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3話
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通りに道にいる魔物は全て正面から切り伏せて行った。
おそらく30層と思われる所でまた扉があった。
俺はその扉を開けてみると、水色の硬そうなゴーレムがいた。
俺はそれに剣で切りかかると、予想通り折れてしまった。
俺はすぐに魔法を使った。
使った魔法は銃の弾丸のような魔法だ。
これは、空気を魔力で圧縮して発射した魔法だ。
これを相手の体に貫通した瞬間に圧縮を解除すると凄い爆発ご起きた。
魔石を回収しようかと思ったが、バラバラになっていた。
近くにあった宝箱を開けてみると、いくつかの鉱石と剣が1本あった。
黒い剣で、前の剣よりもかなり重かった。
しかし、その剣を振るのは酷では無く、もっと重くても大丈夫なくらいだった。
俺は剣以外をアイテムボックスの魔法に入れた。
俺は次の階層に行くと、コカトリスやデュラハン、ミノタウロスなんかがいた。
俺はそれらを片っ端から倒して魔石をアイテムボックスに入れると、途中から無視して次の階層に行くようにした。
40階層辺りでまた扉があり、中に入ると、人型の牙が生えた魔物が5体いた。
だが、その中の一体だけは豪華な服と強そうな風格をしていた。
まず、4体の魔物が襲いかかって来て、すぐに切り伏せると、最後の一体は俺の動きを慎重に観て警戒していた。
俺は気楽に近づいて行くと魔法を放ってから切り伏せた。
相手の動きは他のより早く、魔法を避けられたが、俺からすればまだ遅いと感じた。
俺はそれらの魔石を取るとアイテムボックスに入れて宝箱を開けた。
その中には、よく分からない鉱石が入っていただけだった。
俺はそれらをアイテムボックスに入れてまた次の階層へと足を運んだ。
すると、ワームやサーペント、ワイバーンやケルベロスなんかがいた。
俺はそれらを片っ端から倒して魔石を回収して行くと、何時間かして0階層辺りに着いた。
そこにはかなり大きな扉があった。
多分ボスの部屋だろう。
俺は邪魔になるだろうと思って顔に巻いていた物を取ってアイテムボックスに入れた。
「次で最後だろうか?」
声に出してみたが、何も聞こえてこない。
俺は勇気を出して扉を開けてみた。
すると、中には真っ黒なドラゴンがいた。
「へぇ、ここまで人がたどり着けるとは・・・ね。驚いたわ」
ドラゴンは驚いたように言った。
頭に響いてくる感じだ。
「お前はドラゴンか・・・お前は他とは違うのか?」
「他とは他のドラゴンとはかしら?それとも魔物かしら?」
「他のドラゴン・・・か。俺はここの迷宮にいる魔物との違いだ。」
「ええ。私、ここの核に強制的に召喚されたの。」
「ここから出ないのか?」
「出れたら出てるわよ」
「じゃあ何故出れないんだ?」
「この迷宮核に私は攻撃出来ないの。昔勇者に不意打ちをくらってね。なんか変な力持っててやられちゃったのよ。それでボロボロになって眠りについていたの。そして目を覚ましたら迷宮の中にいて、攻撃しても迷宮は治るし、核には攻撃できないしで困っていたのよ。」
「ふぅーん。それで?」
「この核壊してくれないかしら?」
「うーん、壊したら何かいい事あるの?」
「いえ、私が自由になるだけね」
「ならみんなのためにここは放置が良いと思うな」
「いえ、あなただけ生かしといてあげるわよ」
「それは俺の良いことなの?」
「だって、貴方核を壊さないとここから出られないわよ」
マジか。
でも転移があるし。
「転移使えるからいいよ」
「ここの部屋は結界で転移使えないようになってるわよ」
「なら、君を倒せばいいだけだな」
俺がそう言うとドラゴンは笑いだした。
「あははははっ、私を倒す?無理よ」
「いや、やってみないと案外分からないぞ?」
