んで立っていた。
 目を見開いて驚く永最を見て、志誠はため息を吐いた。
「なに死人でも見るような目で見やがる」
「だってお前、獄鬼を祓って以降、姿を消していたではないか。てっきり一緒に祓われたのかと……」
「あんな無茶な戦いしたんだ。幸の中に入ってあいつの鳳力を調整してねぇと、あいつが気づいたらあの世だ。お前も経験しただろ、獄鬼の件を終えてからの事を」

 永最も獄鬼の一部を長年抱えていた事で自身の鳳力の調子が崩れ、その反動が八卦葬送を終えての長期睡眠であった。
 永最の場合、獄鬼の一部であったため反動が五日ほどの睡眠で済んだ。尚、看病に寺の者と宗兵衛が付きっ切りで看ていた。

 冷静を取り戻させるように風が二人を通過した。

「幸之助殿や宗兵衛殿は元気か?」
「ああ、何とかな。縁があれば会えるんじゃねぇか?」
 素っ気ない対応は変わっていない。
「……三賀嶺に行くんだろ」
「ああ。今度は本格的に鳳力やお前達の事を学ぼうと思うんだ」
「やれやれ、一年前は妖怪退治だなんだと言ってた奴が」
「面倒見のいいひねくれ者がその意見を変えさせたんだ」

 鼻を鳴らす音がした。

「お前はこれからどうするのだ?」
「導師や寺や神社を転々と。現世にいる俺も色々あって忙しいんだよ」
「私にその事情を話してくれんのか?」

 沈黙が訪れた。また通過していく一陣の風が抜けるまでの間。

「……今のお前じゃ荷が重い」
 妙に嬉しくなった。自分の事が分かられている事がそう思わせたと、永最は思った。
「では、いずれはお前の役に立ってみせよう。そうすれば教えてくれるのだな」
 昔を思い出すと、この喜び寄ってくる男は、自分を祓おうと躍起になっていた。
 思い返すたびに可笑しく思えた。
「……だったらさっさと導師にでもなれ。人間は年を喰うのがはえぇからな」

 永最を横切って志誠は目的地へと向かっていった。

「必ずだぞ! 天邪鬼!」
 手を振り、振り返らずに手を振る幻体を見送り、永最も走って発った。

 互いの目的も思いも違うかった二人が、一年後の今日、またも違う目的の為に違う道を歩んだ。

 しかし双方、互いを思う気持ちは明らかに一年前とは違ったものであった。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.08.29 赤星 治

御覧頂きありがとうございます(*´∀`*)

これから色んなキャラクターがどんどん大変な事態に陥ります。

続きをお待ち下さいませm(_ _)m

解除
2021.08.24 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.08.29 赤星 治

読んで頂きありがとうございます(^o^ゞ
色んな脇役キャラクターの視点、主人公視点と、物語を楽しんで頂けましたら幸いです.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.

宜しくお願いします。

解除

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