15 / 57
第15話 アメリス、見つかる
しおりを挟む
「アメリス様、乗り心地は大丈夫ですか」
「ええ、大丈夫よ」
騎手として馬車を操縦するヨーデルの言葉に対し、私はそう返す。今はマスタール州の検問所を出て、マハス公国とナゲル連邦の境目あたりを走っているらしい。ついさっき私が目隠しをして下された場所を通り過ぎたので予想は当たっているだろう。
馬車の速度は感じたことがないくらい速かった。道が悪いせいで揺れもひどく、油断していると座っている椅子から落ちそうになる。
「もうすぐナゲル連邦を抜けてマハス公国に入ります。そうしたらすぐに俺の村まで着くはずですから準備しておいてください」
馬車の荷台からちらりと見えるヨーデルは前を向いているため顔こそ見えないが、その気迫は背中から伝わってくる。緊張が私にも伝播して、気づいたら腕には鳥肌が立っていた。
私の仕事はここからだ、しっかりと村のみんなを説得して、すぐにマスタール州に引き返さなければならない。ふうと軽く息を吐き出し、心を落ち着ける。
その時であった。急に馬車が停車して、その反動で今まで一番大きな振動が荷台に響く。もう着いたのかしら、それにしては早いような気がするけど。
「ヨーデル、どうしたの?」
私は荷台からヨーデルに話しかける。彼は言葉で返事をすることはなく、こちらを向くと指を口に添えた。静かにしていろということなのか。すると彼は御者台から降りると、私にもジェスチャーで降りるよう指示してきた。彼にしたがって馬車を降りると、私に近づいてきて私だけに聞こえるような声で囁いた。
「アメリス様、聞いてください。先ほどから森林の様子が少しおかしい気がするのです。なんだか人気があるというか、どうにも違和感があるのです。馬車はここに置いて、あとは歩いていきましょう。もし盗賊やらがいるのだとしたら馬車は目立ちすぎます」
ヨーデルは真剣な表情で私に言った。私は道を挟んでいる森を見ても何も感じなかったが、彼が言うのならそうなのだろう。私は彼を信じて言う通り歩いて村に向かうことにした。
道の真ん中を歩いていては目立ってしまうので、少し森に入ったところを道と平行に歩いて進む。二人とも静かに歩いているつもりだが、足元は暗く稀に枝や葉を踏んでしまい、その音が響くたびに体がびくりとすくむ。
歩いていると、なんだがふくらはぎがむずむずするような感触が急に現れた。ヨーデルに少し待ってと言って、その部分を触る。するとその正体はすぐにわかった。うねうねとした体を這わせて、私の足を登っている気持ちの悪い物体であった。手触りだけでわかった。これは……ムカデだ。
……。
「きゃああああああああああ!」
こんなの叫ばずにいられる女性などいるのだろか。いや足元にムカデは這ってよじ登ってきているこの状況を何とも思わない女性などいるはずがない。
「どうしましたか、アメリス様!」
足を止めていたヨーデルがすぐに私に近づいてた。私が足を指差すと、素早い動作でしゃがんでから私のスカートを捲り上げて足を確認する。そして足を触り、その気持ちの悪い諸悪の根源を取り除いてくれた。
「なんだ、ムカデだったんですか。急に叫ぶからびっくりしましたよ」
「なんだとは何よ、すごく怖かったんだから!」
ヨーデルは大袈裟だと言っていたが、こんな経験したことがない。思わずその場にへたり込んでしまう。
「ほらアメリス様、先を急ぎますよ」
ヨーデルはしゃがみ込んでしまった私に向かって手を差し伸べてきた。彼の態度は不満であったが急がなければならないのは事実であり、私は彼の手をとる。
ヨーデルはぐいと繋いだ手を引っ張って私を立たせようとした。だがその力が思ったより強く、よろけてしまい今度は彼に体当たりをしてしまった。その反動で彼も転び二人して地面に倒れてしまう。