「確かにそうね。ならやってみる?その前にあの核壊してくれないかしら?」
「うーん、やめておくよ。ねえ、核って普通に壊せる?」
「多分壊せるわよ」
俺は強化魔法も使って本気で切りにかかった。
だが、意外に脆くて力余って地面に思いっきり刺さってしまった。
「あははっ、おかしな人間ね」
これは少し恥ずかしいな。
「ねえ、やっぱり貴方を殺すは。貴方今無詠唱で魔法使ったわよね?普通の人間って無詠唱で魔法使えないと思うのよ。そんな人間に昔みたいな不意打ちを仕掛けられたくないし、今やっておく方がいいわ」
「うーん。昔の勇者でも殺せなかったのか。さすがに無傷では無理かもな」
とは言っても俺はかなりワクワクしていた。
戦いらしい戦いを俺はしていないのだ。
確かに一方的に相手を殺るのもいいが、たまにはこうゆうのも欲しい。
俺はドラゴンの手に斬りかかった。
しかし、ドラゴンには傷一つ付けられず、弾かれてしまった。
そこでドラゴンは手と炎で攻撃してきた。
俺は驚きで少し止まってしまい、反応が遅れた。
そしてギリギリ避けれたが、そこで油断してしまい、尻尾で腹を貫かれた。
「ふん、意外と手応え無かったわね」
ドラゴンはそう言うと尻尾を俺の腹から抜いて俺を観ていた。
油断するつもりは無いみたいだ。
しかし、俺はそれどころでは無かった。
腹を貫かれた。
しかし、全く痛みを感じない。
それどころか、尻尾を抜かれた時には既に傷は癒えていた。
俺は凄い嫌な予感がした。
勇者の持っている特殊な力。
勇者の力は毎回違っているようだ。
封印だったり全てを切り裂く力。
ならば、今回の俺の力はなんだ?
「なんだと?血が無いではないか。それにお前の傷も治っている?一体何をした?」
ドラゴンは俺にそう問いかけてきた。
しかし、俺は無言で考え続けていた。
「ふん。ならば跡形も無く焼き尽くしてやろう」
ドラゴンはそう言って俺に凄く強いブレスを放ってきた。
俺はそれを避けることなくもろにくらった。
俺は一種意識が飛んだが、すぐに戻った。
体を見てみると何も異常は見られなかった。
そう、異常が見られなかったのだ。
あんなものをくらったのにもかかわらず・・・だ。
俺はなんとなく自分の力を理解した。
不死。
もしかしたらそんな力なのかもしれない。
もしそんな力なら俺は死ぬことが出来ないかもしれない。
もし、もしもそうだとしたら、俺の望みは・・・どうなる?
俺は死にたかった。
俺は悲しいことが起こって欲しくなかった。
生きているならそれが起こるのは当たり前だ。
なら、そんなものを感じる前に早く死にたいと。
毎日辛かった。
毎日が面倒だった。
別に変わったことが起こっていたわけではない。
ただ、周りと俺の感じ方が違っただけだ。
だけど、それが問題だった。
俺は子供の頃、人の事が好きだった。
そのためなら死んでしまってもいあと思うほどに。
逆に、他の物ならどうでも良いと思っていた。
子供の頃、俺は全ての人を尊敬していた。
全ての人間に俺よりもどこか優れている所が必ずあると。
悪いところは見ずに、良いところだけを観るようにしていた。
でも、俺にも嫌いな人が出来ていった。
俺はその人達を死んでしまえばいいと思っていた。
だが、殆どの人にはその人と同じような一面がたくさんあった。
見ないようにしていた部分。
俺はいつからかそこだけしか見ないようになった。
いや、見ようと思わなくても、勝手に分かってしまった。
それからは人の観察をした。
そして、気づいた。
人は必ず悪いところがある生き物だと。
だけど、だからこそ完璧なようにも感じた。
その部分がなければ発展することは無かっただろう、と。
俺は絶望した。
俺はなんのために頑張っていたのか。
こんな醜い奴らのために頑張っていたのかと。
そんな時に俺はこう思った。
こんな世界、滅んでしまえばいいのにと。
でも、前の世界ではそう思うだけで出来なかった。
だが、この世界ならどうだろうか?
