転生したから楽しく生きたい

イサ

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どうやら転生したらしい

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 「ああ⋯⋯普通に生きたかった」

  俺は誰も居ないリビングでそう呟いた。
  部屋は荒れていて、まるで空き巣に入られた後のようだった。

 「どうしてこんな家に生まれてしまったんだろうか?」

 少し押し殺したような声が出た。

 「別に親の性格が悪かったわけじゃない。  騙されて、喧嘩して、ひねくれてしまっただけ。  でも、だからといって、これはあんまりなんじゃないか」

 震えた声が出た。
 目からは涙がこぼれ落ちる。
 冷たい涙のはずなのに、妙に熱く感じた。

 「もっと良い環境で生まれたかった。  それなら⋯⋯きっと楽しく悲しまずに生きれたから」

 俺はふらふらとした足取りで台所へ向かった。
 そして、包丁を手に取ると、心臓があるだろうと思われる所に包丁の先を向けた。

 「もし生まれ変わったなら、普通に生きてみたいな。  ⋯⋯でも、それは俺じゃない、か。  本当につまらない人生だったなぁ。」

 何も面白いことは無いのに、何故か笑みを作った。
 それから今までの思い出を思い出しながら目をつぶる。

 「父さん、母さん、今までありがとう。  それから、先に逝かせてもらうよ。  さようなら」

 俺は笑みを浮かべたまま心臓に包丁を突き刺した。
 すると、口からは血がこぼれ落ち、心臓からは大量の血が流れ落ちる。
 立っていられなくなり、ばたりと床に倒れた。
 視界は少しずつ悪くなっていき、頭も回らない。
 そんな中、強く思った。

 死にたくないなあ。

 それから俺の意識は暗転した。





 目を開くと、強い光に顔が強ばった⋯⋯気がする。
 だが、目を閉じることはなかった。
 まるで、反射の機能が無くなったかのようだ。
 それから、起き上がろうとして、それが無理なことに気がつく。
 すると、いきなり女性の顔がアップで見えた。

 「あうぁ!?」

 すると、女性は俺を見て笑顔になった。

 くそっ、俺の驚いた様子を見て笑ったのか?  でも、どうしてこんな所にいる?  ⋯⋯まさか、死ぬのに失敗したのか!?  それに、体が動かない。  まさか植物状態?  顔は動いたし、声は出た。  だけど、体は動かない⋯⋯やばくね?

 「✕✕✕✕✕✕」

 「あいいっえうの?(何言ってるの?)」

 まずい、まずいまずいまずい。
 何言ってるのかも分からない。  それに、俺も舌がしっかりと動かせない。
 これが死ぬことに失敗した人の末路だと言うのだろうか?
 俺は本当に運がない。
 くそっ。

 すると、女性は俺に手を伸ばしてきた。
 何をするんだろうと思っていると、突如抱き上げられた。
 抱き上げられた?
 俺はそのことに頭が一瞬フリーズした。
 だが、それも一瞬。
 そして、今の状態を瞬時に理解した。
 そう、この女性は怪力なのだ。
 そして、俺は二本の腕で支えられているのにも関わらず痛みがない。
 これは、俺の体が麻痺しているのだろう。
 俺は名推理だろうと自画自賛しながら逃避気味にそんなことを考えた。
 俺の頭のフリーズはすぐに治ったが、混乱は治っていなかったのだ。

 すると、女性は俺を一歩の腕で持つと(逃避していて気にしていない)胸を出した。

 もう訳が分からない。
 これは夢なのだろうか?  だとしたら酷すぎる夢だ。
 俺は14歳だし、性欲も強いだろう。
 しかし、これほどまでに自分にダメージを与えてくる夢もそうそうないのではないだろうか。

 それから女性は胸を俺の口元に押し付けてきた。
 そんなことをされても急には無理だろう。
 そんなことを思いながら口を閉じていると、女性は悲しそうな表情になり、それから泣きそうな表情になった。
 そして、息を思いっきり吸い出したので、反射的に口に含んだ。
 すると、女性は嬉しそうに微笑む。