「もう、何やってるんですか……」
呆れたような声を出して私に言った。寝そべっている彼の胸に私が飛び込んだような姿勢になってしまう。私の耳がちょうど彼の逞しい胸筋に聴診器のように当たっているので、心音がはっきり聞こえる。鼓動はだいぶ早まっているようだ。彼も私と同じように緊張しているらしい。
「ごめんなさい、よろけてしまって。ヒールのまま来ちゃったから躓いちゃったの」
私は彼に返す。早くヨーデルの村に行かなければならないのに、何だか彼とくっついていると安心してしまい、どうにも起き上がる気になれない。それは彼も同じなのか、なかなか動こうとしなかった。
「……どうしてヨーデルはここまで私のことを慕ってくれるの?」
私は思い切って彼に尋ねてみた。私に恩があると言ってもここまでしてくれるのは正直釣り合っていない気がする。どうして彼はここまで私にしてくれるのだろう。
するとヨーデルの鼓動が急に先ほどよりも速くなった。言いづらいことなのだろうか。少ししてから、彼は口を開いて、それは……と言って言葉を切った。暗くて彼の表情ははっきりとわからない。
だが続いて聞こえたのは、彼の言葉ではなく、けたましい声であった。
「誰かそこにいるのか!」
私とヨーデルは驚いて、すぐに体を起こして二人であたりを見回した。すると気付かぬうちにあたりにはポツポツと火の玉が浮かんでいた。こんな場所で幽霊に囲まれるはずなどない。あれはおそらく松明だ。もしかして私がさっき悲鳴をあげたから気取られてしまったのだろうか。
「まずい、誰かいるようです。とりあえずここを離れましょう!」
ヨーデルが小声で囁いた。私もわかったわと短く返事をして彼の手を握って、手を引かれるまま進んだ。見つかってしまったら終わりだという緊張感が走る。
だが思い出してみると、今日の私はとんでもない厄日であった。追放から始まり、その後も踏んだり蹴ったりだ。何だか嫌な予感がする。
そしてどうにもその予感は的中してしまった。私は音もなく歩いていたのにも関わらず、思いっきり枝を踏んでしまった。バキッという気持ちのいい音がなる。声が聞こえたのは私の頬は嫌な汗がつたるのと同時であった。
「こっちから音がしたぞ! 十時の方向だ!」
火の玉から声が上がった。その瞬間火の玉が一斉に私たちの方向に押し寄せていた。それを見たヨーデルは方向を急転換して私の手を握ったまま走り出す。しかし農作業で日々鍛えている彼の動きに普段運動など滅多にしない私がついていけるだろうか。答えは否である。私は再び足をもつらせてしまった。
ああ、なんて使えない私なの! 足手まといにも程がある!
私の失態のせいで、あっという間に火の玉を持つ人間たちに囲まれてしまった。ジリジリと火の玉は近づいてくる。もう逃げ場はない。
「誰だ貴様ら、ナゲル連邦の兵士か! 名乗れ!」
火の玉のを持つ一人が叫んだ。下手に答えるとまずいかもしれないと思い、私は何も話さないことを選択した。相手の素性がわからないことには何も話せない。だがそれは逆効果であったらしく、彼らの一人が剣を抜く音が聞こえた。
どうしよう、このままでは殺されてしまう!
音と共に、そんな考えが唐突によぎった。ここで殺されてしまってはヨーデルは完全なる道ずれだ。どうにか彼だけでも救わなければならない。
そこで私はあることを思いついた。私、アメリスが追放されたことは広まっていないのなら、もちろん目の前にいる彼らも知らない可能性が高い。だったら私は彼らにとってマハス公国ロナデシア領を納めるロナデシア家の次女であるアメリスとして映るはずだ。
だったらそれを利用してこの状況を切り抜けられないか。少なくとも急に私が名乗りを上げれば、一瞬の隙が生まれる。その隙にヨーデルを逃がそう。私の身などどうとでもなれ!