俺の夢を奪った上に俺を捨て駒として使おうとした。
人は大義名分さえあれば大体なんでも出来る。
俺も手に入れた。
もういいだろう。
俺の力は不死だろう。
ならば、時間はたっぷりありそうだ。
そして、力もある。
これなら滅ぼせるだろう。
俺は少し嬉しいと思ったが、悲しみ、怒りは溢れかえっていて、もう抑えられそうになかった。
俺はその怒りをドラゴンにぶつけることにした。
どうせ、死ぬことは無いだろう。
俺はそう思って本気でドラゴンに殴りかかった。
でも、鱗に傷がつくことはない。
ドラゴンになぎ払われた。
でも気にすることなくまた殴った。
殴る度に手は潰れた。
何度も何度も潰れた。
だが、殴る度に力が上がっている気がした。
きっと再生して頑丈になっているんだろう。
それか、ストッパーと言われるものが外れていっているのか。
身体強化魔法も無駄に魔力を流しまくって発動した。
内側から破壊されている気がするが、気にせず八つ当たりをした。
すると、鱗に少しヒビが入った。
そこで、さすがにまずいと思ったのか、ドラゴンが薙ぎ払ってブレスを放ってきた。
それでもすぐに体が復元してまた殴りにかかる。
ドラゴンはブレスを放ったり避けたりしていたが、やがて避けれなくなってきた。
さっきヒビが入っていた鱗でなくとも、一撃でヒビが入るようになった。
「わ。私の負けよ。だからもうこれ以上殴るのはやめて。あなたと違って私はそんなに早く治らないの」
俺はさらに殴ろうとしたが、そんな声が聞こえて冷静になった。
「あなた、さすがにおかしいでしょ。人間?跡形もなく消し飛んだのになぜ普通に何もない空間から生まれてるのよ。殺そうとしたのは謝るわ。それにもう人間は襲わないから許してくれないかしら?」
やっぱり不死なのかもしれない。
言われると少し残念だが、もう割り切れた。
「別に初めからお前には怒っていない。人間を襲うのも構わない。俺がお前を攻撃していたのはただの八つ当たりだ」
「は?あなた八つ当たりであんなことするの?というか、何に対しての八つ当たりよ」
「俺は死にたかったんだ。だけど、不死なら死ねないかもしれないじゃないか。それについての八つ当たりと、そもそもの原因を作った王国への八つ当たりだよ」
「貴方は破滅願望を持っているの?たまにいるけど、あなたみたいなやばい人間がそんな願望を持っちゃうなんて勿体ないわね。それより、あなたの言う王国は不死にする魔法でも見つけたの?」
「違うよ。俺は勇者として召喚されたんだ。誘拐されたことにして逃げ出したんだよ」
「そう、なら良かったわ。それに勇者なら特殊な力を持っていても納得ね」
「なあ、それでお前はこれからどうするんだ?」
「私は適当に魔族でも襲っていようかしら」
「殺すのは楽しいのか?」
「ええ、逃げ惑う生物を殺すのは気分がいいわね。あとは建物や町を壊すのも中々いいわよ」
「そうか・・・。俺は人を・・・いや、人型の生物全てを殺し尽くしたいんだ。もし良かったら一緒にやらないか?」
「あら?なんで私を誘うの?」
「さあ?ただの気まぐれだよ。強いて言えば目的が似ているのと、声が気に入ったからかな?」
「あら、人間はドラゴンも対象に入ってるのかしら?まあ、人化できるけど」
「ふーん。まあ、姿はなんでもいいけど、どっちなんだい?」
「いいわよ。その方が楽しそうだもの」
「良かったよ。俺一人ならいつになるか分からないからね」
「そうね。それと、そ、その、あなた替えの服は無いの?あ、あなた今なんにも着ていないわよ。」
「ああ、悪かったな。お前に消されたからな」
「それは・・・もう、悪かったわよ」
ドラゴンは不貞腐れてそう言った。
俺はアイテムボックスから替えの服を出すとそれに着替えた。
「そいえば、俺の名前はルーアンと言うんだが、お前の名前は?」
「へぇ、ルーアンと言うのね。私の名前・・・ね。名前、名前は・・・何がいいかしら?」
「名前がないのか?」
「いえ、あったと思うわよ。でも、必要無かったし。かなり前で忘れてしまったわ」