 俺は凄い性癖を持った人を恨みがましい目で睨んでいると、ふと気づいた。

 歯がないのだ。

 はがないではなく、歯がなく、その理由はすぐに思い至った。
 こいつだ。
 絶対歯を抜いたのはこいつだろう。
 なんてやばいやつなんだ。
 人をまるで玩具みたいに扱いやがって。
 これじゃあご飯も食べれないだろ。
 それに体が動かないのも、きっとこいつだ。
 なんだか体が小さい気もするが、きっと気の所為だろう。
 駄目だ。
 体も動かせないし、もうこれからはこの女の慰め者として生きるしかないんだ。
 くそっ、こんなヤンデレ女にいつあったよ!
 顔つきは外国人じゃねぇか!
 それに、美人だし、それなら告れば良かっただろ!
 俺は死のうとしてて、そこを優しく慰めてれば、きっとコロッと心も傾いていただろうに、なんてことをしてくれたんだ!
 ああ、こんなことなら包丁で刺さなければ良かった。

 俺が後悔していると、扉の開いた音がした。
 そして、顔が映り込んでくる。
 大学生くらいのお兄さんだ。
 だが、体は筋肉質で、部活はラグビー部とかそこら辺だらうか?  と思った。
 その男性は俺を持ち上げている女性と楽しそうに話すと、いきなりキスをした。
 俺は再び逃避の旅に出る。

 戻ってくると、俺は戦々恐々としていた。
 修羅場だ。
 俺はすぐに理解した。
 男性のキスしている下で、俺は胸を口に突っ込まれているんだ。
 だが、何かおかしい。
 男性は俺を見て笑顔になるが、全然嫉妬などを感じない。
 ⋯⋯まさか!
 この男性も既に手遅れ?
 俺もいつかこんなことになってしまうのか?
 なんて女だ。
 警察が見つけてくれることを祈ろう。

 俺はそんなことを考えながら、ベッドの上でぼーっとしていた。
 既に何時間も経っていて、俺は冷静さを取り戻していた。
 体は少しだが動く。
 だが、おかしいことがいくつもあった。
 まず、瞬きを一度もしていない事だ。
 乾燥しないのだ。
 そして、手が小さい。
 自分の手が小さいのだ。
 いや、手だけじゃない。
 全身小さくなっている気がする。
 そして、体から何かが減っている気がする。
 何かが体の中にある。
 それが減っては増えてを繰り返している気がする。
 普段なら気の所為で済ますんだが、それを動かせそうなのだ。
 そして、おかしなことがまだある。
 なんと、髪がないのだ。
 どうやら俺はハゲにされたようだ⋯⋯と考えたかったんだが、ふと思ったことがある。
 生まれ変わったんじゃないかと。
 俺も子供だし、そんなことを考えてもいい気がする。
 普通に考えても、誘拐とは考えづらい。
 俺は中学生で、学校に行かなかったら先生が家に来る。
 そんな中、誘拐するのは馬鹿だ。
 見つかるリスクが高すぎる。
 そして、転生だ!と言いきれそうなのがある。
 なんと、俺のあれが小さいのだ。
 あれは何かと聞かれたら、股関にあるあれと答えておこう。

 転生したと仮定して、すると、もしかしたら魔法とかあるんじゃね?  とか、別の世界なんじゃね?とか思う。
 その理由が、今は深夜で、全く眠くならない。
 これはおかしい。
 ご飯を食べてもいないのにお腹が空かない。
 それに、赤ちゃんなのに眠くならない。

 まぁそんなんで異世界はどうよ?  と考えるかもしれないが、おかしい。
 地球であれば問題になりそうな事ばかりだ。
 なのに、そうゆうことは聞いていない。
 なら、異世界かもしれない。
 そうポジティブに考えてもいいだろう。

 俺は眠くなるまで体の中にある何かを出したり、動かせないかと特訓した。
 
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