握られていた手を離し、ヨーデルに小さく逃げなさいと呟く。そして彼の反応を見る前に私は松明を持つ人たちの前に出て、堂々と名乗った。
「私を誰だと思っているの? 私はアメリス、この領を治めるロナデシア家のアメリス=ロナデシアよ! どこの賊だか知らないけどこんなことしてタダで済むと思っているのかしら。わかったらさっさと正体を明かしなさい!」
全てハッタリだ。しかしこれで時間は稼げるはずである。どこの誰が囲んでいるのか知らないが、恐れなどしない、ヨーデルのためなら、ここまで尽くしてくれた彼のためなら。
しかしすぐに返事は返ってこなかった。何やらざわめき声だけが聞こえる。やがてその中から一人が出てきて、松明を自分の顔近くに近づけて私の前に立った。
もしかして尋問でもされるのかしら。
だがその人物は想定外の人物であった。
「アメリス様、本物ですか? なぜこんなところにおられるのです!」
声を発した人物は、私のよく知る人物であった。その声と松明で照らされた顔ではっきりと思い出す。忘れるはずなどない、ずっと私の側近の兵士として、一緒にいてくれた頼もしい騎士。姉の策略により引き離されるまで、私のことをずっと守ってくれた彼がどうしてここに……!
「もしかして、アルド?」
目の前で松明を持つ人物は、マハス公国ロナデシア領ロナデシア家専属兵団に属し、長年私の護衛の任務についていたアルドであった。
「ええ、大丈夫よ」
騎手として馬車を操縦するヨーデルの言葉に対し、私はそう返す。今はマスタール州の検問所を出て、マハス公国とナゲル連邦の境目あたりを走っているらしい。ついさっき私が目隠しをして下された場所を通り過ぎたので予想は当たっているだろう。
馬車の速度は感じたことがないくらい速かった。道が悪いせいで揺れもひどく、油断していると座っている椅子から落ちそうになる。
「もうすぐナゲル連邦を抜けてマハス公国に入ります。そうしたらすぐに俺の村まで着くはずですから準備しておいてください」
馬車の荷台からちらりと見えるヨーデルは前を向いているため顔こそ見えないが、その気迫は背中から伝わってくる。緊張が私にも伝播して、気づいたら腕には鳥肌が立っていた。
私の仕事はここからだ、しっかりと村のみんなを説得して、すぐにマスタール州に引き返さなければならない。ふうと軽く息を吐き出し、心を落ち着ける。
その時であった。急に馬車が停車して、その反動で今まで一番大きな振動が荷台に響く。もう着いたのかしら、それにしては早いような気がするけど。
「ヨーデル、どうしたの?」
私は荷台からヨーデルに話しかける。彼は言葉で返事をすることはなく、こちらを向くと指を口に添えた。静かにしていろということなのか。すると彼は御者台から降りると、私にもジェスチャーで降りるよう指示してきた。彼にしたがって馬車を降りると、私に近づいてきて私だけに聞こえるような声で囁いた。
「アメリス様、聞いてください。先ほどから森林の様子が少しおかしい気がするのです。なんだか人気があるというか、どうにも違和感があるのです。馬車はここに置いて、あとは歩いていきましょう。もし盗賊やらがいるのだとしたら馬車は目立ちすぎます」
ヨーデルは真剣な表情で私に言った。私は道を挟んでいる森を見ても何も感じなかったが、彼が言うのならそうなのだろう。私は彼を信じて言う通り歩いて村に向かうことにした。
道の真ん中を歩いていては目立ってしまうので、少し森に入ったところを道と平行に歩いて進む。二人とも静かに歩いているつもりだが、足元は暗く稀に枝や葉を踏んでしまい、その音が響くたびに体がびくりとすくむ。
歩いていると、なんだがふくらはぎがむずむずするような感触が急に現れた。ヨーデルに少し待ってと言って、その部分を触る。するとその正体はすぐにわかった。うねうねとした体を這わせて、私の足を登っている気持ちの悪い物体であった。手触りだけでわかった。これは……ムカデだ。
……。
「きゃああああああああああ!」
こんなの叫ばずにいられる女性などいるのだろか。いや足元にムカデは這ってよじ登ってきているこの状況を何とも思わない女性などいるはずがない。