「そうか。でも、無いとなんて呼んだらいいかわからないぞ」
「ならあなたが付けて頂戴」
名前か。
仲間とドラゴンから取ってフランなんていいかもしれない。
「フランなんてどうだ?」
「フラン・・・。フランね。いいわね。なら今日から私はフランね」
「気に入ってもらえたようで良かったよ。これからよろしくな、フラン」
「ええ、こちらこそよろしく、ルーアン」
これでまた1歩目標に近づけた。
この調子で頑張っていこう。
俺はそう思うと、少し満たされた気がした。
おそらく30層と思われる所でまた扉があった。
俺はその扉を開けてみると、水色の硬そうなゴーレムがいた。
俺はそれに剣で切りかかると、予想通り折れてしまった。
俺はすぐに魔法を使った。
使った魔法は銃の弾丸のような魔法だ。
これは、空気を魔力で圧縮して発射した魔法だ。
これを相手の体に貫通した瞬間に圧縮を解除すると凄い爆発ご起きた。
魔石を回収しようかと思ったが、バラバラになっていた。
近くにあった宝箱を開けてみると、いくつかの鉱石と剣が1本あった。
黒い剣で、前の剣よりもかなり重かった。
しかし、その剣を振るのは酷では無く、もっと重くても大丈夫なくらいだった。
俺は剣以外をアイテムボックスの魔法に入れた。
俺は次の階層に行くと、コカトリスやデュラハン、ミノタウロスなんかがいた。
俺はそれらを片っ端から倒して魔石をアイテムボックスに入れると、途中から無視して次の階層に行くようにした。
40階層辺りでまた扉があり、中に入ると、人型の牙が生えた魔物が5体いた。
だが、その中の一体だけは豪華な服と強そうな風格をしていた。
まず、4体の魔物が襲いかかって来て、すぐに切り伏せると、最後の一体は俺の動きを慎重に観て警戒していた。
俺は気楽に近づいて行くと魔法を放ってから切り伏せた。
相手の動きは他のより早く、魔法を避けられたが、俺からすればまだ遅いと感じた。
俺はそれらの魔石を取るとアイテムボックスに入れて宝箱を開けた。
その中には、よく分からない鉱石が入っていただけだった。
俺はそれらをアイテムボックスに入れてまた次の階層へと足を運んだ。
すると、ワームやサーペント、ワイバーンやケルベロスなんかがいた。
俺はそれらを片っ端から倒して魔石を回収して行くと、何時間かして0階層辺りに着いた。
そこにはかなり大きな扉があった。
多分ボスの部屋だろう。
俺は邪魔になるだろうと思って顔に巻いていた物を取ってアイテムボックスに入れた。
「次で最後だろうか?」
声に出してみたが、何も聞こえてこない。
俺は勇気を出して扉を開けてみた。
すると、中には真っ黒なドラゴンがいた。
「へぇ、ここまで人がたどり着けるとは・・・ね。驚いたわ」
ドラゴンは驚いたように言った。
頭に響いてくる感じだ。
「お前はドラゴンか・・・お前は他とは違うのか?」
「他とは他のドラゴンとはかしら?それとも魔物かしら?」
「他のドラゴン・・・か。俺はここの迷宮にいる魔物との違いだ。」
「ええ。私、ここの核に強制的に召喚されたの。」
「ここから出ないのか?」
「出れたら出てるわよ」
「じゃあ何故出れないんだ?」
「この迷宮核に私は攻撃出来ないの。昔勇者に不意打ちをくらってね。なんか変な力持っててやられちゃったのよ。それでボロボロになって眠りについていたの。そして目を覚ましたら迷宮の中にいて、攻撃しても迷宮は治るし、核には攻撃できないしで困っていたのよ。」
「ふぅーん。それで?」
「この核壊してくれないかしら?」
「うーん、壊したら何かいい事あるの?」
「いえ、私が自由になるだけね」
「ならみんなのためにここは放置が良いと思うな」
「いえ、あなただけ生かしといてあげるわよ」
「それは俺の良いことなの?」
「だって、貴方核を壊さないとここから出られないわよ」
マジか。
でも転移があるし。
「転移使えるからいいよ」
「ここの部屋は結界で転移使えないようになってるわよ」
「なら、君を倒せばいいだけだな」
俺がそう言うとドラゴンは笑いだした。
