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chapter,5
04. 聖女ジゼルフィアの誤算(前編)《1》
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ジゼルフィアが十一歳の夏。デ・フロート家にひとりの少年が通うことになった。
彼の名はホーグ・イセニア。父親がハーヴィック王国の騎士で、母親が隣国花鳥の公国所属の魔法使いなのだという。
ハーヴィックの王城魔術師であるフィンリーはジゼルフィアの家庭教師として週に数回、デ・フロート家の屋敷に通ってきている。どうやらその際にホーグも一緒に勉強させたいとのことらしい。
「ふたりは年齢も近いですし、魔法を学ぶ者同士話も合うと思うのです。公爵さまから許可はいただいております」
「お父様がそのようにおっしゃったのでしたら、わたくしは別に構いません」
病弱なジゼルフィアにとって年齢の近い友人は魔女の森に棲むヒセラくらいしかいない。あとは年上の魔女や彼女たちと契約している精霊たちばかりで、同い年の異性と関わるなど青天の霹靂である。だが、父親が許可をしているというのなら問題ないのだろう。フィンリーの隣でちょこんと佇んでいる黒髪黒眼の少年は熱心にジゼルフィアを見つめている。
「ジゼって呼んでいい? 僕はホーグ! 父上からハーヴィックの魔法についても学ぶよう言われたから、マヒの一族のなかでも歴史あるデ・フロート家の家庭教師をされているフィンリーに師事することにしたんだ。素敵な髪の色をしているね、まるで妖精の羽みたい!」
「そ、そのようなこと」
ジゼルフィアは初対面の彼に圧倒されながらも自己紹介を返す。この世界ではないどこかで彼と出逢ったかもしれないという警戒感を抱きながら。
「ジゼルフィア・デ・フロートよ。ホーグ、わたくしをジゼと呼ぶことを許すわ」
「わ! ありがたき幸せ。ジゼ、仲良くしてね」
ツンとした態度のジゼルフィアを見ても、ホーグは嬉しそうにしている。
「世が世なら王国の聖女さまになる人だもの、気高い公爵家の令嬢と近づけるなんて……」
「気高くなんかないですよ」
「そんなことはないよ。ジゼはとても素敵だ。生まれつき“時”の精霊に寿命を削られるハンデを持っていながら、素直に育っているのだから」
どこか懐かしそうな瞳をするホーグにジゼルフィアは不安になる。まるで彼は自分を誰かと比べているかのようだ。
だが、同年代のふたりが対面で語る姿は周囲から微笑ましく見られたらしい。ジゼルフィアの両親は「初めての男の子のお友だちだから恥ずかしがっているのね」と解釈しているし、フィンリーもにこにこしながらふたりを見守っている。自分の直感が間違っているのだろうか……?
当のホーグはジゼルフィアを褒め称え、満足そうにフィンリーへ向き直る。
「これから僕はハーヴィックの魔法を極めて、国に貢献できる魔法使いになる。フィンリー、ジゼ、よろしくね」
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