Queen JAM

尊嶺

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クイーンジャム

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ドーナツ型の錠剤がジンジャーエールの入ったグラスの中を緩やかに軽やかに沈んでいく。
「こわくないよ」
グラスを見つめる僕に由希が微笑んで言う。
僕が抱く恐怖を慰めるように。
「どうなるの」声が震える。
「え?」
「いや、だからさ、これ飲んだらどうなるの?」
口調に苛立ちが含まれる。静かな部屋の中で僕は緊張している。彼女の部屋に来るのはこれが二度目だ。僕は緊張すると怒りを感じる癖があり、同時にそれは安心を感じる方法でもあった。一度目はSEXのためにこの部屋へきた。
「世界がちっぽけなものって感じかな」また由希が微笑む。その目や口元に性を宿らせ僕を誘惑する。
「ちっぽけ…?」
僕は飲む時間を稼ぐようにゆっくりと話す。
まるで飲むことは決まっているかのように。
「うん!飲んだらね、酔っ払ったみたいになってね!身体がふわふわするの」
「ふわふわ…いいねそれ」僕は歪に笑う。笑えてないのかもしれない。
「だから早く飲みなよ」
由希の鋭い視線が僕を硬直させる。なぜ急かすのかと聞きたくなるができない。
僕はドラックに目を向けるが溶けているのか見つからない。いや、初めから入っていないのかもしれない。
「わかった…」
グラスを手に取ると、それを欲しがるように喉が鳴った。
僕は強く握りしめたグラスを唇にあて、一気に飲み干した。
由希を好きになってしまったから。
「どう?」また彼女が微笑む。
微笑む彼女が好きだと改めて知る。
「わかんない。どれくらいで効果でてくるの?」
僕の質問に首を傾けてわからないという表情を浮かべた彼女もドラックを口に入れた。
驚く尊嶺を見つめながら由希がドラックを飲み込む。
「おいで」
彼女はいつのまにか服を着替えていた。ゆったりとして四肢が露わになるっている。グレーのシャツとパンツ。細くて白い身体。長く黒い髪の毛が光を反射させている。
僕は性行為をするために来たことを恥ずかしく思っている。そんなことがしたくて来たんじゃない、と。
脳が熱い。
全身の感覚が鋭くなっていくのがわかる。

クイーンジャム。
数年前に流行ったドーナツ型のドラック。飲むと、わからない。そんなもの関係ないと思っていたから。ただ死者が出ていたような気もする。わからない。思考が、彼女は何故?
わからない。何故こんなものを持っている?
知らない、どうでもいい。
早くやらせてくれ。

僕は好きな人には逆らえない。飲めと言われれば飲むし、誰かを殺せと言われればそうするだろう。どうでもいい。

僕は彼女を押し倒し跨った。
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