「あははははっ、私を倒す?無理よ」
「いや、やってみないと案外分からないぞ?」
「確かにそうね。ならやってみる?その前にあの核壊してくれないかしら?」
「うーん、やめておくよ。ねえ、核って普通に壊せる?」
「多分壊せるわよ」
俺は強化魔法も使って本気で切りにかかった。
だが、意外に脆くて力余って地面に思いっきり刺さってしまった。
「あははっ、おかしな人間ね」
これは少し恥ずかしいな。
「ねえ、やっぱり貴方を殺すは。貴方今無詠唱で魔法使ったわよね?普通の人間って無詠唱で魔法使えないと思うのよ。そんな人間に昔みたいな不意打ちを仕掛けられたくないし、今やっておく方がいいわ」
「うーん。昔の勇者でも殺せなかったのか。さすがに無傷では無理かもな」
とは言っても俺はかなりワクワクしていた。
戦いらしい戦いを俺はしていないのだ。
確かに一方的に相手を殺るのもいいが、たまにはこうゆうのも欲しい。
俺はドラゴンの手に斬りかかった。
しかし、ドラゴンには傷一つ付けられず、弾かれてしまった。
そこでドラゴンは手と炎で攻撃してきた。
俺は驚きで少し止まってしまい、反応が遅れた。
そしてギリギリ避けれたが、そこで油断してしまい、尻尾で腹を貫かれた。
「ふん、意外と手応え無かったわね」
ドラゴンはそう言うと尻尾を俺の腹から抜いて俺を観ていた。
油断するつもりは無いみたいだ。
しかし、俺はそれどころでは無かった。
腹を貫かれた。
しかし、全く痛みを感じない。
それどころか、尻尾を抜かれた時には既に傷は癒えていた。
俺は凄い嫌な予感がした。
勇者の持っている特殊な力。
勇者の力は毎回違っているようだ。
封印だったり全てを切り裂く力。
ならば、今回の俺の力はなんだ?
「なんだと?血が無いではないか。それにお前の傷も治っている?一体何をした?」
ドラゴンは俺にそう問いかけてきた。
しかし、俺は無言で考え続けていた。
「ふん。ならば跡形も無く焼き尽くしてやろう」
ドラゴンはそう言って俺に凄く強いブレスを放ってきた。
俺はそれを避けることなくもろにくらった。
俺は一種意識が飛んだが、すぐに戻った。
体を見てみると何も異常は見られなかった。
そう、異常が見られなかったのだ。
あんなものをくらったのにもかかわらず・・・だ。
俺はなんとなく自分の力を理解した。
不死。
もしかしたらそんな力なのかもしれない。
もしそんな力なら俺は死ぬことが出来ないかもしれない。
もし、もしもそうだとしたら、俺の望みは・・・どうなる?
俺は死にたかった。
俺は悲しいことが起こって欲しくなかった。
生きているならそれが起こるのは当たり前だ。
なら、そんなものを感じる前に早く死にたいと。
毎日辛かった。
毎日が面倒だった。
別に変わったことが起こっていたわけではない。
ただ、周りと俺の感じ方が違っただけだ。
だけど、それが問題だった。
俺は子供の頃、人の事が好きだった。
そのためなら死んでしまってもいあと思うほどに。
逆に、他の物ならどうでも良いと思っていた。
子供の頃、俺は全ての人を尊敬していた。
全ての人間に俺よりもどこか優れている所が必ずあると。
悪いところは見ずに、良いところだけを観るようにしていた。
でも、俺にも嫌いな人が出来ていった。
俺はその人達を死んでしまえばいいと思っていた。
だが、殆どの人にはその人と同じような一面がたくさんあった。
見ないようにしていた部分。
俺はいつからかそこだけしか見ないようになった。
いや、見ようと思わなくても、勝手に分かってしまった。
それからは人の観察をした。
そして、気づいた。
人は必ず悪いところがある生き物だと。
だけど、だからこそ完璧なようにも感じた。
その部分がなければ発展することは無かっただろう、と。
俺は絶望した。
俺はなんのために頑張っていたのか。
こんな醜い奴らのために頑張っていたのかと。
そんな時に俺はこう思った。
こんな世界、滅んでしまえばいいのにと。
でも、前の世界ではそう思うだけで出来なかった。
だが、この世界ならどうだろうか?