「どうしましたか、アメリス様!」
足を止めていたヨーデルがすぐに私に近づいてた。私が足を指差すと、素早い動作でしゃがんでから私のスカートを捲り上げて足を確認する。そして足を触り、その気持ちの悪い諸悪の根源を取り除いてくれた。
「なんだ、ムカデだったんですか。急に叫ぶからびっくりしましたよ」
「なんだとは何よ、すごく怖かったんだから!」
ヨーデルは大袈裟だと言っていたが、こんな経験したことがない。思わずその場にへたり込んでしまう。
「ほらアメリス様、先を急ぎますよ」
ヨーデルはしゃがみ込んでしまった私に向かって手を差し伸べてきた。彼の態度は不満であったが急がなければならないのは事実であり、私は彼の手をとる。
ヨーデルはぐいと繋いだ手を引っ張って私を立たせようとした。だがその力が思ったより強く、よろけてしまい今度は彼に体当たりをしてしまった。その反動で彼も転び二人して地面に倒れてしまう。
「もう、何やってるんですか……」
呆れたような声を出して私に言った。寝そべっている彼の胸に私が飛び込んだような姿勢になってしまう。私の耳がちょうど彼の逞しい胸筋に聴診器のように当たっているので、心音がはっきり聞こえる。鼓動はだいぶ早まっているようだ。彼も私と同じように緊張しているらしい。
「ごめんなさい、よろけてしまって。ヒールのまま来ちゃったから躓いちゃったの」
私は彼に返す。早くヨーデルの村に行かなければならないのに、何だか彼とくっついていると安心してしまい、どうにも起き上がる気になれない。それは彼も同じなのか、なかなか動こうとしなかった。
「……どうしてヨーデルはここまで私のことを慕ってくれるの?」
私は思い切って彼に尋ねてみた。私に恩があると言ってもここまでしてくれるのは正直釣り合っていない気がする。どうして彼はここまで私にしてくれるのだろう。
するとヨーデルの鼓動が急に先ほどよりも速くなった。言いづらいことなのだろうか。少ししてから、彼は口を開いて、それは……と言って言葉を切った。暗くて彼の表情ははっきりとわからない。
だが続いて聞こえたのは、彼の言葉ではなく、けたましい声であった。
「誰かそこにいるのか!」
私とヨーデルは驚いて、すぐに体を起こして二人であたりを見回した。すると気付かぬうちにあたりにはポツポツと火の玉が浮かんでいた。こんな場所で幽霊に囲まれるはずなどない。あれはおそらく松明だ。もしかして私がさっき悲鳴をあげたから気取られてしまったのだろうか。
「まずい、誰かいるようです。とりあえずここを離れましょう!」
ヨーデルが小声で囁いた。私もわかったわと短く返事をして彼の手を握って、手を引かれるまま進んだ。見つかってしまったら終わりだという緊張感が走る。
だが思い出してみると、今日の私はとんでもない厄日であった。追放から始まり、その後も踏んだり蹴ったりだ。何だか嫌な予感がする。
そしてどうにもその予感は的中してしまった。私は音もなく歩いていたのにも関わらず、思いっきり枝を踏んでしまった。バキッという気持ちのいい音がなる。声が聞こえたのは私の頬は嫌な汗がつたるのと同時であった。
「こっちから音がしたぞ! 十時の方向だ!」
火の玉から声が上がった。その瞬間火の玉が一斉に私たちの方向に押し寄せていた。それを見たヨーデルは方向を急転換して私の手を握ったまま走り出す。しかし農作業で日々鍛えている彼の動きに普段運動など滅多にしない私がついていけるだろうか。答えは否である。私は再び足をもつらせてしまった。
ああ、なんて使えない私なの! 足手まといにも程がある!
私の失態のせいで、あっという間に火の玉を持つ人間たちに囲まれてしまった。ジリジリと火の玉は近づいてくる。もう逃げ場はない。
「誰だ貴様ら、ナゲル連邦の兵士か! 名乗れ!」
火の玉のを持つ一人が叫んだ。下手に答えるとまずいかもしれないと思い、私は何も話さないことを選択した。相手の素性がわからないことには何も話せない。だがそれは逆効果であったらしく、彼らの一人が剣を抜く音が聞こえた。
どうしよう、このままでは殺されてしまう!