俺の夢を奪った上に俺を捨て駒として使おうとした。
人は大義名分さえあれば大体なんでも出来る。
俺も手に入れた。
もういいだろう。
俺の力は不死だろう。
ならば、時間はたっぷりありそうだ。
そして、力もある。
これなら滅ぼせるだろう。
俺は少し嬉しいと思ったが、悲しみ、怒りは溢れかえっていて、もう抑えられそうになかった。
俺はその怒りをドラゴンにぶつけることにした。
どうせ、死ぬことは無いだろう。
俺はそう思って本気でドラゴンに殴りかかった。
でも、鱗に傷がつくことはない。
ドラゴンになぎ払われた。
でも気にすることなくまた殴った。
殴る度に手は潰れた。
何度も何度も潰れた。
だが、殴る度に力が上がっている気がした。
きっと再生して頑丈になっているんだろう。
それか、ストッパーと言われるものが外れていっているのか。
身体強化魔法も無駄に魔力を流しまくって発動した。
内側から破壊されている気がするが、気にせず八つ当たりをした。
すると、鱗に少しヒビが入った。
そこで、さすがにまずいと思ったのか、ドラゴンが薙ぎ払ってブレスを放ってきた。
それでもすぐに体が復元してまた殴りにかかる。
ドラゴンはブレスを放ったり避けたりしていたが、やがて避けれなくなってきた。
さっきヒビが入っていた鱗でなくとも、一撃でヒビが入るようになった。
「わ。私の負けよ。だからもうこれ以上殴るのはやめて。あなたと違って私はそんなに早く治らないの」
俺はさらに殴ろうとしたが、そんな声が聞こえて冷静になった。
「あなた、さすがにおかしいでしょ。人間?跡形もなく消し飛んだのになぜ普通に何もない空間から生まれてるのよ。殺そうとしたのは謝るわ。それにもう人間は襲わないから許してくれないかしら?」
やっぱり不死なのかもしれない。
言われると少し残念だが、もう割り切れた。
「別に初めからお前には怒っていない。人間を襲うのも構わない。俺がお前を攻撃していたのはただの八つ当たりだ」
「は?あなた八つ当たりであんなことするの?というか、何に対しての八つ当たりよ」
「俺は死にたかったんだ。だけど、不死なら死ねないかもしれないじゃないか。それについての八つ当たりと、そもそもの原因を作った王国への八つ当たりだよ」
「貴方は破滅願望を持っているの?たまにいるけど、あなたみたいなやばい人間がそんな願望を持っちゃうなんて勿体ないわね。それより、あなたの言う王国は不死にする魔法でも見つけたの?」
「違うよ。俺は勇者として召喚されたんだ。誘拐されたことにして逃げ出したんだよ」
「そう、なら良かったわ。それに勇者なら特殊な力を持っていても納得ね」
「なあ、それでお前はこれからどうするんだ?」
「私は適当に魔族でも襲っていようかしら」
「殺すのは楽しいのか?」
「ええ、逃げ惑う生物を殺すのは気分がいいわね。あとは建物や町を壊すのも中々いいわよ」
「そうか・・・。俺は人を・・・いや、人型の生物全てを殺し尽くしたいんだ。もし良かったら一緒にやらないか?」
「あら?なんで私を誘うの?」
「さあ?ただの気まぐれだよ。強いて言えば目的が似ているのと、声が気に入ったからかな?」
「あら、人間はドラゴンも対象に入ってるのかしら?まあ、人化できるけど」
「ふーん。まあ、姿はなんでもいいけど、どっちなんだい?」
「いいわよ。その方が楽しそうだもの」
「良かったよ。俺一人ならいつになるか分からないからね」
「そうね。それと、そ、その、あなた替えの服は無いの?あ、あなた今なんにも着ていないわよ。」
「ああ、悪かったな。お前に消されたからな」
「それは・・・もう、悪かったわよ」
ドラゴンは不貞腐れてそう言った。
俺はアイテムボックスから替えの服を出すとそれに着替えた。
「そいえば、俺の名前はルーアンと言うんだが、お前の名前は?」
「へぇ、ルーアンと言うのね。私の名前・・・ね。名前、名前は・・・何がいいかしら?」
「名前がないのか?」
「いえ、あったと思うわよ。でも、必要無かったし。かなり前で忘れてしまったわ」
「そうか。でも、無いとなんて呼んだらいいかわからないぞ」
「ならあなたが付けて頂戴」
名前か。
仲間とドラゴンから取ってフランなんていいかもしれない。
「フランなんてどうだ?」
「フラン・・・。フランね。いいわね。なら今日から私はフランね」
「気に入ってもらえたようで良かったよ。これからよろしくな、フラン」
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