音と共に、そんな考えが唐突によぎった。ここで殺されてしまってはヨーデルは完全なる道ずれだ。どうにか彼だけでも救わなければならない。
そこで私はあることを思いついた。私、アメリスが追放されたことは広まっていないのなら、もちろん目の前にいる彼らも知らない可能性が高い。だったら私は彼らにとってマハス公国ロナデシア領を納めるロナデシア家の次女であるアメリスとして映るはずだ。
だったらそれを利用してこの状況を切り抜けられないか。少なくとも急に私が名乗りを上げれば、一瞬の隙が生まれる。その隙にヨーデルを逃がそう。私の身などどうとでもなれ!
握られていた手を離し、ヨーデルに小さく逃げなさいと呟く。そして彼の反応を見る前に私は松明を持つ人たちの前に出て、堂々と名乗った。
「私を誰だと思っているの? 私はアメリス、この領を治めるロナデシア家のアメリス=ロナデシアよ! どこの賊だか知らないけどこんなことしてタダで済むと思っているのかしら。わかったらさっさと正体を明かしなさい!」
全てハッタリだ。しかしこれで時間は稼げるはずである。どこの誰が囲んでいるのか知らないが、恐れなどしない、ヨーデルのためなら、ここまで尽くしてくれた彼のためなら。
しかしすぐに返事は返ってこなかった。何やらざわめき声だけが聞こえる。やがてその中から一人が出てきて、松明を自分の顔近くに近づけて私の前に立った。
もしかして尋問でもされるのかしら。
だがその人物は想定外の人物であった。
「アメリス様、本物ですか? なぜこんなところにおられるのです!」
声を発した人物は、私のよく知る人物であった。その声と松明で照らされた顔ではっきりと思い出す。忘れるはずなどない、ずっと私の側近の兵士として、一緒にいてくれた頼もしい騎士。姉の策略により引き離されるまで、私のことをずっと守ってくれた彼がどうしてここに……!
「もしかして、アルド?」
目の前で松明を持つ人物は、マハス公国ロナデシア領ロナデシア家専属兵団に属し、長年私の護衛の任務についていたアルドであった。
37
あなたにおすすめの小説
妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版
まほりろ
恋愛
国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。
食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。
しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。
アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。
その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。
ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日
※長編版と差し替えました。2025年7月2日
※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる
あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。
魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。
しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。
小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。
冤罪で処刑された悪女ですが、死に戻ったらループ前の記憶を持つ王太子殿下が必死に機嫌を取ってきます。もう遅いですが?
六角
恋愛
公爵令嬢ヴィオレッタは、聖女を害したという無実の罪を着せられ、婚約者である王太子アレクサンダーによって断罪された。 「お前のような性悪女、愛したことなど一度もない!」 彼が吐き捨てた言葉と共に、ギロチンが落下し――ヴィオレッタの人生は終わったはずだった。
しかし、目を覚ますとそこは断罪される一年前。 処刑の記憶と痛みを持ったまま、時間が巻き戻っていたのだ。 (またあの苦しみを味わうの? 冗談じゃないわ。今度はさっさと婚約破棄して、王都から逃げ出そう)
そう決意して登城したヴィオレッタだったが、事態は思わぬ方向へ。 なんと、再会したアレクサンダーがいきなり涙を流して抱きついてきたのだ。 「すまなかった! 俺が間違っていた、やり直させてくれ!」
どうやら彼も「ヴィオレッタを処刑した後、冤罪だったと知って絶望し、時間を巻き戻した記憶」を持っているらしい。 心を入れ替え、情熱的に愛を囁く王太子。しかし、ヴィオレッタの心は氷点下だった。 (何を必死になっているのかしら? 私の首を落としたその手で、よく触れられるわね)
そんなある日、ヴィオレッタは王宮の隅で、周囲から「死神」と忌み嫌われる葬儀卿・シルヴィオ公爵と出会う。 王太子の眩しすぎる愛に疲弊していたヴィオレッタに、シルヴィオは静かに告げた。 「美しい。君の瞳は、まるで極上の遺体のようだ」
これは、かつての愛を取り戻そうと暴走する「太陽」のような王太子と、 傷ついた心を「静寂」で包み込む「夜」のような葬儀卿との間で揺れる……ことは全くなく、 全力で死神公爵との「平穏な余生(スローデス)」を目指す元悪女の、温度差MAXのラブストーリー。
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜
平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。
レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。
冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる